転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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今回は投降300回記念としてリーナの成長日記をお届けします。
今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!


投稿300話記念 リーナの成長日記③ リーナ一人で下町に出かける

 

「ふみゅう・・・」

 

 

ある日のこと―――――

 

 

リーナは寝ていた。

 

もちろんご主人様であるヤーベの腰にガッチリと食いついたままである。

 

ヤーベに意識があれば、「お前はダッコちゃんか!」などと古いツッコミを入れる事だろうが、生憎とヤーベは昨日までの激務が祟って現在も爆睡中である。

 

 

 

異世界に来てスライムボディで泉の周りをウロウロしていた時はお腹が空くことも無く、排せつも無く、眠くなることすらなかったはずであるが、人間形態をマスターしで町で暮らし始めるとバイオリズムが出来たのか、ちゃんと腹も空くし、眠くもなるのである。

 

スライムとしては些か退化したのではと言えなくもないヤーベであった。

 

 

 

ふみゅみゅみゅみゅ、と口をもごもごさせながらそれでもヤーベの腰にガッチリしがみついたまま熟睡するリーナ。だが、ヤーベがぱちりと目を覚ます。

 

 

 

「あー、また俺のベッドに潜り込んで・・・」

 

 

 

一応ヤーベの部屋にはリーナが寝られる布団が敷いてあるのだが、すぐヤーベのベッドに潜り込んで来ていた。その確率現在までで100%である。

 

 

 

だがこの日、ヤーベには王城から登城命令が出ていた。朝から珍しく会議でそれに出席して欲しいと宰相ルベルクの名で手紙を受け取っていた。承諾の返事も出してあるため、行かないというわけにはいかない。

 

 

 

ヤーベはリーナを腰から引き剥がすとベッドに腰かけて膝に座らせた。

 

 

 

「ふみゅみゅ・・・おはようごじゃいましゅ、ご主人しゃま」

 

 

 

寝惚け眼をコシコシ擦ると、振り向いてヤーベの顔を覗き込むリーナ。

 

 

 

「おはようリーナ。今日は王様に呼ばれていてね、お城にお仕事に出かけて来るよ」

 

 

 

「ふおっ!それではリーナもお供致しましゅ!」

 

 

 

元気に手を上げて宣言してくれるリーナに、首を振るヤーベ。

 

 

 

「すまないが、大事な会議みたいでね。リーナにはちゃんとこの屋敷で留守番していて欲しいんだ。留守番できるかな?」

 

 

 

「ふみゅう・・・ご主人しゃまと一緒にいられないのは悲しいでしゅが、ご主人しゃまの命令とあれば、リーナは見事に留守番るしゅばんの大役を果たすのでしゅ!」

 

 

 

シュタッと敬礼ポーズを取って宣言するリーナ。

 

 

 

 

 

「さすがリーナだ。頼もしいね」

 

 

 

フンスッと気合を入れるリーナの頭をヤーベは撫でながら褒めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ行って来るから」

 

 

 

ヤーベを見送る奥さんズの一同とリーナ。

 

 

 

だが、ヤーベのいない屋敷において、リーナは実は時間を持て余すことが多かった。

 

元々リーナはヤーベが奴隷として購入したわけだが、身の回りの世話をして欲しくてリーナを購入したわけではない。あくまでリーナの命が危ないというヒヨコの情報を元に助けるために購入していた。そのため、リーナに特に仕事を与えるつもりが無かったのである。

 

 

 

現在はリーナの教育のため、午前中は読み書きや一般教養をイリーナやルシーナたちが教えたりしているのだが、午後は特に指示が無い限りフリーになる。奴隷だからと言ってリーナが洗濯や部屋の掃除を行う必要はないのだ。なぜなら専属のメイドさんが屋敷に居るのだから。

 

コルーナ辺境伯の屋敷に居候していた頃も、今の屋敷に来てからも、リーナは取り立ててヤーベのために何かする必要があるかというと、特になかった。

 

 

 

それでもコルーナ辺境伯に居候している頃は少しでもヤーベの役に立ちたくて、メイドさんのところに押しかけてはヤーベの服の洗濯や、ヤーベの部屋の掃除を手伝っていた。リーナが悪戦苦闘しながらも頑張る姿は微笑ましく、コルーナ辺境伯家のメイドさんたちには大人気であった。

 

 

 

