転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

204 / 332
第178話 ミノタウロス達に食事を御馳走しよう

「ミノタウロスの乳ね~」

 

俺はタイゾーのオッサンから教えて貰った場所に向かって空を飛んでいる。

城塞都市フェルベーンから北、森林と岩山が広く続いている。

 

岩山の麓、森の奥にミノタウロスだけの集落を作って生活しているらしいのだが・・・。

 

「彼女たちは非常に貧しく苦しい生活を強いられている。お前さんなら何とか出来るかもしれないな。ぜひ彼女たちを救ってやってくれ。タイゾーの紹介だと言えはわかるだろう」

 

そんな事を言っていた。

それにしても、ミノさんを「彼女」って。

やっぱりメスが乳を出す、というわけか。

 

タイゾーのオッサンはラノベを読んでないから、逆にコミュニケーション取れる相手はすべからく平等、って感じで捉えているのかもしれない。

この世界の亜人の扱いがまだよくわからないんだよな。

この辺りも一度国王様に国の指針を確認しないといけないかもしれない。

何でもかんでも助けてたら、国としては国民として認めない種族とかがいたら大変だ。

 

 

 

森の中に、僅かに切り開かれた場所を空から見つける。

 

「あのあたりか?」

 

俺は空から地面に一気に着陸する。

 

「きゃああ!」

 

「ん?」

 

いきなり俺が空から降って来たから、驚かせてしまったようだ。

 

「ああ、驚かせてすまないね、俺はヤーベって・・・」

 

振り向いて、固まる。

驚いて、桶に野菜らしきものを入れていたのだろうか、それもひっくり返って転がってしまっている。尻餅をついて地面に座り込んでしまった「女性」。

 

(めっっっちゃくちゃカワイイじゃん!)

 

ちょっと大柄な少女だ。尻餅をついて、地面にも手を付いている。

ウェーブが掛かった赤毛はとても柔らかそうだ。

よく見ると、頭に牛のような角が左右に二本生えている。

 

それ以外は全然人間と変わらな・・・くはないな。

下半身は牛っぽい。

足が蹄のようだ。よく見れば、尻尾もあるな、牛っぽいやつ。

 

北千住のラノベ大魔王であるとともに、コンピューターゲームも一通り楽しんできた俺からすると、ミノタウロスってのは二足歩行の完全な牛であり、とんでもなくデカイ戦斧を振り回して「ブモ―――――!!」って問答無用で襲い掛かってくるイメージだったんだが。

 

・・・それにしても、デカイ! 爆乳だ。さすがにミノタウロス! もはやこれはモンスター娘と言っても過言ではない!と言うかそうしか言えない気がしてきた。

 

「あ、あの、どちら様でしょうか・・・?」

 

おずおずと俺が誰か聞いてくる女の子。

 

「ああ、すまない。俺はヤーベ。タイゾーのオッサンに君たちがここで苦労しながら住んでるって聞いて、何か出来ないかと思ってね」

 

そう言って手を伸ばしてやる。

俺の手を掴んで立ち上がった少女は・・・俺より頭一つ大きかった。

190はありそうだな。

 

「ヤーベさんと仰るんですね。タイゾーさんのお知り合いなんですね。わざわざ来てくださってとても嬉しいです!」

 

とっても素敵な笑顔を見せてくれる女性。

 

「なんだ? どうしたんだミーア」

 

そう言って別の女性がこちらへ歩いてくる。

褐色の肌の女性だが、やっぱり頭に角が二本生えていて、下半身は牛の脚、尻尾も牛さん仕様だな。そして、ミーアと呼ばれた女性を上回る爆乳なり。

 

「チェーダ、こちらヤーベさん。タイゾーさんのご紹介でこちらに来ていただいたんですって」

 

「うん? タイゾーのオッサンの紹介か。何の目的でここへ来たんだ?」

 

チェーダと呼ばれた女性。2mくらいあるな、身長。そして間違いなく胸は1mを超えているだろう。

 

「ああ、実はね・・・」

 

「「「うわ~ん!」」」

 

「チビども!泣くんじゃないよ!」

 

厳しい!スパルタ教育だな、おい。

 

「ごめんごめん、この子達、お腹空いちゃってて・・・」

 

「マカン、野菜の残りは無いのか?」

 

「ニーンジンなら少しはあるけど・・・」

 

