転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第226話 決戦前日は普段通りに過ごしてみよう

「えっ!? ミノ娘たちの集落が他にも見つかった!?」

 

 

 

俺に長距離念話でヒヨコ十将軍序列七位のカラールとそれをサポートしている狼牙族の「砕牙」をリーダーとする狼牙族の一団から連絡が入った。

 

ちなみに「砕牙」をリーダーとする狼牙族の一団は、先日隠密に抜擢した「ハンゾウ」たちと同じ魔の森でスカウトされた狼牙族である。砕牙の名を授けた狼牙は、ガルボ並みに図体が大きく、パワー型の狼牙であった。魔法も土属性に秀でており、かなりの戦闘力を誇る狼牙だったので新たな一団を組ませてみたのである。

 

 

 

実は今日は貴重な一日なのだ。

 

現在ドラゴニア王国との戦争が始まろうとしている。国王達に詳しく説明していないが、山越えの敵兵士たちは氷牙と風牙に足止めさせている。

 

ドラゴニア王国国王のバーゼルはたぶん<古代竜(エンシェントドラゴン)>の力を借りに行くだろう。それが成功した場合、最短で明日の昼頃にはこの王都バーロンに<古代竜(エンシェントドラゴン)>が到達する可能性がある。

 

 

 

逆に言えば今日一日は余裕があるのだ。念のために王都バーロンとその周辺の町は戒厳令が出され、ピリついた雰囲気となっているが、店も開いているし、冒険者ギルドも通常営業である。一般市民への戒厳令ではあるが、冒険者や商人たちは逞しいと言えば逞しいのだろう。

 

 

 

俺も朝から冒険者ギルドに出向き、ケモミーズの今日の依頼内容を確認した後、明日の休息を命じた。危険は及ぼさせないつもりだが、明日は何があるかわからないからな。

 

そうしたら、明後日ケモミーズに入りたいと言う武闘家がいるとのことで、俺に入団テストを行って欲しいとサーシャに頼まれた。ていうか、なんだよ入団テストって。それに、わざわざこのポンコツケモミーズに入りたいって、どんな物好きだよ。

 

・・・一応入団テストするけどさ。

 

 

 

でもって、午前中はアローベ商会とドワーフの鍛冶師ゴルディン殿の元を回って三頭黄金竜(スリーヘッドゴールデンドラゴン)の皮で製作するバックと鎧、盾の準備を進めた。

 

さてやっと昼飯にありつこうか・・・と言ったところで、先ほどの連絡が入ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

『さて、どこに居るんだ?そのミノ娘たちは?』

 

 

 

俺は転移の扉を使ってカラールの元を訪れる。

 

 

 

『はっ!こちらであります』

 

 

 

いきなり俺の姿が目の前に現れて驚かさない様、ミノ娘たちの集まる場所から少し離れた場所で俺の到着を待ってくれていたカラール。よく出来たヒヨコだな。

 

 

 

この辺りは城塞都市フェルベーンの北西、最初にミノ娘達を見つけた場所から更に北の森の奥地だ。見れば20名近くのミノ娘たちがいた。以前見つけたチェーダたちよりもさらにボロボロの服、栄養状態の悪そうな雰囲気だ。

 

 

 

・・・砕牙たちがミノ娘たちを囲んでいるので、怯えているようだ。

 

 

 

『砕牙、部下たちを下げてくれ。ミノ娘たちが怯えているようだ』

 

 

 

『ははっ!』

 

 

 

「さて、君たち。森の奥でかなり苦しい生活をしているという事だったが、どうだろう? 良ければ他のミノ娘たちが生活している場所まで連れて行って仲間同士暮らしてもらおうかと思うのだが、どうかな?」

 

 

 

「あ・・・あの・・・私たちを保護して頂ける・・・ということでしょうか・・・?」

 

 

 

グループのリーダーらしきミノ娘が問いかけてくる。

 

 

 

「そうだね。よければ保護させてもらいたい。もちろん生活のための仕事はしてもらいたいが、それも先輩のミノ娘たちに聞いてもらえばいい。君、名前は?」

 

 

 

「ゴーダと言います」

 

 

 

「君がグループのリーダーでいいかな?」

 

 

 

「あ、えっと・・・そうですね。とりあえず・・・」

 

 

 

「とりあえず、食事とお風呂の準備をしよう」

 

 

 

そう言って俺はオークの煮込みとマンマミーヤで買っておいたパンを取り出す。

 

 

 

「さあ、とりあえずお腹一杯しっかり食べてくれ」

 

 

 

「「「わあっ!」」」

 

 

 

ゴーダの後ろからわらわらとミノ娘たちが集まって来る。

 

「リコッタです!お兄さんよろしくお願いします!」

 

「マスカルです。お代わりお願いします!」

 

「モッツァレラです。お仕事もらえるようで嬉しいです!」

 

 

 

どの子も大柄でご立派な御胸をお持ちのようだ。

 

それにしてもドラゴニア王国との戦争前に保護できたことは僥倖だったな。

 

尤も城塞都市フェルベーンの周りは戦火に巻き込まれる事はないはずだけどな。

 

 

 

食後はお風呂に入ってもらい、ボロボロの服も着替えさせる。

 

お風呂はベルヒアねーさんの作った土の風呂釜にウィンティアに水を入れてもらい、フレイアのパワーで温めてもらう。二人くらいしか入れないけど、それでもお風呂に入って汚れを落としてもらい、ミノ娘たちのために作った服の予備を出して着てもらう。

