転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第241話 一応体面は大事にしておこう

どこぞの黄門様よろしく、伯爵の身分を示す短剣を見せたところ、即座に這いつくばる様に土下座を敢行してきたゴキナゾール男爵。短剣の意味が分かると言う事は、一応本物の貴族なんだろうな。パチモンの自称貴族じゃなくて。

 

「伯爵様とは露知らず!大変申し訳ございません!何卒!何卒平にご容赦を!!」

 

パパなる人物がべったり床に頭突きするかの如く土下座する。

うーん、立場が変わればこうも人は変われるものなのか。

有名なコーモン様はこの土下座光景を毎回見てどう思っていたのだろう?毎回毎回一件落着、はっはっはって笑ってた気がするけど・・・って、ドラマの話だな、それは。

 

 

 

「いや、平にご容赦も何も、自分たちがそう言っていたんじゃないか。不敬罪は死刑だと。別に俺が決めたわけじゃないぞ」

 

あくまでもお前たちの責任ですよ?と説明する。

 

「伯爵様とは知らなかったんです!」

 

弁明するゴキナゾール男爵パパ。

 

「うーん、相手によって態度が変わり過ぎじゃないか? さっきまで死刑死刑と騒ぎ立てていたじゃないか。それにその前の貴様の息子も酷かったな」

 

「申し訳ありません!」

 

「たまたま俺が伯爵であったから頭を下げているが、この危機を凌いだら、また平民相手に不敬罪だと騒ぎ立てて暴力を振るったり、その命を奪ったりするのか? 今後の展開を考えると、世の中の平民の皆さんのためにもここは一つさっくりと・・・」

 

俺は遠い目をしながら顎を擦って考える。

 

「いやいやいや!今後は心を入れ替えて精進させて頂きますので!どうか!」

 

ゴキナゾール男爵の必死の弁明を聞き流しながらしばらく待つ。

 

すると、

 

「こちらですか?伯爵様に不敬罪を働いたという犯罪者は?」

 

冒険者ギルドにドカドカと入って来たのは王国騎士団の面々。

その先頭はまさかの王国騎士団副団長のダイムラーであった。

 

「あれ?副団長のダイムラーさんじゃないですか」

 

ヒヨコに不敬罪で逮捕して欲しい連中がいるからと王国騎士団に連絡しに行ってもらったが、まさか副団長のダイムラーが直々に出張って来るとは思わなかった。

 

「そりゃ、ヒヨコからの連絡ですからね。『救国の英雄』殿へ不敬を働く者どもなんて、国家反逆罪と同じじゃないですか」

 

爽やかに俺への不敬を国家反逆罪と断罪するダイムラー。ハンパないね。

 

「「「えええっ!?」」」

 

土下座組が驚きの声を上げる。

 

「きゅ・・・救国の英雄って・・・」

 

アホ息子が顔を上げて俺をポカンと見る。

 

「ま、まさか・・・プレジャー公爵の王都簒奪を阻止して、カッシーナ第二王女と来週結婚すると言う・・・」

 

パクパクと口を開けて俺を指さす男爵パパ。

 

「「「本物の英雄! ヤーベ・フォン・スライム伯爵ぅぅぅぅぅ!?」」」

 

土下座組が全員上半身を起こして騒ぎ出す。

本物の英雄とか言われると照れるな。

 

「なんだ、そんなことも知らずにこの方にケンカを売ったのか?命知らずなヤツだな」

 

呆れかえるダイムラー。

 

「「「ひええっ!?」」」

 

縮み上がる土下座組一同。

 

「じゃ、いつも通りに」

 

ダイムラーに俺は告げる。

 

「了解致しました」

 

そう言って土下座組を立たせ、縄を打って行く騎士団の面々。

 

「い、いつも通りって?」

 

アホ息子が怯えながら問いかけてくる。

 

「ふむ、このまま牢屋に連行して頭を冷やしてもらい、二日間しっかり反省してもらって・・・」

 

その説明に反省すれば許されるのだと安堵が広がるゴキナゾール男爵一同。

 

「三日目に打ち首だな」

 

「「「ひええええっっっっ!!!」」」

 

容赦ないダイムラーの説明に泣いて許しを乞う一同。だが、耳を貸すことなく引っ立てて行く騎士団。

ギルドを出ていく一同を見送って、俺はやっと一息つく。

 

「おいおい、ホントに首を落とすのかよ?」

 

近くまで来て耳元で問いかけるゾリアに笑って答える。

 

「そんなことするか。三日目に死刑直前に俺から恩赦が出たぞ、って説明する手筈なんだ。これに懲りたら馬鹿なことするなよ、真面目にやれよ、もう戻って来るなよってセリフ付きで」

 

俺の説明にゾリアが声を上げて笑う。

 

「まったく・・・、お前って奴は役者だな」

 

「メンドクサイが、貴族って奴は体面も大事らしくてな」

 

俺は苦笑いしながらゾリアに告げた。

 

「まあ、尤も再び逆恨みして牙を剥くようなヤツには容赦せんけどな」

 

それこそ、きっと恩赦で釈放されても情報部がしばらく調査対象として監視してると思うけどね。

 

 

 

さて、あの後貴族たちへの態度が悪かったサーシャたちを叱ったのだが、なかなか納得しなかった。実にメンドクサイが、自分たちでいかようにしてもピンチを潜り抜けられるならケンカしてもいいと言ったら押し黙った。媚びへつらう必要はないが、戦略的撤退という言葉も覚えてもらいたい。後、君子危うきに近寄らず、と三十六計逃げるに如かず、だな。うん、教える事がまだまだいっぱいだ。

 

それはともかく、これから王城へ向かう。

 

昨日ドラゴニア王国への対応内容を纏めてもらうのを丸投げしたからな。

昨日一日でまとまっているだろう。

それを確認した上でドラゴニア王国の責任者たちと折衝した上で国王バーゼルを返すかどうか決めるわけだ。

 

・・・ドラゴニア王国の責任者たちがなぜバルバロイ王国の王都バーロンで話合いできるのかって?

 

昨日の段階でヒヨコが手紙を届けたからね。ドラゴニア王国の責任者たちに。

 

今日朝一でワイバーンの籠に乗ってバルバロイ王国に移動するから、話し合いに参加するお偉いさんは集まる様に伝えておいた。バーゼルが今軟禁状態にいる事も伝えてね。

 

一応バーゼルが頭に被っていた王冠を手紙と一緒に持たせてあるから、信憑性はあると思うんだが。

 

後、山の中で立ち往生している歩兵団も手紙を渡して、狼牙達に下山の案内をさせている。

 

今日中には王都近くの平原に集まれるだろう。こちらにも国王バーゼルを捕らえている事を伝えると、比較的おとなしくこちらに従った。まあ、何かあれば一気呵成で立ち上がるつもりかもしれんが。今は大人しくしてくれるならそれでいい。

 

さてさて、ドラゴニア王国とうまく話し合いが締結してくれるといいけどね。

 

 




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