転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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閑話42 ヴィレッジヤーベ開拓記 その①

 

「おーい、レッド。準備出来たからこっちに来てくれ~」

 

 

 

「グァウ!」

 

 

 

ドスドスと派手な足音を立てて寄って来るのは、ファイアードラゴンのレッドだ。

 

レッドドラゴンが出て来たらややこしい名前になりそうだけど、今はまあいいか。オレンジがかった赤色のボディは、「レッド」と呼ぶにふさわしい。「オレンジ」だとメスっぽいよな。

 

なんでレッドの奴はオスだとわかったかというと、<古代竜(エンシェントドラゴン)>のミーティアがそう言ったからだ。

 

 

 

ちなみに、このレッドと名付けたファイアードラゴンは元々グランスィード帝国北にあるダンジョンのダンジョンボスだった。退治・・・と言うよりは俺とローガでちょっと脅しをかけたらソッコーひれ伏して懐くようになったのでカソの村周辺の開拓に協力させようと連れて帰って来たのだ。

 

 

 

「よーしよし、鞍と手綱を付けさせてくれ。それと、この巨大な爪を引っ張ってもらうぞ?」

 

 

 

「グァウ!」

 

 

 

レッドは嬉しそうに頷く。魔の森の開拓は生えている木自体が大地の魔力を吸って変質、硬質化している。おかげで通常の木こりたちでは木を切り倒すことすらできない。草木も魔力を帯びてアヤしく変質している。薬草や役立つ草木もあるけど、逆にヤバくなっている場所も多い。精霊たちと相談した結果、魔の森は手を入れて光が森の中に射すようにして土壌改善をしていった方がいいという結論に至った。

 

精霊から開拓OKを貰ったのだから、遠慮する事はない。ローガ達に魔の森から溢れ出てくる魔獣たちを狩りまくってもらっているし、カソの村の北、奇跡の泉から西に進んだ魔の森の端から俺は開拓を始めることにした。

 

 

 

「さ~、行くぞレッド!」

 

「グァウ!」

 

 

 

ドドドドドッ!

 

 

 

巨大な鉄の爪を引きずってレッドが疾走する。

 

非常に硬い土壌も引き裂くように耕していくレッド。

 

 

 

「はははっ!流石だなレッド!」

 

「グァウグァウ!」

 

 

 

レッドは褒められて嬉しそうに鳴き声を上げた。

 

 

 

「焼き畑農業も行けるか、一発頼むぞ!」

 

 

 

「グァアアアアゥ!」

 

 

 

レッドが<火炎の息ファイアーブレス>を放つ。

 

 

 

切り株や草木が燃え上がり灰になって行く。その後を踏み荒らすように走り抜け、耕していく。

 

 

 

「はっはぁ――――!!」

 

「グァウグァウ!!」

 

 

 

ドドドドドッ!

 

 

 

ファイアードラゴンが疾走するその姿――――

 

 

 

通常ならば災害級の事象であるはずだったが、この辺境では、日常の光景となりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の中央から北には、大きな敷地を区画で区切って確保していた。

 

そう、ミノ娘たちの仕事場、ミルク製造工場を建設する予定なのだ。

 

製造工場というと、イメージが悪いのだが、ミノ娘たちが毎日の生活の中で、ストレスを減らして自分たちで搾乳して、その量を管理し、出荷をコントロールできるようになればいいと俺は考えている。その大事なミルクはアローベ商会の中でもごく一部の上客と自分の屋敷での消費だけに抑えるつもりだ。大人気になってもそんなに大量に生産できないし、ミノ娘たちに無理をさせられないしな。

 

 

 

「うわ~、すごく広い敷地だな」

 

 

 

チェーダがミルク製造工場の予定地を見ながら呟く。

 

 

 

「かなりのスピードで建物は完成していく予定だよ」

 

 

 

「でも、オレはヤーベのそばにずっといたいから屋敷での生活を続けたいんだ。いいよな・・・?」

 

 

 

チェーダが目に涙を浮かべながら俺の腕を取る。

 

 

 

「ああ、お前には屋敷に居てもらいたいしな」

 

 

 

「ヤーベ・・・!」

 

 

 

ギュギュギュっとチェーダに抱きつかれる。ウン、スライムボディが軋みます。

 

 

 

「ヤーベさん、仮住まいの小屋の建設ありがとうございます」

 

