転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第204話 仕事に出よう

俺は今、ある決意に燃えていた。

 

時間は夜明け前。夜の帳が明ける頃。暁の空を見つめながら、今日の自分の行動を決める。

 

 

 

昨日の夜―――――

 

メチャクチャバーベキュー大会で盛り上がってしまった。

色んな肉を出してカソの村の野菜も焼きまくった。

 

ミノ娘達の食いっぷりと言ったら、それはもう凄まじいものがあった。

イリーナやルシーナ、サリーナはだいぶ引いていた。

フィレオンティーナは荒くれ冒険者たちと一緒にいる事もあったせいか、それほど驚いていない様だったが。

 

そしてカッシーナまで連れて来て紹介したもんだから、会場は大紛糾した。

 

「ええっ!? ヤーベはこの国の王女様と結婚するのか!?」

 

ミノ娘達の中でも腰を抜かさんばかりに一番驚いたのはチェーダであった。

 

「というか、王国の伯爵様であらせられるのですか・・・」

 

パナメーラも信じられないと言う目で俺を見ていた。

 

「いや、まあ、貴族とかいう雰囲気に馴染んでないのは認めるけど」

 

「あ、いえ・・・そういう事ではなくてですね・・・」

 

ほっぺを人差し指でぽりぽりかきながら苦笑するパナメーラ。

他のミノ娘達もどうなるのだろうと不安顔だ。

 

「てっきりヤーベ様は成功された冒険者か何かなのかと・・・。まさか王国の伯爵様で王女様とご婚約中の偉い人だなんて思ってもいなかったので、私たちのようなミノタウロスハーフの亜人たちなど、相手にしているヒマがあるのかとか、もともと相手にしていて、いいものなのかどうか・・・」

 

パナメーラが心配そうな顔を向けて来る。

 

「んん? まさか王国がミノ娘達(きみたち)を差別するようなことはしないと思うけど? もし国王が何か言ってきたら腹パンで黙らせるから安心していいよ」

 

「いえ、ヤーベ様、出来れば腹パンの前にご相談いただければ大半の事はヤーベ様の思い通りになるかと思いますので・・・」

 

俺がにっこりと回答すれば、やんわりと俺の腹パンを止めるカッシーナ。まあ、腹パン相手はカッシーナのお父さんだからな、義父は大事にせねばなるまい。

 

OKOKと軽くゼスチャーで返す俺をあんぐりとした顔で見つめるパナメーラたち。

 

「いやはや・・・ヤーベ様はとんでもない規格外の英雄様なのでは・・・?」

 

ちらりとパナメーラがカッシーナに目を向ければ、「その通りですよ?」とあっさり肯定するカッシーナ。

 

「じゃ、じゃあヤーベは偉い人だから、俺みたいなミノタウロスハーフの妾はダメなのか?」

 

いきなり目に涙を溜めてグスグス泣き出すチェーダの頭をなでなでしながらにっこり微笑んでやる。

 

「全然ダメじゃないぞ? チェーダは可愛いと言っているだろう? もっと自信を持てばいい」

 

「ヤーベ!」

 

元気になってもらおうと、そう伝えてみればすぐに笑顔になって俺の左手を抱えて回り出す。

おいおい、元気になり過ぎだろ。

それを見ていたカッシーナがジト目で、

 

「ヤーベ様は『鈍感スケコマシ』と『天然タラシマン』のどちらの呼び名がよろしいですか?」

 

と聞いて来た。いや、なんだその恐ろしく人でなしな感じの二つ名は。

危うくトンでもない二つ名を付けられて広められる直前まで行った。

全くもって到底承認できない不可解さだ。

だが、カッシーナのO・SHI・O・KIモードが発動しなかったのは僥倖と言えよう。

 

しかし、油断は大敵であった。

バーベキュー大会も終わりに近づいた時、ミノ娘達の一人、ミーアが俺の傍へ来て、とんでもない事を小声で囁いた。

 

「ヤーベ様ぁ、今日はぁ、御搾りシテいただけないんですかぁ・・・」

 

 

ドキィ!

 

 

いや、シタいかシタくないかで言えばシタいんですが、どう考えても今はヤバいワケで。

 

ミーアの雰囲気を感じ取ったマカンやエイカもソロリソロリとすり寄って来る。どこかの狂言師か!

 

「ちょっと・・・どういうことなのでしょう?」

 

カッシーナのジト目に魔力が帯びる。あ、マズイ雰囲気です。

ふと見ればヒヨコ十将軍の一匹であるカラールや、先ほどご褒美に直接俺が魔力を注いだら<大地の従者(アースサーバント)>から<大地の騎士(アースナイト)>へ進化してしまった連中がスタコラサッサと逃げて行く。あれ?お前達おかしくない?俺を守るという最も大事な任務を放棄していない?

 

 

ヴァサッ!

