転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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閑話41 絶望の淵に沈む帝国

 

あれから数日。

 

ノーワロディはバルバロイ王国のヤーベ・フォン・スライム伯爵を調査するため、情報部の戦力のほとんどをバルバロイ王国に振り向けた。僅かに東のトランジール王国を見張る諜報部員を残したきりだ。

 

 

 

バルバロイ王国からドラゴニア王国の重鎮たちはまだ戻って来ていない。

 

その報告が来る前にドラゴニア王国との関係について対応を協議する必要がある。

 

そのために、二万五千の兵団もドラゴニア王国内の村に駐屯させたままだ。

 

つまり、戦争状態のままなのである。

 

 

 

落としどころを探さなければならない。

 

主要な大臣を集めて協議を繰り返していたのだが、

 

とんでもない情報がもたらされた。

 

 

 

「き・・・北のダンジョンで<迷宮氾濫(スタンピード)>・・・!?」

 

 

 

「そっ・・・それも数万という未曽有の規模だそうです・・・」

 

 

 

真っ青を通り越して、真っ白に見えそうなほど顔色の悪い情報部担当からの報告。

 

 

 

「そ・・・そんな・・・バカな・・・」

 

 

 

ノーワロディは言葉を発することが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

その全てが裏目に出た。

 

ノーワロディは自分がスライム伯爵に恐れをなして東のトランジール王国の動向をチェックしている僅かな人数を残して、情報部のほとんどをバルバロイ王国に振り向けたために自国の北側の領土を見張る人員がいなかったことが致命的なミスを引き起こしたと悟った。

 

まさか、北のダンジョンが<迷宮氾濫(スタンピード)>を起こすなど想定外もいいところではあるのだが。

 

 

 

だが、情報部の人員をバルバロイ王国に振り向けなければ、その<迷宮氾濫(スタンピード)>の予兆も動向も全く掴むことが出来なかった、という事は無かっただろう。だが、もう全ては遅い。今更言っても詮無きことである。

 

 

 

そして、主力の第一師団、第三師団合計二万五千をドラゴニア王国側の村に駐屯させたままで、この王都の戦力は半減しているのだ。

 

まるで、悪魔が全て最悪のタイミングを見計らってグランスィード帝国を滅ぼそうと攻めかかって来ているようだった。

 

 

 

「第四師団、第五師団を急遽編成せよ!帝都の住民を南に逃がすのだ!」

 

 

 

ゴルゴダ・ヤーン大元帥が部下に怒号のような命令を飛ばす。

 

国内の情報がほとんど上がって来なかったところに、急に北のダンジョンが<迷宮氾濫(スタンピード)>を起こした、という報が舞い込んできたのである。

 

帝城はパニックに陥っていた。

 

 

 

「何だと!? 兵団が集まらない? どういうことだ!」

 

 

 

ゴルゴダ・ヤーン大元帥の指示を受けて軍隊の編成に動いた部下が戻って来て告げた事実。この帝都に兵士がほとんどいないと言う事実が発覚した。

 

 

 

「それが・・・、一部の大臣が、ゴルゴダ・ヤーン大元帥が出征している間、魔物の森の開拓や東のトランジール王国国境に近い領地のテコ入れに勝手に兵士を回したらしく、この帝都にまともな小隊すら残っていない状況です」

 

 

 

「ばかなっ!!」

 

 

 

ゴルゴダ・ヤーン大元帥が怒鳴り声を上げる。

 

それはそうだ。軍部最高責任者である自分のあずかり知らぬところで、帝都の防衛のための兵士を勝手に移動した上、帝都の守りを空にしたのだ。ゴルゴダ・ヤーン大元帥は勝手な判断をした連中の首を切り落としたいほどの怒りにとらわれた。

 

 

 

「それで、どれくらい残っている!」

 

 

 

「第四、第五師団の残りが合わせて三百、一応帝城に詰めている近衛師団二千にも手を貸してもらえるよう近衛師団長にも話を通してきました。ノーワロディ様への確認を一応お願いされましたが、最低限をノーワロディ様とアナスタシア様の護衛に残して協力してくれるそうです」

 

 

 

「わかった!」

 

 

 

返事をしたゴルゴダ・ヤーン大元帥がノーワロディに許可をもらいに面会を申し出たのだが、ノーワロディの顔色は真っ青であった。

 

 

 

(やれやれ・・・僅か十六歳の少女では、このような状況は非常に厳しいか・・・だが、これで心が折れてしまってはグランスィード帝国を背負って頂くことも難しくなるやもしれんな)

 

 

 

ノーワロディに詳しい説明をすることなく、独断で兵を動かすことを決めたゴルゴダ・ヤーン大元帥。

 

 

 

「許可は頂けましたか?」

 

 

 

戻って来たゴルゴダ・ヤーン大元帥に声を掛ける部下たち。

 

 

 

「・・・全ては私の責任において兵を動かす。まずは急いで王都の住人たちを南へ避難させるのだ。尤も、焼け石に水でしかないかもしれんがな」

 

 

 

大きく溜息を吐くゴルゴダ・ヤーン大元帥。

 

 

 

「・・・出来る事は全てやりましょう」

 

 

 

「・・・うむ」

 

 

 

部下の言葉にゴルゴダ・ヤーン大元帥は頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なぜ・・・こんなことに・・・」

 

 

 

ノーワロディは泣いていた。帝城のバルコニーから北の平野を見る。

 

その目にも異様な光景が広がっていた。

 

雲霞の如く押し寄せる魔物の群れ。報告では数万、と言う事だった。

 

情報部の手が足りていないため、正確な情報がつかめないのだ。

 

 

 

帝都の戦力の半数以上をドラゴニア王国の村に駐屯させたままにしてあるため、残存戦力が減っている上に、勝手な判断で自分の領地に有利になる様に軍の兵士を動かした一部の大臣たち。

 

どれもこれもノーワロディがドラゴニア王国に戦略を仕掛けなければこんなことにはならなかったのかもしれない。

 

 

 

今、ゴルゴダ・ヤーン大元帥が残存兵力をかき集めて帝都の住人たちの避難を指示しているとのことだったが、果たしてどれほどの人々が生き残れるのだろうか。

 

 

 

そして、ついに荒れ狂った異形の魔物どもが姿を現す。

 

 

 

「そ・・・! そんな・・・」

 

 

 

ゴブリン、オークのようなよく見かける魔物だけではない。

 

オーガ、トロールと言った大型種、マンティコアのような魔獣さえ姿を見せていた。それが正しく数万と言う言葉も決して大げさではないと思えるほどの魔物の群れが帝都へ襲い掛かろうとしているのだ。何をどう考えても、大地を埋め尽くす魔物の群れに対処する術はない。

 

 

 

ガクリ。

 

 

 

ノーワロディは両膝を床に着き、その場に崩れ落ちた。

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