転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第181話 ダンジョン攻略は斯くあるべき、という持論を展開しよう

「さて、言質は取った。速攻で<迷宮(ダンジョン)>を攻略してぶっ潰すとするか!」

 

俺は城塞都市フェルベーンの冒険者ギルドから飛び出すと、すぐに裏道へ入り、人の目が無くなるのを見計らって<高速飛翔(フライハイ)>で空中に浮きあがった。

 

だいたい町にはいる時も門で並んでいたからと言う理由で空から飛んで入ったからな。いい加減ちゃんとルールを守らないと俺が取っ捕まってしまいそうだ。ミル姉さんを助け出したら少し襟を正すことにしよう。

 

城塞都市フェルベーンの冒険者ギルドにも、無事<迷宮(ダンジョン)>をぶっ潰したら、王都スイーツ決定戦終了後に菓子折りでも持って挨拶に行くか・・・。

 

 

 

 

 

 

「お、アレか?」

 

岩山の中腹に洞窟のような物が見えた。しかも、丁度、ミノタウロスが二匹ほど出て来ていた。

 

「ありがたいほどにわかりやすいな」

 

俺は着陸時に飛び蹴りをかましてミノタウロスを瞬殺する。

 

「さて・・・<迷宮(ダンジョン)>攻略と行くか!」

 

尤も、真面目に?<迷宮(ダンジョン)>攻略する気などない。数あるラノベも<迷宮(ダンジョン)>の攻略はメインストーリーの一つだろう。何階層もある<迷宮(ダンジョン)>を階層ごとに主人公が苦労しながら攻略して行く様は胸躍るワクワク感があったものだ。

 

だが、ここは現実世界。<迷宮(ダンジョン)>攻略にワクワクもドキドキも必要ない。

必要な事は要救助者の確保と敵の殲滅、あるとすれば<迷宮(ダンジョン)>の奪取だ。

悪魔の塔も真面目に攻略せず外からあっさり頂上に上がった俺だ。

現実世界は求める結果があればいい。

 

「ウィンティア、シルフィー、ベルヒア、フレイア」

 

「はいはーい」

「お兄様お呼びですか?」

「ヤーベちゃん元気~」

「ヤーベ、やっと呼んでくれたな!」

 

四大精霊たちが俺の後ろに顕現する。

 

「すまない。これからかなりの魔力を使う。最悪暴走したら止めてくれ」

 

「ええっ!? 何するの?」

 

「こうする」

 

俺は久々に外でデローンMk.Ⅱの姿を取る。

 

「さあ行くぞ!」

 

ゴウッッッッッ!!

 

「わあっ!」

「お兄様そんなすごい魔力どうするんですか!?」

 

迷宮(ダンジョン)>の入口を塞ぐように立つ俺は魔力を全力で高めていく。

 

「スライム細胞よ、増殖せよ!」

 

ドビュルルルルルルル!!

 

スライム細胞を超高速増殖させ、<迷宮(ダンジョン)>の中に送り込んで行く。

あっという間に<迷宮(ダンジョン)>の通路がスライム細胞で埋め尽くされていく。

 

駆け巡るスライム細胞に<迷宮(ダンジョン)>の通路にいた魔物達が取り込まれていく。魔物は速攻で吸収である。

 

1F・・・制圧・・・2F・・・制圧・・・3F・・・

 

どんどん細胞を増殖させ、<迷宮(ダンジョン)>内をスライム細胞で埋め尽くして行く。

 

お、宝箱・・・回収・・・4F・・・制圧・・・5F・・・隠し扉があるな・・・宝箱回収・・・6F・・・

 

ミノミノミノ吸収・・・ミノミノミノミノ吸収・・・ミノミノミノ・・・おいおい、結構ミノさんいるなぁ。

 

7F・・・制圧・・・8F・・・制圧・・・9F・・・制圧・・・もうミノはめんどくさいから数えてません。

 

10F・・・あっ! きっとこの鎖に繋がれた女性がミル姉さんだ!

