転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第238話 加入テストを実施しよう

「遅いっ! 遅い遅―――――い!!」

 

 

 

冒険者ギルドに入るなり、両手を腰に当てて仁王立ちするサーシャが俺に文句を言ってくる。

 

 

 

「ああ、すまんな。朝から王城で緊急会議があったもんでな」

 

 

 

王城で緊急会議という言葉に多くの冒険者やギルドのカウンターにいる受付嬢が驚いた顔を向けた。

 

 

 

「そんな言い訳聞きたくないわ! お詫びに朝食セット人数分よ!」

 

 

 

再度ビシッと人差し指を俺に向けるサーシャ。

 

いや、朝食ぐらい奢りますけれども。このサーシャのメンドクサイ態度はどうにかならんもんかね。

 

 

 

「それで? パーティに加わりたいって娘さんはどこだい?」

 

 

 

「おはようございます、ヤーベ先生」

 

「ヤーベ、おはようにゃ」

 

 

 

犬人族のコーヴィルと猫人族のミミがそれぞれ挨拶をしてくる。ちなみに狼人族のサーシャは文句はあっても朝の挨拶は無い。

 

 

 

「うん、朝食はちゃんと朝の挨拶が出来た人だけな? それで、そちらの子がテスト希望の子?」

 

 

 

コーヴィルとミミの後ろに控える様に立っていた少女を見て俺は聞いてみた。

 

見た目、ミミと同じ身長か、さらに少し低いくらいか。

 

3人娘の中ではミミが最も身長が低く小柄なため、新しくパーティ加入を希望しているこの娘は最も小さい娘と言う事だな。

 

 

 

「わ、私も挨拶できるわよ!おはよう!おはよう!これで朝食GETよねっ!」

 

 

 

一度サーシャには常識というものがいかなる物であるのかじっくり話し合う必要があるようだ。

 

 

 

「お、おはようございます。ヤーベ教官。私は熊人族のヴォーラといいます。よろしくお願い致します」

 

 

 

そう言って頭を下げるヴォーラ。

 

耳がまるでまあるいチョコクッキーをイメージさせる黒髪に、少し白く見える肌。

 

うーん、熊と言うよりかわいいパンダに見えなくもない。

 

尤もパンダはクマ科だから、おかしくはないけどな。

 

そして色白なのにその目はブルーサファイアの様に碧く輝いている。可愛い娘だ。

 

 

 

そう言って俺はヴォーラの後ろに回る。短パンのお尻部分からこちらもまあるいふわふわの尻尾がのぞいている。真っ白だ。うん、パンダ。

 

 

 

「あうっ!」

 

 

 

尻尾をまじまじと見られるのは恥ずかしいのか、ヴォーラが後ろ手に尻尾を隠す。

 

 

 

「ヤーベはヘンタイね! まじまじと尻尾を見つめるなんて」

 

 

 

サーシャが腰に両手を当てて偉そうに俺に文句を言ってくる。

 

 

 

「ならサーシャの太ももでも見つめておくか」

 

 

 

ミニスカからのぞくサーシャの太ももをジ――――っと見つめてみる。

 

 

 

「ヘンタイヘンタイ!やっぱりヤーベはヘンタイだわっ!」

 

 

 

短いスカートのすそを抑えてサーシャが怒り出す。

 

太ももちょっとだけならいいって言ってたくせに。

 

 

 

「それで? ヴォーラの冒険者ランクは?」

 

 

 

「え、Fランクです。登録したばかりです」

 

 

 

モジモジと指を絡ませながら説明するヴォーラ。

 

 

 

「え? 登録したて?」

 

 

 

どういうことだとサーシャたちに目をやる。

 

このド素人三人娘の戦力アップのためにパーティ入団テストを行うのではないのか?

 

 

 

「そうよ、私たちが先輩なんだからね」

 

 

 

ドヤ顔で宣うサーシャ。もしかしてただただ後輩が欲しいだけなのだろうか?

 

コイツの頭の中はお花畑で出来ているのだろうか?

