転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第209話 飛び込みの依頼はありがたく頂こう

 

「無い! 無い! 無い!」

 

折角朝早く起きて王都冒険者ギルド本部に足を運んだと言うのに・・・。

なぜ無いのだ!あの!超有名な!伝説の!討伐依頼が!

 

俺が騒いでいるのが気になるのか、早朝の冒険者ギルドにまばらにいた他の冒険者が怪訝な顔をしている。

 

やがて、カウンターから受付嬢がこちらへやって来た。

 

「あの・・・一体どうされました?」

 

「無いのですよ!超有名な、基本討伐依頼であるゴブリン退治の依頼が!」

 

俺は依頼書が張ってある掲示板を指さして言う。

討伐系の依頼はEランクから、と決まっているのだが、なんとEランクは元より、Cランクまでの依頼の中に討伐系の依頼が無いのである。

 

「ああ・・・、私も最近この王都に配属になったばかりなので、詳しい事はわからないのですが、ここしばらく王都バーロンの周りにほとんど魔獣が現れず、魔獣による被害も無いため、討伐依頼が来ないのですよ。依頼が無くとも、通常であればゴブリンやオークなどは常時討伐依頼があるはずなのですが、魔獣が出ないのでその常時討伐依頼も今は外しています・・・受けて頂いてもゴブリンやオークがいないので」

 

すまなさそうに行って来る受付嬢の女性。

 

(ヤッベー! 久々にヤベちゃんヤッベー! 昨日の話じゃん! 低ランクの魔獣討伐依頼を中心に受けていた連中の仕事が無くなった件! ローガ達が王都周りの魔獣を狩り尽くしちゃったから、魔獣討伐依頼が無くなっちゃったんだ! マジでしまった! ローガ達を放置しておいた俺を殴りたい)

 

汗をかかないスライムボディである俺様のはずなのに、ダラダラと嫌な液体が額から噴き出ている気がする。

 

「こちらに来てまだ数日なので、あまり把握をしているわけではないのですが、食材に使用できるオークやフォレストリザードなどの解体依頼や買い取り依頼も無くて、最近は慢性的に肉不足みたいなんです」

 

(ヤッベー! さらにヤベちゃんヤッベー! ローガ達がトレーニングと称して王都の周りの魔獣を狩りまくっているわけだけど、俺の亜空間圧縮収納に放り込んである討伐した魔獣を王都に来てから一体も売りに出してない! 溜まる一方だよ! だって売ってないんだもん! 当たり前だよ! 死ぬほどオークもフォレストリザードも持っているよ! 新鮮で生きのいい死体ですけどね! 金にならないけどゴブリンの死体も山ほどありますが、なにか?)

 

汗をかかないスライムボディである俺様のはずなのに、先ほどにも増して滝の様にダラダラと嫌な液体が額から噴き出ている気がする。

 

(い、今さら冒険者ギルドにオークとか山の様に買い取り出せねぇ・・・)

 

俺は脳みそをフル回転させる・・・スライムだから脳みそ多分ないけどな。

 

(通常なら、ソレナリーニの町で買い取りに出すと、解体手数料無料でやってくれるんだが・・・)

 

城塞都市フェルベーンくらいまでならそれでもよかっただろう。だが、今は王都にいて、この王都に肉が無いのだ。あまりに遠くに解体に出してしまうと、王都に来るまでに時間も費用も掛かってしまうだろう。

 

もはや解体費用がどうこうというレベルで考える必要も無い。それほどお金に困っていないし。だから、出来れば王都で解体に出して肉に加工してもらい、新鮮な状態で食べてもらいたい・・・熟成とかあるから、多少遠くてもいいのか?

 

「はああ・・・、近くの定食屋さんでも、鶏肉しかないからアースバードの唐揚げ定食ばかり食べてしまうんですよね・・・。太っちゃいそうで」

 

何の心配をしているんだと思うのだが、肉が鶏肉しかないのは選択肢が無いな。

 

「よう、何騒いでんだ?」

 

ふと見ればゾリアがフロアに出て来ていた。

あくびをしながら、頭をバリバリと掻いている。

もしかしてコイツ、冒険者ギルドに寝泊まりしているのか? 金使わない気だな。

 

「あ、ゾリア様。こちらの方が、討伐依頼がない事に困っておられまして・・・」

 

丁寧に俺の事を説明してくれる受付嬢さん。

いいよ、そんなに丁寧に説明してくれなくても。どうぜゾリアだし。

 

「なんだ、ヤーベ。昨日も言っていたが、ゴブリンでも狩りたかったのか?」

 

「そうだよ!Eランクのゴブリン討伐で山の様にゴブリンの死体を積み上げて驚かせたかったんだよ!」

 

俺の魂の絶叫にゾリアも受付嬢さんもキョトンとする。

一拍、時が止まった後、

 

「ギャ――――ハッハッハ! ハラ痛ェ! お、お前がゴブリン山積みって、誰ももう驚かねーっての! バーレールの町でオーク1500匹狩り尽くしてその首だけで倉庫の床埋め尽くしたのを忘れたのかよ!」

 

指さして笑いやがった、コイツ!

