転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第173話 スイーツの自信作で予選突破を狙ってみよう

「マジで妨害行為があったんだよ!何者かが忍び込んで準備してあった料理材料をダメにしたんだ!」

「ウチもやられたぞ!」

「俺もだ!」

 

数組の参加者たちが、運営者のいるテントに詰め寄っている。

どうやら、妨害者に材料をダメにされたか?

 

「いやいや、うるさいですな」

 

「なんだとっ!」

 

運営に詰め寄っている連中の後ろから偉そうに声を掛ける男がいた。

やたらに長くて白い帽子をかぶった男だ。どう見てもザ、シェフって感じだな。

 

「自分たちの管理が不十分なのを運営に文句をつけるとか、見苦しいにも程があるな」

 

「き、貴様ッ!」

「お前・・・高級レストラン『デリャタカー』のオーナーシェフ、ドエリャ・モーケテーガヤーか」

「もしかして貴様の仕業か!」

 

ほう、あのいけ好かないブーメラン髭のザ・シェフがドエリャ・モーケテーガヤーか。タチワ・ルーイ商会と組んでるという。

 

「おいおい、なんの話だ? 俺は運営に文句を言っているお前たちが見苦しいという話をしているんだぞ?」

 

「貴様ッッ!!」

 

「いい加減にしてください!」

 

ついに運営側の人間も対応してきたか。

 

「何があったか知りませんが、王女の前ですよ!それもエルフブリーデン公国の公女様も教会の最年少枢機卿様も聖女様もいらっしゃっているんですよ!騒ぎを起こさないでください!」

 

聖女はともかく、他の重要人物の前で国のイベント中に揉め事を起こすなと。

気持ちはわからんではないが、話も聞いてくれないとはいささか冷たいな。

だが、事前準備の妨害を自己防衛するのもまあ大事なファクターの一つと言えない事も無い。

 

しぶしぶ自分のブースへ戻って行く参加者たち。

嫌らしい笑みを浮かべて勝ち誇ったような表情のドエリャ。あの表情だけでギルティー間違いなしだが。

 

 

 

 

「ヤーベさん、魔導ホットプレート、暖まって来ましたよ」

 

嬉しそうに鉄板の状態を報告してくるリューナ。

まあ、大会が終わったらこの魔導ホットプレートをプレゼントするって言ってあるから、使いこなせるようになるのが嬉しいのだろう。喫茶店のメニューも幅が広がるって言って喜んでたし。

もちろん、この魔導ホットプレートはリューナちゃんにあげちゃうので鍛冶師のゴルディン殿に追加発注してある。慣れて来たら大量生産してアローベ商会で販売するって伝えてあるし、魔道ホットプレートだけでなく、タコ焼き用の丸い半円の穴が開いた鉄板の試作もお願いしている。

・・・尤もこの世界でタコが食べられているか知らないけど。というか、海産物を見たことないな。だいぶ内陸なのか、海の話も聞いたことないし。いい加減、世界の地理と常識のお勉強を進めなければならないかもしれないな。

 

「早速、森のバターを鉄板に引こうか」

 

「はいっ! バタールでいいですよね?」

 

「ああ、そうだね、バタール」

 

俺が森のバターと言ったのは、バタールという木になる果実の事だ。

この世界で牛をまだ見ていないので乳製品があるかどうかわからないのだが、偶然にも喫茶<水晶の庭(クリスタルガーデン)>でモーニングを食べた時にパンに塗ったバターのような物が「バタール」と呼ばれる木の果実であり、見た目はアボカドのような実であった。

だが、中を割ってみると、正しく新鮮なバターそのものの果肉があり、味も一級品のバターと言って遜色なかった。そのため、即採用したのだ。

 

「まんべんなく引いたら、ホットケーキの元を鉄板に引いてくよ。その前に最後のひと手間。マヨネーズを入れてよくかき混ぜてね!」

 

「はいっ!これでとってもふっくら膨らむんですよね!びっくりです!」

 

嬉しそうにマヨネーズを入れてまぜまぜするリューナ。尻尾もフリフリしている。

マヨネーズを混ぜるとホットケーキがふっくらふわふわに仕上がる、と言うのは地球時代テレビで見た裏技か料理知識だったか、そんなものだ。だが、実際テストしたら倍以上ふっくら加減が違った。地球時代試したことが無いので何とも言えないが、異世界のバタールはパワーがあるのかもしれない。

 

「一枚一枚丁寧に焼こうね。その前に輪っかをセットしてね」

 

「はいっ!」

 

今回は大会なので勝負だ。ならば見た目も大事だろう。これも鍛冶師のゴルディン殿に作ってもらったホットケーキの型用の輪っかだ。この輪っかの内側に生地を流し込むことにより同じサイズのホットケーキを作ることが出来る。三段くらい綺麗に重ねて、バタールと蜂蜜をたっぷりかける。

 

実はマヨネーズという秘策とともに、この蜂蜜も切り札の一つだ。

この王都では蜂蜜の流通が無い。

蜂蜜自体まるっきりとれていないのだ。

 

だが、偶然ローガ達が出向いてダークパイソンを狩り尽くしたあのバハーナ村には自然の蜂の巣から蜂蜜が取れる事を知っている狩人がいて、蜂蜜の存在を知っていたのである。

 

そこで早速俺様は夜中に文字通り飛んでバハーナ村へ移動、朝一に狩人の元を訪れ、その蜂蜜採取をしてきたのである。その上で村長やローナ、ロドリゴといったメンツも巻き込み、養蜂と言うビジネスを持ち掛けた。アローベ商会で専属契約を行い、うまくいけば蜂蜜を高値で買い取ると契約して、その手付の金貨を山の様に置いて来た。村長は謎の踊りを踊り出すほど喜んでいた。ローナに分量の管理責任者をお願いして、ロドリゴには実際に巣を作ったりする若い作業員を見繕ってもらうように指示してきた。

 

軌道に乗ればスイーツ革命が起こるかもしれない。何せ蜂蜜と言えば、デストロイな某魔王様も手なずけてしまう程の破壊力があるからな!

 

「わ~~~~、膨らんできましたよ!」

 

鉄の輪っかからはみ出さないホットケーキは上方にぷっくりとふわふわに膨らんでいく。これを三段に重ねたら相当な迫力だろう。

 

「一度ひっくり返そうか」

 

「はいっ!失敗しない様に・・・」

 

もうある程度固まって来たので、輪っかを外し、ヘラでフワフワのホットケーキをひっくり返す。

 

「うまく出来ました!」

 

最初はヘラの扱いに慣れなかったリューナも今はずいぶんと上達してきた。これならお好み焼きも行けるかもしれないな。

 

「さ、焼けたホットケーキはこの皿に置いて。これなら同時に二枚焼いても問題ないだろう。次は一度に二枚焼こうか」

 

「はいっ!」

 

そして完成した三枚のホットケーキを皿に重ねる。

重ねる前に熱々の状態のホットケーキ一枚一枚にたっぷりとバタールを塗るのも忘れない。

その上で一番上にバタールの欠片を置き、熱でじんわり溶けて来たら、たっぷりの蜂蜜を上からかけてやる。

 

ちなみに名称をホットケーキにしたのは、パン自体が普通に販売されているので、パンケーキよりは完全に新しいスイーツとしてのイメージが付きやすいと思ってホットケーキの名を選んでいる。

 

これで、王都スイーツ大会の予選突破を狙う喫茶<水晶の庭(クリスタルガーデン)>特製『リューナのホットケーキ』、三段重ねの完成だ!

 




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