転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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閑話27 悪党たちのただならぬ陰謀 -捕らぬホーンラビットの角算用-

「よっしゃあ! キマった!」

 

黒いローブの男は珍しく大声でガッツポーズした。

普段は物静かでフフフと何かを企んでいるイメージだったため、周りの部下は驚いた。

 

「発車するぞ!」

 

特別改造した高速馬車のスイッチを入れて加速させる。

見れば、狼牙が三匹ほど追いかけて来ていた。

 

「くくくっ・・・ヤツの使役獣か・・・ご苦労な事だ」

 

黒いローブの男は悦に入ったように笑うと、魔道馬車の魔石コアに魔力を注いだ。

 

「本当にここまで苦労したぜ・・・」

 

そう言うと懐から煙草を吸うための長筒を取り出した。

 

「ところで、なんか狼が追って来ていますが、大丈夫ですかね? ファンダリルさん」

 

ファンダリルと呼ばれた黒いローブの男は煙草をふかしながら部下を見た。

 

「問題ない、ヤツの使役獣の能力はある程度把握できた。だいぶ手間がかかったがな・・・」

 

ファンダリルはヤツ、と呼んだ男の規格外ぶりを嫌という程見せつけられて来た。

 

始まりはソレナリーニの町の<迷宮氾濫(スタンピード)>だった。

 

プレジャー公爵の子飼いだったゴルドスターがコルーナ辺境伯を追い落とすために策略を練っているのは掴んでいた。うまく利用できるものなら利用しようと立ち回るつもりだったのだが、一万もの魔物を討伐してしまうなど、あまりの規格外ぶりに絶句した。

それ以降、ゴルドスターにそれとなく子飼いの部下から妨害の手助けをしたり、資金援助したり、逆に情報を仕入れてきたりした。

 

ゴルドスターにヤツがヤバイ存在だと吹き込んで、プレジャー公爵の手の者から消させるようにうまく仕向けられたはずだった。

だが、その悉くをヤツは跳ね返してきた。いや、正確には使役獣の狼牙族の戦闘力が、だろうがな。

最終的に、まさかプレジャー公爵側が完全に潰されるとは思わなかった。

特にゴルドスターの切り札中の切り札だった雷竜サンダードラゴンの誘引と封じられていた三頭黄金竜(スリーヘッドゴールデンドラゴン)の宝玉を両方使ったのに、王都に傷一つ付けられなかったのには驚きを通り越して信じられないという印象が今でも強い。よほど運がよく立ち回れたのだろう。当人の能力が大したことないのに、使役獣の戦闘力だけで今の地位を手に入れていやがる。実に気に入らねえ。

 

何故かファンダリルはヤーベと言う男の実力を極端に見誤っているのだった。

 

それにしても、あのイリーナという女を誘拐するのには骨を折った。

中々一人にならねえし、常に狼やヒヨコみてぇな鳥が護衛についていやがる。

だが、やはり読み通り、今日は大チャンスに恵まれた。

目当てのイリーナがポンコツだったのも幸いした。

巧みな嘘とは言い難いが、それでもスイーツ大会というイベントがうまくハマった。

一人になったイリーナを嘘で連れ出し、馬車の乗り換えで魔道馬車へ移して一気に引き離して攫うことが出来たのだ。全くもって計画通りと言ったところだ。

 

「コイツ!大人しくしやがれ!」

「いい加減にしろ!」

「何だ貴様ら!離せ~~~~!!」

 

後ろがやかましいと思えば、攫ったイリーナを拘束するのに手間取っているようだ。

 

「何してる!さっさと眠り薬を使え!」

 

「さっき顔に当てましたよ!」

 

ああ?薬が効かない?

なんか嫌な予感がするな。

 

「おい、魔導馬車の運転代われ。変に操作しなくていい。前だけ見てろ」

 

「は、はいっ!」

 

緊張気味の部下に馬車を任せて、後部へ移る。

 

「貴様!私を誘拐してどうするつもりだ!」

 

「マナよ!彼の者を眠りの底へと誘え!<睡眠(スリープ)>」

 

カクン。

 

あっさりと魔法にかかりイリーナが眠る。

 

「さすがですね」

 

「いいから、さっさと縛り上げろ!」

 

「へいっ!」

 

「後は・・・<()()>を奪うだけだ・・・」

 

ファンダリルは再び長筒に火をつけ、煙草を燻らせた。

 

 

 

 

「よくやった!ファンダリルよ」

 

満面の笑みでファンダリルを迎えたのはコルネリオウス・フォン・リカオロスト公爵その人であった。

 

「なんとか無事成功しましたよ」

 

