転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
ヤーベがローガに乗ってダンジョンへ向かっている頃・・・
「皆さまはヤーベ様と今週末にご結婚されるとか」
アナスタシアが奥さんズの面々を見ながら問いかける。
「・・・そうだが」
「なぜご存知で?」
イリーナとルシーナが反応する。
「ヤーベ様にお手紙で・・・」
恥じらいながら説明するアナスタシアにムッとする奥さんズの面々。
「私たちもまだ詳しく聞いてないのに・・・」
ルシーナの顔に闇が広がっていく。
「ま、まあまあ・・・旦那様もまだどうするか詳しく聞いてないのでは? あと数日ですけど、結構それどころじゃなかったですしね」
フィレオンティーナがルシーナに説明する。
「そうだな、ヤーベが帰ってきたら、一度しっかり話し合った方がいいだろうな・・・」
イリーナが腕を組んで声を押し出すように呟く。
「元々、カッシーナ王女との結婚式だよね? パレードもあるっていう」
「そうなのですが、私たちもぜひ後ろの馬車に・・・とカッシーナ王女は言ってくれているのですよね・・・」
ルシーナがカッシーナからの情報を話す。
「え?私たちもパレードに参加できるの?」
サリーナが嬉しそうに顔を輝かせる。
「ただ、パレードはともかく、結婚式自体はカッシーナ王女と一緒に並んでもいいものかどうか・・・」
ルシーナが溜息を吐く。
「そうですわね・・・。結婚式は旦那様という英雄がカッシーナ王女と結婚すると言う、国の結びつきを大々的にアピールしたいがために行うようなものですからね・・・。カッシーナ王女以外に私たちがいるのは目的がぼやけるという意味では多分許可されないかと」
残念そうにフィレオンティーナが説明した。
「むう・・・」
イリーナが落ち込む。
「パレードだけ参加すると、後ろの女たちは何なんだ・・・ってなりますわね・・・」
ルシーナも深く溜息を吐く。
「いっその事、何なんだーって言わせる? その方が驚きがあって楽しくない?」
サリーナがトンデモ発言をかます。
「旦那様とカッシーナ王女が二人っきりで馬車に乗って手を振っている、その次の馬車に私たちがわんさと乗り込んで手を振る・・・相当な話題ですわね!」
何となく悪い顔をしてフィレオンティーナはニヤついた。
「まあまあ、とても楽しそうですわね・・・ぜひその馬車に私奴も・・・」
おずおずと人差し指をつんつんと合わせながらアナスタシアも馬車に乗りたいとアピールしてくる。
「お母さん!」
「母娘ドーン!よ、母娘ドーン!」
「しないわよっ!」
アナスタシアの言葉に食い気味で否定を入れるノーワロディ。
「アナスタシアさん、本気でヤーベの奥さんになりたいんですか?」
サリーナがストレートにアナスタシアに問いかけた。
「ぜひっ!!」
両手を胸の前で組んで乙女チックに前のめりになるアナスタシア。
「じゃあバルバロイ王国に来るのかな?」
「はいっ!」
アナスタシアは間髪入れず右手を真っ直ぐ上げて宣言をする。
「おっ、お母さん!この国を出て行っちゃうの!?」
ちょっと涙目になりながらノーワロディは母親であるアナスタシアに詰め寄る。
「ロディちゃんも一緒に来ればいいのに。母娘ドーン!」
「しないって言ってるでしょ!?」
涙目になりながらも怒りながら突っ込むノーワロディ。
「じゃあ、お母さんはヤーベさんと仲良くなりに行くから、ロディちゃんはしっかりとこの国を守って行きなさい」
急に真面目な顔になって真っ直ぐ目を見つめるアナスタシアに声が出なくなるノーワロディ。正直、頭の中では分かっている。これほどの国難を救ってもらったのだ。バルバロイ王国からどれほどの要求が出てくるのか全くもって想像できない。
だが、現在国の立て直しが軌道に乗り始めたばかりのグランスィード帝国にとって、資金も食料もまるで余裕などなかった。列国第二位の軍事力、などと言われているグランスィード帝国ではあったが、その内情は全く余裕のない苦しい台所事情であった。
「あ、そうそう。ゴルゴダ・ヤーン大元帥」
一連の状況が全く飲み込めず、空気と化していたゴルゴダ・ヤーン大元帥に急に声を掛けたアナスタシア。
「あ、はい!」
「ヤーベ様が見事に魔獣の群れを退治してくれました。確認は必要になるでしょうが、この帝都への侵攻は防ぎ切ったと見ていいでしょう。民の避難を止め、危機は回避できたと伝えてパニックを収拾してもらえますか?」
「わ、わかりました! まずは斥候を出して確認に向かわせますが、確かに先ほどまで見えていた魔獣の群れが駆逐され、地鳴りのように響いていた魔獣の足音も感じなくなりましたしな・・・。民の避難は止めるようにいたしましょう」
早々にバルコニーを出ていくゴルゴダ・ヤーン大元帥。
