転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第217話 飛来するワイバーンを調査しよう

「な、なんじゃと!」

 

 

 

宰相のルベルクは報告を聞いて耳を疑った。

 

丁度王国騎士団団長のグラシアと竜のブレスを防ぐ盾の導入を検討しているところであった。アローベ商会を通じて竜の皮を用いた防御力の高い盾を用意し、騎士団の防御力を高めては、という検討であった。

 

 

 

 

 

「すぐに城門付近へ向かわせます!」

 

 

 

「うむ、ワシも国王様に報告したら、軍の将軍たちに声を掛ける!」

 

 

 

そう言って慌ただしく部屋を出ていくルベルクとグラシア。

 

 

 

どちらも、ヤーベ伯爵かフィレオンティーナ男爵にも連絡すべきだろうと内心思っていたのだが、それぞれ組織の長たる立場で一個人にいきなり打診するのは憚られたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ~、飛んでるねぇ」

 

 

 

頭にジョージとジンベーを乗せたまま西門近くへ来た俺。

 

 

 

見れば確かにもう肉眼でもワイバーンが数匹飛んでいるのが見える。

 

その内、騎士や兵士たちが集まり、城門の外に集結して行く。

 

よくよく数えてみると十二匹。報告にあった通りだ。

 

 

 

その内の一匹が大きく王都近くで旋回し出す。

 

 

 

「どうやら王都を攻撃する意思はない様だが・・・」

 

「キュキュ!」

 

「ズゴッ!」

 

 

 

俺の独り言に頭の上のジョージとジンベーが一言鳴く。まるで俺の意見を肯定するようだ。

 

だが、謎の生物たちに肯定されてもあまりピンとこないな。やはり奥さんズの面々から「すごーい!」だの、「さっすがー!」だの言ってもらいたい。

 

 

 

「キュキュ―――――!!」

 

「ズゴズゴ―――――!!」

 

 

 

ペチペチペチッ!

 

 

 

「あいたたた!」

 

 

 

どうやら俺がこいつらをぞんざいに考えてしまったことがバレてしまったようだ。

 

と、いうか、何で俺の考えている事がわかるんだろう?

 

 

 

それはそうと、旋回しているワイバーンから何かが投下された。

 

見れば木で出来た筒状の入れ物にパラシュートがついて、ゆらゆらとこちらへ落ちて来る。

 

 

 

「なんだっ!何か落ちて来るぞ!」

 

「どうすればいい!」

 

「危険なものか!?」

 

 

 

集まった兵士たちがざわつく。

 

 

 

あれがバクダンとか火炎瓶であったら大変な事になるが、たぶんそうではない。

 

 

 

兵士を束ねる責任者と話をしたいと思ったのだが、パッと見てもどこに居るのか不明だ。

 

仕方がない、後で文句を言われるかもしれんが指示を出すか。

 

 

 

「兵士諸君!あの落ちて来る木の筒を確保してくれ!多分あれは書簡だ!非常に重要なものであるため、あの筒を確保したら中を開けずに、宰相のルベルク殿へ届けてくれ!」

 

 

 

まあ、宰相のルベルク殿が直接開けることは無いだろう。万一何か仕掛けられている可能性も無くはないからな。

 

 

 

「「「ははっ!」」」

 

 

 

兵士の何名かが返事をして走り出す。おお、俺に文句言わず従ってくれるとは何だかありがたいな。

 

 

 

「スライム伯爵様!あれは敵ではない、と言う事なのでしょうか?」

 

 

 

ふと見れは隣に他の兵士たちよりもちょっとよさげな鎧を着ている男がやって来ていた。

 

 

 

「うむ、多分だが、ドラゴニア王国からの使者ではないかと思う。緊急なのか、大至急なのかは知らないが、最も早い方法でバルバロイ王国の王都へ使者を送りたかったという事だろう。それにしても十二匹の編隊は些か物々しい気もするけどな」

 

 

 

「なるほど!さすがはスライム伯爵、さすがの見識でございます」

 

 

 

んん?なんでこんなに俺を持ち上げてるの?

 

 

 

「・・・どこかで会ったことあるかな?」

 

 

 

「いえいえ、遠巻きにお姿を拝見したことはありますが、こうしてお話させて頂くのは初めてでございます」

 

 

 

丁寧に説明してくれる兵士さん。

 

 

 

「俺の事知ってるの?」

 

 

 

「もちろんですよっ! 『救国の英雄』ヤーベ伯爵の話は騎士団だけでなく兵士たちの間でも超有名ですよ!」

 

 

 

「え、そうなの?」

 

 

 

「冒険者の身分でありながら、何度も王国に迫った危機を跳ね返し、ついにはありえないほどのスピードで伯爵まで昇りつめた平民の憧れの存在ですよ!」

 

 

 

興奮して話をしてくれる兵士さん。そんなに興奮されると照れますがな。

 

 

 

「騎士団の訓練で、王国最強と言われたグラシア騎士団長といい勝負をされたとも聞いております。それに何と言っても卿は<竜殺し(ドラゴンスレイヤー)>であらせられますから」

 

 

 

おおう、何だか知らないが、一般兵士さん達にも有名になってしまっているようだ。

 

迂闊に立ちションも出来んな・・・スライムだからオシッコしないけど。

 

 

 

「スライム伯爵様! 手に入れてまいりました!」

 

 

 

そう言ってパラシュートの付いた木の筒を俺に持って来る。

 

いいのか、俺が貰って。

 

まあいい、俺ならスライム触手を極細にして中のチェックが可能だ。

 

 

 

チェックすると、やはり中は書簡だ。蝋で封がしてあるようだ。変な仕掛けなどは無い様だ。

 

 

 

「誰か、この木の筒を宰相ルベルク殿へ届けてくれ。危険な仕掛けなどがない事は俺が確認した」

 

 

 

「ははっ! 兵士長である私が承ります!」

 

 

 

「よろしく頼む」

 

 

 

隣で俺を褒めてくれていた兵士さんが持って行ってくれるようだ。というか、この人兵士長だったんだ。ちょっと偉い人だったんだな。

 

 

 

 

 

 

 

「むう・・・」

 

 

 

宰相ルベルクはスライム伯爵の言伝付きで書簡を受け取っており、その中身を確認していた。

 

その内容は、『先日バルバロイ王国方面で巨大な魔力を感知した。その事について確認したく、面会を希望するものである』とのことだった。そのため、王都近くにワイバーンを着陸させたいと書いてあった。

 

 

 

「ワーレンハイド国王様。至急OKのサインを送り、まずはワイバーンを着陸させ、王都の混乱を治めましょう」

 

 

 

「うむ、そうだな。その後王城へ案内して話を聞く事にしよう」

 

 

 

ワーレンハイド国王は宰相ルベルクの言葉に頷き、会談の準備をするように指示を出す。

 

 

 

だが、ワーレンハイド国王とルベルク宰相は目を合わせながら渋い顔をした。

 

 

 

ドラゴニア王国の使者が問うてきた、圧倒的な魔力の波動の話、それは、秘匿すると決めた魔導戦艦の発掘と消滅の件であり、それを秘匿すると言う事はそれを成し遂げたヤーベの存在を秘匿することでもあったからだった。

 

 

 

この会談は一筋縄では行かない、二人はそう感じていた。

 

 




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