ファンダリルは黒いローブを翻して大げさに頭を下げた。

 

「早速儀式を始めようではないか!」

 

リカオロスト公爵が急かすように告げるが、その後ろからは別の声がした。

 

「よう親父!その女もちろん俺にくれるんだよなぁ?早くくれよ!」

 

長男のゲスガー・フォン・リカオロストであった。

 

「ワシの用が済めば好きにせい」

 

「おお、やった!いつだ!いつ用が終わるんだ?」

 

「うるさいわ!用が終われば呼んでやる!」

 

「オレぁ我慢できねーよ!先でもいいだろう?なあ、親父よぉ」

 

リカオロスト公爵自身、自分の息子でありながらも辟易していた。長男、次男も貴族の特権だけを振りかざし、自分の能力を全く高めようとせず、それでいて欲望だけはむき出しだ。

自分自身も貴族の特権を振りかざしてはいるが、陰謀を巡らすためには頭を使わなければならない。貴族はバカでは務まらないのだ。だが自身の息子たちには最低限の知識も知恵もない。すでにリカオロスト公爵自身が自分の息子たちを見限っていた。

 

「西の塔の拷問部屋を使わせてやる。先に行って準備しておれ。ワシの用が済んだらそっちへ運んでやるわ」

 

「お、あの部屋かぁ、いいな!早く頼むぜ親父!」

 

そう言ってウキウキと西の塔へ向かうゲスガー。

その姿を見送ったファンダリルがリカオロスト公爵へ視線を向けた。

 

「・・・いいんですか?西の塔って。()()が発進する時に・・・」

 

「構わんよ、むしろ都合がいいじゃろう」

 

ファンダリルが言い終わる前にリカオロスト公爵はセリフを遮って答えた。

 

「都合がいいんですか?」

 

「子供なんぞ、()()()()()()()()いくらでも作ればいいんじゃよ」

 

くっくっくと笑うリカオロスト公爵。

明らかに建物の崩壊とともにゲスガーを見捨てるつもりなのだ。

その目に光る狂気にゾクリと震えるファンダリルであった。

 

 

 

 

地下室の一室でイリーナをベッドに仰向けに寝かせると早速儀式呪文の準備をするファンダリル。

 

「すでに大量の魔石も食料も積み込んでありますから。封印された起動キーを四つ解除できれば、稼働できるはずです」

 

「フォッフォッフォッ、楽しみなことじゃて」

 

愉悦に浸るリカオロスト公爵。

その顔を見るとやる気が失せるので目を逸らして儀式に集中を始めるファンダリル。

 

「最後の≪魂の鍵≫(スピリチュアルキーナンバー)・・・やっと手に入る」

 

そう呟いたファンダリルは右手に持った杖を振り上げる。

 

「ゴーデル・ソーレルレイル・グーダン・コーネリル。深淵に眠る純粋なる力よ。封印されし閉ざされた扉を開く鍵を我が手に与えたまえ!<具現召喚>(コーリング・リアリゼーション)

 

イリーナのベッドの下に大きな魔法陣が完成し、光があふれたかと思うと、イリーナの胸のあたりに光り輝く数字が浮かび上がる。

 

「出た!出たぞ!」

 

興奮しながら羊皮紙に慌てて浮かび上がる数字を書き入れるファンダリル。

 

「よし!これで≪魂の鍵≫(スピリチュアルキーナンバー)が四つ揃った!これで可動できる!」

 

早速移動しようとして、ゲスガーの子飼いの男たちに呼び止められた。

 

「この女、もういいのかよ?」

 

「ああ・・・そういやゲスガー様が早く寄越せって言ってたなぁ・・・」

 

アレに渡すのは人としてどうなんだとは思えども、だからとしてイリーナを助けようとも思わないファンダリル。

 

「西の塔にゲスガー様がいるんだろう?運んでやれ」

 

「わっかりました!」

「女を運ぶのは楽しいねぇ」

 

ウキウキしながらイリーナを運ぼうとする男たち。だが・・・。

 

「な、なんだ?」

「コイツ、体がヌメッてるぞ?」

 

「なんだと?」

 

男たちが気味悪がってイリーナから一度離れる。

先ほどまでは特段異常はなかったはずだが・・・。

ファンダリルに嫌な予感が過る。

 

「おい、麻の布を持ってきて、包んで縛り上げてから運べ。何か嫌な予感がする。その女に絶対に手を出すな。ゲスガー様に首を落とされたくなければな」

 

「わ、わかった・・・」

「言われなくても、こんな気持ち悪いオンナ手をださねーよ・・・」

 

急に怖気出す男たち。

 

