転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「それはそうと、皆でお風呂にいきましょうか」
フィレオンティーナがその場の空気を換えるようにパチンと手を叩く。
「ふおおっ!お風呂でしゅ!お風呂でしゅ!真っ白なお風呂でしゅ!」
リーナも万歳して賛成する。
「それでは、他の者たちにも声を掛けてまいりますね」
パナメーラはお辞儀すると真っ先に会議室を出て行った。
奥さんズの面々やリーナとミノ娘たちがなぜみんなでお風呂に入ろうと盛り上がっているのかというと・・・。
昨日の事である。
「うははっ! お風呂って本当に気持ちいいな!」
チェーダが湯船から桶を使ってバシャバシャとかけ湯を行っていた。
「ちょっと!もう少し周りに気を使いなさいよ! 飛び散っているわよ!」
マカンがチェーダに苦言を呈した。
「わかってるわかってるって」
大量のお湯をかぶるのが気持ちいいのか、かけ湯を続けているチェーダ。
「メイドさんの説明受けてるわよね! ちゃんと流し場で体を洗って汚れを落としてから湯船につかるんだからね!」
ガミガミとチェーダに注意するマカン。チェーダは肩をすくめて洗い場に移動した。
「わかってるよ、オレも説明は聞いたさ。湯船を汚したら後から入る人たちに迷惑がかかるって話だろ?」
「そうよ! 特に今日は特別に奥様方が忙しいからって私たちがなぜか一番乗りなんだから、絶対に汚したりしたらダメよ! 万一私たちに何か不備があって、今後ミノタウロスハーフたちにはお風呂を使わせるなって怒られたらシャレにならないんだからね!」
マカンも相当お風呂を楽しみにしていたようだ。それだけに今後ともこの屋敷でいい待遇の中働かせてもらうためには十分に気をつける必要があると思っていた。
ミノ娘たちは屋敷に来てから、午前中は教養を身に着けるために勉強、午後は戦闘訓練、メイドの仕事の実践勉強など、四組に分かれて訓練を行っていた。
チェーダのように戦闘訓練に適性が高い者もいれば、マカンのように料理関連などメイドの中でも特殊な作業に才能を見せる者、エイカのように掃除や洗濯を丁寧にこなし、基本的なメイドとしての適性を見せる者などいろいろであった。パナメーラに関しては、執事長のセバルチュラがパナメーラに一般教養が身に付けば旦那様の秘書を任せたいと抜擢を示すほどの才能を見せていた。
その訓練が終わって、夕食ができる前までに汗を流すようメイドたちに指示を受けたのである。
「このせっけんってやつ?こすると泡が出るんだな!すべすべして気持ちいいな!」
「いい香りもするわね!」
チェーダと並んでエイカも一緒に体を洗っている。
一足先にパナメーラが洗い終わったようだ。
「先に湯船につかるわよ~」
そう言ってちゃぽんと湯船に肩までつかるパナメーラ。
「ああ~~~~、なんかタマシイ出ちゃいそう・・・」
とんでもないことを言い出すパナメーラ。
「ええっ!? 大丈夫なのか?」
慌てて声を掛けるミーアに手をフリフリして大丈夫だとパナメーラはアピールした。
「大丈夫よ~、気持ちよすぎてとろけそうと思っただけ」
「ええっ!? そんなに気持ちいいの!?」
そう言って慌てて体を洗って我先にと一番大きい大風呂の湯船に沈んて行くミノタウロスハーフの娘たち。
「これは極楽だ~」
チェーダが顔の半分まで沈んでしまいぶくぶくしている。
「こらチェーダ!顔まで沈まないの!」
「おおっと、気持ちよすぎて溺れ死ぬところだったよ!」
ミノ娘たちは大声で笑いながらヤーベに救われて今の幸せがあることをかみしめていた。
「・・・あら?」
最初に気がついたのはパナメーラであった。
「どうしたの?」
マカンの問いかけにも答えない。
「このお風呂って・・・白濁していたかしら?」
気が付けば湯船が白く濁っている。一番最初に入ったパナメーラは記憶をたどる。
確か、湯船のお湯は透明だったはずだ。湯船の底が見えていたはずだ。だが、今は白く濁っていて底が見えない。
「ま・・・まさか・・・」
パナメーラは嫌な予感がして周りを見回す。
すると・・・
「ちょっと!あなたたち!お乳が出てるじゃない!」
「へ?」
「えっ!?」
「はれ?」
数人がお湯の中で気持ちよくのんびりしていたところ、自然とお乳が滲み出てしまったようだ。
「ちょっと!ちゃんと搾ってこなかったの!?」
「搾っては来たんですけど・・・」
「最近自分では出が悪くて・・・」
「あたしも張ってるけど・・・あんまりでないんだよね~」
「で、あったかくて気持ちよくてのんびりしたら・・・」
「「「でちゃった感じ?」」」
悪びれもせずテヘペロする娘たちにパナメーラが怒り心頭になる。
「どうするのよ!いきなりこれほどの量のお湯汚しちゃったじゃない!」
「あああ・・・短いお風呂人生だった・・・」
見ればマカンが四つん這いになって突っ伏している。
お風呂を汚したために明日からお風呂出入り禁止を言い渡されるのだろうと絶望の淵に落ちたようだ。
「う~ん、なんとかならないかなぁ?」
「なんとかなるわけないでしょ?どれだけのお湯の量だと思ってるのよ」
エイカの呟きにミーアがあきれる。
だが、お乳が出て白く濁ってしまったお風呂はもう元には戻らないのだ。
そこへ陽気な声が聞こえてきた。
「おっ風呂~、おっ風呂~、おっ風呂~」
「でしゅ!でしゅ!でしゅ!」
