転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第188話 衝撃の事実をなんとか理解しよう

王城にて―――――

 

あれから、すったもんだの末、リューナとドエリャはそのまま王城に移動(というか、ほぼ拉致)して、急遽行われる晩餐会にてスイーツを振る舞うという流れになった。

 

俺が「スラ神様降臨!」なんてやったもんだから、会場が結構パニックになったのだが、最終的に、後ろ盾の商会に問題が発生したドエリャと、後ろ盾が神様だったリューナはどっちも違う意味で問題があるんじゃね?みたいな雰囲気になったので、もうドエリャとリューナが二人とも優勝!という事になったのだ。まあ、めでたしめでたし?的な?

 

俺はといえば、再びローブを纏ってから超小さくなってローブがばさりと落ちた時には姿が消えてなくなるといったマジシャンチックな手法で姿を消した。

・・・どうせなら派手なエフェクトで空中消失した方がよかったかと思ったのだが、後の祭りだ。

 

そんなわけで、スラ神様より「唯一の加護」を受けているとなった俺様に話を聞きたいと、王様自ら俺を王城で開かれる晩餐会に招待したわけだ。なので、俺様は半ば・・・というか、全ば・・・というか、100%強制的に王城に連れてこられている。

 

王城に向かうという事だったので、謁見時に着ていた貴族スーツを身にまとっている。戦時ではあるまいし、鎧姿というわけにもいかないしな。

 

招かれた王城では、すでに立食パーティの準備が整っており、多くの貴族がやって来ていた。

前菜と飲み物はすでに振る舞われており、各々がつまみながらドリンクを片手に持ち、談笑を繰り広げているようだ。

俺はコルーナ辺境伯とともに会場を訪れた。俺は会場でそのまま王様に拉致られたので奥さんズの面々とは会えなかったのだが、コルーナ辺境伯に聞いたところによると、一応奥さんズの全員は騎士爵を拝命しているが、フィレオンティーナを始めとしたみんなは参加を遠慮するとの事であった。

 

会場に入れば多くの貴族が俺の方に視線を向ける。なんだか居心地悪いな。

 

「スライム伯は神の加護を得ておったのですな」

「どうりで数々の英雄譚も納得がいくというもの」

「いや、神の加護とは・・・まっこと羨ましいもので」

「一体どのようにそのような強力な加護を?」

 

あ~、ぶっちゃけ狙い通りにはなったのだが、すげえうぜえ(苦笑)

力のありように納得してもらったのはいいが、「その加護俺も欲しいんだけど」みたいなことを言われてもどうしようもない。カソの村の近くの泉の水をきれいにしてたら精霊の加護を頂きました・・・っていったら、明日から泉に人が殺到しそうだしな。

 

「いつもスラ神様には感謝の祈りを捧げておりますよ。私は孤児で、一人で森の奥で生活しておりましたからね・・・。森の木々や花に水をやったり、泉の掃除をしたりと、自然と調和の取れるような生活を行っていたらいつの間にか加護を頂いていたようです」

 

「なんと!」

「自然と調和・・・ですか」

 

それを聞いた貴族たちがウンウンとうなりだす。

明日になったら王都から多くの貴族が田舎に旅行にでも向かったら笑うしかない。

 

「やあ、ヤーベ卿。リューナ殿の優勝おめでとう」

 

そう言って声を掛けてきたのはシルヴィア・フォン・キルエ侯爵だった。

 

「どうも。まあ、リューナちゃんの努力の賜物ってヤツですよ」

 

「リューナ殿の腕前に疑う余地などないが、優秀なブレーンのステキなレシピがあっての事であろう?」

 

「神様直伝の・・・ですか?」

 

「どうかの? レシピはお主のものであろうが」

 

にやりと口角をあげるキルエ侯爵。

 

「スラ神様の御立場もありますので、ノーコメントで」

 

「ほっほ、スイーツのレシピに神の立場もあるのか」

 

