転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第205話 異世界で仕事と言ったら冒険者ギルドで依頼を受ける事と同義なのだから、まずは薬草採取から始めてみよう

朝、朝食もとらずに日が昇った王都の町へ繰り出す。

奥さんズとリーナはちゃんと屋敷で朝食をとるように指示を出しておいた。

リーナはまだ爆睡中だったが、起きた時俺が居ないと泣くだろうか?

これもご主人様断ちの修行だな、うん。イリーナたちに任せる。

後、堂々とローガがついて来ようとしていたが、引越しの手伝いをするよう厳しく申し伝えてくと、死んだように萎れた尻尾で頷いていた。

 

俺の装備はドラゴンの皮で作った竜皮鎧と背中に背負った大剣だ。

ドラゴンの皮は属性竜サンダードラゴンの物を使った。三頭黄金竜(スリーヘッドゴールデンドラゴン)だと、金ぴかが派手でさすがに恥ずかしい。後は盾よりも両手剣を選んだ。その方がかっこいいというものだ。剣も属性竜サンダードラゴンの牙を粉末に加工したものをミスリルに練り込んで打ち据えて鍛え上げた技物らしい。雷竜(サンダードラゴン)三頭黄金竜(スリーヘッドゴールデンドラゴン)を狩った時に素材をゴルディンに渡して製作依頼をかけておいてよかった。最も、奥さんズにも最上級の、というかもうチート武器じゃね?というレベルのアイテムを渡していたことにはクレームを入れたのだが、ゴルディンはどこ吹く風だった。奥さんの要望だし、という事らしい。ならば俺の渡した素材ふんだんに使用しないでくれ。後、なぜ俺に請求書を回してくる。奥さんズに回せ。

・・・旦那のカイショー?異世界恐るべし!

俺がボコられるためのチート武器の製造に俺が金を出す!・・・なんか間違ってる気がするぞ!誰か助けろ!

 

それはそれとして、朝食を抜いて屋敷を出てきたからな、腹が減った。

 

「冒険者の朝は露店で買い食いと相場が決まっているものだ」

 

俺はそう呟きながらながら王都の冒険者ギルドに向かって歩いていた。

宿に泊まっていれば、宿の朝食と洒落込みたいところだが、なにせ王都に館を持つ身になってしまったからな、冒険者として活動する時は館で出してくれる洗練された朝食ではなく、屋台で買い食いが冒険者にはふさわしい。

 

早速アースバードの串焼きと、ワイルド・ボアのスラ・スタイルを買い込み、食べながら冒険者ギルドに歩いていく。

 

 

 

 

 

カランコロン

 

「常に鳴るな、この音」

 

王都バーロンの冒険者ギルドは過去いろんな町で見てきたどのギルドよりも立派で大きな建物だった。

 

「さすがに王都の冒険者ギルド、規模が違うな。入口の音は同じだが」

 

俺はキョロキョロと周りを見回す。

 

左手の大きな掲示板にはランクごとに依頼書が張り出されている。相当な数だ。てっきり王都周りの冒険者ギルドなんて魔獣がたくさん出るわけでもなし、依頼がたくさんあるなんて思っていなかったのだが、どうやら違うようだ。

 

「よう、坊主、お上りさんか? 王都の冒険者ギルドに圧倒されているようだが? なんなら俺が案内してやろうか? ただじゃねーけどな」

 

そう言って豪快に笑ったのは、左頬に大きな傷のある剣士だった。

 

「おいおい、新人ビビらせて何やってんだよ・・・それよか、王女様の結婚式まで後二週間しかねーんだぞ? 早く稼いで金を貯めておかにゃ祭りで楽しめねーだろうが、こんなビッグイベントに乗り遅れたらいつ楽しむんだって話だぜ」

 

ローブを着込んだ魔法使い風の男が文句を言っている。

なるほど、カッシーナとの結婚式は王国でも相当なイベントになるというわけか。王都全域で大掛かりなお祭りと言った雰囲気になるのね。

 

「ま、お上りさんである事には間違いないが、今は案内は遠慮しておくよ。受けてみたい依頼もあることだしな」

 

「そうか、無理にとは言わんが、まあわからんことがあったら何でも聞くといい・・・ただじゃねーけどな」

 

そう笑いながら手を振ってその場を去る男。憎めない奴だ。

 

それはそうと、さっそく依頼を受けてみよう。

初めての依頼・・・なんだがちょっぴりドキドキするな。

これから俺の異世界冒険者ライフが始まると思うと、胸が高鳴るというものだ。

 

