転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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大変お待たせいたしました。
更新に間が開いてしまい申し訳ございません。
本日からしばらく連続投稿できると思いますのでお付き合いいただければと思います。


第175話 決勝で戦うためのとっておきの調味料を手に入れよう

予選突破者十名が発表される。

トップ通過のリューナだが、二位通過はあのレストラン『デリャタカー』のオーナーシェフ、ドエリャ・モーケテーガヤーである。前評判が高かったし、なにより腕は確かなようだ。

先ほどの発表時はすごい勢いでこちらを睨んでいた。

 

発表が終わり、カッシーナ王女より、教会サポートのもと、王都の孤児院の子供たちを招待して、予選を戦った参加者たちのお菓子の残りを食べてもらおうという企画の発表があり、子供たちが参加者ブースに案内されてくる。その数百二十名以上。大会の参加者以上にたくさんの子供たちが集まっている。それでも王都全体からすればわずかな人数しか呼べていないだろう。だが、それでもやらないよりやるべきだと俺はカッシーナを説得した。

 

そして魔道マイクを持ったスタッフが子供たちを案内しながら、予選で作ったお菓子を食べさせる。実は参加者はプロの職人が多い。そのため、自分たちのお店を持っていたり、どこかのお店で実際働いている者たちが多いのだ。

 

そこで、予選を突破できなかった者たちも、残りのお菓子を子供たちに食べてもらって、おいしいと喜んでもらう姿を観客に見てもらいながら、魔道マイクでスタッフがインタビューを行い、お店の紹介やお菓子の説明などを参加者に聞いて回ることにしたのだ。

 

まあ、参加者たちのお店の宣伝を兼ねているということだ。腹ペコの子供たちがおいしいおいしいとお菓子を食べる姿を見せられれば、甘いもの好きならば余計に食欲をそそられるだろう。そこへお店とお菓子の情報を流してやることにより、購買意欲を煽るのだ。

少しでも参加者に得になるように、また大会に参加することに前向きになれるような配慮でもある。いろんなイベントごとは皆が幸せになるべきだ・・・が俺の持論でもあるのだ。

 

 

 

 

 

「「「「「カンパ~~~~~イ!!」」」」」

 

ここは喫茶<水晶の庭(クリスタルガーデン)>。

王都スイーツ大会の予選突破をお祝いしてリューナのお店に俺と奥さんズとリーナが集まっていた。予選終了後、屋敷に帰ってきた俺に奥さんズの面々から「あのホットケーキを食べてみたい!」と喧喧囂囂の要請があった。大会終了後にはホットケーキをメニューに出すと宣伝したことだし、材料なんかも大量に仕入れたことだから、練習を兼ねてホットケーキを焼いてもらえるかとリューナにお願いしたところ、ホットケーキだけではなく、予選突破のお祝いもかねて食事会を開きましょうとリューナに逆にお誘いを受ける形になってしまった。

 

お店自体は王都スイーツ大会に参加するため、今日一日を臨時休業にしている。決勝進出が決まってホッとしていることだろう。明後日の決勝はもとより、明日一日も臨時休業で決勝のレシピ考案とスイーツつくりの時間を取るべきでは?と伝えてはみたのだが、リューナちゃんはできれば休みを少なくしてよく来てくれるお客さんのためにお店を営業したい、とのことだった。お店を終わってから夜に決勝レシピのスイーツを練習するつもりなのだ。

睡眠時間を削る以上、体力なども心配だ。俺様特性のブースト薬と魔力活性のツボマッサージを準備しておこう。他意はない。そう、他意はないのである。大事なことだから二度言おう。

 

早速リューナは予選を突破したホットケーキの準備に取り掛かっている。

 

「おいおいリューナ。折角こんなに御馳走を並べてくれたんだ。一緒に食べようじゃないか」

 

「つまみ食いしながら作りましたから、大丈夫です。それより、たくさん食べてくださいね!」

 

その言葉を真に受けているのかどうか、イリーナなどは最初から遠慮がない。

 