「いや、あのゼリーは確かに神の一品であったぞ!」

 

そう談笑していると、そこに現れたのはワーレンハイド国王であった。

あのスライムゼリー・・・確かにあれは俺の体であるスライム細胞そのものだ。だが、ただ単にプリッと触手を切り離して冷やしたわけではない。

 

スライム細胞自体はとてつもなく優秀だ。ローガやヒヨコ隊長、果てはカッシーナ王女やリーナの傷を治したように同化してそのものになる性質を持つ。だがそれは、俺が魔力

ぐるぐる

エネルギーでスライム細胞自身に同化するよう命令を与えているからだ。同じように自分の手足のように操るときも、<身体偽装(メタモルフォーゼ)>で矢部裕樹の姿をする時も、俺自身が魔力(ぐるぐる)エネルギーでスライム細胞自身に意識的に命令を送っている。

 

尤も、今は矢部裕樹の姿を取っている時も、触手をコントロールする時も、ほぼ無意識で動かすことが出来る。体で言えば、地球時代の生活と通常時は変わらないイメージだ。

 

緊急時や戦闘時は魔力(ぐるぐる)エネルギーを増大させることによって自身の反応速度を上げることが出来る。かなり高めると、まるで周りの時間がゆっくり流れているように見えるから驚きだ。手ごわいやつはそのゆっくりとした時間の中でも素早く動いてるから、油断はできないけどな。

 

まあ、そんなわけで、今回スライムゼリーを作るにあたって、俺がスライム細胞に命令した事と言えば・・・。

 

『とってもとっても深くコクのある甘い甘―いゼリーにな~れ~。でも後味爽やかに口の中から消えてほんのりとした余韻だけ残るように~』といって魔力(ぐるぐる)エネルギーを送り込んだ。ものすごく抽象的なイメージだが、どうやらなんとかうまくいったようだ。神々しい、という評価もあったが、あれは魔力(ぐるぐる)エネルギーの内包パワーが高かったせいだろうか。ちょっと魔力(ぐるぐる)エネルギー込め過ぎたかしらん?

 

まあ、でもとりあえず自分の体がおいしい食べ物になることは分かったわけだし・・・。

自分で食べたら、わしゃタコか!? 自分で自分を食べるってダレ得だよ!?

でも、イメージでスライム細胞の味を決められるなら、激辛もダダ甘も思いのままではないか。

 

・・・まあ、スライム細胞を食べた人たちがどうなるか、実際のところ長期服用データは取れないわけだし、何かあったらヤバいわけで、とりあえずスライムゼリーは神の食べ物として封印することにしよう。

 

やがてメインの食事も来て、立食パーティも進んでいく。

そこへリヴァンダ王妃とカッシーナ王女、カルセル王太子もやってきた。

 

「さあ、今宵は王都スイーツ大会のダブル優勝者、ドエリャ・モーケテーガヤー殿とリューナ殿の二人に来てもらっておる。ドエリャ殿には決勝三品目の『ドリリアンケーキ』を、リューナ殿には決勝二品目の『クレープシュゼット』を用意頂くようお願いした。王都スイーツ大会初のダブル優勝者のスイーツを存分に楽しんでくれ」

 

 

「おおっ!」

「それは素晴らしい!」

「この時を待っておりましたの!」

「楽しみでたまりませんわ!」

 

そういえばどの貴族も女性を随伴させている。きっとその多くが奥方なんだろう・・・違う人もいるようだが。スイーツ大会優勝者の料理が食べられるとあれば、奥方たちの圧力も相当なものになるだろう。ノーと言える旦那がいるとは思えないな。

 

見ればドエリャがドヤ顔でドリリアンケーキを切り分け、貴族が持つ皿に一切れずつ乗せている。その後ろには貴族たちが皿を持って並んでいる。珍しい光景だな。

そしてリューナちゃんも丸型魔導ホットプレートでクレープを焼いてはフライパンで煮詰め、オーレンの皮をむいては酒に炎を纏わせクレープにかけていく。

炎は俺がいないので最初からローソクで用意しておいて、グラスを炎に近づけて火をつけている。

完成したクレープシュゼットをこちらも切り分けて皿を持って並んでいる貴族たちに配っていく。どの貴族たちも奥方たちも満面の笑みだ。

 

