転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
俺がローガに跨って狼牙族を引き連れて帝都に戻って来ると、戦勝パーティの準備中だった。どうもアナスタシアが先導して俺たちを労うためにパーティの準備をしたようだ。ちょっと感動するね。
逆にノーワロディにどういうつもりだ、くらいの文句を言われるかもしれないと思ってたからね。まさか全面的にご苦労様の姿勢で迎えてもらえるとは、ちょっと想像してなかった。
「ヤーベ様!お帰りなさいませ!」
城の門をくぐると、走って来たのはアナスタシアだった。
「ああ、ただいま、アナスタシア」
俺はローガから降りてアナスタシアに歩いて近づく。
アナスタシアは走って俺に抱きついて来た。
「迎えに来るというお約束・・・違えず叶えて頂いたこと、感謝の念に堪えません」
俺の胸に顔を埋めたかと思うと、その顔を上げて下から俺を見上げる。その目から涙が伝う。
「約束しただろ? アナスタシアを見捨てるわけがないじゃないか」
俺は安心させるようにアナスタシアの頭を撫でる。
「お帰り、ヤーベ」
「ヤーベ様お帰りなさいませ」
「ヤーベさんナイスファイト!」
「お見事でした旦那様」
「ふおおっ!ご主人しゃまお帰りなしゃいましぇー!」
「キュキュ―――――!」
「ズゴズゴ―――――!」
奥さんズとリーナ、それに神獣のジョージとジンベーが俺を迎えてくれる。
今ガッツリとアナスタシアを抱きしめているんだが、比較的みんなの視線が温かめだ。
即制裁オシオキにならないだけマシだな、うん。
そして、その後ろからグランスィード帝国の女帝ノーワロディが姿を現す。
「あ・・・あの・・・」
その横にはグランスィード帝国の軍部トップであるゴルゴダ・ヤーン大元帥が控えていた。
「貴殿・・・本当にあの数万からなる魔物の大群を退けたのだな・・・」
「ヤーン大元帥ですな、お噂はかねがね」
俺は恭しくお辞儀をする。
魔物の大群を殲滅した・・・・わけだが、それを退けた・・・、という事にしている。
これは亜空間圧縮収納で大量に魔物を収納している事で魔物の死骸がない事に不信を抱かれないように奥さんズからノーワロディに説明してもらっていた。
そして、ダンジョンに押し返して、そのダンジョンを封印(実際は新しいダンジョンコアを設置して封鎖命令を出した)したことにしてある。尤も第一陣はローガ達の魔法で木端微塵になったりしているからな。ある程度死骸も残っているのだが。
「そ・・・それで・・・あの・・・」
ノーワロディが何か言いたげにしているが、言葉が出て来ない。
「あ~、難しい話は後にしよう。今はゆっくりさせてくれ」
俺はノーワロディにそう告げる。
「ヤーベ様、たっぷりご馳走を用意しておりますわ!たくさん召し上がってくださいね!」
アナスタシアは俺の手を取って城の中に入って行った。
「じゃんじゃん料理を運べ!もたもたするな!」
一際高い白い帽子をかぶったシェフが大声で指示する。
城の大食堂。立食パーティ形式を取ったテーブルには様々な料理が並んでいる。
だが・・・
「キュキュ―――――!」
「ズゴズゴ―――――!」
まるで掃除機の如く、神獣のジョージとジンベーが口を大きく開けて料理を吸い込んで行く。
「・・・すごい食べっぷりだな」
「神獣さんたちは大食漢なのですね・・・」
イリーナとルシーナが呆れて神獣たちを見つめていた。
「ふおおっ!負けられないのでしゅ!」
「ふははっ!お子ちゃまが!ワシにかなうと思うてか!」
何故かリーナと幼女姿のミーティアが大食い勝負をしている。
「むごっ!むぐっ!」
バタンッ!
リーナが皿を持ったま仰向けにひっくり返る。
口に肉を山盛り頬張ったままだ。
「ふははっ!お子ちゃまがワシに勝とうなぞ甘いのじゃ!」
そう言って鬼の様に食べ物を詰め込んで行くミーティア。
さすが<
「おいっ!料理が足りなくなるぞ!下働きの連中も現場へ送り込め!」
「料理長!下働きの連中は庭で肉を焼いております!」
「いかん!そうだった!こうなれば城のメイドに料理を運ぶのを手伝ってもらえ!ワシも鍋を振るう!恩人たちの労いパーティに料理を切らすわけにはいかん!!」
厨房に料理長の怒号が響く。
下働きの連中は庭に狩り出されて、肉を大きく切り分けては炭火で焼きまくるという作業を続けている。
何のためにそんな肉ばかり焼いているのかというと・・・。
「わふっわふっ!(こりゃウマイ肉だな!)」
「がふっ!(全くです!)」
「わふわふっ!(コッチの肉もうまいですぞ!)」
ローガを筆頭に大活躍した狼牙族が庭に集まって次々に焼けた肉にかぶりついていた。
当然、殊勲賞の狼牙族にもご馳走を振る舞って欲しいと俺がお願いする事も無く、狼牙達に肉が準備されていた。狼牙達は生肉で良いかと聞かれたので、焼いてタレを付けた物の方が良いと伝えておいた。・・・アイツら、俺が肉を焼いて与えてからというもの、ほとんど生で食べなくなった。狩りに出かけても亜空間圧縮収納に保管するだけでその場では食べなくなっちゃったしな。
・・・それにしても六十匹以上いると壮観だな。
料理人を焼けた肉をどんどん皿に置いていくが、置いた傍からローガ達がかぶりついて食べていくので、焼いても焼いても追いつかない。
料理人たちは次から次へ消えていく肉を補充するために切り分けては焼いて行く。
ここは正しく肉の戦場だった!
折角の料理だ。俺もたっぷりと頂く事にしよう。
俺は皿を持つと美味しそうな料理をどんどんと乗せて行った。
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