「素晴らしくウマイじゃないか! ヤーベはこんなおいしいご飯が食べられるお店を我々に隠していたのか!」

 

貴族の令嬢とは思えぬがっつき具合でモリモリと食べ進めているイリーナ。

 

「ほんとですね!この素晴らしいお店を秘匿しているとは・・・これは奥様会議で懲罰モノですよ?」

 

ルシーナも魚のムニエルのような料理をもきゅもきゅ口に頬張りながら文句を言う。

奥様会議・・・あな恐ろしや。近寄るべきではないだろう。

 

「すっごくおいしいです! パーティの食事もいいですが、私はこういった料理の方が好きですね!」

 

サリーナも鳥料理を口に運び大絶賛だ。やはり貴族の凝ったような料理よりは、素材を生かした家庭料理のようなリューナの味付けの方を好んでいるようだ。

 

「実はわたくし、旦那様と王都で再開した際にこのお店に旦那様と初めて訪れて朝食をご馳走になったんですの。良き思い出ですわ。旦那様とわたくしの初めてのデートはこの<水晶の庭(クリスタルガーデン)>での朝食なのですから」

 

「「「えええ~~~!いいな~~~!」」」

 

イリーナ、ルシーナ、サリーナがそろって声を上げる。

いや、フィレオンティーナよ、あの時はお前の護衛でついてきていた冒険者パーティ<五つ星(ファイブスター)>の連中もいたじゃないか。二人っきりじゃないぞ?

 

「ふおお~~美味でしゅ! 美味なのでしゅ~~~~!!」

 

ナイフとフォークを振りかざして喜んでいるのはリーナだな。

誰だ? 美味とか難しい言葉を教えたのは? 俺か?

 

「お口に合ってよかったです。いっぱい食べてくださいね!」

 

リューナの手料理に大満足の奥さんズ。もちろん俺もだし、実はヒヨコの何匹かはリューナの護衛のためここにおり、ご相伴に預かっているのだ。役得だな、お前ら。

 

 

そして、ご馳走を頂き、人心地着いたところで、まさしく本日の主役が登場する。

 

「ハイ! ヤーベさん直伝のホットケーキですよ~」

 

「「「「「わあああああ~~~~~」」」」」

 

奥さんズとリーナが目を輝かせて食い入るようにホットケーキを見つめる。

 

「さあどうぞ!」

 

「いっただっきま――――す!!」

 

俺の教えた「頂きます」が奥さんズの中でプチブレイク中だ。

リューナが「?」の表情だったので、一応意味を教えておく。

 

奥さんズとリーナは一斉にホットケーキを切り分けてたっぷりバタールと蜂蜜がかかった部分を一口頬張る。

 

「「「「「甘~~~~い! おいし~~~~い!」」」」

 

みんな満面の笑みだ。

 

「ふおおっ! これは神の食べ物でしゅ!きっとご主人しゃまは神様でしゅ!」

 

いや、リーナよ、俺は神様じゃないぞ? ん・・・? 神様、ちょっといいかもしれないな。万が一の時はそれでいくか。決勝でどんな妨害があるかわからんからな。

万一このネタでうまくいったらリーナが殊勲賞だな。

 

 

 

「いや~~~実においしかった!」

 

ぽんぽこぽんに膨れ上がったお腹をさすりながらイリーナがイスでぐったりしている。

食べすぎだっての。

ホットケーキはカロリーなかなかありそうだからな、体重が増えて叫び声をあげても知らないぞ?