「「「お肉食べたい~」」」

 

「我儘言うんじゃないよ!」

 

チェーダが大きな声を出すと、子供たちが一層泣き出す。

 

「ああ~、もう! 少し狩りに出るか」

 

「チェーダ、大丈夫? 貴方この前も魔獣に襲われて左腕噛まれてうまく動かないままになってるでしょ」

 

ミーアがチェーダを心配しているようだ。

 

「しょうがないじゃないか、オレが一番ガタイが良くてパワーがあるんだから」

 

「すまない、ここの村は女性のミノタウロスしかいないのか?」

 

「ああ、どういうつもりだ、テメエ!」

 

「ちょっと、やめなよ、きっとタイゾーさんと同じ理由かもしれないよ?」

 

怒り出したチェーダをミーアが止める。

 

「ええっと・・・どういうこと?」

 

「ミノタウロスって種族・・・ご存知でしょうか?」

 

ミーアが真面目な顔で俺を見る。

ラノベ知識でいいんだろうか?

 

「えっと・・・、筋骨隆々の肉体に牛の下半身と顔を持つ戦士のような感じ・・・?」

 

俺は少し首を傾げながら答えた。

 

「そうですね・・・大体あっています。ミノタウロスの雄ですね」

 

「そうすると・・・雄はめっちゃ魔獣っぽいのに、雌はって言うか、女性は君たちのような超美人ばっかりなの?」

 

「えっ!? わ、私たちが美人・・・」

 

急に顔を、真っ赤にしてクネクネ照れだすミーア。

 

「オレたちはミノタウロスハーフなんだよ。大半は人間のお袋がミノタウロスに無理やり襲われたりして出来ちまった子供ばかりさ。そんな子供は生まれてすぐ森に捨てられちまう。

そりゃそうだよな。頭に角があって下半身がこんな牛なんだぜ? 無理矢理襲われたお袋だって化け物の子供を育てようとはしないはずさ」

 

「・・・・・・」

 

如何にもそんなこと普通の事だろ、みたいに説明するチェーダ。

確かに、ミノタウロスの雌って、あんまり聞いたことない。

だけど、ここにいる子達が、全て望まれないで生まれてきた子達だなんで・・・。

 

「君たちは綺麗だ。本当に素敵だと思う。だからってわけじゃないけど、君たちがずっと辛く苦しい生活を強いられるのはちょっと俺的に許容できないよ」

 

「じゃあ何か! オレたち全員をお前が面倒見てくれるってのか! ここには小さな子供たちを含めて三十人以上いるんだぞ! 碌に畑も耕せないし、碌に雨露を凌ぐ家だって作れないんだ! 毎日毎日、いつかお腹いっぱいご飯が食べられたらいいねって夢を語りながら、その日を何とか生き延びるんだ! お前にそれが分かるのか!」

 

右手を俺に突き付けながら涙を流すチェーダ。左腕を痛めているのか、左手が動かないようだ。

 

「なんだ、オレたちが綺麗だとか言っているが、オレたちを囲うつもりか?オレたち全員を面倒見てくれるなら、オレはお前の妾にでも何でもなってやるよ。だけど、子供たちには腹一杯食べさせてやって欲しいんだ・・・」

 

止めどもなく涙を流しながら俯くチェーダ。本当に辛く苦しい生活だったのだろう。父親が魔獣で、母親に捨てられ、誰にも頼れない中生き延びていく。

一体彼女たちが何をしたというのだろうか。やはり、この世界の神だか女神だかは仕事を碌にしていないらしいな。

 

「ああ、頑張ったなチェーダ。お前は本当に今までたくさん頑張ったな。だからもうお前はこれからたくさん幸せになっていいんだぞ? お前だけじゃない。ここに居るみんなは全員幸せになる権利があるんだ」

 

そう言いながらチェーダを抱きしめて頭をギュッとして撫でてやる。

 

「う、ううう・・・うわあああああ」

 

大きな体でぎゅっと抱きついてくるチェーダをしっかりと抱きしめてやる。

そして左手の怪我をしている部分に手のひらを当てて、スライム触手で傷を治していく。

 

チェーダが号泣しているので、何事かと大勢のミノタウロスハーフの女性が集まって来た。

誰も彼も超美人で超巨乳だよ。

ぱっと見、五人くらい小さな子供がいるが、その子達はさすがにまだぺったんだ。逆にペったんじゃなければ変な事案が発生しかねない。

 

