転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「いや・・・みんなでハッピーにって・・・」
一瞬、パーシバルは何を言われているのかわからなかった。
「う~ん、俺は何か難しい事を言っているか?」
俺は首を傾げる。うーん、条件が良すぎると、人は信用しなくなるものなのだろうか?
こちらとしては、戦争は水に流して苦しい状況は改善提案をするから、仲良くやって行こうよ、と言いたいだけなのだが。
「いや、こちらは貴国へ攻め入った経緯があるわけで・・・」
しどろもどろに説明するパーシバル。
「うーん、ホラ、よくあるだろ? 男同士、殴り合って喧嘩したけどその後スッキリした感じで肩組んで仲良くする感じ?」
漢字の『漢』と書いて『おとこ』と読むあれだな。後、『強敵』と書いて『とも』と呼ぶパターンね。
・・・尤も一方的に攻めてきたのを返り討ちにして一方的にボコった感じがするしな。
殴り合ってスッキリした感じはしないよね。
「イヤイヤイヤ! 国家間の話ですから! だいたい、こちらが一方的に攻めて、一方的にやられてますよね?」
いや、国務大臣のパーシバルさん、説明が的確ですから。
その論理でいうと、ドラゴニア王国無くなっちゃいますけど?
「アンタ、一体何が目的なんだ?」
軍務大臣のガレンシアがジッと俺の方を見る。
「大陸の平和が一番だろ?みんな仲良くハッピーが目的っておかしいか?」
俺は立ったまま腕を組んで問いかける。
「お前に何の得があるんだよ? そこがわかんねぇ」
訝し気に俺を睨むガレンシア。
「お前はドラゴニア王国の重鎮だろ? 金もある程度あるだろう。まだ他に何か自分の欲望溢れてるのか? 大陸統一とか?」
「ばっ! 馬鹿野郎!そんなこと考えるか!」
ガレンシアがいきり立つ。
「じゃあ、別にいいじゃねーか。国同士が仲良くなって、国民が笑顔で暮らせるようにお互い生活改善に協力しましょうって話さ。ある程度金儲けの話も絡んで来るんだろうが、国同士の友好に比べれば微々たるものさ」
俺は屈託のない笑顔を浮かべて説明する。
みんな難しく考えすぎなんだよ。
裏をかくとか、相手を騙すとか面倒臭い。
尤も、いまだに大陸統一とか抜かしたら叩き潰すけどな。
後、どこかの国で暴君とか誕生したら、スッパリ殺りに行こう。
折角安寧の時代が始まろうとしているのに、その邪魔はさせないようにしないとね。
「お前・・・本気で言ってるんだな・・・」
呆れたように俺を見ながら呟くガレンシア。
見れば女子秘書官?のセーレンと言う女性も俺を見て目を丸くしている。
「そうなのだ!アニキはすげーんだよ!」
国王バーゼルがテンションを上げてパーシバルやガレンシアに捲くし立てる。
「一体どうしたと言うんですか?」
「そこの男と何があったんだよ?」
訝し気にバーゼル国王を見るパーシバルにガレンシア。
「おお、ぜひとも聞いてくれ!アニキの凄まじい改革案を!これでドラゴニア王国は変わるぞ!」
そう言って軟禁状態中に俺と話した改革案やアイデアを熱く語るバーゼル国王。
あまりに熱く語るその仕草をみて、ワーレンハイド国王たちが苦笑する。
ただ、ドライセン公爵や宰相ルベルクなどは多少渋い顔をする。
ヤーベの改革案はそんな事出来るなら先にバルバロイ王国内でやってくれよと言いたくなるくらい画期的な物も多かったからだ。
「お・・・おおおおおっ!!!」
国務大臣のパーシバルは感極まって号泣した。
周りに見られていようとその涙を止めることは出来なかった。
国務大臣として、ドラゴニア王国の国益確保に全力を尽くしてきた。
農業改革ではなかなか作物が育たずに食料不足を改善できなかった。
未だに王都ですらスラム街に近い場所もあり、孤児が溢れている実態もあった。
それが、改善される。改善に力を貸してくれる。
辛く苦しむ国民たちが救われる。
その力を貸してくれる男に、裏表がなく、人々が幸せになればいいと、ただそれだけを願っているらしい男。
パーシバルは泣いた。もしかしたら食料事情が改善できるかもしれないと感じて。
国民たちに笑顔が絶えない生活を送らせることが出来るようになる。
この男の事がどれほど信用できるかは不明だ。だが、ワーレンハイド国王を筆頭に王家や上位貴族がこの男を支持しているのだ。
胸に希望の光が灯る。信用してもいいのだ。いや、信用すべきだ。信用したい!
夢物語だと誰もが笑うだろう、「みんな幸せに」。
だけど、この男は言う。「それを目指して何が悪い」と。
目指してもいいのだ。突拍子もない戯言、物を知らぬ愚か者、と蔑まれようと、夢を見てもいいのだ。その夢に向かってもいいのだと、この男は教えてくれた。
パーシバルは机に手を付いて涙をぼたぼたと垂らした。
隣に座っているガレンシアも頭をボリボリと掻いて大きく溜息を吐いた。
「こいつぁ、国の運営について苦労しているからな・・・。そんな光り輝く希望を見せられりゃ、こうなるだろーよ・・・」
そして徐に席を立ちあがる。
「バーゼル国王陛下」
「うむ、なんだ?」
「この条約締結に向けて、調整したく思います。よろしいですか?」
「ああ、よろしく頼む」
ガレンシアの言葉を受けて、国王バーゼルは笑顔を向けた。
そしてバーゼル国王も立ち上がる。
「よろしくお願い致します、ワーレンハイド国王」
「こちらこそ」
そう言ってワーレンハイド国王も立ち上がり、国王達はお互いの右手でガッチリと握手を交わしたのだった。
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