 

 

ミノ娘のゴーダが俺に挨拶してくる。

 

その後ろからはリコッタやマスカル、モッツァレラもやって来た。

 

 

 

「ボクらのお乳が売り物になるなんて・・・不思議な感覚だけどね。そのおかげで生活も安定して暮らせるようになるんだ。お兄さんには感謝しかないよ」

 

 

 

ミノ娘の中でもボクッ娘のゾーラが声を掛けてきた。

 

 

 

「あまり気負わなくていいよ。体調によって搾乳量が変わるだろうけど、少ないと生活レベルを落とすとか、そんなことしないし、ゆっくり生活してくれればいいよ」

 

 

 

「お兄さんありがとう!」

 

 

 

そう言って俺の腕に抱きつくゾーラ。

 

 

 

「でも・・・たまにはお兄さんに直接搾乳してもらいたいなぁ」

 

 

 

耳元でコショコショと呟くゾーラ。

 

俺は無言でコクコクと頷くと、俺の専用転移ゲート部屋を作っておくことを心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「町の名前?」

 

 

 

カソの村の村長は村の北に広大な町を計画している俺にその町の名を決める様に言ってきた。現在、カソの村は奇跡の野菜を生み出す村として、その名が売れてしまっている。そこで、このカソの村の名を残したまま新たに開拓される町の名前を決めてくれという事のようだ。

 

 

 

「うむ、ヤーベの街、でいいだろう」

 

 

 

イリーナが飾り気のない名前をぶち上げる。

 

 

 

「ヤーベ・ザ・ドミネーターはどうでしょうか?」

 

 

 

ルシーナさん、俺は別に支配者になりたいわけじゃないですけど?

 

 

 

「ヤーベブルグ!でどうでしょう?」

 

 

 

サリーナよ、ものすごく無難なドイツチックネームありがとう。この世界に合うかどうか知らんけど。

 

 

 

「旦那様!無敵のキャッスルヤーベはいかがですか?」

 

 

 

フィレオンティーナよ、俺はどこかの城主をやるわけではないのだよ。尤も城主をやったとしてもキャッスルヤーベは名付けないけどな。

 

 

 

「ふおおっ!ご主人しゃまサイキョーの街!でいかがでしゅか?」

 

 

 

リーナよ。俺をサイキョーと言ってくれるのはありがたいが、ヤバイ脳筋冒険者とかが集まってきそうだから却下だ。

 

 

 

「難しい顔をしているのう、主殿?」

 

 

 

ミーティアが俺の顔を覗き込む。

 

どうしても俺の領土の中央都市・・・今は何も無いが、その予定の村というか町には、俺の名を入れないといけないようだ。

 

・・・他の領土で貴族当主の名が入っているところ、無かった気がするんだけどな~。

 

 

 

「新たな町の名が浮かばぬのかの?」

 

 

 

「実は、もう決めてある」

 

 

 

ミーティアの言葉に返事をした俺だが、奥さんズやリーナはびっくりしたようだ。

 

 

 

「もう町の名が決まっているのか?」

 

「教えてください!」

 

 

 

イリーナとルシーナがズズイと迫って町の名を聞いてくる。

 

 

 

「町の名は・・・ヴィレッジヤーベ、だ」

 

 

 

ヤーベ村、という意味だがな。全体の計画はぶっちゃけコルーナ辺境伯家の主力都市である城塞都市フェルベーンを超えるような都市計画を行う予定だが、初っ端は単なる村だもんな。

 

 

 

「ヴィレッジヤーベ? なんとなくカッコイイな」

 

「そうですわね、渋い感じがしますわ」

 

 

 

イリーナとルシーナがヴィレッジヤーベに賛成してくれる。ド田舎の村だしね。イカツイ名前を付けても恥ずかしいだけだしね。

 

 

 

 

だが、ヤーベは元より、この時誰も気づくことは無かった。

 

この西の辺境が王都バーロンを凌ぐほどの発展を見せ、魔の森の<魔獣氾濫(スタンピード)>を防ぐために、王都よりも巨大で荘厳な城が建てられる事を。

 

そして、巨大な城は『キャッスルヤーベ』と呼ばれ、巨大な中央都市は『ヴィレッジヤーベ』と初期のころから変わらぬ名で呼び続けられることを。

 

 

 

そう、この時は誰も想像しなかったのである―――――

 

 




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