転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第150話 リューナちゃんの相談に耳を傾けてみよう

昼下がり―――――

 

王城での取り調べ・・・と言うか報告と言うか、とにもかくにも拘束されて時間をくった。

討伐証明として、三頭黄金竜(スリーヘッドゴールデンドラゴン)の頭を一つ取り出し、証拠を見せた。ヒヨコたちの情報から雷竜サンダードラゴンと一つ目巨人のギガンテス、そして<迷宮氾濫(スタンピード)>の魔物達の討伐がすでに完了している事を確認している。

 ゴルドスターが用意した召喚獣は全て攻略が完了した。プレジャー公爵とゴルドスターの企んだ王国簒奪計画は完全に幕を閉じる事となった。

 

聖女のフィルマリーは条件付きで聖堂教会大聖堂付きの治癒神官として活動することになった。

サキュバスのミーナはもう少し取り調べ・・・というか、この際いろいろと聞きたいと諜報部のグウェインと宮廷魔術師長のブリッツが話を希望してきた。

一応俺の使い魔として使役するとワーレンハイド国王から許可をもらったので、無下にするようなことはしないと思うが、ちょっと心配なのでヒヨコ十将軍序列五位のヴィッカーズとその部下をミーナにつける。ミーナの頭や肩にヒヨコが止まっている情景は、何とも言えず哀愁があるが、ミーナに何かあればヒヨコ達から念話で連絡がある。

 

「ヤーベ様ぁ~~~~」

 

だいぶ情けない声を出していたが、明日には引き受けに来てもよいと言われている。一日の我慢だと伝えたら、絶対迎えに来てくださいね!と三度もしつこく念を押されてしまった。

 

明日迎えに来る、といっても、どうせ明日再度王城に来なければいけなくなったのだ。

 

なぜかって?

 

今回の活躍でまたまた陞爵することになったからだよ、コンチクショー!

伯爵だって!伯爵!

叙爵して四日で伯爵って、ありえなくね?

ワーレンハイド国王も一体何を考えているんだろうね。

尤もカッシーナは結婚するための降嫁条件が伯爵であったため、自分の求婚からわずか四日で伯爵に陞爵されることになったヤーベの愛がなせる奇跡だと言って城内で吹聴しまくっている。マジで勘弁してもらいたい。

 

そんなわけで、王城で拘束されていたら昼下がりまでかかってしまったのだ。

 

「それにしても・・・腹減ったな・・・」

 

コルーナ辺境伯家に戻れば、何かは食べさせてもらえるだろうが、時間が遅くなったので、あまり無理を掛けたくない所だ。

 

ふと見れば、見覚えのある通りだ。

 

「確かここを曲がって裏通りに入って少し行けば・・・」

 

俺は裏通りに入って歩を進める。

 

「あった! 喫茶<水晶の庭>(クリスタルガーデン)。リューナちゃんは元気かな?」

 

カランカラン。

 

「リューナちゃん元気? まだランチ食べられるかな?」

 

喫茶<水晶の庭>(クリスタルガーデン)の扉を開けて店の中に入る。

 

「いらっしゃいませ! まだランチは大丈夫ですよ・・・って、ヤーベさん!」

 

丁度客が帰ったところだったのか、テーブルを片付けていた店主のリューナがこちらに気づいた。

 

「ヤーベさんやっと来てくれたんですね!」

 

そう言ってテーブルの片づけを止めて、俺の方へ小走りで寄ってくると俺の手を取る。

 

「もう!他のお店でアイデアを出して大活躍してるって聞いてますよ!」

 

俺の手を取り、揺すると、リューナは少し拗ねたように言う。

 

「え?」

 

「ポポロ食堂のバクダン定食も、マンマミーヤのコロッケパンに焼きそばパンも、ぜーんぶヤーベさんのアイデアなんでしょ?」

 

「ああ、そのことか。そうだね、まあちょっとアドバイスしただけで、努力したのは彼女たちだよ」

 

俺は頭を掻きながら笑った。

 

「ぷうっ! 私のお店にはアドバイスしてくれないんですか?」

 

掴んでいた俺の手を放し、くるりと後ろを向いて背中を見せるリューナ。

ちょっと振り向いて拗ねた様な目で俺をジトッと睨む。

だが、フサフサの尻尾がゆらゆらしている。

 

