転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第223話 敵の状況を把握しよう

 

『フッ・・・ボスの睨んだ通りだったな』

 

『まったくだ・・・ボスの慧眼、正に千里眼の如しだな』

 

 

 

ヒヨコ十将軍、序列一位のレオパルドと序列二位のクルセーダーは森の木々を切り倒したり踏みつけながら苦労して進軍している兵士たちを見降ろす。

 

 

 

 

 

丁度ヤーベが王城の会議室でドラゴニア王国の進行状況を調査しなければならないと伝えていた時、すでにヒヨコたちはヤーベの命を受け各地へ調査に赴いていた。

 

 

 

 

 

『ドラゴニア王国の兵士たちはボスのいるバルバロイ王国の王都バーロンを急襲するために無理に山越えを敢行している事が確定したな』

 

『ああ、念のため城塞都市フェルベーンの北の街道を南下してくる可能性も考えてクロムウェルとセンチュリオンが調査に出向いているが、多分そちらには兵はいないだろうな』

 

『そうだな、明らかにここの兵士の数が多い。部下たちに数を数えさせているが、多分ドラゴニア王国の王都から出立した全軍の三万五千近いだろうな』

 

『うむ、この規模なら間違いないだろう』

 

 

 

レオパルドとクルセーダーは高い木の枝に止まりながら、ドラゴニア王国の兵士たちを見る。

 

 

 

『となると、数日後にはワイバーンの竜騎兵も出撃することになるか』

 

『ああ、このまま手をこまねいていれば、この山越えの兵士たちが山を越えて王都に到着するころにワイバーンの竜騎兵が到着して、同時に攻め寄せられてしまうだろうな』

 

『ワイバーンを何とかせねばならんか』

 

『それなら問題なかろう。なんと言っても「ヤツ」がワイバーンに伝言と言うか、情報を伝えに行ったんだろう?』

 

『ああ、「サスケ」のヤツがボスからの連絡をワイバーンに伝えに言ったはずだ』

 

『新たに魔の森で仲間になった狼牙族の中で「ハンゾウ」の名を賜ったグループと「隠密」という仕事を行うと言う事だったな』

 

『狼牙族とヒヨコ族の合同隊だからな』

 

『誇らしいと言えば誇らしいのだが・・・』

 

 

 

レオパルドとクルセーダーはお互い見つめ合った後溜息を吐いた。

 

 

 

『くっ・・・俺達は将軍職をヒヨコ隊長から賜る時に自分でハクの付く名前を名乗ったわけなんだが・・・』

 

『ああ・・・まさか、ボスから名前を賜るヒヨコが出るとは・・・』

 

『『自分で名前を付けて名乗るのではなかった・・・』』

 

 

 

二匹は溜息だけではなく肩(翼?)も思いっきり落としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハンゾウのやつ、うまくやっているでしょうか?』

 

『ボスが肝入りで命名したヤツだからな。まあ大丈夫だろう』

 

 

 

ここは王都バーロンのヤーベの屋敷。狼牙族の厩舎。

 

留守番のローガと屋敷警備の風牙が話し合っていた。

 

 

 

ハンゾウは先日魔の森にトレーニングに出かけ始めたローガ達の一団が魔の森にいたハンゾウの一団と出会い、スカウトしてきた連中であった。

 

それにしてもハンゾウ率いる一団に初めて会った時は背筋が寒くなったものだとローガは思い出していた。ハンゾウを筆頭に僅か十頭で魔の森で生き抜いていたのだが、出会った当初の戦闘力で言えばローガの足元にも及んでいないだろうが、気配を捕らえにくい印象があった。色味もローガ達の濃い青色の毛に比べればよりダークな濃い藍色と言った毛色を持ち、闇に溶け込めるように見えた。

 

 

 

連れ帰って転移の扉を潜り、館に帰って来てボスに恭順の意思を示した時に、「隠密」という仕事を割り振ると伝えられ、グループのリーダーであった狼牙に「ハンゾウ」の名前が与えられた。その後、ヒヨコ隊からも「隠密」隊への抜擢が行われ、そのグループのリーダーには「サスケ」の名が与えられた。

 

 

 

『ヒヨコ隊長たちは「サスケ」の名を与えたことに相当驚いていたようですな』

 

『うむ、ヒヨコたちはボスの名付けが初めてだったからな・・・。ヒヨコ隊長でさえ今でもヒヨコ隊長だからな・・・』

 

 

 

ローガは自分たち狼牙族の何名かにボスより名を頂いているが、ヒヨコたちは誰も名付けを行われていなかったのだが、初めて「サスケ」の名を賜り、「隠密」としての仕事を与えられたヒヨコが誕生したのである。

 

 

 

『どちらにしても、情報収集と言う面では、専門の担当が出来た様なものだ。我々はその存在意義を失わぬよう、高い戦闘力を維持しなければボスのお役には立てない』

 

『そうですね。私もどちらかと言えば今まで情報収集を行う事が多かったですが、今後はハンゾウたちに情報収集のメインを任せるようになると、より戦闘に特化して鍛えて行かねばなりませんね』

 

『いや・・・、お前がさらに戦闘特化って・・・』

 

 

 

ローガは風牙の斜め右上の決意を頼もしく見ればいいのか、ヤバイと感じればいいのか複雑であった。

 

 

 

 

 

 

 

ゆらり。

 

 

 

わずかな空間の揺らぎを感じるとともに、一匹のヒヨコと狼牙が現れる。

 

 

 

『わっ! いつの間にここに来たんだい?』

 

 

 

ワイバーンの一匹が問いかけた。

 

 

 

『今しがたですよ。先日ウチのボスが貴方にお話ししていたと思いますけど、貴方たち全員の首輪を外して、我が国の魔の森へ招待するってお話を改めて伝えに来ました』

 

 

 

狼牙の頭の上に乗ったヒヨコが説明した。

 

 

 

『ええっ! アレ、本当の話だったの!?』

 

 

 

ワイバーンは驚いた。確かにあっさり首輪を外してくれたけれど、本当にわざわざドラゴニア王国まで来て助けてくれるとは思わなかったのだ。

 

 

 

『決行日は明後日です。ウチのボスが来てみなさんの首輪を外しますから、仲間の皆さんにも伝えておいてくださいね』

 

 

 

『わ、わかった』

 

 

 

『ここを脱出してウチの国に来れば週一で魔物の森で魔獣食べ放題らしいですよ。楽しみですね』

 

 

 

ヒヨコが嬉しそうに説明した。

 

 

 

『ホント!今から楽しみだよ!』

 

 

 

ワイバーンは嬉しそうに首を縦に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『な、なんだあれは・・・』

 

『正しく、敵なのであろう』

 

 

 

ヒヨコ十将軍序列五位ヴィッカーズと六位カーデンはある位置・・・・から敵の侵攻を確認していた。

 

 

 

『もしかしたら、とボスも言っていたが、この動きもボスの想定の内だろうか?』

 

『もしかしたら、と言っていたのだから、想定の内なのだろう。尤もいい方で想定内なのか、最悪の想定なのかは我には判断付かぬが』

 

 

 

ヴィッカーズの問いにカーデンは進行してくる敵を真っ直ぐ見つめた。

 

 

 

『大至急ボスに報告が必要だ』

 

『うむ、だが、敵の規模を把握してからだな』

 

 

 

鈍い光を放つ銀色のフルプレートに身を包んだ騎士たちが雲霞の如く押し寄せてくるのを見ながら二匹は情報収集に動くのだった。

 

 


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