転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第219話 交差する両国の思惑をスルーしよう

「・・・それで、どうなのです? あれほどの魔力嵐、前例がないのですが」

 

 

 

ドラゴニア王国の竜騎士団副団長、ライオネル・バッハの質問に深く溜息を吐く宰相ルベルク。

 

 

 

「そちらでリカオロスト公爵領の災害情報を掴んでおられます通り、復興自体は進んでおりますが、大元の原因は大きな地震が起こったと言う以外よくわかっておりません。目下調査中なのですよ」

 

 

 

しれっと原因不明と宣う宰相ルベルク。

 

領主邸が崩壊するほどの局地的地震など、なかなかあり得る事ではないのだろうが、見えない以上、細かく追及して来ないだろうとルベルクは考えていた。

 

 

 

「原因が不明なのですか!? あれほどの魔力を感知しておきながら、何もわからずと言うのは非常に理解しがたいのですが・・・」

 

 

 

訝し気に首を傾げるライオネル。

 

 

 

「ええ、逆にあれほどの巨大エネルギーなど、我が王国でも初めて観測されたほどの事象です。目下宮廷魔術師たちが原因の調査に当たってはおりますが・・・」

 

 

 

如何にも困ったと言った感じで首を振る宰相のルベルク。

 

 

 

「まるで手がかりがないのですか?」

 

 

 

「そうですな、局地的な破壊と、瞬間的な魔力の爆発があったような感じ以外は痕跡が残っていない状況でしてな・・・。今我が国から強力な魔力を感じる事は出来ないと思います。正しくそれが何よりの証拠でもあります。まるっきり痕跡が無く、何も残っていないのですよ」

 

 

 

「不思議なものですな・・・、騎士団に所属されるグラシア殿はどうお考えで?」

 

 

 

急に話を振られた騎士団団長のグラシアは一瞬の戸惑いを見せたが、シンプルに答えた。

 

 

 

「急な魔力の爆発のようなものがあって、騎士団に集合を掛けたのですが、特に王都には影響が無かったので・・・」

 

 

 

この件に関してはまるっきりノータッチと言わんばかりのグラシアの回答に、ライオネルの眉間は深いしわが刻まれる。

 

 

 

これでは何も情報を持ち帰れない、そんな雰囲気が伝わって来る。

 

 

 

「実際のところ、バルバロイ王国はあの伝説の魔導戦艦を発掘したのでは・・・、と我が国の王は心配しております」

 

 

 

ついにズバリとその名を出して様子を伺うライオネル。

 

バルバロイ王国としては、その存在を知られてはならない「魔導戦艦」であるため、頷くわけにはいかなかった。

 

尤も、すでにヤーベによって塵に変えられてその存在は消滅しているのだ。

 

他国への魔導戦艦を用いての侵略などありえないのだが、その事を証明する事は難しい。

 

一旦存在を認めた魔導戦艦を消滅させたとなると、魔導戦艦をも上回る戦力があると言っているのに等しいからだ。

 

 

 

「ははは・・・、その心配は杞憂であるとバーゼル陛下にお伝えください。そのようなものを現・在・我が国は保有しておりません。まして、そのようなものがあったとして、隣国へ救援に出向くことはあっても、害するような意図など持ちようもありませんぞ」

 

 

 

少しわざとらしいほどに快活に説明する宰相ルベルク。

 

大げさに、ドラゴニア王国への敵意などないとアピールしている。

 

 

 

「そうであれば大変よろしいのですが・・・」

 

 

 

ライオネルは少し肩を落としながら苦笑する。

 

ルベルクの言葉通りならば何の心配もいらないのだが、それを証明するものは何もないのだ。

 

 

 

「そう言えば、先ほどの王への謁見時にもお会いできませんでしたが、バルバロイ王国における、救国の英雄殿にもお会いしたかったのですが、今はいらっしゃらないのですか?」

 

 

 

急に話題を展開するライオネル。

 

宰相ルベルク、ドライセン公爵、騎士団団長のグラシア全員が眉をピクリと動かした。

 

 

 

先ほど王への謁見を済ませた際にも、バルバロイ王国への進物、災害への慰藉の言葉と続き、「救国の英雄」についての質問もあったのだが、なんとその場に伯爵であるヤーベ卿の姿は無かったのである。

 

 

 

「はあ・・・、実は王城内に居なかったので謁見時には呼べなかったのですよ」

 

 

 

「どちらにいらっしゃるのですか?」

 

 

 

「今はどこに居るのか・・・、何せ彼の御仁は登城義務が無いので・・・」

 

 

 

苦笑いしながら頭をボリボリと掻く宰相のルベルク。

 

 

 

「なんと・・・伯爵殿は登城義務が無いのですか・・・。バルバロイ王国としては、まるでフリーランスの冒険者の様ですな」

 

 

 

「まあ、伯爵殿は元々冒険者でしたからね・・・。無理に貴族のルールに当てはめたら出奔しかねないかと思いましてね」

 

 

 

頭を掻くのをやめて、ハンカチを取り出し額の汗を拭き出す宰相ルベルク。

 

ドライセン公爵は腕を組んだまま苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

 

 

ライオネルはスライム伯爵が貴族に叙爵されたとはいえ、王国側からはスライム伯爵に気を使っているような感じさえうかがえると感じていた。

 

 

 

(もし戦争になっても・・・うまくすれば「救国の英雄」をこちらに取り込めるかもしれん・・・。そうでなくても、バルバロイ王国内でそう言った特殊な扱いになっているのなら、直接正面から戦わなくてもいいように持って行きやすいはずだ)

 

 

 

ライオネルはスライム伯爵の状況を何となく理解した。

 

 

 

(直接ヤーベ殿にいろいろ聞かれるのはまずいかもしれぬ・・・、ここはヤーベ殿と会わせずにスルーさせるのが良策じゃ)

 

 

 

宰相のルベルクは頭の中でシミュレートを完了した。

 

 

 

ヤーベがいない状況で、何故かヤーベの存在を巡って両国の代表がピリつく事態となるのであった。

 

 

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