転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「い、いや・・・ちょっと待って・・・マジ、意味わかんない。ミル姉さん、パパってなによ、パパって」
俺は必死に弁明するが、ミル姉さんは幸せそうに双子を抱いたまま、「パパ来たよ~」と赤子をあやしていて、俺の言う事を聞いてくれない。
「さあ、ヤーベよ、覚悟はいいか?」
「ヤーベ様、断罪の時ですわ」
イリーナとルシーナが並んで俺の前に立つ。
こうなれば、学生時代に友人たちを黙らせたあの必殺技を出すしかねぇ!
俺はガバッと両腕を振り上げて、そのままの勢いで前にバターンと倒れる。受け身なしだ。
「しゅ、しゅみまっしぇーん!」
五体投地! またの名を土下寝とも言う。
これ以上頭を低く出来ない状態で謝罪だ!
学生自体の友人はだいたいこれで呆れて許してくれたものだ。
なかなか真っ直ぐピンピンに五体投地するのは難しいのだ。土下寝は美しくあれ!が基本だ。
「・・・何をしている、ヤーベ」
「いきなり寝て誤魔化せるとでも?」
ハレッ? 俺様の五体投地が通用しないだと・・・
確かこの世界でも土下座を見たぞ・・・、えーと、そうだスペルシオ商会のスタッフが土下座してたよ。なんで俺の五体投地は通用しない?
ま、まさか土下座の習慣は商会のような商人たちの間だけでしか通用しないのか!?
貴族に土下座はないのか!? まして土下寝はただ、地面にうつぶせに寝ているだけなのか!?
俺は慌てて起き上がる。
「いや、今のは五体投地と言って、古来より伝わる伝統の格式高い謝罪方式・・・」
だが、しかし! イリーナはにっこり微笑んで俺の胸倉を掴む。
「ヤーベ、ギルティだ」
見ればナックルに見えたのはガントレットだ。しかも両腕に装着されている。
「あたたたたたたたたたたたたたたたた!!!!!」
ドドドドドドドドッ!!
「ひでぶっ!」
どこかのケン〇ロウよろしく、百裂拳を放つイリーナ。
最近とみに思うのだが、イリーナの人外パワーは酷くなる一方ではないだろうか?
俺様のスライムボディがひしゃげて某漫画の如く破裂しそうになる。
よく見れば二本の腕の他に、俺のような触手も二本あって、四本同時に俺を殴っている。いつのまにイリーナが触手使いになったのか。
ボコボコになった俺をルシーナの死神の鎌が襲い掛かり、あっさりと手足が飛ばされる。
「ヤーベ! ヤーベェ!!」
俺の大ピンチにチェーダが泣き叫びながら俺の盾になろうと走り寄って来るが、<
いそいそと飛ばされた手足を拾ってくっつけていると、銀色に輝く巨大ハンマーを抱えたサリーナがこっちを見ている。
サリーナよ! それはシティー〇ンターの1〇0tハンマーなのか!? それともあり〇れのシ〇が振り回しているヤツか? どちらにしろ、ろくでもない目に合いそうだ!
「ヤーベさん天誅! くらえっ! 錬金ハンマー!!」
うわー! 振り下ろしはか〇りちゃんの方だった!
言ってる場合じゃねぇ!
ドコッ!
俺は後頭部をハンマーでぶっ叩かれ、某漫画よろしく地面にめり込まされた。
「やった! レア素材出た!」
ええー! 今俺のスライム細胞がチョッピリ殴られた勢いで飛び散ったとは思ったけど、俺殴ってレア素材出すって、もうチートじゃん! 旦那の俺がノーチートなのに、錬金術師の孫娘とは言え、村娘のサリーナにチート能力が備わるなんて、大したものだと褒めたいけど、羨ましすぎるぅぅぅ!!
大体、ハンマーで殴って飛び散った俺のスライム細胞がレア素材に化けるってどういうことだ。これはまさか、他の奥さんズの武器もそうだが、ゴルディンのオッサンが一枚どころか百枚くらい噛んでるんじゃねーか? 王都に帰ったらゴルディンのオッサンの工房に殴り込みじゃ!
そしてO・SHI・O・KIタイムの大本命とダークホース改め裏番長の二人が構えている。この二人はマジでヤバイ。死ぬかもしれん。事実リーナの<
そして俺の前にはゴツイ魔杖を構えたフィレオンティーナが登場する。
「天空に散らばる数多の精霊たちよ!我が声に耳を傾け、その力の行使を神々に問う!」
この詠唱長いな!あの、<
「星々を束ねる黄昏の神々より、その
ヤバイ・・・
絶対普段使っちゃダメなやつじゃん!