「ロディ。ヤーベ様はわたくしたちだけではなく、この国そのものを救ってくれた。これは途轍もなく大きい事よ。私たちはヤーベ様に・・・ひいてはバルバロイ王国に途轍もなく大きな借りを作った。それ自体は仕方のない事だったと思うわ。この国が正に存亡の危機に晒されたわけだし、それを大きな被害も無く食い止めてくださったヤーベ様にはどれほど感謝してもしたりない。だけど、これは個人の感情で終わらせられる話じゃないはずよ?わたくしたちは長い年月をかけてでもこの国を無傷で救ってくださったお礼をしていかなければならないの」
諭すように説明するアナスタシア。
「でも! でも助けてくれと依頼したわけじゃない!」
涙を流しながら大声を上げるノーワロディ。
分かってはいる。自分は女帝でこの国を纏めなければならないトップの位置に君臨しているのだ。わかってはいるのだが、アナスタシアが、自分の母親がヤーベの元へ行くことがこの国難を救ったヤーベへの褒賞の一部として国のために、そう意識していることが許せなかった。認められなかった。
やっとあの先帝が君臨する地獄の日々から解放されたのだ。それが、またも別の男の元へ身を寄せなければならないなんて・・・。
「ロディちゃん、それを言ってはダメ。あの人は、何の見返りもなく私たちを助けてくれた。事前に報酬を約束してから戦ってくれたわけじゃないの。その相手に、なんのお礼もせずに、助けてくれなんて言って無い、なんて言ってしまったら、金輪際周りの国は貴女を助けてはくれなくなるわ」
涙を流すノーワロディに一言一言沁み込ませるようにゆっくりと言葉を紡ぐアナスタシア。
「でも・・・どうしてお母さんが・・・」
「そりゃ、私がヤーベ様の元に嫁ぎたいし」
あっけらかんと告げるアナスタシアにボーゼンとするノーワロディ。
「そう言えばそうだったわ・・・」
ノーワロディはがっくりと肩を落とす。
「わたくし自身にどれほどの価値があるのかはわからないけれど、きっとヤーベ様はいろいろ考えてくださると思うわよ? それにね、ロディ。ヤーベ様が急に空に現れたことを考えても、ヤーベ様の元に嫁いだからって、もう会えないってわけじゃないと思うわ」
にこにこしながらアナスタシアは説明して行く。
「本当に・・・?もう会えないってことは無いの・・・?」
グスグスと泣きながらノーワロディはアナスタシアに抱きつく。
「もちろん!ヤーベ様に頼んで、たくさんお土産を持って実家に帰って来られるようにお願いするわ」
頭を撫でながら、優しく諭すアナスタシアに安心したような表情を浮かべるノーワロディ。
そこへグランスィード帝国の宰相の地位を預かるジークがやって来た。
「ノーワ様!無事ですか!」
母親のアナスタシアに抱かれていたノーワロディは涙を拭いて母親から離れるとジークの方へ振り返った。
「ええ、大丈夫。それで、避難誘導は中止したの?」
「はい、ゴルゴダ・ヤーン大元帥にお会いしまして、大元帥の方から兵へ直接指示頂くようにお願いしました。大元帥が大丈夫と言えば、兵士たちも安心できるでしょうから」
「そう」
お互いに胸を撫で下ろす。
「それで、一体何がどうなっているのですか・・・?」
ジークの問いかけにノーワロディはこれまでのいきさつをかいつまんで説明する。
「・・・それは、我が国への不法入国及び戦力を率いての越権行為は侵略にも値します!」
ジークがごく一般的な解釈で気勢を上げる。
「そうねぇ、その目的が我が国を侵略する事だったらそうなんでしょうけどねぇ」
頬に手を当てて悩まし気に溜め息を吐くアナスタシア。
「そうなのだ、ジーク。我々は帝都滅亡の危機をバルバロイ王国のヤーベ・フォン・スライム伯爵とその手勢に救ってもらった。これは揺ぎ無い事実だ」
「そんな事!それよりも先に断りもなく兵力を我が国に入れたこと自体が問題なのではありませんか!」
ノーワロディの説明にそれでもジークはヤーベの行動を問題にすると声を大にする。
「・・・それでは我々は助けてくれた恩人に礼ではなく剣を向けるというのか?」
ノーワロディにジロリと睨まれてジークは縮こまる。
「それにね~、ヤーベ様の罪を問うって、あの数万の魔物の群れを討伐したヤーベ様を捕らえられるとは思えないし。後、助けに来てくれたヤーベ様と敵対するって事は、バルバロイ王国とも敵対するって事でしょ? あの、ドラゴニア王国の<
ものすごく丁寧な説明にジークは二の句が継げない。
「ですが・・・全面的に彼の伯爵の行動を認めれば、どれほどの報酬を求められるか・・・、いや、バルバロイ王国から相当無茶な要求が出されるかも・・・」
肩を落とし、青い顔をしてジークが呟く。
「・・・要求を見てから判断するしかあるまい・・・」
ノーワロディも視線を落とし、言葉を無理矢理押し出すように呟く。
そんな二人を見てアナスタシアはクスクスと笑う。
「・・・何がおかしいのですか、お母さま?」
ノーワロディとジークはアナスタシアがなぜ笑うのかわからず、視線を向けた。
「まあなんだ。それほど心配はいらんと思うぞ?」
その問いに答えたのはなぜか腕を組んでドヤ顔をしているイリーナだった。
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