転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「旦那様・・・もうすぐ<
不安そうな表情を浮かべるフィレオンティーナ。見れば少し震えているようだ。
「大丈夫だよ。念のためにフィレオンティーナには俺のそばにいてもらうけど、戦ってもらうつもりはないから。今のところは」
そう言ってフィレオンティーナの肩をそっと抱く。
「クスッ・・・今のところは、ですのね」
俺の肩に頭を寄せ、上目づかいに俺を見る。震えは止まったようだ。
「ぬぐぐ・・・リア充伯爵様めぇ・・・」
「くそう!伯爵様はカッシーナ王女と結婚式を控えているってのに・・・」
「あんな美人を・・・」
「何故だ!何故美人は一人の英雄の元に集まるのだ!皆平等にチャンスがあってもいいはずだ!」
「ヘッ!何故か目から水が出てきやがるぜ!」
「何故だ・・・何故俺の弓は敵ばかり貫いて女性のハートを貫けぬのだ・・・」
・・・オレイス将軍のところの弓矢隊から何故か不穏な慟哭が唸り聞こえてくる・・・。
地球時代全くモテなかった俺に何故だと聞かれても、答えなどモッテイナイ。ちなみにチートもモッテイナイ。
「伯爵、えろうすんまへんな」
頭を掻きながら俺に声を掛けてきたのは、ヤーネン・ナーンデーだった。
ヤーネンも大商家の出で、貴族ではないものの家名持ちだった。
何でも抜群の弓の腕前と持ち前の明るい性格で統率力も高いらしい。
だが、貴族派閥のオレイス将軍率いる軍部では冷や飯食らいだった。
グラシア団長の大抜擢で今回の弓矢隊隊長に就任している。
「ヤーネン隊長か。気にしてないよ・・・というか、少し前まで俺は彼らと同類だったからね」
笑って答えた俺をびっくりした目で見るヤーネン。隣を見ればフィレオンティーナまで驚いている。俺のどこにモテ要素があるんだよ? スライムだぞ、スライム。まあその姿をあまり晒してはいないけどさ。
「はあ~、全くもって信じられまへんけどな・・・。そう言えば、伯爵様がワイを推薦してくれはったんでっしゃろ? おおきに、感謝しますわ」
「推薦したのはグラシア団長だよ。お礼なら彼に」
「グラシア団長さんのトコにはもう挨拶行って来ましたわ。そしたら将軍とは別の腕利きを隊長に据える様に伯爵様に言われたって言ってはりましたわ」
「だから、グラシア団長が君を抜擢したんじゃない。ところで、隊長とかメンドクセ~わ~とか思ってない?」
「いえいえ!思ってまへんわ!大出世ですやん、ありがたい限りですわ!給与もナンボかマシになるかもしれへんし」
屈託のない笑顔を見せるヤーネン。何だか憎めない奴だ。
「ぶっちゃけ、居てくれるだけでいいよ。<古代竜エンシェントドラゴン>とガチでやり合おうとかあんまり思ってないから」
「はあ・・・まあ、隊長を任されたからには、あんじょう働きますよってに」
「よろしく」
そう言って俺は手を振ると、王都の外壁の北西角までやって来た。
俺はどちらかと言えばエゴイストだ。
王都の自分の屋敷だけ強力な結界を張って来た。
出張用スライムを応用した結界魔法、<
スライム
屋敷にはイリーナやルシーナ、サリーナ、そしてリーナは屋敷から出ない様に指示している。
ミノ娘たちやセバス、メイドさんたちにも同様の指示を出している。
・・・なぜか、謎の生物二匹のジョージとジンベーは泣きながら俺の頭に飛びついて来たので連れて来ている。俺の頭に二匹も謎の生物が乗っているのに、普通に会話してくれた弓矢隊の隊長であるヤーネンには感嘆を禁じ得ない。
『ボス!<
『了解』
俺は念話でヒヨコ隊長に了解を伝える。
「さて、招かれざる客を迎えるとしましょうかね」
「もう、くるんでっか?」
見ればヤーネンが俺の隣に来ていた。
「ああ、後五分で見える」
「お前ら!気合い入れて行くんやで!空飛ぶ蜥蜴がナンボのモンじゃ!」
「「「おおお――――!!」」」
おお、なかなかカリスマ性があるじゃないか。
「ガアアアアアアアア!!」
ついにその姿を現した<
「はははっ!これでバルバロイ王国も終わりだ!」
よく見れば<
<
「お前ら!ボケっとすんな!気合い入れや!そんなしょーもない態度で空飛ぶ蜥蜴から王国を守れると思っとるんか!」
「「「おおお―――――ッス!!」」」
おおっ!鼓舞で兵士たちを立ち直らせたぞ! ヤーネンやるなあ。大阪弁っぽく聞こえるのはきっと地方の出身なんだろう。
「斉射用意っ! 指示があるまで待て!」
「「「おおお――――ッス!!」」」
弓矢隊、頼りになりそう。
やがて<
体長は20mを越えそうな巨大な姿だ。
さすが<
「行けっ!ミーティア!バルバロイ王国を火の海に沈めるのだ!」
<
「グオオオオオオオ!!」
ファイア・ブレスを放つ<
「<
右手を掲げて被膜状にスライム細胞を広げて火炎を防御する。
さすが<
できれば某大魔王様みたいに「喰らい尽くせ、グラ〇ニー!」とか言ってきれいさっぱり消して見たいところだが、残念ながらノーチートの俺にはそれは難しい。
<
とりあえずブレスからは守り切るしかない。
吐きまくられるブレスを悉く<
「キュキュ――――!」
「ズゴズゴ――――!」
荒れ狂う炎にビビっているのかジョージとジンベーが俺の頭をヒレでペチペチ叩く。痛い。
違う、俺に気合を入れようとしているようだ。大丈夫だ、あんな空飛ぶ蜥蜴に負けはしない。
「何をやっているんだ!ミーティアよ!早く王都を火の海にするのだ!」
暴れる小物。ザコ臭が漂うな。
パキーン!
