転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
俺は腕の中にいる美女を見つめる。
「我が母?」
思わず首をコテンと傾げてしまう。
見つめられて照れたのか美女が顔を背ける。かわゆし。
「・・・子持ちの女ではダメでしょうか・・・?」
いつの間にか目を覚ました美女はちょっと目をウルウルさせて見つめて来た。
「いや、全然問題ないですよ。ウン、ダイジョブダイジョブ」
慌てて問題なしと伝える。
ちょっとホッとしたようだ。よかった。
「貴様!さっさと母上から離れろ!馴れ馴れしい!」
美人の娘さんが俺に指を突き付け、怒鳴り散らす。
「ロディ、大丈夫ですよ? ヤーベさんはとても紳士な方ですから」
ちょっと頬を赤らめて俺を擁護してくれる美女。というか、この美女が『原初の女帝』と言われているノーワロディさんでいいんだよね?
「お母さん何言ってるの! ここに現れただけでもう怪しい奴決定なんだから! 騙されないで!」
ぷんすか怒る娘さん。
現れただけで怪しいとか、冷たいじゃないか。もっと大人のトークを楽しんでもらいたいものだね。
その内、娘さんだけでなく、兵士たちも集まって来る。
ヤベ、囲まれちまったい。どうしよう?
「・・・そう言えばヤーベ様はどちらからお越しになられたのですか?」
「・・・空から。貴女に会うために」
再び目力込めて微笑もう、キラリン。
「まあ・・・」
再び照れる美女。
「ちょっとお母さん!何騙されてるの!どう考えたってそいつは敵よ!アンタどこの国の間者よ!白状なさい!」
「間者なのですか?」
娘の糾弾に美女が問いかける。
「いやいや、俺は間者なんかじゃないですよ。堂々と女帝たる貴女に会いに来ただけです」
胸を張って堂々と答える俺。
「・・・女帝に会いに・・・」
美女の目が悲しげに揺れる。ハレ?どうして?
「・・・私がグランスィード帝国の女帝ノーワロディ・ルアブ・グランスィードよ。アンタが腕に抱いてるのは私の母親のアナスタシア・ルアブ・グランスィードよ!」
怒り心頭の娘が叫ぶ。
「・・・ええ―――――!!」
え?え?え? ソッチが女帝!? この人母親!? 若すぎね? どう見ても二十歳前後なんだけど? よく見ればちょっと耳尖ってる? エルフですかエルフなんですか??
てか、母親口説きまくってたわけですか? そりゃ娘はキレるわな!
「・・・本来は・・・娘に用があって見えられたのですね・・・娘と間違って私に声を掛けられたのですね・・・そうですよね、私のような年増な子持ちにこんなに優しくしてもらったり素敵な言葉をかけてくれたりするはずがないですよね・・・」
そう言って俯いてしまう美女。そしてすっと顔を上げると、目には溢れんばかりの涙が!
ああ、ヤバイ!決壊寸前だ!
「ち、違う!違うんだアナスタシア!」
俺は娘が呼んだ名前を口にした。
名を呼ばれて驚くアナスタシア。
「確かにきっかけは女帝の娘さんと間違えた事かもしれない。だけど、声を掛けた後、君を見て口にした言葉は紛れもない、君自身を想って言った気持ちだ。その気持ちには嘘偽りなどない!」
右肩を抱いたまま、左手でアナスタシアの右手首を掴み、グッと引き寄せる。
「俺は来週末に結婚を控えている。奥さんになる人も複数いる。だけど、今、君に出会ってしまったんだ!君を見て想った気持ちに嘘などない!君が女帝かどうかなんて関係ない!君は外でもない!君なんだ!」
そう言ってギュッと抱きしめキスをする。
「んっ・・・んん・・・」
くぐもった声を漏らすアナスタシア。
「ちょ、ちょっとぉぉぉぉぉ!! 何やってんのよ! ぶっ殺すわよっ!!」
娘である女帝ノーワロディが暴れ出す。
兵士たちが槍を構える。その後ろにはローブを着た魔法使いらしき連中も集まって来た。
もはや勢いだけでなんかサイテーな事言ってる気もするが・・・。
だが、人違いだったとはいえ、アナスタシアに伝えた気持ちに嘘はない。なんならそこにいるノーワロディより全然いい女だ!
・・・だから何だと言われれば返す言葉も無いが。元は女帝と仲良くなって戦争回避が目的だったのに、その母親に言い寄って娘である女帝にキレられるという本末転倒な状態。ヘタすりゃ、俺のせいで戦争勃発にもなりかねない状況だ。
俺はバサリと翼を広げる。夕日に照らされて薄いグリーンのはずの翼は金色に輝いて見えた。カッコつけてはいるが、三十六計逃げるに如かず!だ。トンズラしよう。
「つ・・・翼?」
アナスタシアが驚いた表情を浮かべる。
「ば、ばかな・・・翼だと・・・」
驚愕の表情を浮かべる女帝ノーワロディ。なんだ、やっぱり翼は珍しいか?
「ま・・・魔王だ!魔王が魔族の姫アナスタシア様を取り返しに来たんだ!」
誰かが俺を見て魔王だと叫ぶ。
「「ま、魔王だと!?」」
何故か俺とノーワロディがハモッてしまう。
アナスタシアは信じられないようなモノでも見るような目で俺を見つめた。
「魔族・・・!?」
だが、アナスタシアは呟くと少し首を傾げて微笑んだ。
「貴方が、魔族であっても無くても・・・私には関係ありません。貴方の言葉が嘘偽りない物だと感じる事が出来ました。それだけでわたくしは幸せです」
そっと俺の胸に手を添えて頬を赤く染めるアナスタシア。沈みかけた夕日に照らされ、幻想的な美しさを醸し出す。
俺はそっとアナスタシアの頬に左手を当てる。アナスタシアはその手に両手をかぶせる様にして触れてきた。
「きっと、また会いに来る。約束だ」
アナスタシアの目を見つめて、俺は伝える。
「ずっと、お待ちしております」
アナスタシアは目を潤ませながらも笑顔を見せてくれた。
バサリッ!
翼を羽ばたかせ、宙に浮かぶ俺。
「アナスタシア、次会う時まで壮健なれ!」
カッコつけて飛び去ろうとしたのだが、そうは問屋が卸さんと兵士たちが攻撃を仕掛けてきた。
「アナスタシア様より離れたぞ!今だ!」
「魔王を倒せ!」
「アナスタシア様を守れ!」
「魔王にアナスタシア様を奪わせるな!」
口々に俺を魔王魔王と罵りながら、<
俺は両腕で迫って来る<
「はっはっは、また会おう!」
そう言って翻って帰ろうとした俺の目に映ったもの、それは、ノーワロディの頭上に浮かぶ超巨大な火球であった。
「逃がすかッ!魔王!これで死ねぇぇぇぇ!!」
「げええっ!?」
さっきの<
「くらえっっっ!!<
ドゴオッ!
「うっぎゃぁぁぁぁ!!」
ド――――――――――ン!!
<
「また会おうぅぅぅぅぅぅ~~~~」
ドップラー効果の聞いた叫び声を上げながら俺は遠ざかって行った。
「死ね!魔王!」
女帝ノーワロディは遠ざかる俺に全力で悪態を吐いていた。
「ああ、ヤーベ様・・・」
アナスタシアはちょっとだけ心配そうに俺の名を呟いていた。心配されたのはちょっとだけだったようだ。それだけ俺の実力を信頼されていると思う事にしよう。
俺は飛ばされながらそう考えた。
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