転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第216話 謎の生物を調べに行こう

勢いよく土下座して頭を下げたため、俺の頭の上に乗っていたホホジロザメ?のジョージとジンベエザメ?のジンベーが落ちそうになって慌てて後頭部の方へうまく移動する。

 

こいつら、ムダにバランス感覚が優れているな。

 

ちょうどぺったりと土下座した俺の後頭部に鎮座するように乗っかっている。

 

 

 

「・・・なんだ?この不思議な生き物は?」

 

「見たことないですね」

 

 

 

俺の土下座をスルーしてイリーナとルシーナが俺の後頭部に乗っかっている謎生物に興味を移した。

 

 

 

「錬金術で生み出した未知の生物!」

 

「そんな訳あるか!」

 

 

 

サリーナの錬金脳に一応ツッコミを入れておくが、こいつらがどんな生物なのかは俺も知らないんだよな。

 

あの未知の<迷宮(ダンジョン)>探索は冒険者ギルドに丸投げした。

 

協力して欲しいとグランドマスターのモーヴィンに依頼されたけどブッチだ。

 

それほど伯爵様は暇ではない。

 

・・・こんな時だけ貴族面するなというツッコミは受け付けない。受け付けないったらない。

 

 

 

「わたくしもこのような生き物<迷宮(ダンジョン)>でも見たことないですわ・・・」

 

 

 

フィレオンティーナも首を傾げる。

 

 

 

土下座する俺の前に四人が並んだせいか、ジョージとジンベーは

 

 

 

「キュキュ!」

 

「ズゴッ!」

 

 

 

と短いヒレを上げて挨拶した。

 

 

 

「・・・か、かわいい・・・」

 

「かわいいです・・・」

 

 

 

 

 

イリーナとルシーナがそう呟くと、ジョージとジンベーはヒレをパタパタさせてふわふわと空中を飛び、イリーナやルシーナの胸に飛び込んで行った。

 

 

 

「かわいいぞ!」

 

「ぷにぷにですぅ!」

 

 

 

イリーナとルシーナはそれぞれ胸に抱きしめる様に捕まえると二匹を撫でまわす。

 

 

 

「キュキュ――――!」

 

「ズゴズゴ――――!」

 

 

 

撫でまわされるのが気持ちいいのか鳴き声を上げてヒレをペチペチ動かし喜んでいるようだ。

 

 

 

「あ、私も抱いてみたい!」

 

「わたくしもお願い致しますわ!」

 

 

 

サリーナとフィレオンティーナもジョージとジンベーを抱きたいと二人に変わって胸に抱きいれる様に包み込む。

 

 

 

フィレオンティーナの胸に埋まる様に抱かれたジョージはチラッと俺の方を見ながら喜んでいる。

 

 

 

なんだ、チクショー!胸に包まれるように抱かれて羨ましいかってか!

 

羨ましいに決まってんだろ!でもその気になれば俺だってフィレオンティーナに頼み込めば何とかなるんだからな! そんなこと頼めないけど!

 

 

 

「キュッ!キュッ!キュ――――!」

 

「ズゴッ!ズゴッ!ズゴ――――!」

 

 

 

奥さんズの面々に抱かれて撫でられて嬉しそうに鳴き声を上げる二匹を見ながら、ここがチャンスと俺は言い訳を繰り出す。

 

 

 

「いや~、冒険者ギルドでSランクに認定されてしまってね。それに付け加えてギルドの指導員まで仰せつかってしまって、その流れで獣人の新人冒険者三名を担当する事になってしまってね。指示して冒険に出てもらったんだけど、何故か未知の<迷宮(ダンジョン)>が発見されて、その中に迷い込んだらしくてね。夜まで冒険者ギルドで三人が帰って来るのを待ってたのに、<迷宮(ダンジョン)>で三人が行方不明って情報が入ったので、夜中だけど助けに行ってね。その未知の<迷宮(ダンジョン)>の最奥に水晶の柱に封印されていたのがこの二匹でね。なぜか封印が解けて俺に懐いちゃったから連れて帰って来たんだけどね」

 

 

 

俺はペラペラと説明を捲くし立てる。勢いで押し切るのだ!