「数多の精霊たちよ、黄昏の神々より導かれし子らよ! その力を行使し、神を導き指し示せ! 我は願い奉る!雷神よ、その槌を解き放て!」
「げえっ!?」
「<
ドシャァァァァァ!!!
スパイラル状に導き下ろされる雷神の槌は、まるでダウンバーストを起こすかの如く強力な風の力を纏った雷撃となった。
「ぎょわわわわわわ!!」
低温、真空、そして雷撃による損傷熱。あらゆるダメージの総合デパートのような呪文だな。
本来ならば大群を相手にした広範囲殲滅魔法だろう。
その出力は9億2400万メガワットくらいある気がする。
おかげで俺のスライムボディ表面はパリパリに焦げ付いている。
恐るべしパワーだ。
だがしかし! <
なんとスーパーリーナさんモードのまま行くんですね!?
「深淵に眠る黒の鼓動よ! 黄昏よりも暗き闇の王に願い奉る!」
言葉が難しいよ!リーナたん!いつものでしゅましゅ言葉に戻って来て!カムバーック!!
「慟哭の闇深きサロモルシアの祭壇にかかげる血肉にかかりて、その
詠唱なげーよ! どんだけの威力なんだよ! 後詠唱内容がヤバすぎる!
「彼方より現世における
いや待って!ホント!俺、全然
「<
「いやあああああああ!!」
今が夜なら、間違いなく空に輝く北斗七星の横に、死の運命に捕らわれた者だけが見えると言う不吉な星が十個は見えるだろう! 本体の七つ星より多いやんけ!!
黒き魔の力を凝縮したような剣が俺に突き刺さり、体を真っ二つに切り裂く。
その闇のエネルギーは切り裂いた俺の内側から瞬時に蒸発されるだけのパワーがある。瞬間、自分の
しかも現在進行形で俺の細胞を喰らい尽くそうとしている。
呑気に喋っているように感じるかもしれないが、ここまでリーナの魔法が炸裂してから0.02秒しか経っていない。
このまま何もしないと、俺の体は0.8秒後に蒸発して消えて無くなってしまう。
対処が必要だ。それも早急に、しかも強力な方法でだ。
どちらにしても、この闇のエネルギー、地表に受け流すにしてもあまりにデカすぎて大地に多大な影響が出る。ならばどうするか? 答えは神ラノベにある。そう伏〇大先生の大傑作、転〇ラである! 伏〇大先生アリガトゥゥゥゥゥ!!(超久しぶり)
闇の魔法とはいえ、魔力エネルギーなんだから、喰らい尽くせばよいのだ。
そう、気分は捕食者だ。
「いくぞ!<
ギュオォォォォ!!
荒れ狂う闇の波動が俺のスライム細胞内で暴れ回る!
やっぱリ〇ル大魔王様みてーにスッキリとはいかねーよな!
なんたってこちとら地道にノーチートで踏ん張っている身ですからね!
取り込んだ闇のエネルギーがボッコンボッコン暴れ回ってスライム細胞自体が形を変えるが、何とか自身の魔力
ぐるぐる
エネルギーに変換して抑えていく。
「・・・抑えきった・・・」
ぼふっと口から白い煙を吐いて俺は大の字で仰向けに倒れた。
「そうかー、何だかおかしいと思ったよ」
「そうですね、ヤーベ様がそんなことするわけないですものね」
「おかしいと思ったらまず止めろよ! そんなことするわけないと思ったら輪切りにしないでよ!」
イリーナ、ルシーナの言葉にプンスカ怒る俺。
えへへって可愛く笑ってもダメだからね!
「私は最初からヤーベさんのことは信じていましたけどね」
「その割に巨大ハンマーで天誅ってぶん殴ってくれたよね!」
「ぴゅ~ぴゅ~ぴゅ~」
サリーナも下手な口笛吹いて誤魔化したってダメだからね!
「でも、ヤーベさんの体からすごいレア素材出るんだね~、毎日ちょっとずつ殴っていい?」
「いいわけあるかっ!」
「ちぇ~」
ちぇ~じゃねぇ! マゾに目覚めたらどうしてくれる!
「オホホホッ! さすがは旦那様ですわ。お見事な耐久振り」
「褒められても全然嬉しくないわ!」
可愛くオホホホ笑いしてもダメだからね!
