転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「イタタタタ・・・」
気持ちよく大魔法をぶっぱなしてやったら、なぜか墜落していた。
「何してんだよ、根性無し!」
ケツの下で伸びている<
『あ、主のせいじゃろが――――!! ワシの魔力のほとんどを吸い上げおって!』
ケツの下からプリプリと怒ったミーティアの文句が聞こえてくる。
あ、念話だからケツの下って事はないか。
「ちっ!軟弱な竜だな。これっぽっちの魔力吸い取っただけで墜落するとは」
『なななっ!主殿がどれだけ魔力を吸い取ったと思ってるのじゃ!飛行能力も維持できぬほどに魔力を持って行きよってからに!』
「ハイハイ、即刻魔力枯渇する駄竜は黙ってよーね?」
『ムッキー!!』
いきなりミーティアの体が光ったかと思うと、<
「あ、主殿のせいなのじゃ――――!!」
そう言って幼女の姿でポカポカ俺を殴ってくる。
残念ながら俺は幼女にポカポカされて喜ぶような性癖は持ち合わせていない。
襟元をひょいッと持ち上げる。
「な、何をするのじゃ――――!!」
襟首を持ったまま目の前にミーティアをぶら下げてみる。
両腕をくるくる回し、ポカポカパンチを繰り出してくるが、襟首をつかんだ右手をまっすぐにしていると、ポカポカパンチは俺に届かず、ぐるぐるしているだけだった。
「何、このイキモノ? カワイイんですけど?」
「ムッキー!ワシを小ばかにしおってぇ!!」
さらにぷんすか怒るミーティア。
だが、確かに魔力が枯渇気味で戦力にはならないだろうな。
「クルセーダー」
『ははっ!』
俺の呼びかけにヒヨコ十将軍が一匹、クルセーダーが姿を現す。
「ヒヨコたちでミーティアを奥さんズのみんながいるバルコニーまで運んでくれるかい?」
『了解しました!お前たち準備せよっ!』
『『『ピピィ(ははっ!)』』』
あっという間に十匹以上のヒヨコにつままれるミーティア。
「ぬおっ? 主殿・・・これは?」
「魔力が枯渇気味なのだろう。ゆっくりと休んでいいぞ」
そう言ってパチンと指を鳴らすと、ミーティアの服の端を咥えたヒヨコたちがわっさわっさとはばたき始め、宙に浮かび始めた。
「にょわ~~~~、こ、怖いのだ!」
「何を言っとる?さっきまでもっと高いところを飛んでいただろう?」
「バカモノッ!自分で飛ぶなら怖くないが、こ、こんなヒヨコどもにつままれて宙に浮くなど・・・」
俺の疑問に涙目で返答するミーティアを無視して、ヒヨコに告げる。
「よろしく頼むぞ」
『ラジャー!』
ものすごく勢いよく飛んで行くヒヨコたち。
「いやぁぁぁぁぁなのじゃぁぁぁぁぁぁ!」
ミーティアの叫び声はドップラー効果を残して消えて行った。
「ボスっ!もうすぐダンジョンの入り口になりますぞ!」
俺を乗せたまま超高速で疾走するローガ。風の精霊の守りもあって強烈な風圧が俺にかかる事は無い。それにしてもこれだけのスピードで走っているのに、ローガの駆る足音が聞こえない。すごいな。
周りでも大魔法を打ち込んだ後はそれぞれの狼牙たちが爪と牙を使った直接戦闘で魔物たちを屠っては背後に待機している出張ボスを持った仲間たちに亜空間圧縮収納へ回収させていく。ものすごくうまくできた分担作業だな。凄まじいほど効率がいい。
結果として、大半の魔物の死体が回収されていく。大魔法で粉みじんになったり、炭化してしまった死体はそのままにしてあるようだが。
そして、魔物を狩りながらダンジョン入口へと近づく。
ダンジョン入口からはもうそれほど魔物が出てきてはいなかった。
「こ・・・これはどういうことだ!」
見れば、黒い靄を纏った冴えない三十路近くに見える男が一人叫んでいた。
「なんだ、コイツ?」
『ボス、こいつが人の体を乗っ取ったダンジョンマスターコアの意識です』
「ああ、コイツが・・・」
黒い靄の男は俺とローガに気づいたようだ。
「なんだ貴様ら!」
「なんだと言われても・・・魔物を狩ってる冒険者?」
「なぜ疑問形なのです?」
ローガが俺に問いかける。
「仕事としてはギルドから依頼受けたわけじゃないから」
「なるほど」
俺の説明に納得したようなローガ。
「ぼ、冒険者だと!冒険者風情が俺の魔物軍団をどうにかできるわけないだろ!」
「俺の魔物軍団、ねぇ・・・。<
「貴様ぁ!」
俺の煽りにあっさり激昂する黒靄男。
「さーて、さっくり終わらせてこの<
努めて俺はのんびりと口にする。
「ふははっ!ずいぶんな余裕だな!だが、ダンジョンコアである俺がダンジョンから出られるんだ、もちろんダンジョンボスが出られない道理もないよなぁ!」
そう言って愉悦に混じった気味の悪い笑みを浮かべる黒靄男。
どうもそうとう鬱屈している感じだな。元の男の性格か、このダンジョンコアの性格か・・・。
そしてダンジョンの入り口から出てきたのは赤い巨体。