 

 

 

「え・・・? 今、Sランクに認定って言われました・・・?」

 

 

 

フィレオンティーナが信じられないといった表情で俺を見る。

 

あ、しまった。フィレオンティーナは元バリバリのAランク冒険者だった。Sランクの凄さを知っているんだ。

 

 

 

「え・・・? この生き物、<迷宮(ダンジョン)>で封印されていたのか・・・?」

 

 

 

それって大丈夫なのか?といった表情で問いかけるイリーナ。大丈夫かどうかわかりません。

 

 

 

「え・・・? ヤーベさんギルドの指導員になったの!? すごいね!」

 

 

 

自身も錬金術ギルドに所属するサリーナは指導員になった事に驚いていた。

 

 

 

「え・・・? それでは指導する三人が獣人の娘たちという事ですね・・・」

 

 

 

ルシーナよ、君の引っかかるところはソコかい。

 

 

 

「そんなわけで、その謎生物の事を王宮の宮廷魔術師殿に相談してくるよ。だから行って来ます!」

 

 

 

そう言って土下座体勢から一転、ガバッと起き上がると走って逃げる。

 

 

 

「キュ? キュキュ―――!!」

 

「ズゴッ? ズゴズゴ―――!!」

 

 

 

俺が部屋から走って逃げると、ジョージとジンベーも涙を流して泣きながら俺に向かって飛んで来た。そして頭に着地すると、なんで俺たちを置いてどこかへ行こうとするんだ、と怒っているかのようにヒレで俺の頭をペチペチ叩きながら鳴いていた。

 

 

 

・・・こいつらも初期のリーナと同じくご主人様断ちのトレーニングが必要か。

 

俺をご主人様と思っているかどうかは知らんけど。

 

 

 

「キュキュ―――!!」

 

「ズゴ―――――!!」

 

 

 

何だかご主人様ではないらしい、保護者?のような感覚が頭に流れ込んできた。

 

・・・とにかく王宮の物知りに相談だ!

 

奥さんズの「ちょっと!ヤーベ!」という呼びかけを振り切って俺は屋敷を飛び出して王宮に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、どうも。宮廷魔術師長のブリッツ殿に用があって来たんだけど」

 

 

 

王城の門は俺の顔パス(といっても伯爵を現す短剣を見せるんだけど)で入れるのだが、王城内は一応入口で訪問理由を問われるので、用のある相手の名前を出して回答する。

 

本当ならば宮廷魔術師長クラスだと先振れと言うアポみたいなものがいるんだろうけどな。今はこの頭の上の謎生物について一刻も早く調べてもらわないとな。

 

 

 

「ブリッツ魔術師長ですね、どうぞ、お通りください・・・それはそうと、スライム伯爵様は新たな使役獣を増やされたのですね。今回の使役獣は、その、なんといいますか、ものすごく可愛いですね・・・」

 

 

 

訪問理由を聞いていた衛兵が俺の頭に乗ったジョージとジンベーに目をやりながらそんな感想を漏らす。

 

・・・<調教師(テイマー)>である、ということになっている俺は狼牙族などを引き連れているからな。今更謎の生き物が増えたところで、「使役獣を増やした」という一言で済んでしまうかもしれん。これはラッキー。

 

 

 

「可愛いだろ~、でも迂闊に手を伸ばすなよ? ガブッと噛まれるかもしれんぞ?」

 

 

 

「えっ!? マジですか!?」

 

 

 

おいおい、伯爵に話しているには不敬じゃないかと思ったりもするが、俺自体貴族らしくないから全然気にしない。

 

ちょっと手を伸ばしかけた衛兵君はびっくりして手を引っ込める。

 

 

 

「はっはっは、こいつらのご機嫌次第だからな。油断は禁物だよ」

 

 

 

そう言って俺は宮廷魔術師長のブリッツ殿が詰めている部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

宮廷魔術師たちの詰めている部屋を訪れ、魔術師長のブリッツ殿に用がある事を告げる。

 

確認を取ってもらったところ、許可が出たようで魔術師長の部屋に案内された。

 

その間も魔術師たちの視線はずっと俺の頭の上の生き物に注がれている。

 