だが、ヤーベが自分の屋敷に移り住むと、メイドさんたちからはリーナは例え奴隷契約とはいえ、屋敷の主人が大事にしている子供、として映るため、掃除の手伝いなどもってのほかとリーナをお嬢様扱いしていた。最初は照れていたリーナではあったが、最近は午後やる事が無くて手持ち無沙汰になっていた。

 

 

 

お昼ご飯をイリーナたちと食べてしばらく、リーナは一人決意した。

 

 

 

「ふみゅう、ご主人しゃまにポポロ食堂のコロッケをプレゼントするのでしゅ!」

 

 

 

唐突であった。

 

 

 

「ポポロ食堂のコロッケはとても美味しいのでしゅ。ご主人しゃまもきっと喜んでくれるのでしゅ!」

 

 

 

その動機は、もちろん自分がオヤツでコロッケを食べたいからであったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷を一人で出ようとして、筆頭執事のゼバスチュラに「一人で屋敷を出てはいけませんよ?」と念を押されたのだが、ヤーベにコロッケを食べさせたいと思ったリーナはシュタッと敬礼ポーズを取るものの、返事をせずニヘラッと笑ってその場をやり過ごすと、こっそりと庭に出た。

 

 

 

そのまま屋敷の横の狼牙族の厩舎に出向くと、今日の留守番(屋敷警護当番)であったローガがあくびをしていた。

 

 

 

そのままローガにポポロ食堂のコロッケを買いに行きたい、ヤーベ(ご主人しゃま)に食べさせたいというリーナの説明を快く引き受けたローガ。その背中にリーナを乗せてテクテクと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

リーナを乗せたまま暫く通りを歩いて行くローガ。

 

大柄の狼に跨って通りを歩いて行くリーナは途轍もなく目立っていた。

 

通行していた多くの人々がローガの前の道を開けた。

 

ふと、ローガはリーナに問いかけた。

 

 

 

「リーナ殿、確か人間の世界では物を買う時には『お金』というものが必要だったはず。リーナ殿はお金を持っているのであろうか?」

 

 

 

「大丈夫でしゅ!リーナはご主人しゃまの肩とかいろいろ揉んでマッサージしているので、お駄賃を貰っているのでしゅ!」

 

 

 

そう言って大事そうに腰に巻き付けたポシェットの中から革袋を出す。じゃらりと音がするところを見ると、硬貨がたくさん詰まっているようだった。

 

それにしても、今ここにヤーベがいたのなら、「肩とかいろいろって、背中踏んだり、足揉んだだけでしょ!いろいろってドコよ!いろいろって!」とツッコミを入れているところであろう。

 

 

 

「なるほど、それでは万全ですな。ボスもきっとリーナ殿が買ってくれたコロッケに感動するでしょう」

 

 

 

「そうなるととっても嬉しいでしゅ!」

 

 

 

わふわふと笑うローガの上でリーナははしゃいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テメェ、店のモン盗んでタダで済むと思ってねーだろーな!」

 

 

 

見れば目の前の八百屋の前で小さな男の子が店主に腕をねじられて地面に押さえつけられていた。

 

 

 

「にっちゃ!」

 

 

 

泣きながら小さな妹が走り寄るが、それを平手で弾き飛ばす店主。

 

 

 

バシッ!

 

 

 

「あうっ!」

 

 

 

「妹に手を出すな!リゴンを盗んだのは俺だ!俺が悪いんだ!」

 

 

 

涙を流しながら男の子が声を上げる。

 

見れば遠巻きに十人以上の子供たちが路地から顔を出してこちらを伺っていた。

 

どうやら男の子はリゴンという赤い実の果物を一つ盗んだところを店主に取り押さえられたようだった。

 

 

 

「ふむ・・・ボスのお力で教会に孤児が引き取られて、路地で生活しなければならない子供たちは減ったとばかり思っていたのだが・・・」

 

 

 

ローガは首を傾げながら呟いた。

 

ローガの言うとおりヤーベの取り成しで教会と王家はお互いに協力し合い、王都の孤児たちが路頭に迷わない様教会で面倒を見ることが出来るよう改革を進めているところだった。だが、いかんせん取り組み始めたばかり、まだまだ手が回っていない現状もあった。

 

 

 

「立て!衛兵に突き出してやる!」

 

 

 

いきり立つ八百屋の親父。

 

隣の金物店の店主も顔を顰める。何もそこまでしなくても、と言った顔だった。

 

 

 

「こいつらは甘い顔をすりゃすぐ付け上がるんだ!」

 

 

 

そう言って声を荒げる八百屋の親父。

 

