転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
ゆっくり再開しますのでよろしければまたお付き合いの程よろしくお願いいたします。
「それで、あの魔力嵐は一体何だったのでございますか?」
ドラゴニア王国、竜騎士団副団長のライオネルは、生粋の武人らしく、ストレートに最大の疑問をぶつけてきた。
宰相ルベルクは努めて表情を変えずに対応していた。
応接室にはその他ドライセン公爵、騎士団団長のグラシア・スペルシオも着座していた。
ルベルクはここまでの流れを頭の中で振り返る。
時は少し遡る―――――
「こちらです! こちらへ着陸ください!」
大きな旗を振って、ワイバーンに乗る騎士たちに合図を送る。
それに応じてワイバーンたちが大きく旋回しながら高度を下げる。
「うおっ!」
「デカイッ!」
兵士たちに多少の動揺が広がる。
以前雷竜サンダードラゴンとワイバーンが王都を襲撃した際、フィレオンティーナが一蹴しているが、その時はワイバーンたちは雷撃の呪文で撃ち落とされ、回収されているので、生きたワイバーンを近くでその目にしている者は少なかった。
やがてワイバーンたちは地上に降りた。
ズシンと大地に響く振動。ワイバーンの重量をうかがい知れる一瞬でもあった。
「ドラゴニア王国 竜騎士団副団長、ライオネル・バッハである! 我が王よりバルバロイ王国ワーレンハイド国王当ての書簡を預かって参った! お取り次ぎ願いたい!」
朗々と告げるライオネル。その雰囲気と声からだけでもひとかどの武人だと判断できる。
ドラゴニア王国より竜騎士団副団長のライオネル・バッハという男が来たと王城へ至急連絡が入ることになった。
その間も彼らをフリーにしているわけにはいかない。
兵士長は遠巻きにワイバーンを見ながらも騎士団の到着を待った。
「兵士長、一応杭とロープを用意した。ありがたい事にここは街道から少し離れている。杭とロープで囲って、一応ワイバーンたちがロープから出ない様にドラゴニア王国の騎士たちに伝えておこう。自由に散歩でもされて、街道の方に向かわれてはたまらんからな」
兵士長が振り向けば、そこにはバルバロイ王国最強の騎士、グラシア・スペルシオがやって来ていた。
「了解しました! おい、さっそくロープと杭で囲いを作るぞ!」
「その間に彼らに少し話をしておこう」
「よろしくお願いします」
立場がある者が話に行った方が通じやすいだろうと思っていた兵士長は騎士団長のグラシアが直接話に出向いてくれるのはありがたかった。
「バルバロイ王国騎士団団長を務めております、グラシア・スペルシオと申します」
「おお、貴君があの有名なグラシア騎士団長であらせられるか! 自分はドラゴニア王国竜騎士団で副団長を拝命しておりますライオネル・バッハと申します。此度は不躾にも急な訪問大変申し訳ない。我が国王様より至急の書簡を預かって参りました。また、それに関わりまして私が代理に事前会談を申し込ませて頂きたい」
そう言ってスッと頭を下げるライオネル。
「それではすぐ宰相のルベルク殿へ打診致しましょう」
「謁見と会談が終わりましたら、ぜひ立ち会いをお願いしたいですな!」
「ははは、もちろんいいですよ」
ライオネルはワイバーンを部下の一人に預け、グラシアと一緒に王都に向けて歩き出した。
「ああ、何でもバルバロイ王国ではリカオロスト公爵領で災害があったとか? 国王様より見舞いの品を運ぶように言われておりましてな。ワイバーンでは大量の荷物は運べないのですが、いくつか運んで来ております。おい、お前達降ろしてくれ!」
「「はいっ!」」
二人ほど返事をすると、他のワイバーンに乗る騎士たちにも連絡し、それぞれ括りつけられている荷物を外して行く。バルバロイ王国への進物の他に、ワイバーンたちの食料もある程度積んでいるようだ。
「それでは荷を運べるよう馬で引く荷台を用意させましょう」
「かたじけない」
グラシアの申し出にライオネルは嬉しそうに頷いた。
荷馬車が到着し、進物の荷物を運びながらグラシアとライオネルは王城に向かって行った。
十一名いる残りのワイバーン騎士のうち、五名を帯同させ、六名を十二匹のワイバーンの面倒を見るためこの場に残して行った。
一応バルバロイ王国の兵士たちも緊急事態に備えて何名かはこの場に残っている。見張りの役目だった。
「さて・・・主だった連中は行ったようだな」
俺はその場に気配を消して残っていた。気配を消してと言っても、だだっ広い草原だからな、身を隠す場所ないんだけどね。兵士の後ろに気配を隠してそっと立っているのだ。
そしてスルスルとドラゴニア王国の騎士たちに見つからない様にワイバーンに近寄って行く。
『よう、元気?』
『うえっ!? だ、誰?』
よしっ!思った通り念話が通じたぞ!
『あ~、あまりキョロキョロしないでいいよ。足元にいるから』
『びっくりした・・・話が通じるなんて初めてだよ』
『なに、そっちの国では話通じないんだ?』
『最悪だよ~、言う事聞かないと叩かれるし、訓練で何回も空飛ばされるし』
『うわ~、大変だね~』
ワイバーンの生活も世知辛いもんだな。ドラゴニア王国もワイバーンに取ってはブラックか?
『ホントだよ~、ご飯だって少ないし・・・』
ワイバーンが溜息吐いた。ワイバーンも溜息吐くんだ。
『そうなんだ~、ウチに来ればメシ食べ放題もあるけどね~』
俺はニヤリとして告げる。
『ええっ!ご飯食べ放題!? お腹いっぱい食べられるの!?』
『そうだね~、週に一回魔の森で魔獣狩り放題かな~』
『うわ~、いいないいな!羨ましいよ!』
首を折り曲げて足元に隠れる様にいた俺に顔を向けて来る。あまり挙動不審だとドラゴニア王国の騎士たちに見つかるから落ち着いて欲しい。
『なになに? 何話してるの?』
隣のワイバーンも顔を向けてきた。
『この人の国に行けば、お腹一杯ご飯食べられるんだって!』
『マジかよっ! いいな~、行きてーなー』
隣のワイバーンも飯に不満があるらしいな。
『毎日の食事もある程度確保するし、訓練もそんなに厳しくないよ、ウチは』
なんたって竜騎士団持ってないからね。どうトレーニングしていいかわからんし、始めの手探り期間なんかは比べるまでも無く楽ちんだろうさ。
『週一回は魔の森で魔獣食べ放題なんだけどさ、その日は訓練も休みだから、お腹一杯食べてのんびり休めるよ』
『うわ~、それすごい!』
『ちょっと、マジで考えてみるか?』
ワイバーンたちが浮足立つ。
俺はその後もコソコソとワイバーンたちからドラゴニア王国の状況を聞いたりバルバロイ王国のいいところを伝えるのであった。