俺があまりにも普通に頭の上に二段に重なる様に謎の生き物を乗せているため、そこを聞いてもいいものか戸惑いがあるようだ。あまりに堂々としていると、逆に指摘しにくい、ということだろうか。

 

 

 

コンコン。

 

 

 

案内してくれた魔術師が魔術師長のブリッツ殿の部屋のドアをノックする。

 

 

 

「スライム伯爵をお連れしました」

 

 

 

「入ってもらえ」

 

 

 

ガチャリと扉を開けて入室を促してくれる魔術師君にお礼を言いながらブリッツ殿の部屋に入る。

 

 

 

「やあ、忙しいところ急に押しかけてしまいまして申し訳ありませんな」

 

 

 

「いえいえ、大恩ある『救国の英雄』殿の訪問とあらば断われますまい」

 

 

 

如才ない挨拶を向ければ、笑いながら訪問を受け入れてくれるブリッツ殿。

 

 

 

「実は相談があって来たのですよ」

 

 

 

「・・・もしかして相談とは、その頭の上に乗っている見たことも無い生き物二匹の事ですかな?」

 

 

 

「ほう、分かりますか!さすがは宮廷魔術師長たるブリッツ殿だ」

 

 

 

「・・・いや、さすがに頭の上に二匹も見たことの無い生物を乗せている状態で相談があると言われれば、分からないほうがどうかしているかと・・・」

 

 

 

相談内容をズバリ当てられたので褒めてみたのだが、どうもブリッツ殿には俺の相談が丸わかりだったようだ・・・まあ、頭に鎮座されているし、当たり前か。

 

 

 

「まあ、そういうわけで、この謎の生物が何なのか知ってたら教えて欲しいのですよ」

 

 

 

「・・・実際問題、私も見たことがありません・・・。ちょっと絵の上手い者にスケッチさせましょう。その間に私は古い文献を当たってみます」

 

 

 

そう言って部下だか弟子だかしらないが、若い魔術師を呼んでくると、早速俺の頭の上の二匹の生き物をスケッチし始める。

 

 

 

どうやら自分たちが注目されていることに気づいたのか、変にヒレを持ち上げてポーズを決めるジョージとジンベー。無駄に賢いな、こいつら。

 

 

 

 

 

 

 

しばらく待っていると、何と国王であるワーレンハイドが姿を見せた。

 

 

 

「やあ、ヤーベ卿。なんだか不思議な生き物をテイムしたんだって?」

 

 

 

ぶっちゃけ、俺にテイムするなんてスキル無いから、心苦しい事ないったらないのだが、懐かれている以上、そういう以外に説明できないんだよね。

 

 

 

「まあそんなところでしょうか。ただ、この連中、魔獣かどうかすらわからないのですよ・・・。今のところ大人しく人の頭に乗っかっているだけなんですけどね」

 

 

 

怒り出して俺のスライムボディーを食べまくった事は内緒にしておかないとな。無差別に人を襲うかも、なんて不安にさせたら一大事だ。

 

尤も、こいつらがむやみに人を襲わないだろうというのは何となくわかるんだよな。心でわかるというか、本能に訴えかけて来るというか。不思議な連中だ。

 

 

 

俺は頭に二段で乗っている二匹のうち、上の方にいたジンベーを捕まえてワーレンハイド国王に抱かせる。

 

 

 

「おお、大人しくて可愛いな! 触り心地もツルツルスベスベだ!」

 

 

 

「ズゴ――――!」

 

 

 

気持ちよく撫でられて鳴き声を上げるジンベー。

 

サメ?のくせにツルツルスベスベで触り心地がいいってホント謎だよな。

 

 

 

「ヤーベさん、とっても可愛い使役獣が増えたって聞きましたよ!」

 

 

 

そう言って勢いよく部屋に入って来たのはカッシーナではなく、リヴァンダ王妃であった。

 

 

 

「ああ、どうも王妃様。可愛いって、こいつらのことですかね?」

 

 

 

すでにワーレンハイド国王がジンベーを抱きしめている。それをみてすごく羨ましそうな顔をするリヴァンダ王妃だが、それを察知したのか、俺が手で捕まえるより早く俺の頭から飛び立ったジョージがリヴァンダ王妃の胸にポフッと飛び込む。

 

 

 

「キュキュ――――!」

 

 

 

「か、可愛い・・・!!」

 

 

 

感動して胸に抱き込むようにギュッとするリヴァンダ王妃。

 

そして、王妃の豊満な胸に埋まりながら俺をチラッと見てドヤ顔するジョージ。

 

だから、なんなんだよ!そのうらやましいだろ的な表情は!ああ羨ましいよ!特に王妃様なんてどう頑張っても俺が胸に飛び込んだら打ち首だろうからね!チクショー!なんで俺はこんなケモノに敗北感を味わってるんだ!