(きっと、あの女の体に危機が迫ると何か防御手段が発動するように、手が打たれているのかもしれない)

 

使役獣が強いだけの男かと思ったが、どうもあの男は何かがヤバい。

そうファンダリルのカンが警鐘を鳴らす。

 

()()が動けば、もう怖い物は無い。あの男も木端微塵にしてやればいい)

 

ファンダリルはほくそ笑んで()()に乗り込んだ。

 

 

 

「おおっ!ファンダリル!≪魂の鍵≫(スピリチュアルキーナンバー)は揃ったのか!」

 

「ええ、揃いましたよ。大丈夫です。早速稼働させましょう。かつてこの大陸を僅か三艦で滅亡寸前まで追い込んだうちの一艦、この、魔道戦艦≪ヒューベリオン≫」をね!」

 

ファンダリルは興奮しながら、封印が施された艦橋のコントロールパネルに四つのキーナンバーを打ち込んで行く。

 

そしてその封印は解かれ、コントロールパネルに光が灯る。

 

「やったぞ! すでに大量に魔石を動力炉に詰め込んである。これで動力は確保出来ているはずです!」

 

「よし!早速動かそうではないか!早く王国の馬鹿どもに見せつけてやろう!我が真の力をな!」

 

リカオロスト公爵が我が力などと気勢を上げると、ファンダリルは鼻で笑いたくなった。

凄いのはお前じゃない、この魔導戦艦であり、その封印を解除するキーを集めた俺が凄いんだろうが。

だが、それを口にしても得にはならない。それよりもファンダリル自身も早くこの魔導戦艦を動かして世界を席巻したかった。

 

「魔導戦艦、稼働スタート! 魔力充填開始! 動力炉出力十パーセント・・・二十パーセント・・・三十パーセント・・・」

 

ファンダリルはエネルギーの計器を見ながら確認していく。

 

「動力炉出力六十五パーセント・・・発進できます」

 

「よしっ!発進じゃ!」

 

ファンダリルの報告にリカオロスト公爵が腕を振って騒ぎ立てる。

 

「甦れ! <古代魔法科学時代(インダストリア)>の<失われし魔法技術(ロスト・テクノロジー)>! 魔導戦艦ヒューベリオン、発進!」

 

ファンダリルがレバーをグイッと倒すと、魔導戦艦ヒューベリオンは天井を突き破って浮上を開始する。

 

「ファッハッハ、城が瓦礫の山に変わって行くわい」

 

今まで自分の居城だった建物が瓦礫に変わって行くのに、何が楽しいのか全く分からないファンダリルだったが、今は何より魔導戦艦を動かすことに集中しようとした。

 

「おい、ファンダリル。ワシの城に魔動砲を打ち込め!」

 

「な、なんですと?」

 

ファンダリルは聞き違えたのかとリカオロスト公爵の方を見た。

 

「試し打ちじゃ!それに、見られればまずい物もたくさんあるからのう」

 

城の財宝は積めるだけこの魔導戦艦に積み込んだ。

城にはその残りとはいえまだ多くの財宝が残っている。

だが、ファンダリルはもうあまり深く考えないことにした。

 

ゴウンゴウンゴウン

 

独特な動力音のする魔導戦艦が空中で旋回する。

 

「魔動砲、発射準備! 出力チャージ十パーセント・・・二十パーセント・・・三十パーセント・・・」

 

「ホホホッ!エネルギーが溜まって行くわい!たまらんのう!」

 

「城を吹き飛ばす程度でいいなら、四十パーセントもあれば十分でしょう・・・。出力チャージ四十パーセント、魔動砲発射!」

 

ゴウッッッッッ!!

 

そしてエネルギー波が着弾する。

 

ズドォォォォォォン!!

 

一瞬にしてリカオローデン城が灰燼と化し、大きな穴も開いて、後ろのミスリル鉱山も大きく崩れている。

 

「カッカッ!この威力!たまらんたまらん!これでクソ生意気な小僧も面倒な王家も一網打尽じゃ!」

 

そして、リカオロスト公爵はその進路を王都バーロンへ向かうよう指示をする。

 

「王都の城へ魔動砲を打ち込んだら、降伏を勧告するかのう」

 

「打ち込んでから降伏勧告ですか・・・嫌味ですね」

 

黒い笑みを浮かべながら二人の男たちは今後の予定を話し合った。

 

そして魔道戦艦は再度空中で旋回すると、一路王都バーロンへ向かい始めるのであった。

 




捕らぬホーンラビット<一角兎>の角算用 ⇒ 捕らぬ狸の皮算用 です(爆)

今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
よろしければ評価よろしくお願い致します。
大変励みになります(^0^)
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