転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
時は暫く遡る――――――
「すぐに帰さない方がいい?」
俺の言葉に宰相ルベルクが首を傾げる。
「ああ」
「なぜだろうか?」
問いかけたのは宰相ルベルクではなくワーレンハイド国王だった。
現在、ドラゴニア王国バーゼル国王以下重鎮たちとの会合を終え、今後の友誼を結んだばかりであった。
「グランスィード帝国に攻め込まれたため、ドラゴニア王国はグランスィード帝国と戦争状態に入っている。この状態のまま、国王以下重鎮たちを無事に帰してバルバロイ王国と友誼を結んだと判断されると、帝国がどう動くか判断しにくい。できれば、数日の猶予が欲しい。情報不足でどうなっているのか、帝国を何日かでも判断が付かない状況に置いておきたい」
俺の説明を受けて「ふむ」と頷くワーレンハイド国王。
「いきなりこの情報が洩れれば、ドラゴニア王国に決死の覚悟で突撃を敢行するやも・・・という事ですか」
宰相ルベルクが顎髭を擦りながら考える様に言う。
「そうだな。それもある。とにかく悩んで、即断即決が出来ない状況が長く続くほどこちらの準備が整い易くなる」
「準備ですか、何か手がおありですかな?」
俺の返答に宰相ルベルクが問いかける。
「まあ、女帝ノーワロディと仲良くなるという方法は失敗したわけだから、今後はバルバロイ王国やドラゴニア王国と仲良くするとこんなにお得な事がありますよ・・・といった内容を提案して行こうと思ってるよ」
「その準備の間、ドラゴニア王国バーゼル国王以下皆様方をどうします?」
「宴会で歓待しよう。特に、美味しい物を食べさせて、それらのいくつかはドラゴニア王国でも生産できるようにするという話をしていけば、彼らの期待ややる気も上がるというものでしょう」
「なるほど、実際に美味い物を食べて経験してもらうというわけですな。それが自国でも食べられるようになると言えば、確かに目の色も変わりますか」
俺の提案に笑いながら賛成する宰相ルベルク。
「それでは三日間くらい続く晩餐会でも開こうか。貴族たちも張り切る事だろう」
ワーレンハイド国王はくっくと笑うのだった。
だが、この後ヤーベも思いもよらなかった事態が帝国を襲うことになる。
「なに?迷宮氾濫の危険?」
俺はヒヨコからの報告に思わず執務室で腰かけていた椅子から立ち上がる。
『はっ!何者かの暗躍により、まず間違いなく<
「なんだと・・・」
俺は臍を噛む。確実に<
『どうも、生贄を用意して、ダンジョンマスターの核に取り込ませたようです。意思を持ったダンジョンマスターの核が依り代を持った場合、魔力接続を行っておけばダンジョン外へ出て来る事も出来ます。その上で自身のダンジョンで<
「それ、とんでもねーな・・・」
俺は頭を抱える。
「場所は?」
『はっ!グランスィード帝国 北西の海岸近くになります』
「北からとか・・・。ノーワロディはその戦力の多くを南のバルバロイ王国に振り向けていたはずだ。帝都防衛の戦力を残してあるだろうが、その北に点在する町や村は壊滅するな・・・」
『まず、間違いなく』
「ふむ・・・よし、サスケと、ハンゾウに連絡せよ。そしてサイゾウを中心に帝都北の町や村の住民は全て帝都西のドヴォルザーの町に向かわせてくれ。食糧は十分に用意しておく」
『ははっ!』
「御触れはアナスタシアの名前を借りるか。ダンジョンに<
『了解です』
「間に合うか?」
『何としても間に合わせます』
「頼りになるね」
ヒヨコの力強い返事に満足する。
「それにしても・・・何者なんだろうな・・・その黒いヤツ」
俺は首を傾げ、顎を擦る。
『はっ・・・こちらの存在は気取られなかったと思いますが、その謎の存在は転移の魔法を使用したようで、忽然と消えました』
「は~~~、転移の魔法ね。チートだよ、チート。俺もほしー」
俺は自分の転移の扉を棚に置いて敵の転移魔術を羨む。
『? ボスは転移能力をお持ちでは?』
ヒヨコが首を傾げて問いかける。
「いや、一応転移出来るけど、自由にどこでも行けるわけじゃないから。転移先は俺の分身が無いとダメだし」
苦労して能力を高め、工夫して転移能力を確立した俺だが、転移魔術で思い描いた場所へ瞬間移動、なんて便利な仕様にはなっていないからな。やはりノーチートは辛いね。努力を怠れないな。
『ボスほど優れた実力者はいないと存じます』
ヒヨコの言葉に照れる。たとえ忖度されたとしても悪い気はしない。
「それほどでもないさ。それより、<
『ははっ!調査の上ご報告いたします』
「どうせなら、カッコイイ鎧や剣を装備して、派手にキメるか! <
俺は、万全の体制を整え、最高のタイミングで助けに行けるよう事前準備を入念に行うことにした。
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