転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第253話 パレードも披露宴も笑顔で乗り切ろう

奥さんズの大名行列の最後に登場した人物。

 

真っ白な美しいウェディングドレスに身を包んでいるのは同じだが、その艶やかな深緑の髪からにょきりと黒い角が二本生えていらっしゃいますが?

 

よーく見れば、こちらも深緑のしっぽらしきものがちらりとドレスの後ろからこんにちはしていらっしゃいますけど、何か?

 

もっとよく見れば、ドレスから出る二本の腕も、外側はうろこのようなものに覆われている。でもとてもきれいな深い緑色をした艶のあるうろこだ。硬いのだろうか?ちょっと触ってみたい。

 

 

 

「・・・えっと、どちらかでお会いしたことがありましたでしょうか?」

 

 

 

俺は首を傾げながら聞いてみた。

 

 

 

「お初にお目にかかります、ヤーベ・フォン・スライム伯爵様! (それがし)はドラゴニア王国国王がバーゼルの妹でロザリーナ・ドラン・ドラゴニアと申します!誠心誠意ヤーベ様に尽くす所存にございますれば、幾久しくよろしくお願い申し上げます」

 

 

恭しく頭を下げるロザリーナ。某ってサムライかよ!?

 

てか、王妹キタ―――――!!

 

バーゼルよ!お前何してくれちゃってるワケ!?

 

地球時代の日本でも、昔は顔も見ないまま家同士で結婚を決めたなんて話があったりしたけど、当人に結婚式当日まで知らされていない結婚相手って、なかなかないと思いますけど!?

 

 

 

「アニキ!ウチの妹をお願いします!妹は自分よりか強い男としか結婚しないって、ずっと結婚の申し込みを断り続けていたんですが、英雄ヤーベアニキなら嫁いでもいいって言ってくれたんです!」

 

 

 

どこの脳筋だよ!?

 

俺より強いヤツじゃなきゃ認めねぇ!とか!

 

 

 

「妹はこれでもドラゴニア王国の近衛騎士団長です!妹は俺たち王族の中でも<竜人(ドラゴニュート)>の血が色濃く出た先祖かえりなんです。その力はまさしく一騎当千ですよ!アニキの身を守る護衛としてもうってつけです!」

 

 

 

見ればドラゴニア王国の大臣たちも涙を流して喜んでいる。

 

 

 

「よかった・・・ロザリーナ様の地獄の訓練が無くなるのかと思うと・・・」

 

「我ら文官衆にも「体がなまっているぞ!」とトレーニングを押しつけてきましたしな」

 

「これでやっと解放される」

 

 

 

だから、脳筋じゃねーか!

 

後、完全に厄介払いのニオイがプンプンするんですけど!?

 

何気に近衛騎士団長って、バーゼルの護衛はいなくなっていいのか?

 

 

 

それにしても、竜の血が色濃く出た女性・・・確かに、俺の周りにはいなかったですけどね。

めっちゃくちゃ美人だけど、手の甲から肘まで外側に緑の鱗がきれいです。頭にも二本の角が鎮座しておりますな。一番びっくりするのは純白のウエディングドレスの後ろから鮮やかな緑のしっぽがぴょこんと顔を出していることでしょうか。だからと言ってお楽しみだなんて考え、持たないですよ?

だってO・SHI・O・KIが怖いからね! 何気にビビッてますけど、何か?

 

 

 

「それでは、今から婚姻の儀を始めます」

 

 

 

ブレることなく、アンリ枢機卿・・・まあ、アンリちゃんが女神像の前に立って朗々と祝いの言葉を発していく。

 

 

 

アンリちゃんの前に、俺。

 

俺の隣にカッシーナが並んでいる。

 

一段下がって、イリーナたちがずらりと並んでいる。

 

圧巻だ。

 

俺一人しかいないのに、横のカッシーナが引き連れるかの如くウェディングドレスに身を包んだ美女たちが八名も並んでいる。

 

・・・尤も幼女枠リーナとミーティアを妻と呼んでいいかどうかの問題はまだ残っているが。

 