俺はスライム細胞で包み、<迷宮(ダンジョン)>入口まで細胞内を移動させる。もちろん空気を送り込むためにデローンMr.Ⅱの背中から筒状の空気取り入れ口を作る。取り込んだ新鮮な空気はスライム細胞内を移動させているミル姉さんに届けて呼吸を助けるのだ。

そして10F一番奥にデカイ扉がある。想像するにダンジョンボスの部屋だろうか?

まあ、俺には関係ない。即刻ぶち破ってその中の奴は吸収だ。

一回り大きいミノタウロスのような感じだったが、それも興味なし。早くミル姉さんを救助だ。

 

ん? なんだか一番奥の部屋に偉そうな台座の上に宝玉みたいな物があるな。これが<迷宮(ダンジョン)>か? 何でもいいや、回収。

 

「・・・お?」

 

ゴゴゴゴゴッ!!

 

「ややや、ヤーベ何したの!?」

「お兄さん崩れますよ?」

 

「スライム細胞超速回収!」

 

ズギュギュギュギュ!!

 

そのうちミル姉さんが<迷宮(ダンジョン)>入口に到着する。

 

スポンッ!

 

「コホッコホッ!」

 

助け出したミル姉さんが咳き込む。でもとにかく無事でよかった。

あ・・・お腹が大きくなってる・・・。くっ、とにかく今は命があったことをまず喜ぼう。

 

「ヤーベちゃん!崩れるわ!」

「おおい、ヤーベ何したんだよぉ!」

 

ベルヒアねーさんもフレイアも慌てふためく。

 

「スライム細胞回収終了!ここから離れろ!」

 

「「「「わああ――――!!」」」」

 

 

ドドドドドッ!! ガラガラガラッ!!

 

 

少し離れたところから振り返れば、<迷宮(ダンジョン)>の入口が完全に崩落して埋まっている。

 

「あ~、やっぱり<迷宮核(ダンジョンコア)>を奪い取ると崩れちゃうのか。壊せばよかったのかな?それとも誰かダンジョンマスターでも設定すればよかったかな?」

 

「えええ!? ヤーベ<迷宮核(ダンジョンコア)>持ってきちゃったの!?」

 

「あれ? マズかった?」

 

「いや・・・マズいっていうか・・・そんなことする人見たことも聞いたこともないから」

 

「そうねぇ、<迷宮核(ダンジョンコア)>は普通台座上で破壊して活動を止めるか、<迷宮核(ダンジョンコア)>にアクセスして新しいダンジョンマスターとして登録するか、のどちらかだと思うんだけどねぇ」

 

ウィンティアにそんなことをする人って言われたよ・・・。

ベルヒアねーさんにもちょっとジト目で睨まれてるよ・・・なんで?

 

「逆に、持ち出せば<迷宮(ダンジョン)>が崩壊するのに、持ち出せることが凄くないですか?」

「世界初かもしれないぞ、ヤーベ」

 

シルフィーにフレイアもなんだか感心してくれる。良い事か・・・な?

 

「それにしてもヤーベ、<迷宮(ダンジョン)>攻略に10分かかってないんだけど・・・」

 

ウィンティアが俺の方を信じられないものでも見る様に言う。

 

「まあ、なんだ。早いに越したことはないな。俺は行くから、君たちもゆっくり帰っていーよ」

 

「「「「はーい!」」」」

 

 

 

俺はミル姉さんをお姫様抱っこしながら、ミノタウロスハーフの娘達が集まっている村に帰って来た。

 

「ヤーベ!」

 

戻って来た俺にチェーダたちが走って集まって来る。

 

「ミ.ミル姉さん!」

「生きてたのね!」

「ヤーベ助け出してくれてありがとう!」

 

ミノ娘達が地面に座らせたミル姉さんの周りに集まって来る。

 

「あ・・・ミル姉さんお腹が大きい・・・」

 

「・・・・・・」

 

俺は確かにミル姉さんの命を救った。だが、重苦しい空気が漂う。

 

「んんっ・・・あれ? ここは・・・眩しい・・・」

 

ミル姉さんが目を覚ましたようだ。

 

「ミル姉さん!」

 

