転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「ガァァァァァァァ!!」
恐るべき咆哮を上げながら火竜山を飛び立つ<
「うわわわわわっ!」
支配の王錫を持っているとはいえ、ドラゴニア王国国王バーゼルは<
「だがっ!この<
必死で角につかまりながらも愉悦の笑みを浮かべる国王バーゼル。
ではなぜ、この<
それには「支配の王錫」というマジック・アイテムが関係している。
元々ドラゴニア王国は<
その信仰対象が火竜山に住む<
ドラゴニア王国を起こした開祖の英雄は「支配の王錫」という極めて強力なマジックアイテムを所持し、<
その力はあまりにも強力であったのだが、「支配の王錫」を使うたびに<
そのため、歴代の王たちは引継ぎの際、極めて危険な有事以外で「支配の王錫」を使用することを禁じたのであった。
だが、バルバロイ王国に宣戦布告しながら、虎の子のワイバーンを編成した竜騎兵がワイバーンの脱走という信じられない事件により壊滅、と言うよりは消滅してしまったため、すでに歩兵団を先行させてしまっていた今となっては撤回もできず、「支配の王錫」による<
『ボス、<
ヒヨコ十将軍序列二位、クルセーダーより長距離念話が入る。
昨日一日、いろいろと王都を見て回ったり新しいミノ娘の集団が見つかったりと忙しかったが、一通りやるべきことは終わらせてある。
『わかった。引き続きお前たちはヴィッカーズとカーデンに合流し、
『ははっ!』
尤もヒヨコたちだけでは何ともならないだろう。
一応切り札的には一昨日の夜西の森に移動させたワイバーンたちをドラゴニア王国の王都近くに呼び戻して待機させてある。ハンゾウとサスケにコントロールさせているのでトラブルはないだろう。
・・・尤も後詰めに派遣した雷牙の部隊は不謹慎だが、相手が非道な存在であれば出番があるなどと気合を入れているだろう。
さて、朝一登城した俺はワーレンハイド国王、宰相ルベルク、騎士団長グラシア、宮廷魔術師長のブリッツに本日昼頃<
「な、なんだと!」
「<
「どう対処すればよいのか・・・」
頭を抱える一同に俺は戦略を伝える。
迎え撃つのは俺。
たぶん北西から飛んでくると思われるため、王都バーロンの北西は立ち入り禁止区域とし、一般人は東街の方へ避難。教会などの施設が受け入れを行う。
昨日のうちにアンリ枢機卿には一言伝えておいたから、協力はスムーズだろう。
一応弓矢兵の準備と俺が防ぎきれなかった時のことを考えて魔法障壁を展開できる魔術師団の派遣はお願いした。
「それだけでいいのかね?」
ワーレンハイド国王が俺に疑問をぶつける。
「一応フィレオンティーナは戦闘準備を取らせて待機させます。冒険者ギルドにも市民の避難の手伝いと遠距離攻撃及び魔法障壁の展開が可能な高レベルパーティの派遣をお願いしてあります」
「冒険者ギルドへの報酬はどうしたのだ?」
「一応私が立て替えております」
宰相のルベルクの問いに俺は答えた。
「国庫で賄う由、後で報告を上げて欲しい」
「わかりました」
「それで、騎士団にはどのような役割を頂けるのでしょうか?」
グラシア団長が俺の方を真剣なまなざしで見る。
・・・俺は騎士団に<
「申し訳ないのですが、あの将軍に指揮をとって頂くのは些か不安であります。弓矢隊を率いる副官レベルの人材を見繕って宰相ルベルク殿より指示を行ってもらえますでしょうか?」
オレイス将軍とやらに指揮を任せるのはまずい気がする。攻撃命令を出す前にあっさり弓を放って<古代竜エンシェントドラゴン>を怒らせるだけの気がする。
「オレイス将軍では不安かね?」
宰相ルベルク殿が俺に問う。
「少なくとも私の攻撃命令を待っていただけるだけの度量が必要です。いたずらに攻撃すれば<
「ふむ・・・そうだな。グラシア団長、人選を頼む。決まり次第ルベルクより指揮の命令を伝えよう」
「一応騎士団の三分の一は北西にて待機してもらいますか。もう三分の一は市民の避難誘導に協力を、もう三分の一は王城での待機としましょう」
これほどの国難に騎士団が出なくていいとは言えないしな。一応形だけでも陣を作ってもらおう。
「了解しました」
グラシア団長が頭を下げる。
俺はふと疑問が浮かんだので聞いてみた。
「そういえば・・・、軍の指揮権とか特に持っていませんが、いろいろと指示を出してしまいましたね。よかったのでしょうか?」
俺が首を傾げながら訪ねると、
「本当に今更なことだな」
とワーレンハイド国王が笑った。
「通常ではあり得ぬことですがね、スライム伯爵殿の実力と情報網は王国をはるかに上回っておられるような気もしますしな」
宰相のルベルクも苦笑しながらそんなことを言う。
「私はスライム伯爵様に従うのに何ら異存はありません。その実力が本物であると理解しております」
しっかりと頭を下げて宣言してくれるグラシア団長。いや、貴方騎士団の最も偉い人ですから、もっと堂々としていていいんですけどね。
「ヤーベ・フォン・スライム伯爵。貴殿に王都防衛の最高責任者の任を与える。見事その大役を果たしてもらいたい」
厳かに伝えるワーレンハイド国王。
俺は席を立ちあがると恭しく礼をした。
「国王直下の任、誠に恐悦至極。見事その大役を務めて見せましょう」
そう言って顔を上げると、ワーレンハイド国王がいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「お主にとっては面倒なことこの上ないだろうがな」
「この王都でもたくさんの友人や知人が出来ましたからね。日々を生きる人たちに理不尽な不幸が降りかからないよう、精一杯やらせてもらいますよ」
俺はそう言って笑い返した。