「俺で力になれることがあればいいけど・・・、だいたいリューナちゃんの料理はアドバイスなんて出来ないくらいおいしいからね・・・、あ、ランチ何が食べられる?」

 

「えへへ・・・そんなに美味しいですか?嬉しいなぁ。あ、ランチは二種類が終わっちゃいまして、今日はフレイムバードとピピーマンのピリ辛炒め定食しか残ってないんです」

 

「おおっ!フレイムバードの料理なんて最高だね!よくそれ残ってたね。王都のみんなは辛い物がダメなのかな?」

 

「お昼から辛い物が人気ないのもありますが、フレイムバードのお肉は希少ですからね・・・他の二種類の定食より値段が倍くらい違うんですよ・・・」

 

申し訳なさそうにリューナが値段を告げる。

 

「フレイムバードの肉だからね。それは仕方ないけど、一般的には昼の食事としては贅沢過ぎるから残ってたのか・・・、ま、おかげで俺はフレイムバードの定食にありつけるけどね!」

 

ウインクして笑顔を見せる。

 

「はいっ!ただいま用意しますね!お席にお座りになってお待ちくださいませ!」

 

そう言って片付け途中だったテーブルの片づけを済ませると、パタパタと奥の厨房に小走りで戻って行く。

大きく揺れる尻尾を見ながら俺は楽しみに料理を待つことにした。

 

 

 

「お待たせしましたっ! フレイムバードとピピーマンのピリ辛炒め定食です! お熱いうちにどうぞ!」

 

テーブルに座って料理を待っていた俺の目の前にフレイムバードとピピーマンのピリ辛炒め定食が到着した。もうピリ辛感満載の匂いが食欲を刺激する。

 

「頂きます!」

 

バルバロイ王国では基本ナイフとフォークで食事をとる。

米も無く、基本パンだ。

ゆえに、このフレイムバードとピピーマンのピリ辛炒め定食もおかずの皿に小鉢が1品、パンを2切れとスープが付いている。

 

スチャッ!っと俺は亜空間圧縮収納からマイ箸を取り出す。

やはり箸で食事しないと落ち着かないからね~。

 

「んんっ! ウマイ!」

 

元々フレイムバードの肉はうまみが強いが、肉自体に辛みがあり、癖の強い食材だ。バーベキューなら塩コショウだけで炙って食べてもうまいだろうが、料理でうまく合わせるならば料理人の腕が問われるだろう。リューナの作ったこのフレイムバードとピピーマンのピリ辛炒めは辛みのバランスが絶品の上、ピピーマン(きっとピーマンだろう)の触感も良く、食べれば食べるほど食欲が増すような錯覚すら覚える。

やはりリューナはなかなかの料理人のようだ。

 

「いかがですか?」

 

「サイコーだよ!リューナちゃんみたいな美人で料理が上手な女性が奥さんになったら最高だろうね」

 

「やだっ!ヤーベさんったら・・・」

 

顔を赤くしてクネクネするリューナちゃん。

・・・料理がおいしいのは間違いないけど、お世辞をそんなに真に受けなくても・・・。

 

一切れたりとも逃さず、綺麗さっぱり平らげると、嬉しそうにお皿をさげに来るリューナちゃん。

 

「やあ、おいしかったよ、ご馳走様!」

 

「お粗末様でした」

 

そう言ってお盆に皿を回収して行くリューナちゃん。

一旦厨房に皿を引き上げると、代わりにお茶を持ってきてくれた。

 

「ありがとう」

 

お茶を入れてくれた手を止めて、俺を見るリューナちゃん。

 

「ヤーベさん、相談したいことがあるのですが・・・聞いてもらえませんでしょうか?」

 

「俺に相談? できる事なら何でも協力するけど?」

 

「一週間後に王都でナンバーワンのスイーツを決める、王都スイーツ決定戦が開かれるんです」

 

「王都スイーツ決定戦?」

 

「はい、王都中のスイーツ職人がナンバーワンを目指して申し込んでくる大会なんです」

 

「で、俺に相談って?」

 

「出来れば、スイーツのメニューを一緒に考えてくれませんでしょうか?」

 

「お、俺にスイーツメニューの相談?」

 

「はい、それで・・・、一番の問題が」

 

「どんな?」

 

「今、王都に砂糖がないんです・・・」

 

落ち込むように俯くリューナちゃん。

 

「え・・・砂糖がない?」

 

スイーツ作るのに砂糖が無いって・・・致命的じゃね?




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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