やれどちらがウマイだの素晴らしいだの、この味わいがとか、この甘さが、とか、にわか知識満載で、それでも笑顔で会話の花が咲いていく。

 

なんとなくだが、いいな、こういう光景。

うまいものを食べながら笑顔で会話。うまいものは世界から争いを無くせるような気さえしてくる。

 

そして時間は流れ、ワーレンハイド国王の挨拶で晩餐会は大盛況の内に幕を閉じ、多くの貴族たちが帰路についた。ドエリャとリューナも片づけを済ませ別室で休憩の後、別途食事を振る舞われることになっている。

 

「ヤーベ卿、忙しいところすまなかったね」

 

ワーレンハイド国王が会場に残っていた俺に声を掛けてくる。

リヴァンダ王妃、カッシーナ王女、それにキルエ侯爵とドライセン公爵がこの場には残っていた。

 

「いえ、別に問題ありませんよ。これでも王国より伯爵の地位を賜る身ですから。国王の命は最優先事項ですよ」

 

「素敵な建前ありがとう」

 

苦笑しながら話すワーレンハイド国王に思わずリヴァンダ王妃まで苦笑する。

 

「それで、スライム神様の事なんだが・・・」

 

やはり、神様のお話を聞きたかったのね。ある程度は予測してましたけどね。

 

だが、俺がまるで予測していない事柄が起きていた。

 

「国王様!大変です!」

 

後片付け中の会場に飛び込んできたのは、宰相ルベルク・フォン・ミッタマイヤーと宮廷魔導士のブリッツであった。

 

「どうした?騒々しい」

 

「これを!通信用の魔導水晶に通信が!リカオロスト公爵家からの通信が!」

 

慌てふためきながら宰相ルベルクが魔導水晶を掲げる。

光が発せられ、ホログラムのように映像が投射された。

 

そこに映し出されたのは・・・

 

「ギャーッハッハッ!見えてるかぁ?クソ野郎ども!」

 

どこからどうみてもゲス一色の男が画面いっぱいに映し出される。

 

「こやつ・・・ゲスガー・フォン・リカオロスト!」

 

ドライセン公爵が叫ぶ。

 

「誰なんだ?それ?」

 

そういやこの前バオーカとかいう次男が難癖付けてきていたが・・・もしかして。

 

「リカオロスト公爵家の長男だ」

 

苦り切った表情で説明してくれるドライセン公爵。そうとうタチの悪い輩だな。

 

「そろいもそろってクズしかいねーのかよ、リカオロスト公爵家ってのは」

 

俺の軽口が聞こえたのか、憤怒の表情を浮かべるゲスガー。

 

「テメエがスライム野郎か! ドクズの平民風情が成り上がりで貴族名乗ってんじゃねーぞ!俺のような高貴な血を持つ奴以外が貴族とか名乗るからこの国がおかしくなるんだよ!」

 

「安心しろ、お前以上におかしいヤツなんてこの世にいねーよ」

 

俺はひょうひょうと言葉を返す。この通信用魔道水晶、相互通信が出来ているようだ。向こうさんと普通に会話できるな。

 

「くくく・・・どれだけテメエが粋がっていてもどうしようもねーよ。これからテメエはテメエの女がとことん犯されて喘ぎまくるのを指を咥えて見ているしかできねぇんだからなあ!」

 

そう言って奴がその場から横にずれた。

その後ろに映し出されたのは・・・

 

「イリーナ!?」

 

映像に映し出されたのは、どこかの牢屋らしきところに囚われて、両腕を鎖で吊るされた状態のイリーナであった。

 




イリーナ、絶体絶命!?

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