転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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閑話28 “その時”を見た人々

-王都バーロン-

 

 

「眠れないのですか? あなた・・・」

 

王城のバルコニー。リヴァンダ王妃は両手にワインの入った金属グラスを持ってやって来た。先客は彼女の夫でもある国王ワーレンハイドである。

 

「そうだな・・・さすがに眠れん・・・もしかして三日後にはこの王都が魔導戦艦からの砲撃を受けることになるかもしれん・・・となればな」

 

暗い顔をしながらそう呟く夫の顔を覗き込みながら、右手のワインを差し出すリヴァンダ王妃。

 

「私たちにはありがたいことにカッシーナが見染めた英雄様がついていらっしゃるわ。それも精霊王スライム神様のご加護を持つ・・・ね。だから、心配は日が昇ってからにしましょう。それまでは少しでもお休み下さい」

 

ワーレンハイド国王はリヴァンダ王妃の肩をそっと抱いた。

 

「そうだね、ありがとう。本当に君が王妃として僕のところに嫁いで来てくれてよかったと思っているよ」

 

ワインのグラスをスッと差し出すワーレンハイド国王。

そのグラスにチンッとぶつけると、少し照れたのか赤みの差した頬でリヴァンダ王妃が微笑む。

 

「妻を酔わせてどうするおつもりですの?」

 

少しばかり妖艶な笑みに変わったリヴァンダ王妃にドキッとしたワーレンハイド国王だが、次の瞬間、凄まじい異変を感じた。

 

「な、なんだ、空気が震える・・・」

そして、足元にも振動が伝わって来る。

 

「大地も震えてますわ・・・」

 

リヴァンダ王妃が不安な表情になる。

 

「大丈夫だ」

 

ワーレンハイド国王はリヴァンダ王妃の肩をしっかりと抱いた。

次の瞬間、

 

カッッッッッ!!!

 

「眩しい!」

「あ、朝日!?」

 

だが、朝日にしてはあまりにも眩しい閃光とも言うべき光に二人は驚きを隠せない。

 

「今のは一体何だったんだ・・・?」

 

二人がそれについて知ることになったのはしばらく後の事だった。

 

 

 

 

 

-城塞都市フェルベーン北 ミノ娘の村-

 

 

チェーダは胸騒ぎがして日が昇る前に目が覚めてしまった。

 

ヤーベが食料を置いて王都に用があると戻って行ってすでに一日半が経とうとしていた。

実際、ヤーベは翌日用があるが、なるべく早めに戻って来ると言っていたわけであるが、すっかり恋する乙女になってしまったチェーダにしてみれば、愛しいヤーベに会えない時間がすでに一日半も過ぎた、という感覚であった。

 

つい王都の方角を見て両手を胸の前で組むチェーダ。

 

「何してるの? チェーダ」

 

声を掛けてきたのはミーアであった。

 

「あ、いや、別に・・・」

 

「王都の方を見て両腕組んで祈る様に見つめて、別にも何もあったもんじゃないわよ」

 

腰に両手を当て、笑うミーア。

 

「みんなの中で一番がさつでお寝坊さんだった貴女がね・・・」

 

「な、なんだよ! オレが早起きするのがそんなにおかしいかよ!」

 

「いいえ、別に。恋する乙女は変わるんだなって」

 

ぷりぷり怒り出すチェーダを宥める様に話すミーア。

チェーダは顔を真っ赤にする。

 

「いいと思うよ? 相手を心配するのも、心配して胸が苦しいのも、恋する乙女の特権なんだから!」

 

元気出せーとでも言うかのようにウィンクしながら肩をパンパン叩くミーア。

 

「うん・・・」

 

その時だった。

 

遠く、王都より北の方角で、強烈にまばゆい光が放たれるのを見た。

 

「すごい・・・なんだろうね? 今の光」

 

ミーアは首を傾げたが、

 

「ヤーベ・・・」

 

チェーダは何故かその光にヤーベを感じていた。

 

 

 

 

 

-ドラゴニア王国-

 

 

「何か胸騒ぎがする・・・」

 

ドラゴニア王国、国王陛下バーゼル・ドラン・ドラゴニア八世は浅い眠りから覚醒した。

 

「これほどまでに余の胸をざわつかせる何かが起こっておるというのか・・・」

 

チリンチリンとベルを鳴らす。

 

「お呼びでしょうか? バーゼル陛下」

 

「眠れぬ。ワインを持て」

 

「畏まりました」

 

恭しく頭を下げる女性給仕。

 

バルコニーに出て冷たい空気に触れる。

 

「一体この胸騒ぎはなんなのだ・・・」

 

腕を組みながら何の気なしに空を見つめる

 