 

「それで、ヤーベさん。決勝のレシピはどうしますか?」

 

リューナもテーブルにつき、食後のコーヒーを配ったところで決勝のスイーツのレシピについて相談を始めた。

 

うん、二つはもう決まっている。もう一つも決めた。ただ、最後の一つはリューナには再現できないレシピだ。ただただ、相手を倒し勝つためだけのレシピ。反則と言われても仕方ないレベル。だが、相手が何をしてくるかは不明だ。準備だけはしておこう。

 

「一つは『バニラアイス』だ」

 

「バニラアイス、ですか・・・?」

 

「うん、この名前を使うかどうかはわからない。試作したものがあるから食べてみて」

 

そう言って俺は事前に試作したバニラアイスモドキを皿に乗せて配っていく。

この魔導冷蔵庫も決勝の舞台に持って行かないとな。

 

「冷たくておいしい!」

「不思議な触感です!」

 

初めて食べるバニラアイスは概ね好評のようだが・・・。

 

「とても素敵なスイーツだとは思いますが・・・」

 

フィレオンティーナは少し不満があるようだ。やっぱり。

 

「そうですね・・・冷たくておいしいですが、コクが足りないといいますか、食べ応えが薄いといいますか・・・」

 

リューナも少し首をかしげる。

 

そうなんだ、牛乳や生クリームが見つからないから、似たような代役の品で試してみたのだ。砂糖だけは品質のいいものがたくさんあるしな。

だが、圧倒的にコクが足らない。どっしりとした濃厚な味が出ないのだ。

これは代役の品が植物性のさらさらしたような材料だったからだろうとは検討をつけている。だが、栄養たっぷりの乳牛のお乳のような牛乳から作る生クリームなど今から探しても難しいだろう。

 

それに、アイスに変化球的なタレを考えていた。

思い出したのは地球時代、テレビで見たアイスに醤油をかけて食べていた光景だ。

醤油のしょっぱさがアクセントになること間違いなしなのだが、なにせ米や醤油のような日本食に巡り合っていない。

 

「・・・あれ?」

 

どこかで、何かが引っ掛かる。脳内の記憶に何かが引っ掛かっている。

 

「ああ~~~~~!!」

 

俺は大声をあげてイスから立ち上がった。

 

「ど、どうしたヤーベ?」

 

びっくりして俺を見るイリーナ。他のみんなも俺を見ている。

 

「あったよ! 醤油が! イリーナと一緒に食べたんだ!」

 

「え?え?え? 何の話だ?」

 

「何を一緒に召しあがったんですの?」

 

フィレオンティーナが興味深そうに聞いてくる。

 

「チャーハンだ! 城塞都市フェルベーンの大通りにあった小さな食堂! 親父さんが一人で切り盛りしてた小さな店だったが、食べたのは紛れもない、チャーハンだ! お米と醤油を使っていたじゃないか!」

 

「ああ。ヤーベと私がフェルベーンの街中を逃げ回っているときにお腹がすいたので立ち寄ったお店だったな。確かにあれはうまかったな! 醤油?というのか? あの香ばしい香りは何やらお腹が空いてくるような感じだったぞ」

 

イリーナも思い出すように感想を述べる。というか、頭の中で思い出していそうだな。

 

「よし!明日の朝一番で城塞都市フェルベーンに行ってくる! リューナちゃんはもう一品のレシピの内、重要な工程を教えるから、お店の合間で練習しておいて」

 

俺は力強く宣言する。

 

「は、はいっ!」

 

決勝戦二品目の練習と聞いてリューナも気合が入る。

 

「ですが、いいのですか? 決勝戦前日ですので、もしかしたらリューナちゃんやお店に敵が何か妨害を仕掛けてくる可能性も・・・」

 

フィレオンティーナが心配する。

 

「そうなんだよな。一応ヒヨコたちの護衛に、店の周りはローガの部下に何匹か見張らせるよ。だけどお店の中はなぁ・・・」

 

「わたくし、明日一日で良ければウェイトレスとして働きましょうか?」

 

フィレオンティーナがまさかのウェイトレス役を進言してくる。

 

「マジか!? それならとてつもなく安心できるが・・・いいのか?」

 

「もちろんですわ!旦那様のご心配を取り除くのがわたくしの役目ですから」

 

にっこりと笑うフィレオンティーナ。女神か。

 

「あ、リューナさん、お昼の営業の後のまかないはホットケーキ5段重ねでお願い致しますわ!」

 

まかない狙いかよっ!

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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