転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第198話 旧リカオローデンの町を復興しよう

奥さんズとリーナに教会の懺悔室で嬉しいO・SHI・O・KIタイムを過ごしてから、外に出ると、立派な馬車に繋がれたローガがいた。

 

「なるほど。お前が奥さんズやリーナを連れて来てくれたのか。この馬車は鍛冶師のゴルディン殿に依頼していた物が納品されたのか」

 

『ははっ! どのように向かうか相談しておりましたところ、丁度良く納品に見えられましたので、即出発致しました』

 

「それはゴルディン殿も驚いたことだろうな」

 

『ボス!我も奥方様と同じ気持ちです!どんな些細な事でも、どんな危険があっても、ボスのお力になりたいんです!もっと我らの力をお使いください!』

 

ズズイッっと迫って来るローガ。迫力あるな。

しまいに俺の腕を咥えて甘噛みしたかと思うと、ベロベロと人の顔を舐め回してきた。

やめろっての!唾液塗れじゃねーか!

仕方ないのでモフり倒してやった。

 

日も落ちたところで、篝火を焚いて教会前で炊き出しを行った。

奥さんズやリーナも手伝ってくれたおかげで、たくさんの人が集まっても対応することが出来た。またまた感謝せねばならない。

 

再び懺悔室でみんなと就寝し、朝起きてみると、続々と狼牙達が荷駄を引いてやって来ていた。

 

「どうしたんだ?」

 

先頭の風牙に聞いてみると、荷物の中にコルーナ辺境伯とワーレンハイド国王からの手紙が入っているとの事、早速奥さんズの面々と読んでみる。

 

「なになに・・・ええと、今回の手柄を持ってヤーベ・フォン・スライム伯爵の領地について、旧リカオロスト公爵領全域及びカソの村を含む北西の魔の森一帯をスライム伯爵領地とする。飛び地になるけど頑張ってね! by国王。なんじゃこりゃ―――――!!」

 

「ええっ!? ヤーベは領地をそんなにたくさんもらえるのか? 凄いじゃないか!」

「お父様より土地が広いですわ!」

「カソの村もヤーベさんの領地に!やった!実家もヤーベさんの領地だー!」

「ふふふっ、さすがは旦那様。これで領地経営に乗り出してさらに大儲けですわ!」

「ふおおっ!ご主人しゃまバンザ―――――イ!!」

 

イリーナ、ルシーナ、サリーナが驚きと共に喜んでいる。

フィレオンティーナよ、領地経営しても大儲けできないぞ? 大体ラノベの展開として領地経営で大儲けしているのはチート内政野郎か、悪徳貴族のどちらかだ。そして俺はノーチート野郎だから内政無双は一切できませんとも、ハイ。

うーむ、後、今回に限ってはなぜかリーナの万歳がとてもしっくり来てしまうのは何故だろう。

 

「領地経営なんて、俺みたいな素人が出来るわけないだろうに」

 

俺は深々と溜息を吐く。

 

「あら、弱気ですわね旦那様」

 

フィレオンティーナが面白そうに俺の顔を覗き込む。

 

「そりゃそうだよ。俺の両肩に君たちだけじゃなく、多くの領民の生活が乗るんだよ? そんな責任は負えないよ」

 

げんなりした表情を浮かべる俺。望まぬ陞爵を受けてしまった俺だが、だからといって領地経営はないんではなかろうか?

 

「それほど心配する事はありませんわよ? きっとリカオロスト公爵領であれば、すでに今まで働いていた実務経験者がたくさんいるでしょうし、指針とたまの視察でしっかり管理しておけば問題ないかと。後は不正を取り締まる体制があればなんとかなるかと思いますよ」

 

フィレオンティーナがニコニコしながら答えてくれる。

あれ~、この人、Aランク冒険者の雷撃姫で、その後売れっ子占い師だったはずなんだけど?どうしてこれほどまでに政治に精通してるのかしらん?もしかしてウチの奥さんズの中でも最もミステリアスな人?

 

そう言えば、出目がはっきりしているのは王族のカッシーナと伯爵家令嬢のイリーナ、辺境伯家令嬢のルシーナ、ザイーデル婆さんの孫娘サリーナの四名か。

フィレオンティーナの出身については聞いたことないな。いいのか、そんなんで、俺。

リーナもそうだけど、どこかのタイミングで話を聞かないと・・・。

でも、俺の話はしづらいんだよな。スライムの姿は見せたけど、自分が何者かはっきりわからないって伝えただけだからな。異世界転生者?って言ったらどんな感じだろうか?

