転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第154話 困っている専属生産者の在庫砂糖を纏めて買い付けよう

「ヤーベ殿! 砂糖の買い付けの前に、ぜひともアローベ商会の品物を我が商会でも取り扱わせて頂けないでしょうか!」

 

早速砂糖をガルガランシアまで買い付けに出かけようかと思ったのだが、アンソニーさんがアローベ商会の品物について取り扱いを希望してくる。

 

「どの商品でしょうか?」

 

「まずは、対戦型バトルゲーム『ゴールド オア シルバー』です! アローベ商会殿では、一見さんがなかなか購入出来ないようで、私共の商会に問い合わせがひっきりなしなんですよ」

 

「あー、コルーナ辺境伯にお店の設立任せちゃったから・・・。多分一店舗だけ?で、知る人しか買えないようなお店?じゃないかなあ、あ、知ならきゃ買えないのは当たり前か」

 

俺は頭をガシガシと掻く。

 

「後、刺又もぜひ取り扱わせて頂きたい! いろんなところから問い合わせが多いのですよ。仕入れられないかって」

 

祈るような手つきで俺に迫るアンソニーさん。

そんなに顔を近づけてこなくても。

 

「まあ、いいですよ、アローベ商会は立ち上げたばかりで販売網を持ってませんからね。対戦型バトルゲーム『ゴールド オア シルバー』や刺又は作り方自体は難しくないですし、販売だけでなく製造許可も出しますよ。ロイヤリティだけで処理して構わないです」

 

「ほ、ホントかね!? それはありがたいが」

 

「実は、三頭黄金竜(スリーヘッドゴールデンドラゴン)を仕留めたのですが、その黄金に輝く皮を使って、ハンドバックと鎧と盾を作って販売するつもりなんですよ」

 

三頭黄金竜(スリーヘッドゴールデンドラゴン)!? で、伝説級の魔獣ではないですか!? その皮で盾と鎧!? ハンドバッグ!? ぜ、ぜひウチでも取り扱わせて頂きたい!」

 

凄まじく前のめりのアンソニーさん。ですから、顔が近いですって。

 

「コッチはこれから製作ですし、とりあえず予約販売で初めて、あとはどれだけ作れるかによるかな?」

 

「ぜひ!ぜひ少しだけでも扱わせて頂ければ!」

 

アンソニーさんが両手を握って上下にハードに振って来る。

 

「じゃあ、とりあえず各一式をお渡しして、店舗に飾ってもらって反応を見てもらいますか。完全注文販売って事で」

 

「おおっ!ありがたい!ぜひともよろしくお願いいたしますぞ!」

 

暑苦しいほど喜んでくれるアンソニーさん。

とりあえず砂糖を取りに行くから、その話はまた後でって事で。

 

「それじゃ、ガルガランシアまで砂糖を買い付けに行って参りますので、買付金と書面を準備お願いしますね」

 

俺は準備出来次第ガルガランシアまでひとっ飛びすることにした。

 

 

 

高速飛翔(フライハイ)>で超高速飛翔移動を行い、一時間足らずでガルガランシアまで到着した。

 

南の町らしくヤシの木っぽい植物が目に付くな。

人々の服装も薄着が目立つ。

 

「さてさて・・・」

 

スペルシオ商会が専属で作付けを依頼している砂糖農家・・・って言い方でいいのか?

とりあえずその辺の人に聞いてみれば、町の南一帯に畑を持つ中々な規模の農家らしい。

 

「こんちわー・・・って」

 

到着した俺は声を掛けようとしたのだが、スッゲー勢いで揉めてた。

 

「なあメリッサ。タチワ・ルーイ商会の保護を受けとけよ。でなきゃもう砂糖は販売できねーぜ?」

 

「うるさいっ! お前らの様なチンピラが農家を語るな!」

 

確かにチンピラにしか見えない男ども六人が一人の女性を囲むようにしている。

威勢よく啖呵を切ったのはメリッサと呼ばれた女性だ。

そしてスペルシオ商会の専属生産者だろうか。俺が買い付けに来た相手だな。

 

・・・思ったより若くね? 結構農家としては大きい畑を持っているようなんだけど。

三十前に見えるよな、あの子。

 

「あんまり調子に乗るなよ? もう首も回らなくなり始めてんだろ?」

 

「ぐっ・・・」

 

メリッサと呼ばれた女性は悔しそうに歯噛みする。

事実なんだろうな。ガナードの町で砂糖を止められていれば、砂糖が現金に変わらない。王都でも困った人たちが増えているだろうが、生産者も迷惑を被っているわけか。

 

「いいからとっとと俺の女になっちまえよ。そうしたらお前にもいい目を見せてやるぜ?」

 

「だっ誰が! 例え飢え死にしても貴様の女になぞなるか!」

 

「ああっ?テメエ下手に出てりゃいい気になりやがって!」

 

そう言ってメリッサと呼ばれた女性の胸倉を掴む男。

 

「ええ?どこが下手に出ていたんだ?」

 

「だ、誰だ!」

 

あ、思わずツッコんでしまった。

 

「いや、こんな脅迫まがいの男の女になっても絶対いい目は見られないってわかるし」

 

「だから、誰なんだよ、貴様!」

 