確かに真理の一面ではあろう。

 

 

 

「妹が病弱で・・・どうしても果物を食べさせてやりたかったんだ!」

 

 

 

泣きながら男の子が理由を話した。

 

 

 

「にっちゃ!」

 

 

 

妹も泣いて兄に縋っていた。

 

 

 

「ぬうっ!」

 

 

 

ローガはヤーベの元で部下になると宣言して以来、ずっとそばについて来ていた。その間、ヤーベとはいろんな話をしている。その中でも人間世界での暮らし方、悪党の見分け方など、多岐にわたって王都で生活するための注意点を教わっていた。

 

そんなローガはこの状況を冷静に分析していた。

 

 

 

泥棒は悪い事である。だが、幼い少年少女の兄妹にはお金も無く、仕方のない事情もあるだろう。だが、それでもだからといって少年を取り押さえる八百屋の親父を悪党として断罪するわけにはいかない。

 

 

 

ローガは一瞬唸り声を上げながら、それでも人間界における不条理に気持ちをモヤ付かせた。

 

 

 

「ふみゅう、おじしゃんは果物を盗まれて怒っているでしゅか?」

 

 

 

いきなり声がしたので振り返ってみれば、大きな狼に乗った浅黒い少女が声を掛けて来ていた。

 

 

 

「うわっ、なんだ、お前ら!?」

 

 

 

驚いた親父のセリフを無視して、リーナは問いかける。

 

 

 

「どうすればおじしゃんはその男の子を許してくれるでしゅか?」

 

 

 

「え?許す?」

 

 

 

親父はキョトンとする。

 

 

 

「そうでしゅ。その男の子を許して欲しいでしゅ」

 

 

 

「ダメだダメだ!コイツの盗んだ果物をお前さんが代金を払ったからと言って、それで盗みの罪が消えるわけじゃねえんだ!」

 

 

 

いい加減にしてやれよと隣の金物屋の親父が視線を送るが、八百屋の親父はそれでも首を振った。

 

 

 

「だから、どうすればその男の子を許してくれるでしゅか?」

 

 

 

リーナは親父の説明を無視して繰り返した。

 

リーナは罪がどうとか、どうでもよかった。苦しくて涙を流す兄妹を許して欲しかったのである。

 

 

 

「ああ、しつこい嬢ちゃんだな。コッチも商売邪魔されて売り上げが大損なんだ。オレっちの店の品物全部買い取ってくれたら許してやってもいーぞ」

 

 

 

「わかったでしゅ。全部買うでしゅ」

 

 

 

「リーナ殿・・・?」

 

 

 

意地悪くそんな説明をした親父は、全部買うと即答したリーナに驚いて声も出ない。

 

ローガも自分の背中に乗るリーナを首を回して見つめた。

 

 

 

リーナはローガの背から降りると、じゃらりと重そうな皮袋を取り出す。

 

そしてその中から硬貨を一枚取り出した。

 

 

 

きらりと輝く大きな金貨。それは紛れもなく『大金貨』であった。

 

 

 

通常の『金貨』の十倍の価値がある『大金貨』。

 

リーナはその大金貨を一枚、革袋から取り出した。

 

チラリと見える革袋の中。それは大金貨がパンパンに詰まった革袋だったのである。

 

 

 

「だ、だ、だ・・・大金貨・・・!?」

 

 

 

八百屋の親父は腰を抜かす。

 

親父の店は小さなものだった。全部の野菜や果物を買っても金貨であれば二~三枚枚あるかないか。それをリーナは大金貨を取り出したのである。

 

 

 

なぜそんな大金をリーナが持ち合わせているのか。

 

 

 

ヤーベはリーナにマッサージのお駄賃として金貨を渡していたのだが、ある日大金貨を見たリーナがメダルの様にカッコイイと言ったのを見て、お駄賃を大金貨に変更していた。

 

何気に極めて親バカレベルがカンストしているヤーベであった。

 

 

 

「まっ・・・ほ、本当に全部・・・?」

 

 

 

「? おじしゃんが行ったでしゅよ? 全部買えばそこの男の子は許してもらえるでしゅよね? これで足りるでしゅか?」

 

 

 

「あ、ああ・・・じゅ、十分だけどよ・・・」

 

 

 

「店主よ、十分というより、リーナ殿の提示した大金貨は多すぎるだろう。お釣りを用意できるのか?」

 

 

 

目の前の狼に問いかけられて驚く八百屋の親父。

 