「ファイアードラゴンだぜぇ!竜種の力!とくと味わって死ね!」
翼のない、四足歩行の赤いドラゴンがこちらへゆっくりと向かってくる。
確かにファイアードラゴンらしく、口からトカゲのような細い舌の他に、炎がチロチロと燃えているのがわかる。
「ブフッ!」
「ププッ!」
俺とローガは思わず噴いた。
まさかの態度に、ファイアードラゴンもキョトンとした感じになる。
「い・・・今更ファイアードラゴンとか・・・つい先日<
「いやいやしかり。それにしても、火トカゲは小さきものですなぁ」
なんとローガまでバカにする始末。
「くだらん戯言を並べおって!やれ!ファイアードラゴン!」
黒靄男の号令でファイアードラゴンがこちらへ向かってくる。
「ほう・・・俺とやろうってのか・・・」
「火トカゲ風情が調子に乗るなよ・・・」
俺とローガが自らの魔力を練り上げて纏っていく。
俺はその身に翼を出し、ローガはその体を三倍ほど大きくして角をはやした。
お互い、魔力がパリパリと電気を帯びるかの如くスパークする。
「グ、グワワワワ!?」
いきなり土下座するかの如く自分の顎を地面にこすりつけペコペコするファイアードラゴン。どうやら力の差を身にしみて感じたらしい。
「ば、バカな!ファイアードラゴンが怯えるだと!ふざけるなぁ!そいつらを殺せ!」
急にファイアードラゴンに黒い靄がかかったかと思うと、苦しみだした。
「ダンジョンコアからの強制か・・・?」
見れば黒い魔力の帯がファイアードラゴンからダンジョン内に続いている。たぶんダンジョンコアが設置されているコアルームからの魔力供給を受けているから、ダンジョンマスターの支配下にあるんだろうな。
「なら、その呪縛断ち切ってやろう」
そう言ってファイアードラゴンから伸びる黒い魔力の帯に右手を触手に戻して伸ばす。
「<
あっさり魔力供給を断ち切る俺。ついでにファイアードラゴンに残るダンジョンの魔力残滓も吸い取る。
なんたって、魔力を吸収するのはお手の物。対象物を魔力に変えて吸収するおれのスライム細胞にとって魔力そのものは最も吸収しやすい対象だ。
呪縛を解かれたファイアードラゴンが俺に懐いてペロペロする。
おや、俺はスライムだからいいけど、人間がコイツにペロペロされたら大丈夫なんだろうか?
「ばかな・・・そんなばかな・・・」
そう言ってダンジョンに逃げ込もうとする黒靄男の襟首をムンズとつかむ俺。逃がすわけねーじゃん。
「さて、随分と暴れてくれたなぁ?覚悟できてんだろーね?」
俺がジロリと睨む。
「ふ・・・フハハハハッ!この男は何も知らん一般人だ。俺を殺せばコイツは死ぬ!ダンジョンも崩壊する!どうだ!俺には手がだせまい!」
バシンバシン!
とりあえず往復ビンタしてみる。
「ぐわっ!貴様血も涙もないのか!一般人が死ぬと言ってるだろーが!」
俺は黒靄男の文句をスルーすると、亜空間圧縮収納からある物・・・を取り出し右手に持った。
「じゃあやってみよう」
そう言ってある物・・・を持ったまま右手の触手を超高速でダンジョン内に伸ばしていく。
「お・・・お前・・・一体・・・何を・・・」
しばらくして・・・
「お、とうちゃ~~~~く」
「な、何が到着・・・」
「再び<
ズオンッ!
中々の手ごたえで魔力を吸ったぞ。そしてコアがあったと思われる台座からの魔力供給が完全にストップした。そして魔力切れのダンジョンコアを台座から取り外して、代わりに右手で持っていた別のダンジョンコアを台座に置く。
一拍して、再び魔力がダンジョンコアに充填され始めるが、もちろん取り外したダンジョンコアには魔力供給される事は無い。
「あ・・・あ・・・」
交換したダンジョンコアを持って触手を引き戻す。
これでダンジョンの崩壊はない。
え、なんでダンジョンコアなんて持ってるかって?
ミノタウロスが住み着いてたダンジョンぶっ潰した時に回収したダンジョンコアが余ってたんだよね。
「さて、これでお前のダンジョンコアは回収した。ダンジョンとの魔力接続がすでに切れているからな。もう魔力を回復させることはできん。そしてその男は魔力がほとんどないようだ。つまり・・・」
口をパクパクさせる黒靄男。
「チェックメイトだ」
ついでに黒靄の魔力残滓も吸い取っておく。
「ギャアアアア!」
えらい断末魔を発して黒靄は俺の細胞にすべて吸収された。
ダンジョンコアにはもう意識は残っていない。完全に消滅したようだ。
乗っ取られていた男がどさりと倒れる。もう黒い靄はかかっていない。
とりあえず呼吸しているし、死んではいないようだ。
「よし、めでたしめでたし」
「さすがはボス!」
二本足で立ち上がり、前足でパチパチと拍手をくれるローガ。器用だね。
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