転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第186話 練習したスイーツを全力で作り上げよう

さて、審査員の前に設置されたキッチンに道具を運び込む。

魔道冷蔵庫、魔道冷凍庫、三品目を入れた専用の魔道冷蔵庫も準備。丸型魔道ホットプレートを置いて熱を入れる。

 

「さあ、始めて行こうか」

 

「はいっ!」

 

そして、顕現させてはいないが四大精霊たちにも合図する。

 

『さあ行くぞ。ピンチになったら力を借りるからな!』

 

『任せて!ヤーベ』

『お任せくださいお兄様!』

『ヤーベちゃん私も食べたい~』

『ヤーベ、俺の力、いつでも貸すぜ!』

 

ウィンティア、シルフィー、ベルヒア、フレイアにも待機してもらう。

 

「それでは、予選第1位、喫茶<水晶の庭(クリスタルガーデン)>オーナー、リューナさん、用意スタートです!」

 

号令と共に早速魔道冷凍庫から一品目を取り出す。

 

金属の筒から固めたアイスを取り出して「皿」に盛り付けて行く。

皿は白い陶磁器の皿である。それも白磁の皿を用意した。

これは「王都御用達」の食器専門店から金貨の山を積んで手に入れてきた王族も使う美しい皿だ。

焼き物の皿は、木製の皿に比べてアイスが溶けて液体になっても食べやすいはずだ。

 

王家御用達のお店で買って来てもらった物だけあって、非常に白く美しい。それだけに白い皿に白いアイスをのせても、まるでそこには何もないかのような錯覚を起こしそうなほど白い皿である。それだけに醤油をわずかでも垂らした時の白と黒のコントラストがハッキリと浮かび上がるだろう。白磁の皿はめっちゃ高かったけどいい仕事してくれそうだ。キンキンに魔道冷凍庫でアイスと共に冷やした白磁の皿は木の皿と違ってアイスが溶けても木の様に沁み込まないからな。それにこの後の()()()()()としての役割もあるしな。

 

スプーンでこそぎ取る様にすくって皿に盛り付ける。

スプーンですくうと、若干のカーブを描くようにアイスが取れる。

三回すくい、さらに重ね合わせる様に盛り付けたものを審査員の前に出して行く。

その横に小さな陶器のポットを用意する。中身はもちろん「醤油」である。

 

「一品目『スノーアイス』でございます。最初、そのまま白いスノーアイスをスプーンですくってお召し上がりください。口の中でとろけるような味わいが楽しめると思います。次に隣のポットにある黒いソースをほんの少し垂らして召し上がって見てください。味が変わるのをお楽しみいただけます」

 

「どれ・・・」

 

真っ先にスノーアイスにスプーンを入れたワーレンハイド国王。

 

「うおっ!?」

 

あまりの冷たさと蕩けるクリーミーさとコクのある甘みに体が震える。

 

「すごいっ!」

 

ワーレンハイド国王の言葉に、国王をガン見していた他の審査員たちも我先にとスノーアイスにスプーンを突き刺し、次々に口に運んでいく。

 

「冷たいっ!」

「蕩けますぅ!」

「口の中で消えてしまったぞ!?」

 

王族の皆さんも驚きの表情を浮かべる。

 

「甘――――い!」

「冷たくて美味しいです」

「これは凄いわね!」

 

公女ブリジット、アンリ枢機卿、聖女フィルマリーがアイスの口の中でとろける感覚に感動している。

そして醤油を掛けるワーレンハイド国王。

 

「むうっ!これはウマイ!なんと甘じょっぱい感じなんだ!我はこちらの方が好みだな!」

 

どうやら国王様は醤油の味がお好みのようだ。

他の審査員も醤油を垂らしては口にアイスを含み驚愕の声を上げている。

 

「この黒いソース、色々な料理にも合いそうですわ・・・」

 

リヴァンダ王妃の目が光る。その価値がアイスのソースだけに留まらないことを見抜いたようだ。

 

「なんだ!?この『スノーアイス』というのは冷たくて甘いのに、口の中に入れたら溶けて無くなってしまうのだ!それにこの黒いソース!エルフの国には全く無いぞ!」

 

