転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第252話 始まった婚姻の儀に緊張しよう

 

「ギャハハハハ! 馬子にも衣裳っつーけどもよぉ!」

 

「いやいや、お似合いですよ、さすがは救国の英雄殿だ」

 

 

 

 

 

俺の後ろで笑ってるのは王都冒険者ギルドサブグランドマスターとやらに就任したゾリアとグランドマスターのモーヴィンだ。

 

モーヴィンも口に手を当てて「プフッ!」て笑ってるの見逃してねーからな!

 

 

 

俺はと言うと、気持ちよく晴れた晴天の空を見ることもなく、朝早くから大聖堂の一室に詰め込まれて白いタキシードに着替えさせられている。

 

 

 

すでに婚姻の儀に参列する貴族や隣国の招待者たちも案内が始まっているらしい。

 

いや、マジでここまでの流れ、詳しい説明ないからね!?

 

 

 

誰に聞いても、「こちらで段取りしてありますから」の一点張りだ。

 

一番話を聞いていないのが新郎ってどうなのさ?

 

 

 

そしていま、俺の髪にべっとりと油らしきものを塗りたくって「ふぬぬぬぬっ」っと苦戦しているメイドさんたちが三名ほど。

 

 

 

「何とかこれで御髪が整えば・・・」

 

 

 

どうも俺の髪をぺったりオールバックにしたいようだ。

 

だが、俺の髪は普通の髪ではなく、スライム細胞だからね。

 

俺の今の髪形はちょっとツンツンしたラノベ主人公的な髪形をイメージしているわけではないのだが、多少わっさりしたり、ピンと跳ねさせている。それが気に入らないのか、あの手この手で髪の毛を何とかしようとしている。

 

 

 

仕方ない、オールバックにするか。

 

俺は魔力ぐるぐるエネルギーを髪の部分のスライム細胞に流してぺったりさせる。

 

 

 

「よしっ!髪油が馴染んできましたよ!」

 

 

 

実際は違うのだが、ぺったりとした髪にそう判断するメイドさんたち。

 

いやいや、スライム細胞に油とか浸透しないし。

 

 

 

そのうち、完全にぺったりオールバックになった俺の髪に満足したのか、メイドさんたちが作業完了を告げ、退出していく。婚姻の儀の間が準備できたら俺を迎えに来るらしい。

 

 

 

そこへ扉がノックされて新たに別の人が入ってくる。

 

 

 

「やあ、ヤーベ卿、元気かな?」

 

入ってきたのはこのバルバロイ王国のワーレンハイド国王であった。

 

 

 

「ワーレンハイド国王、これはどうも・・・」

 

 

 

その場で膝を着こうとして俺を止めるワーレンハイド国王。

 

 

 

「よい、今日の主役は貴殿だ。膝を着けば衣装も汚れるしな」

 

 

 

そう言って快活に笑うと国王は続けた。

 

 

 

「この日を良き門出の日としたい。貴殿にとっても、王国にとっても」

 

 

 

そう言ってがっちりと握手をしてくる国王サマ。

 

 

 

「どこまでお力になれるかわかりませんが・・・」

 

 

 

俺は国王様の手をぎゅっと握り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シスターに案内されて婚姻の儀の間に到着する。

 

 

 

「緊張なされておりますか?」

 

 

 

そっと案内してくれたシスターが俺に声を掛けてくれる。

 

 

 

「ええ、普段から緊張が足りないと怒られることが多いので、今日くらいは目いっぱい緊張しようと思っているのですよ」

 

 

 

俺はそう言ってにっこりと笑みを返す。

 

 

 

「まあ、それでは本日の結婚の儀は大成功間違いなしでございますわね」

 

 

 

そう微笑みながらシスターは祭壇の間の扉前に俺を案内してくれる。

 

そして、扉の左右に立っていた神官に合図をする。

 

 

 

「新郎、ヤーベ・フォン・スライム伯爵様入られます!」

 

 

 

厳かな説明とともに目の前の大扉が開いていく。

 

その中央には赤い絨毯がひかれ、その左右には大勢の高そうな服をまとった貴族らしき人たちがいた。

 

 

 

知らないヤツラばっかり・・・ってことはないか、正面の祭壇近くにはタルバリ伯爵やコルゼア子爵のような知った顔ぶれもあるし、侯爵家の面々もいるか。祭壇前の最前列には先ほど挨拶に来てくれたワーレンハイド国王とリヴァンダ王妃、カルセル王太子もいるな。その他にも何人か重要人物らしき姿があるな。

 

 

 

俺は赤い絨毯の上に足を踏み入れると、その場で足を止めて周りの人々の顔ぶれを観察した。

 

 

 

・・・ドラゴニア王国のバーゼル国王が俺に手を振っているな。なぜ奴がここに?その隣にいるあまり表情のない女はもしかして奥さんか?あのノーワロディの腹違いの。

 

てか、なぜかグランスィード帝国の原初の女帝ノーワロディまでいるじゃないか。明日の西方三国同盟締結に向けたおぜん立てってことか?

