転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第22話 町に向かって出発しよう

山積みになった魔物を見ながら、誰も一言も発せない。

 

「えーと・・・」

 

イリーナが俺の方を見る。

 

『町の入口まで我々が運んでいきましょうか?』

 

ローガが申し出るが、町中運べないと意味無いしな。

というか、みんなに説明してないわ、アレ!

 

タララタッタタ~ン! 亜空間圧縮収納~!

 

というわけで、俺様は山のような魔物をガンガン収納していく。

 

『おおっ!ボスの能力ですか?すごいですな』

 

ローガが感心したようにこちらを見る。

ふふん、もっと崇めてくれてもいいのだよ!

何たって俺様はデキるスライムなのだからね!

 

『それで、ギルドへどうやって納品するのです?』

 

ヒヨコ隊長の疑問にみんなの視線が集まる。

だから、俺の姿を見られないようにすればいいわけで・・・

 

ぴこんっ!

 

閃いた。イリーナが荷物をぶちまけて空になった大型リュック。それをテントからダッシュで取ってくる。

 

「イリーナ。リュックを背負ってくれ」

 

「ヤーベ殿。背負うのは良いが、リュックは空っぽだぞ・・・」

 

と言いつつ背負ってくれるイリーナ。そして俺は空っぽのリュックにピヨーンとダイブ!

 

「わっ!」

 

イリーナがびっくりするが、きっと俺はそんなに重くない。重くないったらない!

大事な事だから二度言おう。

そしてリュックの蓋を自分で閉める。触手って便利!

 

「どうだ、外から俺が入っているとは見えないだろう?」

 

『さすがですボス!リュックの蓋が閉まっていると全然わかりませんぞ』

 

ヒヨコ隊長からOKがでる。よし、これで万全だな。

 

「いいか、イリーナ。この状態で冒険者ギルドに行くんだ。そして収納魔法をマスターしたとか適当な理由で、魔物を俺が出す。後は話を合わせればよい」

 

「な、なるほど。さすがはヤーベ殿だ。「ギルドで魔物を換金できたのは俺のおかげなのだから、分け前が欲しければ俺の女になれ」と・・・くっ犯せ!」

 

「分け前は後で考えるから、とにかくさっさとソレナリーニの町に行くぞ」

 

リュックから触手を伸ばし、クッオカをスルーしてイリーナの頭をポコポコ叩く。

 

「わ、わかったぞ、任せておくのだ」

 

リュックのベルトをギュッと握り、やたら気合を入れるイリーナ。大丈夫かね。

 

「ヒヨコ隊長、お前もついて来てくれ。リュックの上に陣取って、周りの状況を俺に教えてくれ」

 

『はっ!お任せを』

 

早々にヒヨコ隊長がイリーナの肩に乗る。ヒヨコ隊長もやたら気合が入ってるね、大丈夫?

 

『ボスッ!我は・・・』

 

ローガが聞いてくるが俺は無常に告げる。

 

「ローガは留守番な」

 

『な、なんですとぉぉぉぉぉ!!』

 

血涙を流し絶望するローガ。留守番1つでそこまで!?

 

「ローガはどうやっても町中に連れて行けないしな。致し方あるまい」

 

ローガが突っ伏している。尻尾も完全にヘタレている。

部下がローガを優しく慰めている。いい部下を持ったな、ローガよ。

 

「あ、でもよく考えたら町の手前まではローガに乗って行った方が圧倒的に早いか」

 

俺はカソの村にローガに乗って移動した時の超速ぶりを思い出した。

ローガに乗って行ったら時間短縮にもなるし、何よりイリーナも楽だろう。

 

「でも、ローガ大丈夫か? イリーナと俺を乗せると重くないか?」

 

『と、とんでもありません! むしろ軽いです。お任せください!!』

 

さっきまで突っ伏していたローガが瞬間的に復活した。ローガ、元気だな。

 

「イリーナが直接お前の背中に乗るから、全力疾走はダメだぞ。トコトコ散歩する程度のスピードで大丈夫だ」

 

『どんなスピードでもお任せください!』

 

ローガもやたら気合が入ってるね。大丈夫?

 

「むっ!トコトコ散歩のスピードなど。ヤーベ殿、いくら何でも私を甘く見過ぎというものだぞ。早くギルドに行って換金する方が良かろう」

 

イリーナよ。君のポンコツぶりはすでに実証済みだ。

君の感覚は砂糖にはちみつとメープルシロップぶっかけて口一杯頬張ったほどに甘い!

 

「ではどこまでのスピードに耐えられるか試してもらおうか」

 

まずはイリーナをローガに股がらせる。

俺様はリュックに入ったまま左右から触手を伸ばし、ローガの(たてがみ)あたりを握る。

 

「では出発。他の連中はすまないが留守番だ。しっかり待っていてくれよ!」

 

『『『了解です、ボス!』』』

 

ヒヨコも狼牙族もそろって返事をしてくれる。仲良くなったな、お前達。

 

というわけで、早速ダッシュだ、ローガ。

 

シュババババッ!

 

「はぶぶぶぶぶっ!」

 

猛ダッシュしたローガのスピードに耐え切れずイリーナの顔は見てはいけないレベルに風圧負けしている。だから言ったのに。

 

「いぎがでぎない~」

 

「え?なんて?」

 

「やーべどのぼぉぉぉ!いぎがぁ!いぎがぁ~」

 

どうもイリーナは風圧がすごすぎて息が出来ないようだ。死んじゃう?

 

『ローガ、スピードを落としてくれ。イリーナが落ち着くくらいまで』

 

『了解!』

 

結構なスピードで走っていたから、久々に念話でローガに指示を出す。

ローガがぽっくぽっくと散歩チックなスピードまで落としていく。それでも早いけど。

 

「ふああ~、ローガ殿は本当にすごいのだな・・・、とんでもないスピードだぞ」

 

風圧に負けて見てはいけない表情になっていたイリーナが、顔面を抑えてボヤいている。

俺様はイリーナのほっぺの筋肉をグリグリとマッサージするように撫でていく。

 

「ふぁっ・・・ひゃ、ひゃーべどのぉ~」

 

「イリーナのかわいい顔が強い風を受けて酷いことにならないようにマッサージだよ」

 

「きゃ、きゃわいいだなんてぇ・・・きょ、きょのままイリーニャきゃわいいよっておしたうぉされてぇ・・・くっうぉかせ!」

 

イリーナのほっぺを触手でぎゅるぎゅるしているので、イリーナが喋ってもよく聞こえないね。スルーしよう。

 

「ひょわわ~」

 

 

 

 

なんやかんやで、もうすぐソレナリーニの町に到着する距離まで来た。

 

「さて、ローガよ。お前はここで留守番だ」

 

『ぬおっ!ボス何故です!』

 

だから血涙流すなって。

 

「さすがにお前を連れてソレナリーニの町に入ることは出来ないからな。このあたりで待っていてくれ。他の旅人たちに見つからないようにな」

 

『ぐううっ・・・、了解です』

 

止まらぬ血涙と死んだように萎れた尻尾を見るとちょっとどころではなく可哀そうになるが、これも致し方なし。

 

「さあ、イリーナ、ヒヨコ隊長、行くぞ」

 

『了解!』

「わかった、ここからは歩いていこう」

 

俺たちはソレナリーニの入口門に近づいて行った。

 




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