「な、何なのだ!あれは!」

 

次の瞬間、まばゆい閃光が空を駆け抜けていく。単なる光ではない。圧倒的なまでに濃密に加圧された魔力の塊に見えた。

それが夜明け前の暗い空を切り裂いた。そして、その光も消え去る。

 

「陛下、ワインをお持ち致しました」

 

「すぐに当直の執務官に国防大臣と国務大臣、軍務大臣を呼ぶように伝えろ! それから竜騎士団の団長もだ!」

 

「い、いかがなされました陛下?」

 

「早くしろ!」

 

「は、ははははいっ!」

 

慌てて当直の執務官が詰める執務室へ走り出す女性給仕。

 

「厄災の前触れでなければいいが・・・」

 

バーゼルはまだ日が昇らぬ東雲の空を見上げた。

 

 

 

 

 

-ガーデンバール王国-

 

 

「あら、セルシオ様、いかがなされました?まだ夜が明ける前ですが?」

 

早く起きた王太子であるセルシオに後ろから声を掛けたのは妻であるコーデリアだった。

コーデリアはワーレンハイド国王とリヴァンダ王妃の長女であり、カッシーナの姉でもある。

約1年前、隣国バルバロイ王国より嫁いできたコーデリア。ガーデンバール王国としても隣国であるバルバロイ王国との好みが結べるのは願っても無いことであり、コーデリアの輿入れは諸手を挙げての歓迎ぶりであった。

 

「うん、少し胸騒ぎがしてね・・・目が覚めてしまったよ」

 

セルシオは少し長めの金髪をかき上げながら振り向いて愛する妻を見た。

死ぬほどのイケメンぶりにモテない男たちからすれば「リア充爆発しろ!」の大合唱であろう。

 

「何か・・・お飲み物を用意しますか?」

 

コーデリアが隣まで来てその顔を覗き込む。

 

「いや、君がいてくれるだけで十分だよ」

 

そう言ってセルシオはコーデリアの肩を抱いた。

 

その時である。

 

カッ!

 

まばゆいほどの光が溢れ、閃光となって遠くへ消えて行った。

 

「キレイ・・・」

「そうだね」

 

二人は平和であった。

 

 

 

 

 

-某国 山間部 某村-

 

 

「おら、竜の神様に生贄に捧げられる事になっただ」

 

薄い巫女衣装一枚だけを羽織った幾分幼さを残す少女は、両親に最後の別れを告げていた。

 

「すまない、マリナ。お前だけに負担を強いる事になってしまって」

 

村の長老の一声で生贄はマリナに決まった。飛来する竜に生贄として食べられれば村は見逃してもらえる、そういう説明だった。

母親はずっと泣いていた。できる事なら我が子と代わってやりたかった。だが、この寒村では長老の言う事は絶対であった。

 

マリナは井戸の冷たい水を三度、頭から被り身を清めると、竜の祭壇と呼ばれる村の高台へ向かった。

 

(もうすぐ、竜の神様が来て、私は食べられちゃうのか・・・)

 

マリナは今までの人生を振り返っていた。もっとたくさん両親と話したかった、友達と話したかった。山奥の高地にあるこの村では、生きるだけで精一杯の毎日であったが、それでも今ここで自分の人生が終わってしまう事は残念でならなかった。

 

そして、ついに竜が姿を現す。それは神、といより邪悪な悪魔に見えた。高い位置を旋回して飛び回り、派手な咆哮で村人たちを威嚇した。

 

マリナは思わず目を瞑るが、思い直して、カッと竜を睨みつけた。

 

(食べられるその瞬間まで、目を離さない!)

 

理不尽に生贄に選ばれたからか、そんな強い意思で竜を睨みつけた、その瞬間。

 

ゴウッッッッッ!!

 

横から来たまばゆい閃光が竜を包み込んだ。そして光は通り過ぎた。

 

「え?」

 

マリナは見た。閃光が消え去った次の瞬間、あれほど天空の覇者の如く飛び回っていた竜の体が消滅していた。羽も、尻尾も。

そして、首だけが空から落ちてきた。

 

ドズゥゥゥン!!

 

竜は首だけになって死んでいた。マリナは何が起こったのか、すぐに理解できなかったが、あの光が竜をやっつけてくれて、自分が生き延びる事が出来たことだけは理解することが出来た。

 

ちなみに、隠れて見ていた長老はその近くに首が落ちてきたことにびっくりしてぎっくり腰を発症し、長老の座を後進に譲る事になった。




大して内容の無い話ではありますが、バルバロイ王国の周りの国の紹介がメインといったところです。

今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
よろしければ評価よろしくお願い致します。
大変励みになります(^0^)
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