転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第235話 とりあえず失態は土下座で凌ぎ切ろう

 

俺は今、激しく土下座していた。

 

なぜかというと―――――

 

 

 

「ヤーベ様の鈍感スケコマシ!天然タラシマン!」

 

 

 

カッシーナが泣きながら俺を糾弾しているからだ。

 

ちなみにここはバルバロイ王国王都バーロンの王城大会議室。

 

子爵以上の中・上級貴族が面子をそろえ、ドラゴニア王国との戦争、及びその裏で糸を引いているであろうグランスィード帝国への対応について検討するために会議を行っている。そのさなか、俺は華麗に土下座を決め、カッシーナの激怒をやり過ごそうとしているのだ。

 

 

 

俺はドラゴニア王国のワイバーンによる飛竜隊及び切り札である<古代竜(エンシェントドラゴン)>のミーティアを無力化し、ドラゴニア王国国王バーゼルを捕らえ、王国の危機を救った。

 

その時、グランスィード帝国は空になったドラゴニア王国の簒奪を企んでいたため、ドラゴニア王国の王都を守るために手を打った俺はドラゴニア王国の王都を守り切り、グランスィード帝国へ乗り込んだ。目的はグランスィード帝国の「原初の女帝」ノーワロディ・ルアブ・グランスィードとこっそり面会し、仲良くなって戦争なんてやめようよ、と説得するためだった。

 

 

 

だが、この作戦は脆くも破綻した。

 

なぜなら、仲良くなろうと声を掛けた女性は女帝ノーワロディの母親であるアナスタシアであり、そのことで女帝ノーワロディの怒りを買ってしまったからだ。

 

 

 

ちなみに、今俺が土下座しているこの会議場で行われている会議は朝一番の時間から始まった。そのため、俺も早朝屋敷から出立してきたが、昨日屋敷に帰宅したのは夜、日が落ちてからだった。

 

 

 

俺は昨日夕日が落ちた後、燃え盛る<火球(ファイアボール)>の炎を消すと、森の奥深くに着地した。立ち上がる俺の目の前には地面にめり込まんばかりの勢いで土下座するヒヨコのサスケと狼牙のハンゾウがいた。

 

 

 

『ボス!此度の失態申し開きもございません!』

 

『処罰はいかようにもお受けいたします!』

 

 

 

たぶん、俺を呼んだタイミングでノーワロディが移動してしまい、代わりに母親のアナスタシアが来てしまったために俺が勘違いしてしまった・・・ということだろう。

 

 

 

『そのせいでボスの計画が・・・』

 

『面目次第もございませぬ!』

 

 

 

土下座したまま落ち込むサスケとハンゾウ。

 

 

 

「かまわん。俺もお前たちにノーワロディの容姿を詳しく聞くという手間を怠ったのだ」

 

 

 

『ですがっ!』

 

『しかしっ!』

 

 

 

あくまでも自分たちの失態だと主張するつもりのようだ。

 

サスケにハンゾウはどうも思い込みが激しいな。もっと気楽にやってくれていいのに。

 

 

 

「それに、逆にラッキーだったかもしれん」

 

 

 

『ど、どういうことでしょう・・・?』

 

 

 

ハンゾウが顔を上げて首を捻る。

 

 

 

「あそこでアナスタシアが来なければ俺はアナスタシアがどんな人物か知ることはできなかっただろう。結果として今回はアナスタシアという人物を知ることが出来た。そして当初の目的だった女帝ノーワロディの人物像も見ることが出来た。これはラッキーと捉えていい。戦争を止める、ドラゴニア王国の解放を考えればうまくいかなかったわけだが、俺個人としては大変な成果があった。逆によくやってくれたと褒めたいくらいだ」

 

 

 

尤も、女帝ノーワロディに凄まじくキレられ、怒り心頭になってしまったのは凄まじくマイナスなのだが。後、ワーレンハイド国王からは怒られるだろう。帝国ともめるとは何てことを、みたいな感じで。

 

 

 

『『ボスッ・・・!!』』

 

 

 

「それより、これからの事を考えろ。この先どんどん情報は大事になる。俺たちの命綱と言っても過言ではない。その重責を俺はお前たちに任せている。クヨクヨ悩んだり落ち込んでいるヒマなぞないぞ?」

 

 

 

『『・・・ははっ!!』』

 

 

 

なんだかやたらと感動しているサスケとハンゾウ。

 

これで俺がアナスタシアがめっちゃ好みだったらから許す、とか言ったら俺を見限るだろうか?