 

 

 

・・・アナスタシアの娘であるノーワロディの前で婚姻の儀って、俺も罪深いぜ・・・フッ。

 

そんなことを言っている場合ではないかもしれん、後ろから刺されるかもしれんな。逃げた方がいいか?

 

 

 

「さあ、どうぞお進みなされ」

 

 

 

見れば隣にはラトリート枢機卿が。

 

ああ、不正と犯罪オンパレードだった教会のトップを刷新した時にとりあえず犯罪に手を染めていなかったラトリート枢機卿をトップに据えて、アンリちゃんを枢機卿に推薦したんだったね。

 

今日の儀式の進行はラトリート枢機卿がやるのかな?

 

汝、いつでも相手を愛しますか~ってやつだよね?

 

 

 

俺はラトリート枢機卿の案内するままに赤い絨毯の上を歩いていく。祭壇の前に到着すると、目の前にはひときわ大きな女神像が。

 

初めて大神殿に乗り込んだ時にも思ったが、この世界はどうも女神様を信仰してるっぽいんだよね。

 

女神の名前? 聞いたような気もしますが、すでにふぉげっとしておりますわ。チートをくれなかった女神なんぞに興味なし!

 

 

 

「ヤーベ様、どうぞこちらにお立ちください」

 

 

 

そう示して声を掛けてくれたのはアンリ枢機卿だった。

 

ラトリート枢機卿は紺色に金の刺繍が入った高そうなローブ、と思ったのだが、アンリちゃんは真っ白なローブに金の刺繍が入った綺麗なローブを着込んでいた。まるでウェディングドレスのシスター版だよ?

 

 

 

「アンリちゃん!元気そうで何よりだね!」

 

「ええ、ええ、ヤーベさんが私を枢機卿なんてものに推薦しちゃったから、毎日死ぬほどたくさんのお仕事に埋もれて、とーっても元気に過ごさせておりますよ?」

 

 

 

能面のような貼り付けた笑顔で俺を見つめてくれるアンリちゃん。

 

 

 

「アハハ・・・、よかれと思ったんだけどね~」

 

 

 

汗もかかないスーパースライムボディのはずなのになぜか冷や汗が流れる感覚が。

 

 

 

「フフッ・・・冗談ですよ。本当にヤーベさんには感謝しています。ごろつきから教会を守ってくださったことも、孤児たちのためにいろいろ手を尽くしてくださったことも・・・」

 

 

 

やっと笑顔から険が取れて柔らかな笑顔を浮かべるアンリちゃんを見て俺もホッと一息つく。よかったよかった。

 

 

 

「ヤーベさん、結婚なさるんですね・・・」

 

 

 

今度は笑顔から一転、寂しそうな表情を浮かべるアンリちゃん。

 

 

 

「ええ、まあ、いつの間にか?」

 

 

 

俺は素晴らしく無責任な発言をかます。

 

 

 

「でも・・・私にもまだチャンス、ありますよね・・・?」

 

 

 

「え?」

 

 

 

何かアンリちゃんが呟いたようだが、俺には聞き取れなかった。

 

 

 

「さあ、花嫁様が到着なさいましたよ」

 

 

 

パパパパーン!

 

 

 

厳かな音楽隊の奏でる音に合わせ、俺の入ってきた大扉が再び開く音がする。

 

俺は正面の女神像の方へ顔を向けているので、ちょうど背面となる大扉の方に視線を向けることはできない。

 

・・・尤も<魔力感知>を展開すればだれが入って来たか想像つくけどね。無粋だわな。

 

 

 

「新婦、カッシーナ・アーレル・バルバロイ様ご入場!」

 

 

 

少しだけちらりと後ろを振り返る。真っ白なウェディングドレスに身を包んだカッシーナが、左右のメイドさんたちに裾を持たれたりしながらゆっくり歩いてくる。

 

・・・地球時代、全くモテずに女の子と手もつないだ記憶すらない俺だったが、まさか異世界で王女様と結婚することになるとはな・・・フッ!世の中わからぬものよ。

 

それにしても、今日のカッシーナはとてつもなく美人だ。こんな美人がホントに俺の奥さんになるの?今更ドッキリとか言わないよね?

