転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第162話 リーナにもしっかりとご褒美を準備しよう

朝食を食べ終えて、食後のモーニングコーヒーを頂いていると、何か違和感を感じる。

 

「ん~~~~?」

 

コーヒーカップを片手に俺は思案に耽った。

 

「どうしたんだ、ヤーベ?」

 

イリーナが心配そうに俺の顔を覗き込む。

 

「うん、何か予定と違うような・・・あ~~~~~!!」

 

「どどど、どうしたヤーベ?」

「ヤーベさん?」

 

イリーナとサリーナが心配そうに俺を見る。

 

「俺、朝食いらないって散歩に出たんだった。なのに普通に帰って来て朝飯食べちゃったよ。いらないって言ったから、てっきり俺の朝食無いのかと思ったけど」

 

コーヒーカップを持ったまま、そう言えば朝飯食べないつもりだったと思い出す。

 

「ほっほっほ、人数が多少前後しても調整するのが執事の役目でございますれば」

 

俺が驚いていると、後ろで筆頭執事のグリードさんが笑っていた。

 

「や、グリードさん、予定がコロコロ変わって申し訳ない」

 

「いえいえ、ヤーベ様はコルーナ辺境伯家の賓客。自由にお過ごし頂いてこその賓客でございますれば。遠慮せず何なりとお申し出ください。予定が変われば、それに合わせますので何のご心配もありませんぞ」

 

「朝食食べずにどうするつもりだったんだ?」

 

「リューナちゃんがやってる喫茶<水晶の庭(クリスタルガーデン)>で朝食を食べようと思ったんだ。何でも一週間後に行われる王都スイーツ決定戦に出場するから、メニューの検討を手伝って欲しいって相談されてたんだ」

 

「ス、スイーツですか!食べたいです!」

 

ルシーナちゃんが食いついてくる。どうも甘い物に目がない様だ。

 

「ヤーベはそのスイーツメニューの検討に手を貸すつもりなのか?」

 

イリーナがじろっと俺を睨むように問いかける。

 

「ああ、頼まれたからね。俺にいいスイーツメニューが閃くかはわからんけどな」

 

「でも、あのバクダン定食でしたっけ? すごくよく出来たメニューでしたよ。安い材料で、しかもあの姉妹の得意料理のコロッケを変化させたような料理だったし」

 

サリーナが俺の料理に太鼓判を押してくれる。ありがたいけど。

 

「また奥さんが増えたりしないだろうな?」

 

腕組みしながら俺を睨むイリーナ。

というか、俺、一度も嫁を増やしたいなんて言ったことないぞ。

君たちでさえ、俺の意見はほとんど入ってませんからね?

 

「リューナちゃんはすごく可愛いですから、仕方ないですけどね。無理はいけませんよ?」

 

フィレオンティーナが妖艶な笑みを浮かべて俺を嗜める。でも、奥さん増員オッケーなんだ。まあ、リューナちゃんだからってこともあるだろうけどね。

 

「午後からの王城での謁見だが、昼飯食べてから行くから、昼飯は早めに用意するよ」

 

フェンベルク卿が予定を伝えてくれる。

 

「王城に行くのは、ヤーベ殿とフィレオンティーナ殿、ゲルドン殿、イリーナ殿、サリーナ殿、そしてルシーナが対象だ」

 

「ふみゅう・・・リーナはお寝坊してお留守番だったでしゅ。頑張ってないでしゅ・・・、みんなと一緒にお城に行けないでしゅ・・・」

 

そう言って目に涙を溜めたかと思えば、すぐにぽろぽろと泣き出してしまう。

 

「リーナは俺たちが出かけた後、しっかりお家でお留守番できたからね。リーナはみんなと同じように頑張ったよ。だから一緒にお城に行こうか」

 

そう言って泣いているリーナをギュッと抱っこしてやる。

 

「ご、ご主人しゃま―――――!!」

 

ふええええ~んと泣きじゃくるリーナを抱っこしながら頭を撫でてやる。

なるべくリーナも同じように行動できるように心を砕いてやらないとな。

 

