転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

174 / 332
第151話 再びギルドのやり手に聞いてみよう

「さ、砂糖がないって・・・それじゃスイーツ作れないじゃない」

 

俺は首を傾げてリューナちゃんに聞く。

 

「そうなんです・・・。元々砂糖は王都でも貴重な調味料で、高い金額での取引ではありましたが、一定量の流通はありました。それが、ここ一ヶ月ぐらいで品薄から一気に在庫切れの商店が続出して、今では全く手に入らなくなってしまって・・・」

 

「ふーむ、過去にそんなことあった?」

 

「いいえ・・・、毎年の王都スイーツ決定戦近くなると砂糖が割高になったりはしますが、無くなって買えなくなるって事は無かったと思います」

 

俺は考え込む。たまたま砂糖の流通が薄くなったところに大会の需要が重なった・・・。あり得る話だろうとは思う。だが、これが大会優勝を狙う大手商会の戦略だとすると、非常に厄介だ。何せ、大会に出させない様にどこかで買い占めているか流通を止めているということだろうからな。

 

「うーん、じゃあ早速リューナちゃんの懇意にしている商会とか、問屋さんとかちょっと回って話を聞いてみようか?」

 

「え、一緒に行って頂けるんですか?」

 

「うん、お店閉めてもいいなら、今から早速一緒に行かないか? もうあまり時間がないだろうしね」

 

「わかりました!もうすぐ昼の営業も終わりですから、少し早く閉めちゃいますね!」

 

そう言って店の看板を営業中から準備中に変えて、店を閉める。

 

「さあ、行きましょう!」

 

リューナちゃんはやたら嬉しそうに言った。

 

 

 

「砂糖・・・やっぱりないんですね・・・」

 

「リューナちゃんすまねぇ・・・。リューナちゃんがお店でスイーツ出しているのは知っているんだが・・・」

 

卸問屋の主人がすまなそうに頭を下げる。これで5軒目。

問屋の他、通常の商店も見たのだが、どこも砂糖の在庫は無かった。

 

店を出て歩き出すが、やはり現実を突きつけられてショックを受けているのか、かなり落ち込んでいる様子のリューナ。耳はぺたんと倒れ、尻尾も萎れて垂れ下がっている。

 

「ちょっと伝手を当たってみようか」

 

そう言うと俺は歩き出す。

 

「えっ? どこか砂糖がありそうなところがありますか?」

 

リューナが期待するような目で俺を見る。

 

「まずは、何が起こっているか確認してからね」

 

そう言うと俺はリューナを連れてある場所へ向かった。

 

 

 

 

 

「なるほど、それで俺のところへね」

 

王都商業ギルドの副ギルドマスター、ロンメルが笑った。

 

そう、俺は王都バーロンの商業ギルド中央本部へ再びやって来たのだ。

そこで、受付カウンターで「副ギルドマスターのロンメル殿に面会したい」と直接申し出た。

隣について来たリューナちゃんが腰を抜かすほどびっくりしていた。

 

リューナちゃんにとっては喫茶<水晶の庭>(クリスタルガーデン)の経営者として商業ギルド東地区に登録して在籍しているものの、中央本部に来ることなどまずない。その上中央本部ナンバー2とも言える副ギルドマスターに直接面会を申し込むなど、想像の彼方の話であった。

 

「すみません、副ギルドマスターへの面会は事前に予約が必要の上、通常は受け付けておりませんよ」

 

すげなくお断りを伝えて来る受付嬢。

 

「うーん、一応ヤーベが面会希望と伝えてもらえると嬉しいんだが」

 

しつこく食い下がってみる。リューナちゃんが心配そうに俺を見ている。

ここですげなく断られるとちょっと立場がない。

 

「ですから! 副ギルドマスターへの面会は無理だと・・・」

 

「ロレインちゃん、先日もう少し仕事は柔軟にってリンダに説教されてなかったっけ?」

 

ロレインと呼ばれた受付嬢の後ろに副ギルドマスターのロンメルが現れた。

 

「副ギルドマスター!?」

 

「後、ヤーベ殿、いや、ヤーベ子爵。出来れば事前にアポを取ってもらえるとありがたいけど。まあ、貴方は今とても忙しいだろうから、アポは無理だとしても、私を呼ぶ際は子爵とアローベ商会の会頭という地位も説明に入れてもらえると助かるよ。優遇するから」