そうして俺は一番低いFランクの依頼書の中から、ものすごく有名でよくある薬草の採取、という依頼書を持ってギルドの受付カウンターに並ぶ。

 

しばらく待って、やっと俺の番が回ってきた。

 

「この依頼処理を頼む」

 

「はい、依頼受理ですね。ええと・・・Fランクの「薬草採取」ですね」

 

幼さの残る少女のような受付嬢が俺の渡した依頼書を見て確認する。

 

「うむ、よろしく頼む」

 

「それでは冒険者タグを提示してください」

 

「タグ? ああ、冒険者の証明プレートね・・・はい」

 

亜空間圧縮収納から冒険者プレートタグを取り出す。

 

「はい、お預かりいたします」

 

そう言って何かの機械にかざす受付嬢。

 

「Fランク・・・ヤーベ様でいらっしゃいますね・・・ヤーベ様!?」

 

椅子から転げ落ちる受付嬢。どした?

 

「しょ、しょしょしょ少々お待ちくださいませぇ!」

 

そう言って俺の冒険者タグを握りしめたまま四つん這いでダッシュして行く受付嬢さん。本当にどした?

 

「お。お前ラープちゃんに何したんだ!」

 

隣で並んでいた男が俺に文句を言って来た。

 

「特に何も」

 

「俺たちのラープちゃんに手を出したら許さないぞぉ!」

 

図体が大きいが、ちょっと頭が足り無さそうな典型的戦士の男がさらに文句を言って来た。

というか、俺もどうなっているのか知りたい。

 

「あ、ああああの! こちらへお願いできますか? ギルドマスターからお話があります」

 

ふと見れば先ほどの受付嬢が戻って来ていた。ラープちゃんとか呼ばれている子だな。

 

「そちらへ行けばいいのか?」

 

「は、ははははい!」

 

やたらと緊張してカミカミな子だな。冒険者ギルドの受付嬢って、こんな子で務まるのか?

 

「お、お前本当に何したんだよ?」

「ラープちゃんに手を出したら・・・」

 

男たちが詰め寄ってくるが、それを押し止めたのはラープちゃんだった。

 

「や、やめてください!ヤーベ様は何も問題ありませんから」

 

そう言って俺の手を引っ張って奥の部屋へと連れ込んだ。

 

 

 

 

 

「ギルドマスター、入りますよ?」

 

あわただしくノックしたかと思うと、返事も待たずにドアを開けて部屋に入るラープちゃん。

部屋にはダンディーなオッサンが座っていた。

 

「ヤーベ・フォン・スライム伯爵ですな、お噂はかねがね。私はこのバルバロイ王国の冒険者ギルドを統括するモーヴィンと申します。よろしくお願いします」

 

そう言って握手を求めてきたので握手をする。

 

「ヤーベだ。冒険者としてはFランクの新米なんでね。あまり気にしないでもらえると助かるけど?」

 

俺は努めて特別扱いは不要と伝えてみる。

 

「そういうわけにはいかないのですよ、スライム伯。実は、スライム伯に対応頂いた商業都市バーレールでのオーク1500匹殲滅の討伐ポイント処理が終わりましてね。それに付け加えて、王都でのご活躍を加味させて頂いた結果、冒険者ギルドとしてスライム伯をSランクに認定する事に決定したのです」

 

「辞退と言う事で」

 

「いやいや、Sランクですよ!? 最高ランクですよ!?」

 

慌てだすモーヴィン。やっぱSランクってみんななりたいんだろうか。

 

「辞退と言う事で」

 

「いやいやいや!そう言うわけにはいかないのですよ!『救国の英雄』殿がFランクでは冒険者ギルドは見る目が無いのかと厳しい批判にさらされます!」

 

「そうは言っても、冒険者としての実績は皆無と言ってもいいわけですから」

 

「いやいやいやいや!<竜殺し(ドラゴンスレイヤー)>であらせられますスライム伯に誰が実績なしと申せましょう!」

 

なにやら、どうしても俺をSランクに認定したいらしい。

横を見ればラープちゃんがおろおろしている。

 

ゴンゴン。

 

派手なノックと共に入って来たのはゾリアだった。

 

「おお!ゾリア殿」

 

ホッとしたような表情を浮かべるモーヴィン。

 

「ようグランドマスター、元気そうだな。でもってヤーベ、やっぱSランクになったろ?」

 

ニヤリとゾリアが笑った。

 




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