転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第26話 早速師匠を呼びに行こう

冒険者ギルドを勢いよく呼び出したイリーナ。

 

「さあ師匠!ドーンとお姿をお見せください!ギルドマスターをギャフンと言わせましょう!」

 

意気込むイリーナに対し、俺様はリュックから触手だけ出すと、ぐるぐる回転させた後イリーナの頭をポカリと殴る!

 

「このオタンチン!」

 

「あいたっ!」

 

イリーナは涙目になって後ろを向く。

 

「何をする、ヤーベ殿」

 

頭を擦りながら文句を言うイリーナ。

 

「このスライムの姿で出られないからお前に代理を頼んだんでしょ!」

 

「あっ」

 

ヒヨコ隊長もイリーナの肩で「やれやれ」といった表情で溜息を吐いている。

ヒヨコ隊長にまで馬鹿にされるイリーナ・・・どこを切ってもポンコツだぜ!

 

「ううう・・・すまない、ヤーベ殿」

 

ズーンと落ち込むイリーナ。

 

最も、イリーナがギルドマスターにキレ気味に啖呵を切った時にはもう覚悟を決めてはいたけどね。後は俺の姿をどうやってごまかすかだ。

ありがたいことに、決闘とやらで手に入った軍資金もある。

 

「イリーナ、早速買い物だ。買い物の本番は討伐した魔物の買取金が手に入ってからだが、今は俺の姿をごまかすためのアイテムを購入しに行かねばならん」

 

「おおお・・・、ヤーベ殿。やっぱり私のために秘策を・・・くっおハプッ!」

 

俺様は最後まで言わせずに触手で口を塞いだ。

 

「言わせねーよ、人の多い往来で何を口走ってるんだ」

 

「ハププププッ」

 

「さあさあ、まずは鎧を見に行こう」

 

イリーナの口を押えたまま、もう1本の触手でイリーナの尻を叩いて出発した。

 

 

 

「らっしゃい」

 

気難しそうな親父のいる店だな。

道端でしっかりとした鎧を売っている店を聞いたら、この店を紹介されたのでとりあえず入ってみた。しっかりした鎧を探そう。

 

「ヤーベ殿、どんな鎧を探すのだ?」

 

「所謂全身鎧、フルプレートだな。それこそ全身が隠れないとどうにもならん」

 

「なるほど、ではこの騎士のような鎧はどうだろう?」

 

「あん、お嬢ちゃん、そんなフルプレートは重すぎるぞ。やめとけやめとけ、こっちの皮鎧にしておきな」

 

そりゃそうか、イリーナがリュック背負ってるだけだから、誰がどう見てもイリーナが鎧探しているように見えるわな。

 

「店主殿、少し試しに装着してみてもよいだろうか?」

 

イリーナが奥の店主に問いかける。

 

「諦めの悪いお嬢ちゃんだな。好きにしな。但し鎧に傷を付けたら買い取ってもらうぞ。ちなみにそのフルプレートは金貨五枚はするからな」

 

「むうっ!なかなかに高級品だな」

 

だが、俺は気にせず試着しちゃう。OK取ったことだし。

早速フルプレートの隙間から入り込み、手足の部分を含めた全身に収まるように形を変える。

 

「では、動いて見よう」

 

ガシャン、ガシャン。

 

「おおっ!どうだヤーベ殿、着心地は?」

 

動けると言えば動けるが、これで戦闘はつらいな。触手で鎧を支えている状態なので触手で攻撃することもできないし。大体金属鎧だと<雷撃衝(ライトニングボルト)>の使用も出来ないな。

 

「な!ななななな・・・」

 

ん?あ、店主がこっちを見ている。

イリーナが鎧を着ていないのに鎧が歩いている。

そりゃヤバイか。

 

「い、一体どうなって・・・」

 

俺様はイリーナの耳に触手を大至急差し込む。

 

「あふんっ!・・・ヤーベ殿、耳はぁ・・・ダメなのだぁ」

 

『やかましい!自分は鎧を操る鎧使い、操るにちょうどよい鎧を探しに来たのだが、しっくりくるものがなさそうだ。また来ることにしよう、と言って店を大至急トンズラだ!』

「じ、自分は鎧を操る鎧マスターなのだ・・・さよなら!」

 

誰が鎧マスターだよっ! とにかく騒ぎになる前にトンズラだ!

ばたばたと鎧屋を後にする。

 

「鎧マスターってなによ?」

 

「ヤ、ヤーベ殿が言えって言ったのではないか!」

 

ぷりぷりしてイリーナが俺に文句を言う。

 

「誰も鎧マスターなんて言ってないだろ?」

 

大体なんだよ、鎧マスターって?