 

 

 

「ふーむ、魔物事典や資料は元より、聖獣や霊獣といったあまり存在を知られていない高次の存在を書き記した資料を見たのですが、この二匹に該当するような情報が見つかりませんでした」

 

 

 

「え、わからないの?」

 

 

 

俺は素直に驚いてしまった。宮廷魔術師長のブリッツ殿に聞けば何かしら情報が出ると思っていたのだ。

 

 

 

「ほう・・・ブリッツでもわからないとなると、本当に謎の生物だな」

 

「こんなに可愛いのですけどね! ヤーベさん、もう名前は決まっているのですか?」

 

 

 

首を傾げるワーレンハイド国王をよそに、嬉しそうにジョージを抱きしめながら聞いてくるリヴァンダ王妃。

 

 

 

「王妃が今抱いている方がジョージで、国王が抱いている方がジンベーですよ」

 

 

 

「キャー!ジョージちゃんっていうのね!あなた、真ん丸で可愛いわね~!」

 

 

 

そう言いながらジョージのおでこにチューをするリヴァンダ王妃。

 

 

 

「キュッキュ――――!!」

 

 

 

明らかに嬉しそうに鳴くジョージ。コイツ、女好きか。

 

 

 

その時、扉がドバーンと音を立てて開く。

 

 

 

「ヤーベ様!王城に来られるなら連絡ぐらいくださいよぉ!」

 

 

 

見れば涙目でカッシーナが飛び込んできた。

 

 

 

「ああ、すまん。ちょっと緊急事態でな」

 

 

 

「どこが緊急事態なんですか! 新しい使役獣がとっても可愛いって自慢に来たんですよね?」

 

 

 

いや、どんな風に情報伝わってるの!? 誰も自慢しに来てないから!

 

大体こいつら自慢できるの?

 

 

 

「キュキュ――――!!」

 

「ズゴズゴ――――!!」

 

 

 

俺は馬鹿にしたわけではないのだが、そんなニュアンスを感じ取ったのか、国王と王妃の腕から飛び出したジョージとジンベーは俺の頭に飛びつくとペチペチとヒレで叩きまくった。

 

 

 

「いてててて!」

 

 

 

「キュキュ――――!!」

 

「ズゴズゴ――――!!」

 

 

 

明らかに怒気を含んだ鳴き声を上げてペチペチする二匹を見ながら、それでも国王と王妃は温かい目を向けた。

 

 

 

「あらあら、やっぱりヤーベさんとは仲がいいのねー」

 

「そうだな、さすが使役主なだけはあるな」

 

 

 

いや、そういう問題ですかね? 

 

 

 

「ぐすっ、やっぱり全然緊急事態じゃないじゃないですかぁ・・・。可愛い使役獣とじゃれ合ってるだけですぅ!」

 

 

 

ぷりぷりと怒り出すカッシーナ。なんでやねん。

 

 

 

だが、カッシーナが緊急事態緊急事態と騒いだせいだからか、まさかの緊急事態がやって来た。

 

 

 

「たたた、大変です国王様!」

 

 

 

衛兵の一人が部屋に飛び込んでくる。

 

 

 

「どうした?何かあったのか?」

 

 

 

「北西の空に・・・、ワイバーンが十二匹飛来しておりますっ!!」

 

 

 

「な、なんだとっ!!」

 

 

 

驚くワーレンハイド国王。そして、なぜか俺の方を見る。

 

隣を見ればリヴァンダ王妃も俺の方を見ていた。

 

首を横に向ければ、宮廷魔術師長のブリッツ殿も俺を見ている。

 

 

 

いや、俺のせいじゃないよ? 俺は謎の生物頭に二匹乗せて来ただけだからね?

 

 




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