興奮気味に捲くし立てるエルフブリーデン公国公女ブリジット。

 

「もう少し!もう少しだけお淑やかにお願い致します!」

 

泣きそうな表情で必死に宥めるエルフメイドっ娘。なんとなく可哀そうだな。

 

「一品目のスノーアイスですが、全て食べずに少し残しておいてください。二品目と一緒に食べても美味しいですので」

 

リューナちゃんはにっこりと笑ってあっという間に食べ尽くしそうな審査員たちにブレーキを掛ける。

 

 

 

審査員たちがスノーアイスに夢中になっている間に二品目を準備しよう。

リューナちゃんに何枚かクレープを連続して焼いて行くよう指示する。

今度は大きめの平たい白磁の皿を用意して、焼けたクレープを二つに折って並べていく。

 

その横では魔道コンロにフライパンを準備する。

流し込むのはバターと砂糖、そしてオーレンを漬け込んだ酒だ。

少し煮詰めたら焼いたクレープをソースに沈め、スプーンでソースをかけながらしっとりさせる。

 

折角だから、仕上げは目の前でキメさせてもらおう。

まさかガラスを作った時に超圧縮の強化ガラスの使い道などしばらくないと思っていたのだが、耐熱ガラスが欲しかったので、早速超圧縮の強化ガラスでシャンパングラスを用意したのだ。リューナちゃんが一生懸命オーレンの皮むきを練習したその実を漬け込んだお酒をグラスに注ぐ。

 

「な、何だその透明な器は!?」

 

ワーレンハイド国王が思わず席を立ち、リヴァンダ王妃も両手で口を押えるほどの衝撃。

 

水晶(クリスタル)・・・?それしても透明だの・・・」

 

キルエ侯爵の目もグラスに注がれている。

 

「グラスについては後でご説明いたしましょう」

 

俺は国王様たちに声を掛け、とりあえずリューナちゃんに次の作業に移る様に目で合図する。

 

リューナちゃんはコクンと頷くと、クレープを沈めてソースを煮詰めている間にオーレンの皮むきを始める。

オーレンのヘタの部分を少し落として、シュルシュルと皮をむいて行く。その皮が螺旋の様に垂れ下がるまで伸ばせたら皮むきOKだ。そして、小ぶりなレイピアやエストックを思わせるような、細い剣でオーレンを突き刺す。

 

フライパンのクレープを白磁の大皿に移してその上からフライパンのソースをかける。

その皿を審査員の中央にいるワーレンハイド国王の目の前に準備する。

 

「さあ、それでは始めましょう。二品目は『クレープシュゼット』です!」

 

そう朗々とリューナちゃんがその名を伝える。

右手でオーレンを突き刺した剣を持ち、オーレンを目の前の高さに合わせる。左手はオーレンを漬け込んだお酒だ。

 

「お願いします!」

 

俺はリューナちゃんの合図で魔法を放つ。

 

「フレイア行くぞ! <種火(ティンダー)>」

 

俺の掲げた右手の先から、炎の精霊フレイアの力を借りて作った小さな炎がふわふわとリューナちゃんが左手に掲げたお酒の入ったシャンパングラスに向かって飛んでいく。

 

ボウッ!

 

「うわっ!」

「キャア!」

 

国王様、王妃様が同時に声を上げる。

グラスから青白い炎が煌めき立つ。

 

「も、燃えているのか・・・」

 

キルエ侯爵が呆然とその炎を見つめる。

 

そしてリューナちゃんが剣で突き刺したオーレンに炎が立つお酒を掛けていく。

ゆっくりとオーレンの螺旋に垂れた皮を青白く燃え盛る炎のお酒が伝っていく。

 

「キレイ・・・」

 

カッシーナ王女がその幻想的な状況を声も無く見つめていた。

 

そしてついに炎の酒がクレープの皿に到達し、クレープを載せた大皿がゆらゆらと青白い炎に包まれていく。

 

「スイーツが燃えていますわ・・・」

 

公女ブリジットもその状況をボーっと見つめていた。

 

そして、リューナちゃんが燃えているオーレンを隣に用意した金属のバケツに放り込む。

シャンパングラスの炎は口を手で押さえて消す。

 