「うーん、俺が誰でも良くない?」

 

俺は首を傾げる。ここで堂々とヤーベだ!と言っても、結局お前誰だよってなるんだよな。多分。

 

「関係ねえ奴は引っ込んでろ!」

 

そう言って殴りかかって来る六人を一瞬にして叩きのめし、地面に転がす。

 

「がはっ!」

 

それぞれの男たちが呻きながら土の上を転がる。

 

「とりあえず失せてくれ。商売の邪魔だから」

 

「しょ、商売だと・・・?」

 

「はい、これ。スペルシオ商会のアンソニー会頭から」

 

そう言って俺は書面を出す。一緒に金貨が詰まった袋を渡す。

慌ててその書面に目を通すメリッサ。

 

「こ、こんな量の砂糖を!? どうやって運ぶんだ・・・? というか、アンタ一体何者だい・・・?」

 

「俺はアローベ商会の会頭でヤーベと言う。スペルシオ商会の会頭アンソニーさんとは懇意でね。砂糖の買い付けを頼まれただけさ。あまり時間をかけたくないんでね。早速倉庫に案内してくれる?」

 

「ああ、わ、わかった・・・」

 

「ははっ、笑わせるぜ! どれだけ馬車を用立ててもガナードの町は通過できねぇ!無駄なんだよ!」

 

チンピラAが喚いている。俺が倉庫を空にして歩いて帰ったらどんな顔をするんだろうか。まあ、どうでもいい事か。あまりうるさくされるのも面倒くさいし、空になった倉庫の中を知られない様にメリッサにはクギ刺しておくか。

 

俺はメリッサに案内されて倉庫に入る。

倉庫の中には麻袋に詰められた砂糖が山の様に積まれていた。

 

「砂糖を出荷できなくて現金化できないから困窮してしまって・・・」

 

俯くメリッサ。

 

「先ほどの金貨はかなりの量だ。防犯は大丈夫か? しばらく倉庫の中の砂糖を出荷したことは知られないほうがいいぞ。身を守る術が必要か?」

 

「ああ・・・両親を早くに無くしてしまって、広大な砂糖畑だけが残ってしまってな・・・。私には畑を守って行く事しかできない・・・」

 

うーん、とりあえず、チンピラを追っ払って、簡単な力仕事を手伝えるガーディアンを用意するか。

 

俺はメリッサを伴って一度倉庫の裏に回る。チンピラたちは帰ったので俺たちを見ている者はいない。

 

「ベルヒア」

 

「はーい、ヤーベちゃん元気?」

 

もちろん俺の後ろに顕現した土の精霊ベルヒアねーさんはぎゅっと抱きついてくる。

 

「わわっ! な、なんですか・・・この人?」

 

「土の精霊ベルヒアだよ」

 

「よろしくね?」

 

「は、ははいっ!よろしくお願いします、精霊様!」

 

「そんなに固くならなくても大丈夫よ?」

 

「でもある程度固いヤツ作って守らせようと思ってるんだ」

 

「クスクス、じゃあ協力するわね」

 

「いくよ・・・<大地の従者(アースサーバント)>」

 

俺の呪文の行使と共に地面が光り輝き、二十体の<大地の従者(アースサーバント)>が現れる。

身長約一メートル。ずんぐりむっくりの体型だが、土で出来た体は硬く、力持ち。

コイツらがメリッサを守ってくれるだろう。

 

「メリッサ。俺の手を握って。君の魔力をサブマスター登録するから」

 

「へっ!? ど、どういうこと・・・?」

 

呆気に取られているメリッサの手を取り、二十体の<大地の従者(アースサーバント)>にメリッサの魔力でサブマスター登録を行う。

 

「よし、これでこの<大地の従者(アースサーバント)>たちはメリッサのいう事を聞くよ。魔力は大地から吸収して動くから、特にメリッサが何かすることは無いよ。簡単な命令ならメリッサの言う事を聞くから。畑耕したり、重い物を運んだり、チンピラ追い払ったりはコイツラに命令すれば簡単だから」

 

「ど、どうして私にここまで・・・?」

 

「君はスペルシオ商会の専属農家だろ? ピンチでも揺らがずに信義を守る君をスペルシオ商会の関係者である俺が守るのは当然のことだろ?」

 

「え・・・」

 

信じられないという目で俺を見るメリッサ。そんなにおかしいかな?

 

「まあいいや、この倉庫の砂糖、引き取らせてもらうよ」

 

そう言って亜空間圧縮収納に積み上げられた砂糖の全てを回収する。

一瞬にして消える砂糖の袋。

 

「えええっ!?」

 

「引き渡しのサインちょーだい」

 

俺は書面に砂糖引き渡しのサインをもらうと、倉庫の外に出た。

 

「じゃあね、メリッサ。もし困ったことがあったらスペルシオ商会のアンソニー会頭に手紙を出しなよ。ヤーベに相談があるってね。それじゃ、砂糖の生産頑張ってね」

 

そう言うと俺は空中に浮き始める。

 

「<高速飛翔(フライハイ)>」

 

一瞬にして超加速して見えなくなる俺。

きっとメリッサは信じられないものを見た様な表情で俺を見送っているだろう。

 




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