ヘンなヤツ、で済めばいいけど。

 

「はい、これ。こちらはお父様からの手紙の様です」

 

「ありがとう」

 

早速手紙を読んでみる。

 

「ええと・・・なになに・・・、ヤッホー、ヤーベ卿元気? 王様より旧リカオロスト公爵領復興のためのとりあえずの物資を用意してもらったよ~。家にいた狼牙達に相談したら運んでくれるっていうから、みんなに荷駄を引いてもらって向かってもらったからよろしく! それから旧リカオロスト公爵領とカソの村を含むソレナリーニの町の北西一帯がヤーベ卿の領地になったよー! 俺の方はソレナリーニの町から南西に向かって沼地や草原を開発して行くようになるから、協力して対応して行こうよ~、ソレナリーニの町の代官であるナイセーには内政官の登用増員を指示してあるから、カソの村に帰った時には確認しておいてくれよな! byフェンベルク・フォン・コルーナ・・・って、なんじゃこりゃ―――――!!」

 

「どうされたのですか?」

 

ルシーナが首を傾げて聞く。

 

「なんで君のお父さんはこんなに急にフランクでノリノリな人に変わったんだ!」

 

「ああ、それなら、魔の森一帯がヤーベ様の領地に変わったからではないでしょうか?」

 

「魔の森が?」

 

「以前から魔の森に住む魔物達の襲撃は大変な問題になっており、その防衛に対応するためたくさんの費用を割かねばならず、対応が大変だったと聞いております。その魔の森の開拓をヤーベ様が担当されるとなったわけですので・・・」

 

「やっかいな場所を押し付けられてるじゃん!」

 

俺は再びげっそりした。

 

「まあ、その通りかとは思いますが・・・、ローガさんたちの力もあって、魔物狩りは得意だと思われているのではないでしょうか・・・?」

 

コクンと小首を傾げながら人差し指を唇に当てて話すルシーナ。カワユス。

 

「何故かテンションの高いコルーナ辺境伯がウザいけど、この分ならルシーナをお嫁さんに下さいって話を聞いてもらえそうだな」

 

「えっ!? お嫁さん・・・」

 

顔を真っ赤にしてクネクネしだすルシーナ。

ああ、いかん、クネクネしているルシーナを見てほっこりしている場合じゃない。狼牙達が運んできた物資を分けないと。

 

狼牙達が運んで来た物資は、王都で用意してくれた日持ちする食料や毛布などの衣類、薬草などの医療品系の荷物が大半だった。これらを奥さんズの面々と仕分けしながら、教会や冒険者ギルド、この街の内政官だった人たちを集めて分配していく。

 

空になった荷駄を使って、リカオロスト公爵の館の瓦礫を撤去する作業も行っていく。瓦礫は街の外に運んで、ひと塊にしてとりあえず積んでおこう。

 

ひっきりなしに狼牙達が荷駄を引いて瓦礫を町の外に運んでは戻って来る。町の人たちも元気に瓦礫撤去などを手伝ってくれる。

そして昼や夜がくればまた炊き出しだ。

休む間もなく俺や奥さんズやリーナ、ローガ達も働きづめだ。

だが、みんなが一生懸命働いてくれるせいか、住んでいた地元の人たちとの交流も非常に歓迎ムードでいい感じだ。もともとリカオロスト公爵の統治は悪くはないものの税金は高めで、弱者を切り捨てる傾向にあったと言う。それに息子たちの評判は最悪で、領主が変わってこれで平和になればいい、とすごく前向きだ。奥さんズの面々も新しい領主の妻だと教会関係者や冒険者ギルドのオッサンたちが触れ回ったので、そんな人たちが一生懸命働いているととても好意的に受け止められている。

なぜかリーナが俺の娘になっていたが、違うから。そこ、リーナも自分で訂正しなさい。なんで嬉しそうなの?

 

仮庁舎として、政務担当者が仕事を出来る場所を用意するべく、ベルヒア姉さんに力を借りて、土で出来た建物を一気に立てる。真四角のビルの一階みたい。テーブルも椅子もみんなベルヒア姉さんの力で作っちゃう。とりあえずだけど。

 

一部被害のあった住宅街も俺様のスラブルドーザー(ただ単に一気食いしただけ)で更地にした後、ベルヒア姉さんの仮設住宅チックな箱ものをたくさん立てて、しばらくこれで凌いでもらおう。

 

そんなこんなで、やって来てから三日間。働きづめだが、街自体はだいぶ落ち着いた感じを取り戻した。

 

リカオロスト公爵の館があったところは地下室もたくさんあったため、一定の瓦礫を取り除いた後は作業を止めている。何処に空洞があるかわからないしな。少し時間をかけて調査が必要だろう。

教会と冒険者ギルドは瓦礫を撤去した後、応急処置をした上でとりあえず復旧させ、運営を再開している。建物の完全修繕はまだまだ先の事だろうが、そのあたりはゆっくり打ち合わせしよう。

 

それにしても献身的に働く俺の奥さん達。リーナも甲斐甲斐しくお皿を運んだり片付けたりしている。さっきも思ったのだが、おかげでここの領民たちにすごぶる評判がいい。おばちゃん達には何なら俺よりも受けが良さそうだ。

 

今も食事後の片付けなんかを地元のおばちゃん達と一緒になって行っている。

 

「あら~、新しい領主様の奥さん、いっぱいいるのね~」

「そうなのだ、みんなに負けない様に頑張らないといけないのだ」

「夜の方も、頑張らないとね!」

「実は・・・それは一歩リードしているのだ」

「「「きゃ――――!」」」

「む、負けませんわ、イリーナさん!」

「フィレオンティーナさん」

「あらあら、そういう時はね、みんなでこんな格好で・・・」

「「「フムフム」」」

「そして、こんなポーズで・・・」

「「「な、なるほどなるほど」」」

「そして、ここをこうして、“ズギューン”で“バキューン”して・・・」

「「「ななな、なんと!!」」」

 

・・・一体、何の会話をしているのだ・・・。領民と仲良くなることは良い事だとは思いながら、なぜか不安を感じることになった。

 




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