「フェンベルク卿、ローガ達も今回は一万の魔物を仕留めたという事で大活躍してるわけなんだけど、王城にローガ達を連れて行くわけにもいかないでしょ。なので、リーナにローガ達の褒賞を代わりに受け取ってもらうようには出来ませんかね?」

 

「むう、宰相殿に聞いてみるか・・・」

 

「褒賞額が変わらなくてもいいですから、リーナにローガの分を受け取らせてもらえると助かります。何なら俺が我儘言ってるって言ってもらっても構わないですから」

 

「はっはっは、ヤーベ殿が我儘言ったら、何でも通るんじゃないのかね?」

 

「何でも我儘言うつもりはありませんけどね、リーナだけ仲間外れと言うのはどうしても許容できませんのでね。リーナも大事な家族ですから」

 

「なんとかお願いしてみるとしよう。みんなで王城に行こうか」

 

「うう・・・ありがとうでしゅ・・・うれしいでしゅ・・・ご主人しゃまに買われてリーナは・・・リーナは幸せでしゅ・・・」

 

ぐしぐしと泣きながら俺の胸に顔を埋めるリーナ。

だけど、一緒に王城に行けると分かって、少し笑顔が戻って来た。

リーナにはとびっきりの笑顔が似合うのだ。

 

「さあ、王城に行くのにおめかしして行かなくちゃね。みんなもドレスアップして午前中にしっかり準備するようにね」

 

そう伝えると、俺はもう一度屋敷を出て、喫茶<水晶の庭(クリスタルガーデン)>に向かった。

 

 

 

 

「リューナちゃんおはよう」

 

カランカランと扉を開ける音が店内に響く。

こじんまりとした店舗内はいつ来ても落ち着く雰囲気だ。

丁度最後の客と入れ違いになったのか、現在この喫茶<水晶の庭(クリスタルガーデン)>にはお客がいなかった。

 

「あ、ヤーベさん! 昨日は本当にありがとうございました」

 

「どういたしまして。あれから何か考えた?」

 

「実はあまりいいアイデアがなくて・・・。砂糖がしっかり手に入ったので、一番得意なケーキを作ろうと思っていたのですが」

 

「コーヒーを飲みに来たんだけど、そのケーキ、今あるかい?」

 

「早速試食して頂けるんですね! お願いします!」

 

そう言ってリューナは厨房へ戻って行った。

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

カタリと木の皿に木のフォークを置く音がする。

 

「いかがでしたか?」

 

イチゴが乗ったケーキはおいしいと言えばおいしい。だが、目新しさも無い気がするし、突き抜ける衝撃も無い。これでは勝ちあがれないな。

 

「・・・砂糖はスペルシオ商会が適正価格で今日から販売を再開する。そのため大会には全ての参加者が砂糖を十分に使ったレシピで参加してくると思う」

 

「あ、そうなんですね・・・」

 

少しだけ落ち込むリューナ。

 

「そりゃ、どうせ勝つなら平等な条件で勝った方が気持ちいいでしょ」

 

相手だけ制限が掛かっているような状況で勝っても後からクレームが付くだけだしな。

 

「か、勝つんですか!?」

 

「そりゃ勝つことを目標にするよね?」

 

「そ、そうですけど・・・」

 

「確か、予選で一品提出して、上位十名が決勝に行くんだっけ?」

 

「そうです」

 

「決勝は三品だっけ?」

 

「はい」

 

「予選は、蜂蜜とバタールをたっぷり使ったパンケーキで勝負しよう。砂糖は逆に無しだ。蜂蜜は素晴らしい状態の物が多分手に入ると思う」

 

「蜂蜜ってなんですか?」

 

「ああ、花の蜜を集めた・・・

 

「午後から王城で王様に謁見しなくちゃいけないから、これで今日は帰るけど、明日には蜂蜜を手に入れて来るからね」

 

「ありがとうございます・・・って、今日午後王様とお会いになるのですか!?」

 

「あ、うん。伯爵に陞爵するんでね。その式典みたいなもんかな?」

 

「えええ!! ヤーベ様・・・伯爵様になられるんですか!?」

 

リューナは穴が開くほどヤーベを見つめた。

伯爵様御用達のお店・・・ちょっとカッコイイかも・・・などと思ってしまったことは内緒にしようと誓うリューナであった。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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