転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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閑話38 魔王去りて平穏は訪れるのか?(中編)

 

「それで、一体どうなっている?」

 

 

 

駐留する軍を一応そのままにし、一度ゴルゴダ・ヤーン大元帥を呼び戻したノーワロディは、早々に主要メンバーを集め会議を開いた。

 

大元帥のゴルゴダ・ヤーンには戦闘における一切の報告を纏めよと指示してあるし、その他の情勢に関しては情報部に徹底的に調査するよう命じた。

 

とにかく現在の状況を確認せねば。

 

 

 

「はっ、報告させて頂きます」

 

 

 

そう言ってゴルゴダ・ヤーン大元帥が報告した内容は脅威であった。

 

 

 

ドラゴニア王国王都の北側周辺5つの村の内、4つを無血占領した後、第二師団の到着を待ったが戻って来なかった事。向かわせた偵察隊が見たものは、第二師団五千が全滅している情景。そこに敵の姿が無かった事。

 

残存兵力二万五千で王都に攻め入ったが、その直前でワイバーン二十頭が王都前に展開されていた事。

 

そして、一度も戦闘を行うことなく、四つの村へ駐留隊を振り分けて報告に戻って来た事、である。

 

 

 

途中までは完全に私の思惑通りだった。無血占領で村を支配できると思ったし、そのあたりに問題はない。

 

だが、質が悪いとはいえ、あの第二師団が全滅したのは全くの想定外だ。村が一つ全滅したと言う方がまだ理解できる。そして不気味なのはその敵の姿が全く見えない事だ。

 

 

 

「情報部、ここまでの補足は?」

 

 

 

私は情報部の調査報告を求めた。

 

 

 

「はっ、こちらでも調査しましたが、第二師団を全滅させた敵の戦力は今だ不明、まったく掴めておりません。ランズの村にも敵戦力が残存している様子はありません」

 

 

 

「一体どういうことなのだ・・・」

 

 

 

思わず私は声を出して呟く。

 

第二師団五千を全滅させるような戦力が、どうしてその姿を全く見せていない?あの狂犬どもを始末するためには倍の兵力でも心もとないと思えるのだが・・・。

 

 

 

「はっ!? まさかワイバーンか!?」

 

 

 

だが、私の想像はゴルゴダ・ヤーン大元帥によって否定された。

 

 

 

「ワイバーンが戦闘を開始したのならば、多少距離が離れていてもわかります。あのワイバーンたちは確かに王都を守る様に展開されておりましたが、あの位置からは動いていない」

 

 

 

百戦錬磨のゴルゴダ・ヤーン大元帥に断言されれば、どうしようもない。

 

 

 

「・・・他に気づいたことは?」

 

 

 

「・・・そうですな、ランズの村では狼らしき獣が数匹飼われているようだと報告がありました。それくらいです」

 

 

 

「・・・狼?」

 

 

 

「犬なら狩猟犬であろうが、狼を飼いならすとは珍しいな」

 

 

 

軍部の一人が呟く。確かに狼は珍しいが、だからと言って狼が五千の兵団を全滅させたりは出来ないだろう。

 

 

 

「後、申し上げるべきか迷う情報ではございますが・・・」

 

 

 

情報部のくせに報告を迷うとは、どういう情報なのか?

 

 

 

「申せ」

 

 

 

「・・・はっ。実はドラゴニア王国王都前に展開されているワイバーンなのですが・・・」

 

 

 

そう言って一旦口を噤む情報部長官。

 

だが、誰も口を挟まず、次の言葉を待つ。

 

 

 

「報告者の見解のようですが、どうも王都周りでごろごろと寝ているように見える・・・との報告が」

 

 

 

「なんだと?」

 

 

 

寝ている?どういうことだ?

 

 

 

「寝ているだと!それでは突撃しておれば蹴散らせたのではないのか!?」

 

「何たる腰抜け兵団か!」

 

 

 

クーデターで私についてレジスタンスメンバーだった新参の大臣たちが口々にゴルゴダ・ヤーン大元帥を暗に批判する。ゴルゴダ・ヤーン大元帥率いる多くの兵団も情報部も旧帝国体勢からの引継ぎなのだ。レジスタンスメンバーからすれば目の上のタンコブの様なイメージなため、何かと風当たりを強くしている。

 

愚かな事だ。私からすれば軍部の大半が旧体制から私についてくれた事こそが大事な事なのだ。

 

 

 

「よせ、例えワイバーンが寝ていたとしても、だからと言って突撃して勝てると言う道理が通じる相手ではなかろう」

 

 

 

ドラゴン、所謂<竜種>の生態はいまだにはっきりわかっていない。ワイバーンは所謂<竜種>の中でも亜種に属するものではとの見解が一般的だ。だからと言ってその戦闘力が我々にとって侮れぬものであることに違いはない。

 

私の一喝に黙る大臣たち。

 

 

 

「もう一点・・・こちらもまだ情報の精査が終わってないのですが・・・」

 

 

 

そう前置きして言葉を続ける情報部長官。

 

 

 

「ランズの村の村民たちが口々に『ヤーベ伯爵のおかげで助かった』、『ヤーベ伯爵に忠誠を誓ってよかった』、『これからもヤーベ伯爵の庇護を受けよう』などと、ヤーベ伯爵と言う名を口にしております」

 

 

 

「ヤーベ伯爵?」

 

 

 

私は首を傾げる。当然のことながらグランスィード帝国にヤーベ伯爵なる人物の名前はない。ドラゴニア王国でも聞いた覚えはなかった。

 

 

 

「ドラゴニア王国にそのような伯爵がいるのか?」

 

 

 

だが、私の質問に情報部長官は首を振る。

 

 

 

「ドラゴニア王国の貴族全員の情報を掴んでおりますが、ヤーベ伯爵なる名前は今まで聞いたことがありません」

 

 

 

情報部長官を含めて、ここにいる全員がヤーベ伯爵なる人物を知らない。これは一体どういうことなのか?何者なのだ、ヤーベ伯爵とやらは。

 

 

 

「そして、最も悪い情報になりますが・・・」

 

 

 

そうして一度口を噤む情報部長官。大事な情報を勿体ぶるのはこの男の悪い癖のようだ。

 

 

 

「ドラゴニア王国はバルバロイ王国に敗北しました。それもほとんど痛打を与えられず、あっさり敗北したとのことです」

 

 

 

な・・・何だと!? ドラゴニア王国がバルバロイ王国に・・・あっさり敗北? 確か事前情報では<古代竜(エンシェントドラゴン)>まで繰り出したとの報告だったではないか・・・。それが、敗北?

 

私の頭はその情報を理解する事が出来ず、真っ白になった。

 

 




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