転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第166話 貴族の叙爵を受けた理由を話してみよう

「それにしても・・・ヤーベは普段温厚でとても優しいのだが、たまにすごくキレる時があるのだな?」

 

王城の廊下を歩きながら、イリーナが呟く。

 

「うーん、自分の大事な人たちに悪意が向くとどーもね・・・」

 

日本にいた頃はいろんな事に諦めていたり、見ないふりをしたり・・・、まあ、波風立たない様に生きようと思っていた。異世界に来た今でも、その性根は変わっていないと思っている。

だけど、この世界は悪意があまりにも直接的すぎる。暗殺者然り、貴族の圧力然り。

自分を強く保ち、いつでも対処できるようにしないと、相手がどんどん付け上がり歯止めが利かなくなってしまうような気がする。日本では「法律」という縛りがきつかったため、抑止力が働いていたように思う。だが、この異世界は油断すればあっという間に命が無くなってしまう。自分が油断したり、弱気になったりして大切な存在を失う事になったら悔やんでも悔やみきれない。それなら、自分自身が大切な人たちを守る抑止力になればいい。

調子に乗った敵を圧倒的力で叩き潰し、二度と俺にケンカを売って来ないほど強くあらねばならないと、そんな義務感にすら襲われる。

 

・・・ちょっと疲れているかな? 悪意に晒されるとストレス溜まるよね。

バオーカとか、プレジャー公爵とか、ゴルドスターとかね。

 

 

「わたくしたちのために立ち向かってくださること、とても嬉しいですわ。でも、無理はなさらないでくださいね?」

 

フィレオンティーナが俺の左腕を取って胸を押し付けて来る。ビバビッグマシュマロ!

 

「あー、フィレオンティーナさん抜け駆けですー!」

 

ルシーナが抗議の声を上げる。

 

「うふふっ!早い者勝ちです!」

 

そう言って走って来て俺の右手にガッチリと抱きついて来たのは、まさかのカッシーナ王女であった。

 

「うおっ! カッシーナか、どうした? また勝手に来ると怒られるぞ? 国王か王妃かレーゼンに」

 

「んもうっ! 私の事わかりすぎですねっ! さすがヤーベ様、でも今回はちゃんと許可をもらって来ましたよ」

 

「許可貰って来たの!?」

 

俺は目を白黒させる・・・スライムだけど。

 

「ハイッ! だって、これから王都のお屋敷を皆さんで見に行くんですよね? 私だってヤーベ様と結婚したら一緒に住むんですから、ぜひ皆さんと御屋敷見学に行きたいですもの」

 

ああ、そうか。王都の屋敷は結婚したらカッシーナも一緒に住むのか。

・・・んん?

 

「カッシーナは王女として王都に常にいないとダメなのか? 落ち着いたらカソの村の畔の泉に帰ろうかと思っているんだが?」

 

「もちろんヤーベ様にずっとついて行きますよ? それに、コルーナ辺境伯と打ち合わせが必要ですが、ヤーベ様に用意される伯爵領はコルーナ辺境伯家の北西になる予定です。大変申し訳ないのですが、コルーナ辺境伯よりもさらにキツイ開拓地になる様な場所とのことです」

 

申し訳なさそうに俯きながら教えてくれるカッシーナ。

 

「いや、その方がありがたいよ。現在町が発展している所なんて、自分の領地に貰ったら周りの貴族に恨まれる事間違いなしだからね」

 

「本当はプレジャー公爵の領地を全てヤーベ様に任せて頂けるようにお父様にお願いしたのですが・・・」

 

「いや、領地経営のド素人に公爵領任せちゃダメだから!」

 

「えー、ヤーベ様なら絶対町を発展させられると思うのですが・・・。今でもアローベ商会でヒット商品を連発されてますよね?」

 

「いやカッシーナよ。たまたま商会の商品が当たっただけで、領地経営がうまくいくとは限らないから」

 

「そうでしょうか・・・」

 

「で、プレジャー公爵の領地は王都直轄になるのかい?」

 

「そうです。よくわかりましたね?」

 

カッシーナが俺の右手を抱えたまま首を傾げて見上げて来る。

 

「この前会ってみて分かったが、四大侯爵家はたぶん領地経営に向かないかな。ドライセン公爵領は東に結構広いから、そうなると任せる貴族がいないんだよね」

 

「はあ・・・王都に来られてまだ数日ですのに、よくわかりますね」

 

カッシーナが俺の話に感心する。

 

「まあ、カッシーナと結婚するために貴族にならないといけなかったからね・・・。叙爵後にトラブル勃発しても困るから、いろいろ調べたり勉強はしたけどね・・・」

 

大半はヒヨコの情報ですけどね!後は王城とかのトークで判断してます。

 

ピタッ。

 

カッシーナの足が止まるので、俺まで引っ張られる。隣で俺の左手を抱えていたフィレオンティーナもつんのめる。

 

「ど、どうしたカッシーナ?」

 

俯いたまま止まったカッシーナ。

不意に顔を上げる。

カッシーナの顔は真っ赤に染まっていた。

 

「わ、私と結婚するために、断っていた貴族の叙爵を受けてくださったんですか・・・」

 

頬を染めてウルウルしているカッシーナ。

 

え? あ? 俺、なんか恥ずかしい事言っちゃったかな・・・?

 

「まあ・・・、君を攫うと間違いなく問題になるし、リヴァンダ王妃も降嫁の条件は伯爵になることだって言ってたからね・・・まあ、頑張った?感じかな?」

 

ちょっとしどろもどろになる俺。何か照れる。

 

「いや、頑張りすぎだろう? 男爵に叙爵後、二日で子爵、四日で伯爵なんて聞いたことないぞ・・・」

 

背後でイリーナがあきれ気味に嘆息する。

 

「いや、それこそ俺も狙って働いたわけじゃないからね? たまたま王都がピンチになっただけだからね?」

 

俺は頭をフルフルする。

腕はカッシーナとフィレオンティーナに抱えられているので手を振ったりできないのだ。

別に俺が企んだわけじゃない。

企んだのはプレジャー公爵であり、たまたま教会に悪党が巣食っていたのを掃除しただけのことだ。

 

「旦那様は本来貴族になりたくないとおっしゃっておられましたものね。正しくカッシーナ王女のためだけに旦那様は貴族になられたわけですか」

 

さらに追い打ちをかける様にフィレオンティーナがカッシーナを覗き込みながら言う。

ニシシと笑っているようだ。

さらに顔を真っ赤に染めて俯くカッシーナ。

 

「もうもうっ! 私を嬉しがらせてどうするんですかっ!? 何も出ませんよっ!」

 

顔を真っ赤にしたまま、俺の腕を抱きしめたまま歩く足を速めていく。

 

「早くお家を見に行きましょう!」

 

腕を引っ張ってずんずんと廊下を進んで行くカッシーナを俺は可愛いと思った。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
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