 

まあいい、とにかく自分の屋敷に帰るとしよう。あまりもたもたしすぎるとグランスィード帝国の追手がここまで来ないとも限らんしな。

 

 

 

「ドラゴニア王国の王都前に展開しているワイバーンたちはヒヨコ隊長に任せて、お前たちはこのグランスィード帝国の内情を探れ。特に女帝ノーワロディと母親のアナスタシア、それからその取り巻き連中だな」

 

 

 

『『ははっ!』』

 

 

 

ゆらりとサスケとハンゾウが消える。本気ですごい奴らだと思う。

 

 

 

「さて、俺も屋敷に帰るか」

 

 

 

そんなわけでいそいそと「転移の扉」を開き、自身の屋敷に移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 

 

誰もいない執務室。執務室には俺の許可なく入ってはいけないと通達してある。メイドたちの掃除も遠慮してもらっているのだ。なんたって、急に俺が転移してきたらびっくりするだろうからね。執務室の掃除は俺が屋敷にいる時だけ許可を出している。

 

そんな誰もいない執務室に転移で帰って来た俺は、廊下へ出る。

 

 

 

ガチャリ

 

 

 

「ふおおっ! ご主人だば―――――!!」

 

 

 

なぜかギャン泣きしているリーナが廊下を出て0.01秒後にトツゲキしてきた。

 

俺の腰にがっちりと抱き着いて顔をわき腹に埋めている。どした?

 

 

 

「どうしたリーナ?ホットケーキが我慢できなかったのか?」

 

 

 

「ふえっ!? ご主人しゃまのホットケーキ・・・ふおおっ!食べたいでしゅ~~~~!」

 

 

 

すっかり泣き止んで笑顔になるリーナ。

 

 

 

「ホットケーキは私も食べたいが、まずは夕食が先だぞ、ヤーベ、リーナ」

 

 

 

見ればイリーナたちも廊下に集まっていた。

 

 

 

「おかえり、ヤーベ」

 

「ただいま、イリーナ」

 

 

 

その後ろにはルシーナやフィレオンティーナの姿もある。

 

 

 

「それはそうと、リーナはなぜ泣いていたんだ?」

 

 

 

俺は疑問を口にする。

 

 

 

「そうでしゅ!ライバルでしゅ!ライバルが現れたのでしゅ!」

 

 

 

ぎゅうぎゅうと俺に抱き着いてライバルが、と訴えかけるリーナ。ライバルってなんだ?

 

 

 

「おお、帰ったのか、主殿」

 

 

 

廊下の先から姿を見せたのは<古代竜(エンシェントドラゴン)>のミーティアであった。

 

 

 

「主殿、やっと戻ったか。ワシが由緒ある<古代竜(エンシェントドラゴン)>だと家族の者たちに説明せなんだのか? そこのおこちゃまなど、ワシをライバルライバルと呼んで構ってきよる。まあ、可愛いといえば可愛いがの」

 

 

 

なぜか腕を組み、無い胸を反らしてドヤ顔で説明するミーティア。

 

 

 

「とりあえずお前が竜に戻らなければ問題ないだろう。それとも、まさか俺の屋敷で竜の姿に戻って暴れたりするつもりか?」

 

 

 

ジロッと睨みを利かす俺。

 

 

 

「ないっ!そんな事絶対思ってないのじゃ!」

 

 

 

首をぶんぶんと振って大げさに否定するミーティア。

 

 

 

「キュキュ―――――!」

 

「ズゴズゴ―――――!」

 

「わわっ!」

 

 

 

見れば今までミノ娘のチェーダに抱かれていたのか、その腕から飛び出し俺の方へ飛んで来る神獣のジョージとジンベー。神獣に適当な名前を付けてしまっていいのかと考えたのだが、当人たちが喜んでいそうなので深く考えないことにしている。