「あらあら、随分とはしゃいでいるわね? 何かいいことあった?」
大浴場に現れたのはヤーベの奥さんズメンバーであるサリーナとフィレオンティーナ、それにリーナの三人であった。
「えへへ~、錬金術ギルドでちょっと掘り出し物が出たんで、ヤーベさんとリーナちゃんで買い物に行ったんだよ~」
「え!? 聞いてませんけど? また旦那様にタカりましたわね!」
プンプンするフィレオンティーナにいたずらが見つかったような顔をして首をすくめるサリーナ。
「リーナはポポロ食堂のコロッケ買ってもらったでしゅ!三つももらったでしゅ!」
「そう、旦那様はリーナちゃんが大好きだものね~」
そう言ってリーナの頭をナデナデするフィレオンティーナ。
ポポロ食堂のコロッケなど何十個買おうと問題はない。
だがサリーナの言う錬金術ギルドの掘り出し物は、物によっては金貨数十枚、高いものになると金貨百枚を超える品もあるという。
「甘えすぎてはいけませんよ!」
「は~い!」
「は~いでしゅ!」
サリーナに言ったのだが、リーナまで返事をしたのでフィレオンティーナはほっこりしてしまった。
「あら? ミノタウロスハーフの皆さん、お先でしたか」
比較的体の大きなミノ娘たちが全員入ってもまだ余裕のある大浴場の大風呂であったが、湯が白く濁っていた。
「あら・・・? 今日はお風呂が白いですわね?」
「あ、本当だ」
「ふおおっ!白くてキレイでしゅ!」
フィレオンティーナの疑問にサリーナも首を傾げる。
リーナは喜んでいるようだが。
「も、申し訳ございません!」
湯船から慌てて飛び出すとパナメーラはその場で土下座する。
他の娘たちもそれに続いて続々と湯船から上がり土下座していく。
「どどど、どうしたのですか?」
フィレオンティーナが慌てて事情を聞いた。
「はい、お風呂でリラックスしすぎたせいか、お乳が滲み出てしまった者たちがおり、お湯が白く濁ってしまいました」
「「「申し訳ございません!」」」
「え・・・じゃあミルク風呂ですわねぇ」
のんびりとフィレオンティーナが状況を認識する。
サリーナがおもむろに白濁した湯船に手を突っ込む。
「んん~?」
ちゃぱちゃぱして自分の腕にかけてみる。
「コレ・・・もしかしてすごいかも!」
そういうとサリーナはタオルをほっぽり出して脱衣所の方へ飛び出して行く。
「キャ――――!!サリーナ様!なんて格好で廊下へ出ていらっしゃったのです!」
「ふ、服!服をお召しになってくださ―――――い!!」
メイドたちの叫び声が聞こえる。
どうやら、隣の部屋である自分の錬金室に裸で飛び込んだらしい。
そうしてサリーナが裸のまま戻ってくる。金色のお釜を持って。
サリーナは桶で白濁したお湯を汲むと、金色のお釜に流し込んだ。
その後魔力を注いでブツブツ呟く。
この間、すっぽんぽんのまま作業は行われている。
サリーナに限らず、大浴場であるからして、タオルを持っているかいないかの違いくらいで全員すっぽんぽんであるのだが。
「うん! やっぱりすごいよ!この白いお湯!」
サリーナが興奮したように手をブンブンと振っている。
「どうすごいのですか?」
フィレオンティーナが首をかしげるのを見て、サリーナがドヤ顔で説明を始めた。
「疲労回復、魔力回復に効果があるよ、コレ! それに何よりお肌がツルツルになって新陳代謝が良くなるって!」
「ええっ!? それはすごいですわね!」
サリーナのドヤ顔にフィレオンティーナも納得する。これは風呂に入ってただ気持ちいい、という次元をはるかに凌駕している。この白濁したお風呂に入れば、疲労回復、魔力回復、健康になるうえに、お肌までツルツルになるのだ!
「決めましたわ!これから毎日ミノタウロスハーフの皆さんと一緒にお風呂ですわ!」
フィレオンティーナがドーンとぶち上げる。
「ええっ!?」
パナメーラが驚きを隠せない。
「あら?ご迷惑でした?」
「迷惑なんてと、とんでもない! 奥様方とご一緒できるなんて光栄の極みですが・・・、その、いいのでしょうか? お風呂が白く汚れてしまいましたが・・・」
パナメーラが恐縮する。
「何を言ってるの。貴女たちのお乳が入ったお湯はとても素敵な効能があるのよ? こちらからお願いしているのだから、何も遠慮することなくお風呂で一緒に温まりましょう?」
「は、はいっ!」
フィレオンティーナに誘われてみんなで白く濁ったお風呂につかる。
そこへ遅れてイリーナとルシーナもやってきた。
「わっ!お風呂が真っ白だぞ?」
「どうしたんでしょう?」
イリーナとルシーナがそれぞれ首をかしげるが、またもドヤ顔でサリーナが錬金鑑定の結果を説明すると、二人とも慌てて流し場で体を洗って湯船につかりに来た。
「ふわ~、なんだか甘い香りもするような気がするぞ・・・」
「おふふ・・・これでお肌もツルツルスベスベに・・・」
「しゅべしゅべでしゅー!」
イリーナとサリーナも大喜びで湯船につかっていた。
リーナに至っては全身沈んでスベスベ感をマンキツしているようだ。
お風呂マナーとしては問題だが、子供のやることと見逃されている。
その後お風呂場で女子トークが始まってしまい、ミノ娘たちのヤーベへの妾入りなどが話題となり、改めて今後どうするか話をする場を設けることが決まったのであった。
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