 

 

 

「と、するとだな・・・。お前たちが冒険者のイロハを新人のヴォーラに教える・・・と、そういう事か?」

 

 

 

遠慮がちに聞いてみる。

 

 

 

「そうよ。だけど、ケモミーズにふさわしいかどうかのテストは受けてもらうわ!」

 

 

 

ケモミーズにふさわしいかどうかなら、もうふさわしいだろうよ。立派なケモミミだし。加入すればケモミミ四人娘と呼ばねばなるまい。

 

だが、コイツらが新人を教えられるのか?だいたいお前たち自身が新人の域を出てないだろうに。

 

 

 

「コーヴィル、本当に大丈夫なのか?お前たちがヴォーラの教育なんて行えるのか?」

 

 

 

「・・・実は亜人の女の子の冒険者なんて、どこに行っても歓迎されないです。それか違う目で見られてしまうです。だから、協力し合わないといけないのです。ヤーベ先生の教えを受けて私たちも入ったばかりのヴォーラも早く一人前の冒険者になれるよう努力するです」

 

 

 

コーヴィルの中ではすでにヴォーラが加入完了になっているな。

 

だが、亜人の、それも女性の駆け出し冒険者はそれだけで苦労する事になるんだな。

 

世の中の世知辛さを感じるね。

 

地球時代でもそうだったな。生まれた時から立ち位置が違う、会社でも大学受験でも何かしらの力が働き、スタートのラインが違う、走り出しても、評価が違う。

 

この娘たちは、それでも、この世界で前を向こうと懸命に足掻いている。

 

ならば、俺は俺で出来る事で彼女たちを後押ししてやろう。

 

 

 

「じゃ、早速パーティに加入するためのテストを行うか。それが終わって文句なく合格になったら薬草採取クエストを受理しよう」

 

 

 

「えー、また薬草採取なの!?」

 

 

 

俺の言葉に不満を言うサーシャ。

 

 

 

「それ以外でお前たちが対応できるクエストがあるのか、そこの依頼掲示板をよく見てみろ」

 

 

 

そう言って俺は依頼書が貼ってある掲示板を指さす。

 

 

 

「う・・・」

 

 

 

そこにはFランクの薬草採取以外、サーシャたちが請け負える依頼は無かった。

 

尤も雑用自体無くはないのだが、王都バーロンは清掃業務などを国営で賄っているため、あまり雑用作業の依頼自体多くは無かったのである。

 

 

 

「Eランクの魔獣討伐があれば・・・」

 

 

 

歯噛みするサーシャ。

 

 

 

「どうせその内復活するさ。その時のためにEランクになっておくためにもFランクの薬草採取依頼をミスなく繰り返しこなして経験を積むんだよ。でなきゃEランクなんて上がれないぞ?」

 

 

 

Fランクから唐突にSランク認定を受けてしまった俺がどの口で言うんだと思わなくもないが、今はギルド教官という立場ももらってしまったしな。正しく導いて行かねばならない。魔獣を狩る仕事ばかりではいざと言う時に臨機応変に動けないだろう。

 

 

 

「むぐぐ・・・」

 

 

 

言い返せなくなったサーシャを尻目に、俺はヴォーラに目を向ける。

 

 

 

「それで、テストはどのような形にするんだ?」

 

 

 

「訓練場で模擬戦をお願いするのです」

 

 

 

答えたのはヴォーラではなく、コーヴィルだった。

 

 

 

「サーシャが言うように、魔獣が戻ってくれば、魔獣狩りを基本の仕事にする予定なのです。戦えないとさすがにパーティに入ってもらっても役に立てないのです」

 

 

 

戦闘力が無いと役立たずだとはっきり告げるコーヴィル。

 

分かりやすくていいが、君たち三人に戦闘力があったなんて、先生は初耳です。

 

 

 

「地下の訓練場でお願いします・・・」

 

 

 

俺にぺこりと頭を下げるヴォーラ。

 

 

 

「じゃあ移動しようか」

 

 

 

俺はヴォーラたちを連れて地下の訓練場に降りて行った。

 

 




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