「あ、熱くないのですか・・・?」

 

枢機卿アンリが驚きの表情を見せる。

 

「クレープシュゼット、完成致しました!ファイアードラゴンが降臨するかの如く吹き荒れる炎の幻想をお楽しみいただければと思います。どうぞお召し上がりください!」

 

リューナちゃんの声に審査員たちがハッと我に返って、恐る恐る配られてくるクレープシュゼットを見る。そしてナイフとフォークで切り分け、口に運んでいく。

 

 

「「「「「!!!!!」」」」」

 

 

全員が衝撃の表情を浮かべる。

 

「ウ、ウマイッッッッッ!!」

 

「温かいわ!何て高貴なスイーツなの!同じ温かいスイーツでもホットケーキが家庭的で庶民的な感じとすれば、正にこのクレープシュゼットは王族の味!」

 

ワーレンハイド国王が素直に感動し、リヴァンダ王妃は一昨日のホットケーキとの違いをズバリ看破する。

 

「温かいからより香りが湧き立ちます!何て芳醇なオーレンの香り!すごくオーレンの香りを感じるのに、酸味は少なく、とってもソースにコクのある甘みを感じます!」

 

カッシーナ王女が一口食べて感動に打ち震える。

 

「一口召し上がられたら、味を変えたい場合は、横に沿えました生クリーム、フルーツのカット、そして一品目のスノーアイスを乗せてお召し上がりください。特にスノーアイスを一口分乗せて召し上がられますと、温かいクレープと冷たいスノーアイスの両方を同時で口の中に入れてお楽しみいただけます」

 

リューナちゃんの説明に、我先にと公女ブリジットがスノーアイスをスプーンで一口すくい、クレープの上にポトリと置いて、クレープで包むように口に放り込む。

 

「んんん~~~~~♡♡♡♡♡」

 

公女ブリジットがナイフとフォークを握りしめたまま立ち上がって唸る。

何事かと見つめる審査員たち。

 

「あったか~い!冷た~い!おいし~い!」

 

ナイフとフォークをグーで握りしめたまま、ほっぺたを抑える公女ブリジット。

あまりのうまさにバタバタと体を揺らす。

 

「お嬢様!お願いですから!お願いですから少しだけ落ち着いてください!」

 

後ろで涙を流しながらお付きのエルフメイドっ娘が窘めているが耳に入っていない様だ。

 

「何と香しい香りなのだ・・・」

 

一切れフォークでクレープを突き刺しながらキルエ侯爵が感動している。

 

「凄いです・・・」

 

アンリ枢機卿もはむはむと食べながら恍惚とした表情を浮かべる。

 

「ウマすぎるわねっコレ!」

 

聖女フィルマリーに至ってはソースを啜るという行儀悪さを露呈している。

 

「これすげーうめーな」

 

「こ、こんな洗練された美しく格式高い料理が・・・しかもすさまじく美味しい! それにスノーアイスと組み合わせれば温かい物と冷たい物を同時に食べられる・・・こんな組み合わせ見たことも聞いたことも無い! まぜて足を引っ張り合うどころか、それぞれが引き立てあってさらなる高みが見えるような気さえする!」

 

フレアルト侯爵にコンデンス伯爵もナイフとフォークが止まらない。

 

完全にワーレンハイド国王を始めとした審査員たちがクレープシュゼットにドハマリしている。

 

「それでは、三品目を・・・」

 

「ちょっと待った」

 

リューナが三品目を取り出そうとしたのを止める声が。

 

「・・・ドエリャさん?」

 

リューナが首を傾げるが、ドエリャはリューナを無視して、俺の前へやって来る。

 

「自身の結婚式のためだとは言え、これはいかがなものでしょうか、スライム伯爵殿」

 

まるで苦虫を噛み潰したかのような表情で俺の前に立ちはだかった。

 




やっと決勝戦メニューが登場しました。引っ張る気も無かったのですが、結構かかりましたね(苦笑)
クレープシュゼット、皆さんの想像通りだったでしょうか?
一度だけ目の前で見たことがあるのですが、炎が伝って降りてくるときはちょっと感動しました。

今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
よろしければしおりや評価よろしくお願い致します。

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