狼が喋った事にも驚いたが、明らかに貨幣の価値が分かって狼は問いかけて来ていた事にもっと驚いていた。

 

 

 

「い、いや・・・それは・・・」

 

 

 

大金貨のお釣りなど、こんな小さな八百屋の親父に用意できるわけがなかった。

 

 

 

「ああ、お釣りはいらないでしゅ。取っておいてくれでしゅ」

 

 

 

「「ええっ!?」」

 

 

 

八百屋の親父とローガは同時に驚いて声を上げた。

 

特にローガなどは顎が外れそうなほど驚いていた。

 

 

 

ちなみにリーナはお釣りがいくらあって、どれほどの価値があるかなど全く分かっていない。

 

いつもご主人様であるヤーベが「お釣りはいらないよ、取っておいてくれ」と買い物しているのを覚えていてただセリフを真似ただけである。

 

ただ、その時のお釣りなどは微々たるものであったのだが、今回の場合はお釣りがとてつもない額になってしまっているが。

 

 

 

あんぐりとしている親父とローガを尻目に、兄妹を立たせて服をパンパンして埃を払ってやるリーナ。

 

 

 

「あそこでこっちを見ている子達はお友達でしゅか?」

 

 

 

リーナが指さす方向には路地からこちらを伺う子供たちがたくさんいた。

 

 

 

「え、ええ・・・仲間たちです。一緒に路上で暮らしている・・・」

 

 

 

「みんなコッチに呼ぶでしゅ。お店の野菜も果物も全部買ったでしゅ。みんなで持って帰るでしゅ」

 

 

 

何気なく説明したリーナの話に驚く男の子。

 

 

 

「え・・・君が買ったんだよね?」

 

 

 

「リーナはご主人しゃまにいつもご飯を食べさせてもらっているので、食材はいらないでしゅ。全部君たちにあげるでしゅ」

 

 

 

「ええっ!」

 

 

 

驚く兄妹を尻目に、遠巻きに見ていた子供たちは立ってきて口々に「いいのっ!?」

 

「もう食べていい?」などとテンションを上げまくっていた。

 

 

 

「ここではお店に迷惑が掛かるでしゅ。近くの教会まで移動してこの子たちの事を頼むことにするでしゅ」

 

 

 

「なるほど、それは良い。おい、近くの教会まで案内してくれ」

 

 

 

ローガがそういうと、空から様子を見ていたヒヨコ十将軍の序列五位であるヴィッカーズがローガの頭に降りて来る。

 

 

 

『了解です、すぐ近くにありますよ』

 

 

 

踵を返して八百屋から去ろうとするリーナを親父が呼び止めた。

 

 

 

「あ、アンタ・・・いや、嬢ちゃんは一体ナニモンなんだ!?」

 

 

 

リーナが振り向く。

 

ふとローガも立ち止まり周りに気を配って見れば、リーナからなら先ほど見せた大金貨の詰まった革袋を簡単に奪えると思ったのか、不穏な空気を醸し出す男たちもいるようだった。

 

 

 

「グルル・・・」

 

 

 

威嚇するように低く唸り出すローガ。

 

そんなローガを無視してリーナは高々と右手を上げ、人差し指を天に突き上げ、大声で叫ぶ!

 

 

 

「リーナはサイキョーご主人しゃまの奴隷なのでしゅ!!」

 

 

 

ばばーん。

 

 

 

「ど、奴隷・・・」

 

 

 

八百屋の親父が腰を抜かし、隣の金物屋の親父も信じられない者を見るような目でリーナを見た。

 

大金貨の詰まった革袋を持ち、それで店の品物を買い占めた挙句、釣りはいらねぇと言い切った。その上、買った野菜と果物は飢えた孤児たちに全部やってしまうという。もはやご主人様が最強なのではなく、この奴隷のお嬢ちゃんが最強なのでは?と八百屋の親父を始め、リーナの啖呵を聞いた多くの人々は思ったのであった。

 

 

 

そしてローガは不穏な空気を醸し出していた連中に聞こえる様に説明を追加した。

 

 

 

「ちなみに、このリーナ嬢の言う『ご主人様』というのは、救国の英雄と呼ばれる、ヤーベ・フォン・スライム伯爵の事だ。そして俺はヤーベ様の使役獣のトップを預かる狼牙族のローガという。伯爵様よりこのリーナ嬢に不貞を働く輩は全てオレが排除する許可を得ているのでな、あまり無謀な真似はせぬ方がよいと忠告させて頂こうか」