 

 

 

「この娘たちが新たに保護された者たちでしょうか?」

 

「今までよく無事だったな!ヤーベに任せておけばもう大丈夫だぞ!」

 

 

 

転移の扉でミノ娘の先輩にあたるパナメーラとチェーダを連れてくる。

 

 

 

「とりあえず屋敷の離れを使って休ませてやってくれ。この娘たちは屋敷の仕事ではなく、カソの村に新たに作る牧場と畑の担当をお願いしたいのでね。そのうち移動してもらうことになるけど」

 

 

 

「わかりました、ヤーベ様」

 

「おい、ここからの移動は極秘だからな!死んでも誰にもしゃべるなよ!」

 

 

 

そう言って屋敷への転移の扉をくぐらせるチェーダ。なんだか頼りになるね。

 

 

 

「こ・・・ここどこ?」

 

「不思議・・・」

 

 

 

ミノ娘たちが俺の屋敷の敷地に行きなり到着したのできょろきょろしている。

 

 

 

「何度も言うが、絶対他言無用だからな!みんな、こっちについて来い」

 

 

 

チェーダが新しくきたミノ娘たちをまとめて先導していく。

 

チェーダはわずか数日でえらく成長したような気がするな。後は彼女たちに任せよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほー、ランチまだいけるかな?」

 

 

 

覗きに来たのはポポロ食堂。リンとレムの姉妹が頑張っているお店だ。尤も今はお母さんが戻って来ているからな。親子三人で切り盛りしているだろう。

 

 

 

「あ!ヤーベさん!どうぞどうぞ!」

 

「あらあら、救国の英雄様に来ていただけるなんて、その節は本当にありがとうございました」

 

 

 

ちょっと久しぶりになっちゃったせいか、挨拶が固いよみんな、気にしなくていいのに。

 

 

 

俺は席に座って日替わりランチを注文する。

 

見ればリンちゃんがのれんを取り外してきた。

 

 

 

「ちょうどお客様を送り出してこれから私たちもお昼にするところだったんです」

 

 

 

ニコッと笑って取り込んだのれんを片付けるリンちゃん。

 

 

 

「あれ、じゃあ俺が居たら迷惑じゃなかった?」

 

 

 

「とんでもない!ぜひ一緒にご飯食べていってください!」

 

 

 

目の前にお茶の湯飲みを置きながらリンちゃんが一緒に食事を誘ってくる。

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

俺はありがたくその好意に甘えることにした。

 

 

 

「さあ、お腹いっぱい食べてよ!」

 

 

 

レムちゃんが爆弾コロッケやクリームコロッケ、その他鳥のから揚げも乗った大皿を出してくる。全部揚げ物ばっかだが、この親子は健康大丈夫だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

お腹いっぱい食べた後、お土産にポポロ食堂特製コロッケを10個も包んでもらった。

 

リーナが大喜びするだろう。

 

お代はいらないとの事だったが、金貨1枚をこっそりリンちゃんのポッケに入れておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、王都警備隊の詰め所にも顔を出す。

 

警備隊隊長のクレリア・スペルシオに挨拶しておこうと思ったのだ。

 

 

 

「やっほー、クレリア隊長いる?」

 

 

 

覗いた詰め所にて、すぐに出てきてくれたのは副官のエリンシアであった。

 

 

 

「あら、ヤーベさん。あ、今はスライム伯爵様でしたわね」

 

 

 

いたずらっぽくウインクしてくれるエリンシア副隊長。

 

 

 

「貴族してるつもりはないので、今まで通りヤーベでいいですよ」

 

 

 

「ヤーベ卿が良くても、どこでだれが見ているかわかりませんからね~」

 

 

 

おどけるように言うエリンシアの後頭部をチョップが襲う。

 

 

 

「痛っ!」

 

 

 

「何を馬鹿なことを言っている! 誰が見ているかなどではなく、スライム伯爵様への敬意が大切なのだろうが!」

 

 

 

ぷりぷりしているのは隊長のクレリアであった。

 

 

 

「クレリア隊長久しぶり。本当に気を使わなくていいよ」

 

 

 

「しかしさすがにそれは・・・」

 

 

 

「何言ってるの。キルエ侯爵を命がけで守った戦友同士じゃない」

 

 

 

「せっ・・・戦友・・・同志・・・」

 

 

 

なぜか顔を真っ赤にして照れるクレリア隊長。俺、変なこと言ったか?

 

 

 

「わ、わかった・・・それでは公の場でなければ、ヤーベ殿、と今まで通りの呼び方を許してもらえるだろうか・・・?」

 

 

 

頬を赤く染めて指を組んで絡ませ、上目遣いに聞いてくるクレリア。

 

今のクレリアのお願いを断れる男がいるなら、見てみたいね。

 

 

 

「ああ、もちろんいいとも」

 

 

 

 

 

 

 

それから戒厳令が敷かれる王都の様子を聞きながら、明日、敵が攻めてきたときの避難経路や市民誘導などのイメージを話しておいた。

 

 

 

「戦争に・・・なるのだろうか?」

 

「たとえ戦争になっても、誰一人王都の市民に怪我させたりしないさ」

 

 

 

クレリアの不安そうな顔に俺は自信を持って答えた。

 

 

 

そう―――――

 

 

 

ドラゴニア王国との決戦は明日。

 

今は思い描いた通りに進んでいる。

 

明日、敵の切り札をどう無力化するか・・・その一点にかかっていた。

 

 

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