 

「ええっ!? 今飛ぶ鳥を落とす勢いのアローベ商会の会頭様なんですか!? しかも・・・子爵様!?」

 

ロレインと呼ばれた受付嬢は顎が外れるほど驚いている。

 

「え? アローベ商会って飛ぶ鳥を落とす勢いなの?」

 

「いや、何で会頭であるヤーベ子爵が知らないんです・・・」

 

ちょっと疲れた様な表情で突っ込む副ギルドマスターのロンメル。

 

「まあ、お話は聞きますよ。絶好調の商会のトップが会いたいと言っているんですし、お断りする理由はありませんからね。どうぞこちらへ」

 

そう言って前回も話をした部屋へ案内された。

 

 

 

「俺のところへ来たって事は、砂糖の流通について何かあると思ってきたんだよね?」

 

「そう。たまたま品薄に大会が重なっただけなのか、明らかにどこかが買い占めているか、流通を止めているか確認出来ればと思ってね」

 

コンコン

 

ノックされ、扉が開く。

金髪ゆるふわの巨乳おねーさまがお盆にお茶を入れて持ってきてくれた。

 

「ああ。リンダ。ありがとう」

 

「いえ、どういたしまして」

 

前回もリンダ統括と呼ばれていたから、この金髪ゆるふわおねーさまも結構偉い立場にいると推測される。

そのリンダ統括、前屈みで俺の前にお茶を置いてくれる。そうなれば、当然上から第二ボタンまで外したシャツから零れ落ちるかのような巨乳が目に飛び込んでくるわけで。

 

借りて来た猫の様に大人しく横に座っていたリューナちゃんが俺の太ももを抓る。

 

「痛ってぇ!」

 

正直痛くはないはずだか、なぜか気分的に痛く感じる。

 

「はっはっは」

 

温かい目で見ながら笑うロンメル。やかましいわ。

 

「で、どうなんだ? 砂糖は」

 

「うん、砂糖は流通が止められているね。基本砂糖は南のガルガランシアで採れる作物を元に精製しているため、そのほとんどが南から運ばれてくるんだ。そのガルガランシアと王都を結ぶルートの途中にガナードの町があるんだが、この集積地を抑えているのが、この王都でも指折りの商会であるタチワ・ルーイ商会だ。俺の情報ではこのガナードの町に大量に砂糖が保管されており、タチワ・ルーイ商会のキャラバンだけが砂糖を王都へ運んでいるようだ。それ以外の商会に砂糖を卸していないらしい」

 

「それでよく文句が出ないね?」

 

俺は思いっきり首を傾げる。

下手すりゃガナードの町で戦争が起きかねないのでは?

 

「ガナードの町の集積倉庫の大半をタチワ・ルーイ商会で抑えているんでな。売れないものは売れないの一点張りで、自分たちだけが王都に砂糖を運んでいるようだな」

 

「そんな・・・」

 

とても悲しそうにつぶやくリューナちゃん。そんな酷い事をする人がいるなんて・・・と思っているのかな? 純真そうなリューナちゃんには辛い現実かな。

 

「それで、目的は何だろう? 王都スイーツ決定戦の大会に向けて、砂糖の流通を絞って自分たちだけが販売する事によって高値で儲けるのが目的だろうか? それとも、実際に大会に参加する者と組んで、他の大会参加者を妨害するのが目的だろうか?」

 

俺は敵の目的を確認する。儲け主義だけなら、金にものを言わせて砂糖を買ってもいいのだが、それは下策だろうしな。

 

「どうも両方みたいだ。ただ、どちらかと言えば妨害がメインのようだな。タチワ・ルーイ商会がバックアップするレストラン『デリャタカー』のオーナーシェフ、ドエリャ・モーケテーガヤーが大会で優勝する事によって、そこの料理や総菜を優勝で箔をつけて高く売ろうという戦略だろうね」

 

肩を竦めて存外にしょうがない奴らだとのニュアンスを滲ませるロンメル。

 

「なるほどね、よくわかったよ」

 

席を立とうとした俺をロンメルが止める。

 