 

 

なんと!カッシーナの背中に薄く輝くエメラルドグリーンの翼が生えたではないか!

どどど、ど-なってるの!?

 

他の奥さんズの面々やミノ娘達もボーゼンとしている。

 

「て、天使しゃんでしゅ!」

 

リーナが驚いて感動している。天使と言えば天使なんだが・・・。

 

「ヤーベ様・・・もしかして、搾乳と称して、この娘たちの巨乳を思う存分堪能なさっている・・・ということでしょうか・・・?」

 

ゴゴゴゴゴッ!と擬音が聞こえてきそうだ。

 

「あ、いや・・・これは彼女たちのためと言うか・・・医療行為と言うか、無資格だけど・・・おいしいミルクを手に入れるためには必要と言うか・・・・・・ハイ」

 

「ギルティです」

 

にっこりと死の宣告を行うカッシーナ。

 

ガシッ!

 

いきなり俺のバックをとったかと思うと、羽交い絞めにしてくる。

 

ドンッ!!!!!

 

凄まじい勢いで空へ舞い上がるカッシーナ。もちろん俺を羽交い絞めにしたまま。

 

ギュルルルルル!!

 

しかもものすごいスパイラル回転で上昇して行く。

コレ・・・もしかしてペガ〇スローリングクラッシュ!?

そして、錐揉みしながら地面に向かって一直線!

 

「ヤーベ様!反省なさいっ! フライング・カッシーナ・アタッ――――ク!」

 

ズトンッ!

 

まるで湖に逆さになっている八つ墓村の死人の如く、地面に刺さる俺。

それにしても、カッシーナに翼が・・・!? どういうこと? 後、必殺技のネーミングセンスがポンコツ過ぎる。

 

「カッシーナさん、それ・・・?」

 

イリーナが翼を指さすが、その時にはカッシーナの翼が消えていた。

 

「・・・何でしょう? これくらいではヤーベ様が全然死なないと分かって知っているような気がします・・・。不思議ですね。あまりヤーベ様を傷つけようなどとは思っていないのですが・・・?」

 

そう言って地面に刺さった俺のホコリをパンパンと払ってくれるカッシーナ。それでも地面から抜いてはくれないのね・・・。

 

理由ははっきりとはわからないが、奥さんズのメンバーは異常に戦闘力が増大していると言う事だ。それとは別にリーナのポテンシャルもヤバイ。

 

俺は地面に刺さったまま、これが良い事なのかどうか悩んでいた。

 

 

 

 

 

「こ、これは・・・?」

「こんな大きな屋敷に住むのか・・・?」

「何でもお風呂があるとか・・・」

「お風呂って何ですか?」

 

転移の門を開いて、ミノ娘達を連れて屋敷まで帰って来た俺達。

ミノ娘達は初めて見る巨大な屋敷に興奮気味だ。どうも風呂がどのようなものなのかわからない娘たちもいるようだから、イリーナたちにお風呂の入り方を享受してもらおう。

 

そして夜も更け、ミノ娘達が落ち着いた頃、奥さんズを呼び出して会議を行う。

もちろんリーナは俺のベッドで爆睡中だ。

 

「どうした?ヤーベ」

「もう休みましょうよ」

「ふああ~」

「もしかして・・・夜の同衾についてでしょうか?」

 

イリーナ、ルシーナ、サリーナ、フィレオンティーナがそれぞれの反応を示す。

 

「明日、コルーナ辺境伯家から引っ越しをする。今まで長期にわたってフェンベルク卿にはお世話になってきたわけだが、結婚式まで後二週間だしな。自宅に引っ越ししてしっかり準備をしていこうと思う」

 

「そうか、ついにマイホームでの生活だな」

 

「それで、ルシーナはとりあえず自宅に戻るか?」

 

「え?嫌です!みんなと一緒がいいですぅ!」

 

首をブンブンと振ってイヤイヤするルシーナ。

 

「フェンベルク卿が許してくれればいいけど」

 

「許してくれなければ腹パンしていいです」

 

「ルシーナちゃん、それはどうかと思うよ・・・」

 

ルシーナがフェンベルク卿に腹パンOKを出した事に若干引き気味のイリーナ。

 

「明日の引っ越しはローガ達に荷車を引かせて荷物を運べばいいから」

 

俺はすでに転移の門を開いてリカオロスト公爵領のリカオローデンの街で待機していたローガ達を王都の屋敷まで連れ帰っている。

 

「いいから・・・って、ヤーベはどうするのだ?」

 

イリーナが首を傾げる。

 

「引っ越しはイリーナが中心で指示を出してくれ。ゲルドンにも手伝わせてくれ。俺は別に用がある」

 

「用?」

 

「俺は・・・仕事をしてくる!」

 

俺は奥さんズを見回しながら、力強く宣言した。

 




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