「よし、まずは腹ごしらえだな!」

 

そう言ってまずは屋台で買い込んだ串焼きやスラ・スタイルを取りだす。

 

「まずは子供たちだな。たくさん食べていいぞ」

 

「「「「「わーい!!」」」」」

 

あっという間に子供たちに囲まれてしまう。

子供たちに焼き鳥や串肉を渡していく。

 

「「「「「おいしー!!」」」」」

 

「たくさんあるからな、遠慮せずお腹いっぱい食べていいぞ」

 

「「「「「はーい!!」」」」」

 

「でも、肉だけじゃなく、栄養ある煮込みを作ろうか」

 

亜空間圧縮収納から魔道コンロと寸胴鍋を取り出す。

まな板と包丁、それからカソの村の奇跡の野菜を出す。デカいから、少しずつ切って鍋に入れないとな。

 

「な、なななんだこれ!? 何もないところから食べ物や調理道具が・・・」

 

チェーダが目を白黒させている。

 

「貴方・・・神様かなにか?」

 

マカンと呼ばれた少女が俺を見つめる。

 

俺?ただのノーチート野郎ですから、気にしないで。

 

「とりあえず、君たちを守る者・・・ってとこかな?」

 

寸胴鍋に水を注いでいく。もちろん、奇跡の泉の水だ。

くっくっく・・・味付けはさっき手に入れたばかりの『味噌』だ!

オーク肉を取り出して、風魔法でシュパーンと一口大に切れた肉が鍋にぽちゃぽちゃと落ちる。あれ、風魔法があれば包丁いらなかったか?

 

「さあ、このヤーベ特製の「トン汁」を煮込んでいる間に、君たちもワイルド・ボアのスラ・スタイルを食べて食べて」

 

ミーアやチェーダ、マカンなど俺は次々に食べ物を渡していく。

 

「おいしい!」

「すごい!」

「もっと食べた~い!」

 

女性たちが次々にスラ・スタイルを頬張って涙を流す。

 

「・・・・・」

 

チェーダがパンを握ったまま見つめている。

 

「どうした?」

 

「え、ああ、なんだか、夢を見ているみたいで・・・。だってさっきまで、食べる物も碌になくて、生きるか死ぬかの瀬戸際だったんだぞ? それが、いきなりお腹いっぱい食べる事が出来るなんて・・・」

 

俺は座り込んでパンを眺めているチェーダの横にしゃがんで、右手でチェーダの頭を撫でてやる。ふと俺の方に顔を向けたチェーダにいきなりキスをする。

 

「ふぐっ・・・んんっ・・・ふわっ!」

 

顔を離せば、目を白黒させて顔を真っ赤にしてびっくりしている。

 

「自分で助けてくれるなら妾にでも何でもなるって言ったんだろう? 遠慮せずに食べな。チェーダが頑張って来たからみんなが生き残って来れたんだろ? だからチェーダもお腹いっぱい食べていい。俺がお前たちの面倒を見る。誰一人不幸にはさせないよ」

 

「うう・・・、うん!うん!」

 

そう言ってやっとパンを齧り出すチェーダ。

 

みんなが串モノやサンドイッチ(スラ・スタイルね)を食べている間に俺はトン汁を煮込んでいく。BBQ用に用意してある皿やスプーンを出しておく。

 

「さあ、ヤーベ特製のトン汁が出来たよ~」

 

「「「「わ~い!」」」」」

 

「子供たちよ、アツアツだから気を付けるんだぞー」

 

木の器にトン汁を注いでみんなに渡していく。

 

みんながつがつと一心不乱に食べ進めていく。

 

「ああ・・・こんなにあっさりお腹いっぱい食べるという夢がかなうなんて・・・」

 

チェーダがまだ涙を流しながらトン汁を啜っている。

 

「すごいっ!こんなおいしいもの初めて食べました!」

「不思議な味ね!体が温まるわ」

 

ミーアもマカンもトン汁を啜りながら感動している。他の女の子達にもどんどん配って行く。

 

あちらこちらでトン汁をすすりながらすすり泣く声が聞こえる。

まずはみんなお腹いっぱいになってくれ。

 

「うぐっ!」

 

突然皿を取り落とし、胸を抑えて苦しむマカン。一体どうした!?

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。