そういや、バーレールで1500匹のオークたちを仕留めたけど、首しか出してないから、肉はほとんど俺が持ってるよ! ローガ達にキングやジェネラルの上位種の肉を食べたいと言われて、上位種も全く買い取りに出してない! 俺か!俺のせいなのか!? この受付嬢のかわい子ちゃんがオーク肉の焼肉定食食べられないのは俺のせいなのか!?

 

「そういや、お前さん昨日Fランクの薬草採取の依頼を受けていなかったか? このマルーン草の採取は鮮度が命だから、受けたら当日引き渡しじゃなかったか?」

 

「な、なにっ!?」

 

そういや、俺も個人で受けてたよ、薬草採取! しかも、昨日採取した薬草、全部ケモミミ三人娘に渡しちゃったよ! 俺の分残ってねーよ!

 

「・・・モッテナイ・・・」

 

「ブフッ!」

 

ゾリアが吹いた。隣の受付嬢さんはキョトン顔だ。

 

「お、おまー、Sランクの・・・冒険者が! え、Fランクの薬草採取の依頼をしくじるって・・・!」

 

俺を指さしながらもプルプルしているゾリア。

 

「ギャ――――ハッハッハ! ハラ痛ェ! よ、捩れるぅ! SランクがFランクの薬草採取失敗って!!」

 

四つん這いになって倒れ込んで床を叩きながらバカ笑いするゾリア。くそー!!

 

「え、えええSランク!?」

 

受付嬢のお姉さんが驚いて固まる。そういや、このお姉さんには昨日Fランクの冒険者タグを渡したな。サーシャがパーティ登録だとか言っていたけど。

 

そこへ、ケモミミ三人娘がやって来た。

 

「あー、やっぱりヤーベ先に来てた!どうして宿に迎えに来ないのよ!」

「ヤーベおはようにゃ」

「おはようございますです」

 

狼耳娘のサーシャが文句を言う。猫耳娘のミミと犬耳娘のコーヴィルはちゃんと朝の挨拶をしてきた。えらいね。挨拶は大事だよ。

 

「はいおはようさん。それで、そんな約束してたっけ?」

 

「今日はEランクの魔物討伐依頼を受けるんでしょ!パーティリーダーの私を迎えに来なくてどーするのよっ!」

 

両手を腰に当てて、偉そうに宣うサーシャ。

 

「お前がパーティリーダー? 初耳ですけど?」

 

「言って無かったかしら? 昨日この四人でパーティ登録したから」

 

「あっ! 登録するパーティ名考えました?」

 

受付嬢さんが再起動したのか、急に問いかける。

 

「ええっ! 一晩いい宿に泊まって考えてきたわよ!」

 

そう言うと、猫耳娘のミミはケモミミが付いたカチューシャを取り出して、ピョンと飛んで俺に装着する。

 

「こ、これは・・・?」

 

「私たちのパーティ名は『ケモミーズ』よ!」

 

「だから俺にもケモミミ付けさせてるのか!」

 

俺は頭に付けられたケモミミカチューシャに手を添えて叫んだ。

 

「ア―――――ッハッハッハ!! か、かわいいぞヤーベ! イ――――ヒッヒッヒ!!」

 

ゾリアが死ぬほど笑い転げている。本当にひどい奴だ。

 

「サーシャ・・・、Eランクは元より、Cランクまで討伐依頼が無いわ・・・」

 

犬耳娘のコーヴィルが掲示板を見ながら呟く。

 

「な、ないにゃ? ひとつも討伐依頼がないにゃ!?」

 

身長が小さいせいか、コーヴィルの肩に手を置いてピョンピョンと飛び跳ねて掲示板を見るミミ。

 

「ど、どうしたらいいのよ・・・」

 

いきなり途方に暮れるサーシャ。大丈夫かケモミーズ。

 

「なあ、頼むよグランドマスター!通常の二倍・・・いや、三倍出す!何とかオークの肉を手に入れてくれないか!」

 

「いや、そうは言ってもですね・・・王都周りにいないことにはなんとも・・・」

 

グランドマスターのモーヴィンに纏わりつくように一緒にやって来た髭面のオッサン。誰だ?