 

 

 

「新婦、イリーナ・フォン・ルーベンゲルグ様ご入場!」

 

 

 

・・・はい?

 

 

 

・・・どゆこと?

 

 

 

・・・なんで?

 

 

 

顎が外れんばかりに驚いて後ろを振り返ると、しずしずと歩いてくるカッシーナの後ろに、なんとこちらも真っ白なウェディングドレスに身を包んだイリーナがしずしずと歩いてくるではありませんか! それもメイドがちゃんと左右について裾を持ったりしているのを見る限り、イリーナが勝手にカッシーナについてきたわけでは無さそうだ。

 

 

 

「新婦!ルシーナ・フォン・コルーナ様ご入場!」

 

 

 

・・・ええっ!?

 

 

 

イリーナ登場の時点で何となく想像がついたことはついたのだが、三人目ご登場で会場もだいぶざわついておりますが、なにか?

 

 

 

「新婦、フィレオンティーナ様ご入場!」

 

「新婦、サリーナ様ご入場!」

 

 

 

ええ、ええ、そうでしょうよそうでしょうよ。イリーナたちが来るんだから、奥さんズの面々は全員くるんでしょーよ。

 

あちらこちらから「なんと美しい・・・」「絶世の美女を何人も妻に娶るとは」「タイプの違う美人を侍らすとは・・・さすがは英雄殿だ」などとまことしやかに聞こえてくる。ほっといてくれ。俺は一度も結婚してくれと言った事は無いですけどね!だけど決して嫌なわけじゃないからな。奥さんズが嫌いなわけじゃないからな!大事なことだから二度言っとこーっと。

 

 

 

「新婦、リーナ様ご入場!」

 

 

 

「ハイなのでしゅ!」

 

 

 

ブホッ!?

 

 

 

「こら、小童。こういう式典では返事はいらぬのじゃ。黙って歩くがよい」

 

 

 

「新婦、ミーティア様ご入場!」

 

 

 

ぬがっ!?

 

 

 

見れば幼女枠のリーナとミーティアまで明らかに専用で仕立てられた豪華なウェディングドレスに身を包んで歩いてくる。

 

リーナなど、しずしず歩くというよりはもうスキップしてますけど?

 

 

 

さっきまで美人ばかりで羨ましいとか抜かしていた連中のざわめきが急に変わっていく。

 

 

 

「いやはや英雄殿の性癖にも困ったものですな・・・」

 

「英雄ほどそういった傾向にあるとか」

 

「そういえば数百年前に異世界から来た勇者が極度のロリコンだったと文献に・・・」

 

 

 

コラ―――――!!

 

なんでリーナにミーティアまでもがご入場しちゃってんの!

 

後、存外に俺が幼女趣味だと抜かしてるヤツラ!覚えてろ!どちらかと言うと俺は巨乳派だからな!ロリ巨乳だったらちょっと危なかったかもしれんが、リーナにミーティアはぺたんこだからな!ちっぱいでもなくペタンコだからな!

 

後、異世界から来た勇者、お前何してくれてんだよっ!異世界でチート貰ってはっちゃけてんじゃねぇ!そういうのはノクターンでやれ!

 

 

 

「新婦、アナスタシア・ルアブ・グランスィード様ご入場!」

 

 

 

・・・はいっ?

 

 

 

プンスカ怒り出した俺の視線の先には、明らかにあのアナスタシアが。しかもウェディングドレスに身を包んでこちらに歩いてきていた。

 

ちらりと見ればノーワロディも自身の母親であるアナスタシアが綺麗なドレスに身を包んでゆっくりと歩いてくる姿を見て涙ぐんでいるようだ。

 

 

 

あ、俺と目が合った。

 

 

 

途端に凄まじい威圧で睨まれる。幸せにしないとコロス・・・そう目が訴えていた。

 

 

 

フッ!俺の思考は完全停止だ!もう考えることすら難しい!

 

なぜアナスタシアがここにいる?誰の手引きだ?

 

ノーワロディもいるのだからワイバーン便で移動してきたことはわかるのだが、よくもまあこのバルバロイ王国がとり行う俺とカッシーナの結婚式に花嫁としてねじ込んできたね。

 

尤も全然イヤじゃないですけどね!アナスタシアだし!全然イヤじゃないですから、大事なことだから二度言っちゃう。

 

 

 

「新婦、ロザリーナ・ドラン・ドラゴニア様ご入場!」

 

 

 

・・・えっと、どちらさま?

 

 




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