転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第231話 先読みで手を打っておこう

「ロディ、顔色が悪いわよ? 疲れてない?」

 

 

 

「あのね・・・お母さん。具合が悪くて寝ているのはお母さんの方でしょ・・・」

 

 

 

ここはグランスィード帝国の帝都コロネバ。女帝ノーワロディ・ルワブ・グランスィードの居城、ゴルゴダード城。

 

女帝ノーワロディは自身の母親を見舞いに来ていた。

 

ノーワロディの側近たちは「ノーワ様」と愛称で呼ぶこともあるが、「ロディ」の愛称で呼ぶのは自身の母親だけであった。

 

 

 

「うふふ・・・貴方は本当は優しい子なんだから・・・。女帝なんてあまり向いてないでしょ。どこかのかっこいいイケメンと結婚してご飯作ってラブラブする方が似合ってるわよ?」

 

 

 

「な!ななな・・・」

 

 

 

ノーワロディは顔を真っ赤にして慌てふためいた。

 

ノーワロディの母親は高位の魔族であったのだが、隷属の首輪をつけられ長期幽閉されていたため、その間に体調を崩してしまっていた。現状は魔力が少しずつ漏れており、体に力が入らず寝たきりに近い状態になってしまっていた。

 

 

 

「うふふ・・・そんな顔、久しぶりにみたわね」

 

 

 

嬉しそうに母親・・・魔族のアナスタシアは微笑んだ。

 

 

 

「やめてよお母さん・・・私は今やグランスィード帝国、原初の女帝ノーワロディ・ルアブ・グランスィードなのよ。そしてお母さんは今や国母、アナスタシア・ルアブ・グランスィードなんだからね!もっと偉そうにしていいのよ? 何ならこの国で一番偉いんだよ?」

 

 

 

ノーワロディは自分の母親の手を握りながら笑いかける。

 

魔力が漏れ続けているせいか、母親の手には力はなく、顔色は悪かった。

 

 

 

「ロディったら、そんなに長い名前何て言いにくいじゃない。ロディだけで充分あなたの可愛さは伝わるわよ」

 

 

 

「私をロディなんて呼んでいいのはお母さんだけよ。他の誰にもロディなんて許していないわ」

 

 

 

プイッと横を向いて頬を膨らませるノーワロディ。

 

 

 

「誰かいい人いないの? ロディって優しく呼んでもらったらいいのに」

 

 

 

「もうっ!いいの私の事は!お母さんが元気になったら考えるわ!」

 

 

 

顔を真っ赤にしながらさらに頬を膨らませる。

 

 

 

「あらあら、それじゃあ早く元気にならないとね」

 

 

 

「そうよ、お母さんが早く元気になってくれないと、私は結婚できないわ」

 

 

 

そう言いながら上半身を起こしていた母親をベッドに寝かせ、薄手の毛布を掛けた。

 

 

 

 

 

「ノーワ様!ゴルゴダ・ヤーン大元帥から緊急魔導通信が入っております!」

 

 

 

けたたましいノックとともに、廊下から大きな声で報告を告げられる。

 

 

 

「うるさい!ここをどこだと思っている!静かにしろ!」

 

 

 

そう言いながら席を立つノーワロディ。

 

 

 

「お母さんゴメンね。お仕事みたい。ちょっと行って来るわ。ゆっくり休んでね」

 

 

 

そう微笑むと部屋を出るノーワロディ。

 

 

 

「どうした、こんなところまできて大声を上げるだけの緊急性があるのだろうな?」

 

 

 

母親との貴重な時間を断ち切られて機嫌の悪いノーワロディ。

 

 

 

「ははっ!一大事にございます! 第二師団全滅!五千の兵が悉く討たれた由にございます!」

 

 

 

「なんだとっ!?」

 

 

 

ノーワロディは混乱した。ドラゴニア王国の王都には戦力らしい戦力など残っていないはずだ。王都を占領するのに、それほどの犠牲を払う必要などないはずだ。

 

 

 

「どういう事だ。それほど王都攻略に手間取ったと言うか?」

 

 

 

「恐れながら申し上げます! 未だドラゴニア王国の王都には到着しておりません。王都手前で布陣しております。その数二万五千!」

 

 

 

第二師団五千が全滅したわけだから、三万の内残りの全兵力二万五千が王都近くに集結しているのはわかる。だが、それならばなぜ王都を攻めないのか。空の王都を攻めてドラゴニア王国を占拠する絶好のチャンスのはずだ。

 

 

 

「なぜ王都を攻めない。ゴルゴダ・ヤーン大元帥は何をしている?」

 

 

 

「こちらで通信が繋がっております!」

 

 

 

そう言ってノーワロディに魔導通信機を差し出す兵士。

 

 

 

『ノーワロディ様、ゴルゴダ・ヤーンにございます』

 

 

 

「どうした、何故王都を攻めぬ。ドラゴニア王国の王都を占拠し、早く王族どもを拘束せよ!」

 

 

 

苛立つようにノーワロディは早口で撒くし立てた。

 

 

 

「かなり難しゅうございます。ドラゴニア王国の王都前にワイバーンが展開されております。その数二十。我ら装甲兵団では飛び道具も無く、ワイバーンのファイアブレスに対抗する手段も乏しい状況です。それでも突撃せよと申されるのであれば何人生き残るかはわかりませんが何とかワイバーンを撃退して見せます。我らが全滅してでも道を切り開きますので、念のため王都を占領するための後詰めを派遣ください」

 

 

 

ノーワロディは何を言われているのか即座に理解できなかった。

 

なぜ、ワイバーンが王都周りに残っているのか。バルバロイ王国攻略に向かっているのではなかったのか。

 

 

 

 

 

ちなみに、そのワイバーンたちは―――――

 

 

 

『おーい、ちゃんと並んであっちを睨むんだよ。しっかり睨んでないと、人間たちが突撃してくるかもしれないよ』

 

 

 

ヒヨコ隊長がワイバーンに言い聞かせていた。

 

 

 

『ああ、そうだったそうだった。本当にお腹一杯だから、ちょっと眠くなっちゃって』

 

 

 

『あの人間たちの兵がいなくなったらここでゴロゴロ寝ていいってさ、それまでの我慢だよ』

 

 

 

『『『はーい』』』

 

 

 

ヤーベは一度連れ去ったワイバーンを西の森で腹いっぱい魔獣狩りさせた後、再びヒヨコ隊長の統率でドラゴニア王国の王都付近まで連れ帰って来ていた。グランスィード帝国がドラゴニア王国の空になった王都を簒奪するつもりなら、ワイバーンで牽制するつもりだったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーワロディは素早く頭を回転させる。

 

装甲兵団ではワイバーンには分が悪い。

 

ファイアブレスで一網打尽にされかねない。

 

 

 

「情報を精査します。一次撤退しなさい。手前の村まで戻り指示を待つように」

 

 

 

『はっ!』

 

 

 

ゴルゴダ・ヤーン大元帥は一言返事を送ると魔導通信機を切った。

 

早々に撤退準備に取り掛かるだろう。好き好んでワイバーンの群れに特攻をかけたいものなどいようはずも無い。女帝ノーワロディの手前、ワイバーン殲滅も辞さずとの態度を取っていたものの、実際勝てるとは思っていなかった。

 

 

 

「くっ・・・、一体何がどうなっているの・・・」

 

 

 

ノーワロディは思い描いた計画の歯車が狂い、音を立てて崩れて行くような錯覚に襲われるのであった。

 

 




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