 

 

 

俺の頭に鎮座してミーティアに向かい直すジョージとジンベー。

 

 

 

「キュキュ!」

 

「ズゴズゴ!」

 

 

 

「わ、わかっておるのじゃ!主たるヤーベ殿には絶対服従なのじゃ!屋敷では暴れないと誓うのじゃ!」

 

 

 

膝をついて祈るように宣言するミーティア。神獣パワーおそるべし。

 

 

 

「それはそうと、どちらに行かれていたのですか?」

 

 

 

ルシーナが俺に問いかける。

 

 

 

「多国間の重要な協議でね。大役を仰せつかったので出向いてきたんだ」

 

 

 

ちょっとばかしドヤァといった雰囲気を出して説明する。君たちの夫はデキる男なのだよ。

 

 

 

「まあ、すごいですね!ワーレンハイド国王直々の勅命ですか?」

 

 

 

「まあそうだね」

 

 

 

「旦那様は活躍の場が広いですわね」

 

 

 

ルシーナに続いてフィレオンティーナも褒めてくれる。思わず鼻が伸びそうだ。スライムだからいくらでも伸ばせるけど。

 

 

 

「う~ん、大事な仕事はいいんだけど、あまり女を増やすのは勘弁してくれよな・・・」

 

 

 

見れば俺の肩近くに顔を寄せて、クンクンと匂いを嗅ぐチェーダが!

 

あれ?ウシさんってお鼻利きましたっけ!?

 

 

 

「ふえっ!? ・・・本当でしゅ・・・知らない女の匂いがしゅるでしゅ・・・」

 

 

 

「はいっ!?」

 

 

 

チェーダはやれやれ、といった表情だが、リーナの目はハイライト消えてるぞ、おい!

 

 

 

「ほう・・・? 多国間の重要な協議のために出かけていた・・・ね」

 

 

 

なぜかイリーナは拳を握りバキボキと指を鳴らす。

 

 

 

「いやっ! ちっ、違うっ! う、嘘じゃないし! マジで国と国の関係を修復する重要な任務をだな・・・」

 

 

 

「で? なぜ知らない女の匂いがべったりとついているのですか?」

 

 

 

ルシーナの笑顔の奥にある狂気が揺れた気がした。ヤバし!

 

 

 

「交渉相手が女性だった事が原因カナー」

 

 

 

ぴゅっぴゅぴゅっぴゅ~と軽快に口笛も吹いてみる。

 

汗をかかないはずのスライムボディにダラダラと汗が流れる感覚が。

 

 

 

気が付くとずらりと奥さんズの面々に取り囲まれていた。

 

 

 

「ヤーベ・・・」

 

 

 

イリーナの目がヤバイ。

 

 

 

「オ」イリーナが呟く。

 

「シ」次にルシーナが呟く。

 

「オ」なぜかサリーナも呟く。

 

「キ」フィレオンティーナが笑顔で呟く。

 

「でしゅー!」リーナ、お前まで!?

 

 

 

「んぎゃっはぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

俺はとんでもないことになった。バタンキュー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまあ、昨日の夜屋敷では奥さんズの面々やリーナにえらい目にあわされた。

 

下手すると帰宅恐怖症になりかねんレベルだ。

 

後、神獣とミーティアが笑いすぎだ。ミーティアには帰ったら俺からの八つ当たりオシオキを食らわせてやる・・・と考えながら会議出席のため王城に出向いたのだが、真っ先に会議の冒頭、帝国との折衝結果を聞かれて俺は、

 

 

 

「失敗しちゃって女帝激怒。テヘペロ」

 

 

 

と報告して会議場を唖然とさせた。

 

ワーレンハイド国王が「詳しく!説明プリーズ!」と焦っていたので、懇切丁寧説明した。女帝と間違えてその母親とものすごく仲良くなってしまい、娘の女帝にキレられたと素直に説明する。その後俺はずっと土下座している。

 

なぜならカッシーナが泣いて激怒しているから。浮気だって。

 

おかしい・・・俺は世界の平和のために帝国に出向いたはずだったのに・・・。

 

どうしてこうなった? 誰か助けて!

 

 




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