転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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閑話33 王都に住む人々の幸せな日常④

コルーナ辺境伯邸――――

 

 

「ううう・・・一体いつまでこうして内職していればいいんですかねぇ・・・」

 

しくしくと泣きながらそれでも器用に手を動かして人形ストラップを作り続けている娘。

そう、サキュバスのミーナであった。

 

「うふふ・・・、何事にも縛られず、ただただ黙々と作業するのもいいものですよ?」

 

そう言ってこちらも器用に手を動かして人形ストラップを作り続けているのは、フラウゼア・ハーカナー元男爵夫人である。

 

コルーナ辺境伯邸の地下にある一室で二人は黙々とヤーベ人形ストラップを作り続けている。傍から見ればかなりブラック企業の窓際内職である。

 

二人が作業しているテーブルの横には、大量に完成したヤーベ人形ストラップが箱詰めされており、そのさらに横にはヤーベ人形ストラップの材料がこれまた大量に箱詰めされている。

 

これを見てしまうと、作っても作ってもここから出られない永遠の作業と感じられるだろう。

 

「しくしくしく・・・大人しくしているのにヤーベさん全然会いに来てくれないし・・・」

 

泣きながらもちゃんと手は動かして人形ストラップを作り続けているミーナ。何気に律儀である。

 

この二人、理由はどうあれ、王都では大っぴらに姿を見せるとマズイ人物であるため、コルーナ辺境伯家でも出来るだけ目立たない場所で過ごすことにしていた。

フラウゼアに処遇について不満はないのだが、サキュバスのミーナは元来明るい社交的な性格をしているため、詰め込まれて放置されているのは辛いものがあった。

 

 

コンコン。

 

 

地下室のドアがノックされる。

 

「はい」

 

一応部屋の主っぽいフラウゼアが返事をする。

 

「すみません、完成した分のストラップを受け取りに来ました」

 

そう言って姿を現したのはメイドさんであった。

ヤーベ人形ストラップの回収を命じられたのか、品物を取りに来たようだ。

 

「あら、ミーナさんも作業組だったのですね。まだしばらくこちらに?」

 

メイドの問いかけに、イマイチピンと来なかったミーナは首を傾げた。

 

「いや、先日ヤーベ伯爵様はその身内の方と揃って王都に出来たご自身のお屋敷にお引越しされましたので・・・」

 

なんとなく可哀そうな人を見るような目で説明してくれるメイドさん。

 

「・・・忘れられた―――――!!」

 

完全に自分がヤーベに忘れられていると悟ったミーナ。おんおんと泣き出す。

 

ちなみにフラウゼアは引っ越し前にカソの村の二人目の巫女として打診があり、OKの返事をヤーベに返していたので、王都の引っ越しにはついて行かなかった。カソの村の神殿で受け入れ準備が整い次第フラウゼアはヤーベが送り届けることになっている。

 

「お~んおんおん! 見捨てられた――――!! ヤーベさんのバカ――――!!」

 

ガチ泣きで落ち込むサキュバスのミーナを見ながら、元気な娘だなぁと感心するフラウゼアだった。

 

 

 

 

 

ポポロ食堂にて――――

 

 

「うわ~~~~!どっちを頼みゃいいんだ~~~~!!」

 

ランチタイムに来た常連客の一人がメニューを見ながら悶えていた。

 

「おい、早く決めろよ、お店に迷惑が掛かるだろ?」

 

連れの男に即されてもうんうん悩んでいる男。

 

「こっちはバクダン定食だ!」

「あ、俺はね~今日はクリームコロッケ定食ね!」

 

「はーい!」

 

ポポロ食堂の看板姉妹、妹のリンがが元気よく返事をする。

 

このポポロ食堂では新たな名物メニュー「クリームコロッケ」が登場してから、メニューを悩むお客が増えたのだった。

 

もちろんこの「クリームコロッケ」を考えて教えたのはヤーベである。

アローベ商会の取り扱う「ミルク(ミノ娘たちから搾ったお乳)」の売込みを兼ねて、ヤーベが実際にベシャメルソースを作ってクリームコロッケを実践して作ったのだった。

 

ベシャメルにチーズを削り入れるのがヤーベ流のこだわりだ。ちょいとマヨネーズも混ぜ込む。

 

魔導冷蔵庫をプレゼントして、出来たクリームの素を冷やしておく。

翌日に衣をつけてからりと上げると、さくっとした歯ごたえと、どろりとしたソースのうまさが絶品のクリームコロッケの完成だ。

最も海産物の情報が入っていないので、カニクリームコロッケではなく、ただのクリームコロッケだ。クリーム自体をすごくおいしくすることに特化している。

 

「アツッ!アツッ!」

「んんん~~~!トロトロですぅ!」

 

レムとリンの二人は試食で感動して即採用になった。

そして自分たちが揚げたクリームコロッケを母親のルーミに食べさせる。

 

「美味しいっ! 凄くクリームにコクがあって美味しいわね!」

 

ヤーベに教えて貰ったと説明すれば、ルーミは涙を浮かべて心の底からヤーベに感謝するのであった。

 

そんな訳で、今のポポロ食堂にはバクダン定食の他にクリームコロッケ定食が大人気であり、どちらを食べるか悩む客が続々と増えているのであった。

 

「仕方ないわね~、特別に両方とも食べられるスペシャル定食を出しましょうか」

 

そう言ってルーミが厨房から出て来る。

 

「りょ、両方とも食べられるって!?」

 

ざわつく食堂内。

 

「バクダン定食のバクダンコロッケの半分と、クリームコロッケ定食のクリームコロッケを1つ、それぞれ同じ皿にのせて、両方食べられるスペシャルな定食よ?」

 

ニッコリして笑顔を振りまくルーミ。

 

「そ、それだっ!スペシャル定食お願い!」

「こっちもスペシャル定食で!」

「こっちはスペシャル三人だ!」

 

次々と両方を食べられるスペシャル定食の注文が入る。

 

「はーい! スペシャル定食は銅貨8枚ですよ~」

 

バクダン定食、クリームコロッケ定食共にランチタイムは銅貨7枚の設定だが、ちゃっかり銅貨一枚値上げするルーミだった。

 




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