 

「それより、次はどこへ行くのだ?」

 

「鎧がダメなんだから、次は魔導士だな。ローブを買おう。だから魔道屋だ」

 

「わかった、裏通りにいい店があると情報を仕入れているぞ!」

 

わたわたと走りながら魔道屋へ向かう・・・魔道屋っていう?

 

 

 

 

「失礼するぞ・・・」

 

やたらと薄暗い店に入る。

 

「魔導士の店、キャサリン・・・大丈夫なのか?この店」

 

思わず口に出てしまう俺。

 

「何が大丈夫なんだい?失礼だね」

 

わあっ、急に奥のカウンターにいたはずのオババが目の前にいた。

 

「うわっ!びっくりした」

 

「なんだい、嬢ちゃん一人かい?」

 

「ええ、まあそうだな、うん」

 

反応が怪しいですよ、イリーナさん。

 

『魔導士が着るローブを見せてもらえ』

「魔導士が着るローブが欲しいのだが、見せてもらえるだろうか?」

 

オババが首を傾げる。

 

「あんた魔導士じゃないだろう?何でローブがいるんだい?」

 

「ああ、師匠が着るためのローブを探しているんだ」

 

「ほう、あんたの師匠は魔導士かい」

 

「そのようなものだ。プレゼントしてびっくりさせようかとな」

 

お、うまい言い訳だ。これで本人が来ていない理由付けにもなるな。

 

「普通のローブならそこに山積みにしてあるよ。どうせ魔術付与された高級なローブは買えないんだろ?」

 

オババがちらっと見てくる。むむっ!ビンボー確定されるのは些か気分が悪いが、金がないのも事実。魔獣退治で金がいっぱい入ったら見てろよオババめ!高級ローブと杖を買ってくれるわ!

 

「そうだな、とりあえず普通のローブでいいよ。後魔導士が持つ杖も見せてほしいんだが」

 

「杖もいい素材の高級品は奥に飾ってあるけど、どうせ金が無いんだろ?」

 

ズバリその通りなんだが、他に言い方はないのか。

 

「ヤーベ殿、この色はどうだろう?」

 

そう言ってクリーム色のようなローブを山から引きずり出し、ばさばさと埃を払う。

とりあえず来てみるか。

リュックからしゅるりと出るとローブを上から被る。

おお、これは楽だな。地面に裾が擦ってしまうが、コントロールは触手だけでOKだ。ローブだから重さもほとんど感じないし。

 

「ヤーベ殿、この赤い宝石が付いた杖はどうだろう?」

 

「お、カッコイイな、これ」

 

色と言い、明らかに俺は今あの伝説のRPGドラ〇ンクエ〇トの大魔道にそっくりな自信がある。すごく無意味な自信だが。

 

「おお!ヤーベ殿、よく似あっているぞ!」

 

イリーナが両手を胸の前で組んで褒めてくれる。何となく照れるな。

 

「お、おお?お前さんそれは一体どうなっているんだい!?」

 

あ、いけね。店にはオババもいたんだった。

 

『私はローブマスター。師匠にプレゼントするローブも操ってしまうのだ』

「私はローブマスター・・・ってローブマスターってなんだ!?」

 

「何だいローブマスターって? 何でローブと杖が浮いているんだい?」

 

オババが怪しんでこっちへ来る。

 

『とりあえずお会計』

「ああ、とりあえずお会計を頼む」

 

オババの前に立ちはだかる様に会計を告げる。

 

「魔導士の杖が金貨二枚、ローブは銀貨三枚でいいよ」

 

とりあえずイリーナはちょっきりお釣りの無いようにオババに金貨と銀貨を払う。

 

「毎度あり。で、それどうなっているんだい?」

 

オババがローブを覗き込もうとする。近寄るなオババ、俺はオババ趣味ではないのだ。

 

『イリーナ、行くぞ!さっさとドンズラするのだ』

「あ、ああ、オババ、また来るぞ」

 

そう言ってローブがふわふわしたままイリーナがわたわたと店を出る。

 

「なんかあったらまた来るんだよ!」

 

オババの声が後ろで響く。「魔導士の店、キャサリン」、もう来ねーかな。

 

イリーナの横で杖を持ちながらローブを着て歩いていく。

初めて自分の足?で町を歩くな。ちょっと感動がある。

さて、冒険者ギルドでもうひと暴れしようか。

 

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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