チェーダたちが声を掛ける。

 

「チェーダ・・・みんな・・・、私は助け出されたのね・・・信じられないわ。あら?イイ男ね、どちらさま?」

 

「俺はヤーベって言います。皆さんの生活をこれから支えるって約束した者です」

 

「まあ・・・わたくしたちを? 見返りは何を望みましたの?」

 

「いえ、別に・・・」

 

「お、オレがヤーベの妾になるんだ!」

 

「チェーダ?」

 

「あ、だから無理に妾にならなくてもね・・・」

 

「あ、ズルいです!私も立候補します!」

「私もです」

「私も!」

 

チェーダに続いて、ミーア、パナメーラ、マカンと次々に妾立候補者が現れる。どしてよ?

 

「あらあら、ヤーベ様はとてもおモテになりますのね」

 

ニッコリと聖母のような微笑みを湛えるミル姉さん。

 

「とりあえず栄養のある物を食べて下さい」

 

そう言ってすぐに食べられる食料、それからたっぷりの水を樽に入れて出す。

 

「ああ、ありがとうございます・・・」

 

「チェーダ、ミル姉さんにゆっくり食べさせてあげてくれ」

 

「ああ、わかった!」

 

その後、バーベキュー大会で使う予定だった、テントやタープを出してセッティングして行く。あるだけ使っちゃおう。携帯食料も保存食も箱ごと出しちゃう。

 

「わっ、そんなたくさんの食糧どうしたんだ?」

 

「明日一日忙しいから、戻って来るのも夜か明後日の朝になるかもしれないから。たくさんの食料と水は置いていくよ。後、とりあえずあのテントやタープで雨露は凌いでくれるか? 出来るだけ早く戻って来るから」

 

「え、どこかに行ってしまうのか?」

 

急に不安になったのか、俺の手を引いて目を潤ませる。

 

「明日王都で大事な用があってな。とにかくなるべく早く戻って来るから」

 

そう言ってチェーダの頭を撫でてやる。

 

「うう・・・」

 

俺の胸に顔を埋めるチェーダ。いつの間にか地面に膝ついてましたね。

 

「チェーダ、ヤーベ様を困らせてはいけませんよ?」

 

「ミル姉さん・・・」

 

「ヤーベ様、体が大きくてもチェーダは甘えん坊ですから・・・よろしくお願い致しますね?」

 

「ミル姉さん!!」

 

チェーダが顔を真っ赤にして文句を言う。

 

「さて、俺はこれで一旦王都に戻るよ。急いで帰って来るから、待っててくれよな」

 

俺は立ち上がってみんなを見回すと<高速飛翔(フライハイ)>で空中に浮きあがる。

 

「わっ、ヤーベが飛んだ!」

「まあ、チェーダの旦那様はすごいのね~」

「チェーダだけの旦那様じゃありませんから!」

「あらあら」

 

なんだか姦しく盛り上がってしまっているようだが、俺は帰路を急ぐため、王都に向かって移動を始めた。

 

「カラール!」

 

『ピヨッ!(ははっ!)』

 

序列第七位カラールが返事をする。

 

「ミノタウロスハーフの娘達を守れ。頼むぞ」

 

『ピヨヨッ!(ははーっ!)』

 

大地の従者(アースサーバント)>も二十体召喚してあるし、これで何かあってもとりあえずは大丈夫だろう。

 

 

 

超高速で空中を飛ぶ。

すでに空は黄昏の域を超え、夜の帳を降ろそうと準備を始めているようだ。

 

だが、醤油に味噌に昆布出汁に米・・・ミノ娘達のミルクも大量に手に入れた。完璧な布陣だ!

尤も明日の決勝戦には醤油とミルクがあれば大丈夫だけど。

必ずリューナに勝たせる・・・。だが、勝つだけでいいのだろうか?

俺と言う存在はスライム伯爵としてバレないほうがいいだろうし。

 

「まあ、明日の事は明日になってから考えるか・・・」

 

俺はリューナちゃんの喫茶<水晶の庭(クリスタルガーデン)>に向かった。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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