それにしても超強力な雷撃でスライム細胞が炭化する寸前だった。
魔力防御しなかったら完全に黒焦げで消し炭の完成だったぞ。
正しく<
というか、ハンマー続いてない?
「ふおおっ! ご主人しゃま!ご無事で何よりでしゅ!」
「ええ、ええ!ご無事ですとも!ヨカッタデスネー」
ついついリーナにも捻くれた口をきいてしまう。
どうもリーナ自身が意識下で放っている呪文ではないようだが・・・?
「ご主人しゃま、また誰かにやられたですか? 痛いの痛いの飛んでけーでしゅ」
リーナが拗ねてる俺の頭をなでなでしながら痛いの痛いの飛んでけーしてくれる。
悪くない、ムフフ。
いつまでもリーナに撫でられてにへへーと笑っているわけにもいかない。
リーナならともかく、俺がにへへーと笑っているつもりでも、傍から見ればでへへーと笑っている危険なオジサンに見られかねない。事案発生だ。
「で、ミル姉さん。何で俺をパパなんて呼んだのさ? 迷宮で助けた恩を完全に仇で返されて死に掛かけちゃったよ?」
「ごめんなさいね? でも、気持ち的にはヤーベちゃんはこの子達のパパだから・・・」
「いや、それがわからなくてね? 気持ち的にパパって言われても困るわけで・・・」
奥さんズとリーナがさっきからジトッとこちらを睨んでいる。
誤解は解けたようだが、いまだにパパの謎が解けていない。
「ほら、ヤーベちゃんが迷宮で私を助けてくれた時、迷宮内のミノタウロスはぜーんぶ吸収して退治しちゃったんでしょ? だから、私を襲って子供を産ませたミノタウロスも、ほら、ヤーベちゃんに取り込まれちゃったから、これはもうヤーベちゃんをパパと呼ぶしかないって思って」
「いやいやいや! そんなミノさん成分残ってないから! きれいさっぱり魔力分解して無に消えてるから!」
「えー、でもヤーベちゃんの中に取り込まれちゃったわけだし」
「いやいやいや、それはおかしい!おかしいと思いますよミル姉さん!」
俺は必死に弁明する。迷宮でミル姉さんを高速救出するために、ダンジョン無双したわけだけど、その時吸収したミノタウロスが父親だったからと言って俺が父親代わりになるのはいくら何でも無理があり過ぎるだろう!
「でも・・・そうすると、貴方たちのお父さんはヤーベさんに取り込まれちゃったから、ヤーベさんを拝んでパパと言いなさいねって教えないと・・・」
「教え方おかしいから! 大体その言い方だと、俺が大事なお父さん殺しちゃってる感じになってるから!」
「だから~、私と愛を育んだことにすれば~」
「育んでないから!」
「後から育めば一緒よ~」
「一緒じゃないから! 後、育まないから!」
「え~」
「えーじゃないし!」
プンスカ怒る俺に、後ろから奥さんズが言葉を挟む。
「つまり・・・なんだ。この人はミノタウロスに攫われて迷宮に捕らえられていたのを、ヤーベが助けたと」
「その時にもうミノタウロスの子が・・・」
「そのミノタウロスをヤーベさんが吸収して倒したことにより、迷宮から助け出されたんですね」
「あら? 旦那様はこのミノ娘さんたちを救った英雄では?」
「ふおおっ!ご主人しゃますごいでしゅ――――!!」
奥さんズの面々が俺を褒めてくれるが、さっきまでマジで俺の事殺そうとしてたでしょ!俺忘れないから!
「ヤーベ様、真面目な話、一つお願いがございます」
ミル姉さんが頭を下げる。ていうか、やっぱり今までの流れ、真面目な話じゃないんかい!
「騎士の物語の本を私にいただけませんでしょうか?」
「騎士の物語?」
「このミノタウロスハーフの男の子に、物語を聞かせてやりたいのです。そして立派な騎士になる様にと教育出来ればいいと思っています」
「ああ、王都で探してたくさん買って来るよ。たくさん読ませてあげるといい」
俺の答えに満足するように頷くミル姉さん。
ホント、最初からそんな感じで挨拶してくれれば死に掛けずに済んだのに。
見れば奥さんズの面々やリーナがミル姉さんの抱いている双子の赤ちゃんに興味津々で質問攻めにしている。
俺の子じゃないってわかったら現金なもんだね。
もしかして、俺だけものすごく貧乏くじ引いている気がするのはなぜ!?
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
よろしければしおりや評価よろしくお願い致します。
大変励みになります(^0^)