 

「ああ、ヤーベさん、おはようございます・・・その頭の耳は何か意味が? 後ゾリア殿は何故床で転げ回って笑ってるんです?」

 

「ああ、笑った笑った・・・おう、モーヴィンおはよう。この世は面白い事がまだまだあるな」

 

「何が面白いのかよくわかりませんが・・・」

 

「それはそうと、オーク肉だよ!オーク肉! わかった!四倍だす!頼むから手に入れてくれ!」

 

「わかりましたわかりましたよ・・・、一応特別依頼と言う事で受注します。張り出ししますけど、うまくいくとは限りませんからね?」

 

そう言って丁度目の前にいた受付嬢に指示を出し、髭面のオッサンを案内させて依頼申し込みを行っている。

 

とりあえずその様子をケモミーズの三人と見守る。

やがて完成した依頼書が掲示板に貼られる。

 

サーシャとミミがしげしげとその依頼書を覗き込む。他の冒険者たちも覗き込んでいる。

 

「うおっ! オークの買い取り価格が通常の四倍だぜ!」

「ちょっと探してみるか」

「いつもならオークの二~三匹くらい何とでもなるんだけどなぁ」

 

冒険者たちが口々に展望を語る。

 

「これ、Dランク推奨って書いてあるです。推奨だからFランクの我々でも一応は受けてもいいです」

「じゃあこれを受けてオークを狩りに行くにゃ!」

「どこに居るのかしらね~」

 

ケモミーズの三人娘もオークを狩る気満々だ。というか、オーク倒せるのか?

 

「さあ! 行くぞヤーベ、この依頼を受注だ!」

 

そう言ってサーシャが依頼書をカウンターに突き出す。

 

「はい、依頼受理致します。とりあえずこの特別価格での対応は先着五十体までとなります。注意してくださいね」

 

「了解なのです」

「さあ行くわよ!」

「行くにゃ!」

 

依頼を受理した三人娘が俺を捕まえて出かけようとする。

 

「あ~~~なんだ。あるよ、オーク」

 

「ほえ?」

「にゃ?」

「わふっ?」

 

三人娘が揃って首を傾げる。

 

一応俺はケモミーズのパーティメンバーらしいしな。

それに王都の周りの魔獣はローガ達が狩り尽くしてしまったしな。

今探しに行っても無駄足になってしまう。

どこかで探して倒してきたと言っても嘘になってしまう。

それなら、もう持っている物を出した方がいいだろう。

 

「お、オーク、あるって・・・どういう事?」

「もしかして、オーク持ってるにゃ?」

「あ、あの急にたくさん出て来る不思議な魔術です?」

 

「オーク、あるよ」

 

俺はカウンターにドンと首なしオークの死体を取り出す。まず一匹。ちなみに上位種はヤバいかもしれないから標準で。標準でも1000匹近くいるしな。もっとも何匹かはバーベキューやミノ娘の村で煮込みに使ったけど。

 

「わあっ!」

「にゃあ!」

「わふぅ!」

 

カウンターにデンと取り出したから、手足がブラーンと垂れ下がっている。

だが、首の切り口から血が垂れることは無い。

もちろん一旦収納後、夜、森に出向いて逆さ吊りにして血抜きをしてある。でないと取り出してすぐ料理に使えないからな。

 

「もっと出すか」

 

デン、デン、デデンデンデン。

 

そのカウンターに四体、五体と積み上げる。

カウンターがギシギシと軋み始める。

 

「あ、あの!これ以上はカウンターが潰れますぅ!」

「ヤーベ殿、裏の倉庫に納品頂いてもよろしいですかな?」

「よっしゃでかした!すぐに解体してくれ!」

 

受付嬢にグランドマスターのモーヴィン、髭面のオッサンが俺に詰め寄って来る。

 

「・・・とりあえず、依頼達成って事でいいのかしら」

「今日は朝から飲めるにゃ。大通りの<バッカス>亭で一杯ひっかけるにゃ」

「わふぅ・・・それでいいのです?」

 

三人娘がそれぞれの反応をしている中、俺は建屋の裏に回ってキッチリ五十体のオークを納品完了するのであった。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
よろしければしおりや評価よろしくお願い致します。
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