転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「これで死ねぇぇぇぇ! 魔王ッッッッッ!!」
「また会おう~~~~~」
大火球に包まれながら「また会おう」などと捨てセリフを吐く魔王。
死ね!消し炭になってしまえ!
私、ノーワロディ・ルアブ・グランスィードはホッと溜息を一つ吐く。
クソよりもゲスな実父とその一族を排除してやっと手に入れた自由。
訳の分からない男なぞにお母さんを連れ去られるわけにはいかない。
見れば、「ああ・・・」などと胸に両手を組んで飛んで行った魔王を心配した感じの母が。乙女かっ!
「ちょっとお母さん!しっかりして頂戴!」
私は母に近寄って肩を揺する。
「あら、ロディ。ひどいわ。ホントは貴女に会いに来た人だったからって、お母さんから無理矢理引き離すなんて」
悪びれもせず、拗ねたように文句を言う母。そうやって上目遣いに見られると、本当に少女と言う言葉がぴったりだ。とても私を生んだ女ひとだとは思えない。
「何言ってるの!敵国の間者だよ、あれは!」
と言いながらも、後ろでは部下たちが「ノーワ様が魔王を撃退したぞ!」などと盛り上がっている。そもそもあれが本当に魔王かどうかわかんないけど。
「間者? 確か、戦争なんてあなたには似合わない、みたいなことを言っていたかしら?」
お母さんが顎に人差し指を当て、首を傾げる。ホント天然でカワイイのよね・・・お母さんは。これを計算でやっていたらあざとさマックスだけど、お母さんは素でこんな感じなのよね・・・。
「あ、あの・・・」
おずおずと声がかかるのでそちらを見ると、お母さん付きのメイドだった。
「どうしたの?」
「あ、あの・・・アナスタシア様は、体調は大丈夫なのでしょうか・・・?」
そう言って心配そうに母を見るメイド。
・・・? そう言えば、先ほどから違和感なく喋っているし、立ち続けているわね・・・?
あれ?あれ?あれ? 随分寝たきりで、あの暴力男から救い出して、やっと最近落ち着いてベッドから起きたり、部屋付きのトイレに一人で行けるようなトレーニング始めたばかりじゃなかったっけ? どうしてお母さん元気に立ってるの?どうして元気に喋っているの?
「お、お母さん・・・一体・・・?」
どうしたの? 病気、治ったの? そう聞きたかったのに、声が出ない。
「ああ、病気? ヤーベ様・・・・に治してもらったのよ! もう元気になったんだから!」
そう言って両手で力こぶを作り、ガッツポーズを取る母。
治った・・・!? お母さんの病気が、治った!!
「お母さん!!」
常に部下の前では母上と呼び、自分の威厳を保ってきたけど、もう駄目だ。
だってお母さんが、もう体調が戻る事は無い、緩やかに死に向かうだけだと医者に言われていたお母さんが元気になったんだから!
私は思いっきり母親に抱きついて泣いた。
「お母さんお母さん!!」
「なーに、ロディはいつからこんなに泣き虫さんになっちゃったの?」
そんな事を言って私を抱きしめて頭を優しく撫でてくれる母。でもいいの。お母さんが元気になって生きてくれるなら、私は泣き虫でいい。
「アナスタシア様、ご体調が回復したようで何よりでございます」
そう言ってやって来たのは王宮付きの医師たちだ。
だが、半信半疑と言った感じでざわついている。
「本当に体調が回復されたのですか・・・」
「一体いかように・・・」
「母上の言葉を疑うかッッッ!」
思わずキツく叱責してしまう。だって、お母さんの回復を疑うなんて!
「こら、私を心配してくれてるんだから、そんな言い方したらだめでしょ?」
「だって・・・」
ふくれる私に笑みを浮かべてお母さんは説明を始めた。
「なんでも、魔力回路?と言うのが欠損してしまって、うまく魔力循環できなくなって魔力が体内に溜められずに漏れて魔力欠乏症になってたみたいよ?」
「なんですとっ!」
医師団が驚く。私も驚愕した。
今までの医師団の説明では、魔力欠乏症により、魔力が体内に溜められず、体が緩やかな死に向かっており、それを止められないとの説明だったからだ。その原因は不明だった。だから不治の病と言われていたのだ。それが、はっきりと原因が分かったと言うのだ。驚くなと言う方が無理な相談だ。
「魔力回路の欠損・・・」
それにしても、その原因を突き止め、いつ回復したのだろう?
「それで、その魔力回路の欠損と言うのはどのように治療をなされたのですか?」
「うーん、すっごい魔力をギュギュ――――ッと流し込んでもらって、詰まってたところがドバーッて感じで、最後はピーンッてなってね、その後魔力が体の中をグルグルーッてね・・・」
うん、わけわかんない。医師団もポカーンだ。お母さん、もうちょっとボキャブラリー頑張って欲しい。
「あ、信じてないわね? いいわっ!見せてアゲル。これがあの人・・・から授かった私の真の力よ!」
そう言って私を抱いていた母は私の体を離すと、少し距離を取る。
「新生アナスタシア、メイクア―――――ップ!!」
ドンッッッッッ!!
「「「「「わあっ!!」」」」」
その場にいた全員がいきなり吹き荒れる魔力嵐に吹き飛ばされる。私は辛うじてひっくり返りそうになる体を両足を踏ん張って支える。
途轍もない魔力が母から放たれる。そして背中から大きく美しい翼が。
魔力が枯渇していた今までは出せなかった翼が美しく沈みかける夕日に煌めいた。
消えゆく落陽の最後の光がまるで母の翼に乗り移るかの如く、光り輝く美しい翼。
今まで魔力が枯渇して死にかけていた母とは思えない。本当に母は危機を乗り越えたのだ。
ボフンッ!
急に母が煙を噴く。
「きゅう・・・」
目を回してグラリと倒れる母。
「お、お母さんっ!?」
慌てて抱きとめると、目を回して気絶していた。
医師団が駆けつける。
「・・・急に魔力を全力で放ったので、一時的に枯渇したのでしょう。これならば一時的な魔力の使い過ぎと同じですので、安静にしてお休み頂ければ魔力が回復するでしょう」
医師団の説明に私はホッと胸を撫で下ろす。
神よ、感謝します。私の元に母を残してくださったことを。
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