 

 

 

そう言ってローガがギロリと一睨みすれば、リーナの持つ革袋を奪おうとしていた連中が慌てて逃げ去る。

 

 

 

「あ、その前にポポロ食堂のコロッケを買いに行かないといけないでしゅ。どうせならたくさん買って君たちにもお裾分けしてあげるでしゅ」

 

 

 

全く危機感のないリーナ。ローガもやれやれと溜息を吐く。

 

 

 

「「「「「コロッケ!!」」」」」

 

 

 

だが、リーナの言葉に子供たちが一斉に顔をほころばせる。どうもコロッケの事は知っているのか、言葉だけで魅惑の食べ物と感じているのか、今まで以上に元気になった。

 

 

 

「ヒヨコよ。イリーナ様達に連絡して、教会に少し肉やパンを寄付して頂けるよう連絡してくれ。果物と野菜はあるが、バランスが悪かろう。子供たちの事もお願いしないといけないしな」

 

 

 

『了解ラジャー!』

 

 

 

大至急ヒヨコが屋敷に向かって飛んでいく。

 

 

 

その後十人以上の子供たちを引き連れてポポロ食堂のコロッケを買いに行ったリーナ。

 

 

 

「これで買えるだけのコロッケをくだしゃいなのでしゅ!」

 

 

 

「ヤーベさんより金銭感覚おかしい人がいた!」

 

「何百個コロッケ揚げないといけないのよ!」

 

 

 

リーナの取り出した大金貨を見て、驚いて開いた口が塞がらないリンとレム。

 

真面目に計算すればコロッケは千個揚げなければならない。

 

 

 

「あらあら、もっと小さなお金は持ってないかしら?」

 

 

 

母親であるルーミも顔を出した。

 

 

 

「ふみゅう・・・小さなお金も前は貰っていたのでしゅが、このおっきいメダルみたいなお金がかっこいいから、ご主人しゃまに全部コッチに変えてもらってしまったでしゅ」

 

 

 

そう言って落ち込むリーナ。

 

 

 

「じゃあ、お金はまた今度でいいわ。在庫にあるコロッケ百個全部揚げてあげる。今度この金色の硬貨の一番小さい物を持って来てくれるかしら?」

 

 

 

「大丈夫でしゅ!お釣りはいらないのでしゅ!取っておいてくれなのでしゅ!」

 

 

 

にっこり微笑むルーミにリーナが力強く宣言する。

 

 

 

「でも、大きなお金は泥棒が入っちゃうかもしれないし、この食堂ではあつかえないから・・・」

 

 

 

「ふみゅう・・・」

 

 

 

ちょっと困った顔をするルーミさんにリーナも落ち込む。

 

 

 

「そうですな、すぐヒヨコに金貨を届けさせますので、それでお願いできますかな?」

 

 

 

入口から顔だけ覗かせてローガが提案する。

 

 

 

「ええ、そうしてくださるかしら」

 

 

 

「わかったのでしゅ!よろしくなのでしゅ!」

 

 

 

そうしてアツアツ揚げたてのコロッケが大きな笹の葉のような物に十個ずつ包まれている。

 

 

 

「いっぱいなのでしゅ!頑張って運ぶでしゅ!」

 

 

 

そう言ってローガの背中にドンとコロッケの包みを乗せる。

 

 

 

「アツッ!アツッ!」

 

 

 

ぴょんぴょん飛び上がって熱がるローガ。

 

戦闘ともなれば高めた防御力で炎すら凌駕するローガであるが、気の抜けた日常では揚げたてコロッケでも熱いものは熱いのである。

 

 

 

そして、教会までの道中もローガに乗ったリーナが孤児の子供たちを引き連れて歩いて行く姿は相当に目立った。

 

その間も買い占めたり狼藉者を屠ったりと話題に事欠かなかった一同。

 

教会に着けば、届いていた食料でバーベキューを取り仕切って子供たちの胃袋を満足させた。

 

その一日だけで、リーナとローガが八百屋の前で名乗ったこともあり、リーナたちの情報は瞬く間に王都に広がって行った。

 

 

 

曰く「最強の奴隷少女」

 

曰く「御大臣奴隷少女」

 

曰く「孤児たちを率いる裏通りのボス」

 

曰く「救国の英雄の懐刀」

 

 

 

様々な異名が流れる中、リーナは王都でも知る人ぞ知る有名な少女になって行くのであった。

 

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
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