「少しはこちらも情報が欲しいんだが? ウィンウィンで行こうじゃないか」

 

ニヤリと笑うロンメル。

そういや情報料として金の話しなかったな。

なるほど、俺から情報が欲しかったからか。

 

「俺にアンタを満足させられるような情報があればいいけどな」

 

フフンと笑ってみる。

 

「今朝のバケモノ騒ぎ、あっという間に収まったんだが、あれ、お宅の仕業?」

 

「詳細は王家の発表を聞いてくれとしか言えないが、仕留めたのは俺の身内だよ」

 

「うわあ・・・マジか。こっちの情報だと北門には雷竜サンダードラゴンにワイバーンが十二匹。西門には全長二十メートルはあるギガンテスが、南門には約一万匹の魔物が迫っていたはずなんだが・・・」

 

「うん、全て仕留めた、俺の身内がだけど」

 

隣でびっくりしているリューナちゃん。声も出ないみたい。

 

「王城の屋根に三つ首の竜が出現したって報告もあるんだが・・・」

 

「あ。それ仕留めたのは俺ね。首もちゃんと三本持ってるよ」

 

「あ、そうなんだ・・・。もう何でもありなんだな、ヤーベ子爵は」

 

「え・・・三つも頭がある竜を倒したんですか・・・?」

 

リューナちゃんが<竜殺し>(ドラゴンスレイヤー)たる俺様を見て目を輝かせる。

 

「そうだよ、竜のお肉はおいしいらしいからね。少し分けてあげようか?」

 

「ホントですか!?うれしいです!」

 

「いや、その肉一体いくらするか知ってる・・・? 金貨積み上げたら買えるようなもんじゃないからね? それ商業ギルドに卸してくれないの?」

 

「ええっ!? そんなに高いんですか?」

 

リューナちゃんが驚き、悲しそうな表情になる。

そんな高そうなお肉は分けてもらえないと思ったのだろう。

 

「リューナちゃんにはおいしく料理して欲しいから、多少の量だけど無料で進呈するよ。その代わり一番にドラゴンステーキ定食食べさせてね!」

 

「わ、分かりました!お任せください!」

 

ふんすっと力を入れるリューナちゃん。かわゆし。

 

「うわっ!羨ましいなあ」

 

ロンメルが羨望の眼差しで俺を見る。

 

「リューナちゃんのお店、喫茶<水晶の庭>(クリスタルガーデン)でドラゴンステーキ定食が販売される日を連絡してやるから」

 

「絶対だよ!忘れないでくれよ!」

 

「肉の他だと、アローベ商会で三頭黄金竜

スリーヘッドゴールデンドラゴン

の黄金の皮を使ったハンドバックとか楯とか鎧とか作って売る予定だから」

 

「ええっ!? マジで!?」

 

「うん、鍛冶師のゴルディン師と懇意でね。彼にお願いしていろいろ作ろうと思ってね」

 

「うわ~、アローベ商会マジでヤベェ。ギルドへの売り上げ貢献ありがとうございます!」

 

テーブルに両手をついて頭を下げるロンメル。

アローベ商会からの売り上げの一部が商業ギルドに入って来ることを想像しているのだろう。

 

「ギガンテス、いる?」

 

「へっ? ・・・いや、そりゃ嬉しいけどさ。あの巨人の皮は防具として重宝するんだよ」

 

「冒険者ギルドに卸してもいいんだけど」

 

「いや~~~、このクラスの魔物は超貴重だからね。冒険者ギルドからの卸しよりも直で卸してもらって冒険者ギルドに解体依頼を出した方が圧倒的に儲かるから。ぜひぜひ私に買い取らせてくれたまえ」

 

「え? 副ギルドマスターが買い取るの?」

 

「俺が窓口でって話でね。こりゃいい実績になりそうだ」

 

「副ギルドマスターたるアンタに実績なんて、もういらんだろう?」

 

「いやいや、何事も実績の積み重ねってね!」

 

嬉しそうに揉み手をするロンメル。

 

「急いでいるから後日でいいかい?」

 

「もちろんいいさ。声を掛けてくれればすぐ対応するよ」

 

そうロンメルと約束するとリューナを連れて商業ギルド中央本部を後にした。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。