「な!? 支配の王錫が!?」
どうやら<
『グハハハ!これで我は自由よ!』
頭の上の小物を振り飛ばす<
「うわ―――――!!」
小物が何故かこちらへ飛んで来る。ギャグ漫画なら頭から突っ込んで埋まるところだろうが、現実世界だからな。このままでは間違いなく王都の外壁に叩きつけられてキタネェ花火になって死ぬだろう。
「<
俺は飛んで来た小物をスライム網でキャッチする。どうせキャッチするなら美人の女の子の方がいい。小物とかいらん。
「グラシア団長、この小物を一応捕まえておいてくれるかな?」
「了解しました、伯爵」
「貴様!誰が小物か!余を誰だと心得る!」
グラシア団長に引き渡したバーゼルがやかましく吠える。
「制御不能になった<
俺がじろっと睨むと、口をパクパクして黙り込むバーゼル。
「さて、<
そう言って俺は頭の上のジョージとジンベーをフィレオンティーナに渡して抱かせる。
「キュキュ~~~」
「ズゴズゴ~~~」
何でか知らないが大人しく手を振る二匹。文句が無くて何よりだ。
バサリッ!
以前カッシーナが出した薄緑色に輝く翼を出す。
翼を出した矢部裕樹の姿を見せた事があるのは今までカッシーナだけだったが、今はスラ神様の加護を持つ身だからな。翼ぐらい生えてもいいだろう。
『グハハハハ!もののついでだ!我が怒りを人間どもにぶつけてやろう』
ああ。そういう
「
俺は翼を広げて大空に飛び上がる。
「さあ、大きな空飛ぶ蜥蜴よ、その力を見せてもらおうか?」
俺は思いっきり啖呵を切る。
何と言ってもラノベではまさに王道!大興奮間違いなしの手に汗握るドラゴンとの戦闘シーン!今こそマンキツせずして何がラノベ大魔王か!
『グハハ、不遜なる者よ!その矮小な身で我に立ち向かうと言うか!』
巨大な翼を広げてその巨体を宙に合わせる<
「光の精霊ライティールよ、その力を貸してもらうぞ?」
『ボクの力を使うのかい?いいよ、いくらでも力を貸すよ』
光の精霊ライティールは金髪ボブカットのボクッ娘だ。風の精霊ウィンティアと被り気味だが、より少年っぽい。短パンだし、胸はペッタンコだし。
『キミは何か良からぬ事を考えていないか?』
「キノセイデス」
そう言いながら<
「<
光の精霊ライティールの力を使用した光の矢が<
『クハハ、なんとも貧弱・・・』
そう笑おうとした<
キュアアアアアア!!
俺の指先に凄まじい光が集まっている。
「<
シュオォォォォォ! ズガン!!
『グォォォ!?』
<
刺さりはしなかったが、衝撃は与えたようだ。
『き、貴様! ゆ、ゆるさんぞ・・・?』
顔を上げた<
「<
大量に浮かべた光の球はまるで四方八方から<
ドドドドドン!!
『ゴハッ!』
光の玉を喰らった<
まあ、<
例え<
『ウググ・・・貴様ッ!タダで済むと思うなよ!』
ダメージを負って無茶苦茶に暴れ出す<
俺は翼を羽ばたかせブンブンと振り回される前足を素早く回避する。
「まあ、お前の力は大体わかった。もう暴れないで住処に帰るなら見逃してやらんこともないが?」
<
『ふ、ふざけるなぁ!』
火炎のブレスを吹きまくりながら暴れまくる<
ふむ、遠慮はいらないようだ。
「ベルヒア、ダータレラ。思いっきり力を借りるよ」
「いいわ、私の力はヤーベの物よ?」
「貴方・・・深淵覗いて見る?」
土の精霊ベルヒアねーさんと闇の精霊ダータレラだ。
二人から力を借りて強力な精霊魔法を唱える。
「<深淵の重力場アビス・グラビディ>!!」
『ウグォ!?』
地面より発生する圧倒的な重力場により、地面に墜落する<古代竜エンシェントドラゴン>。
ズトオオオオオン!
『ガハッ!こ・・・こんなバカな・・・』
地面に縫い付けられるように押さえつけられ、自由に動けずに唸り声を上げる。
「さて・・・順応にならぬと言うなら、後は食べるしかないか」
俺は両腕を組みながら呟く。
『ヒイッ!?』
<古代竜エンシェントドラゴン>の目に恐怖の色が浮かび上がる。
「キュキュ―――――!!」
「ズゴズゴ―――――!!」
お、謎の生物ジョージとジンベーがふわふわと飛んできて俺の頭に乗る。
コイツら仲いいんだよな。なぜか俺の頭の上に重なって乗るのが好きなようだ。
『・・・神獣様!?』
え?今なんて?
『・・・それも二柱も!?』
・・・コイツらが神獣・・・マジで!?