 

 

難しい祈りの言葉が続いた後に、アンリちゃんが俺に問う。

 

 

 

「新郎、ヤーベ。汝、いついかなる時も妻たち(と私)を愛すると誓いますか?」

 

 

 

・・・何か、言葉に微妙な響きがあった気がするが・・・。

 

まあ、誓わないという選択肢はないよね。

 

 

 

「誓います」

 

 

 

俺の言葉に、とてもうれしそうな表情を浮かべるカッシーナ。よく見ればもう泣いてますけど? 後、カッシーナの後ろに並んでいる新生奥さんズも俺の言葉がうれしかったのか、それぞれが反応を見せている。

 

 

 

「新婦、カッシーナ、イリーナ、ルシーナ、フィレオンティーナ、サリーナ、リーナ、ミーティア、アナスタシア、ロザリーナ(と私)、汝らはいついかなる時も夫ヤーベを愛すると誓いますか?」

 

 

 

「「「「「「「「「誓います(しゅ)(誓います)!」」」」」」」」」

 

 

 

・・・なんだか、また小さな声が聞こえた気がしたけど。

 

 

 

「汝らの誓いは、女神クリスティーナの名において認められるところとなった。ここに汝らの婚姻を宣言し、祝福するものとする!」

 

 

 

おおう!女神の名前はクリスティーナっていうのか。

 

まあ、チートをくれなかった女神なんかに興味ないですけどねー!

 

 

 

アンリちゃんの朗々とした宣言に、参列者からの盛大な拍手が沸き起こる。

 

俺たちは万雷の拍手とフラワーシャワーの中、バルバロイ大聖堂の婚姻の間から退出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、これに乗るんだ?」

 

 

 

目の前にあるのは真っ白に輝く豪華な馬車。もちろん屋根はない。

 

 

 

「ははっ!僭越ながら私が御者を務めさせて頂きます!」

 

 

 

礼服に身を包んだクレリアがそこにいた。

 

クレリアは騎士隊に配属ではないため、騎士服を着用してはいなかったが、それでもかなり上等に見える服装であった。

 

 

 

「王国騎士団が先導させて頂きます」

 

 

 

クレリアの横に歩みを進めてきたのは、王国騎士団のグラシア団長だった。

 

グラシアも美しく白く輝く儀礼用の鎧を身にまとっていた。

 

 

 

「王国騎士団にとっても一世一代の晴れ舞台ですよ」

 

 

 

そうグラシアは笑うと、これまた儀礼用に飾りを纏った美しい白馬にまたがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャ―――――!! 王女様―――――!!」

 

「ステキ―――――!!」

 

「キレイ―――――!!」

 

「ご結婚おめでとうございます!」

 

 

 

カッシーナは元々『仮面の王女』と呼ばれて、その姿を見た国民はほとんどいなかったらしいからな。それが仮面を外してこんなきれいな顔を見せているのだから、国民が熱狂しないわけもないか。

 

 

 

先頭の馬車にはワーレンハイド国王、リヴァンダ王妃、カルセル王太子が乗り込み、国民に平和をアピールしている。だが、パレードの主役は俺たちのようだ。その次の馬車には俺とカッシーナだけが乗っており、クレリアの御者で大通りをゆっくりと進んでいく。とりあえず笑顔で手を振りまくる。あの羽○君もパレードの時はこんな感じだったのかな?

 

そして、俺たちの後ろの馬車にはイリーナたちが乗り込んでいる。馬車の長さが俺たちの乗る馬車の二倍くらいあり、大勢が乗れるようになっていた。その馬車に新生奥さんズの面々が勢ぞろいしている。

 

・・・アンリ枢機卿?なぜ貴女までその馬車に乗っているのですか?

 

 

 

「イリーナ様―――――!お幸せに―――――!」

 

「ルシーナ様―――――!お綺麗です―――――!」

 

 

 

王都が地元であるイリーナとルシーナにも声援が飛ぶ。見ればメイドさんの格好をした人たちの集団が。ルーベンゲルグ伯爵家とコルーナ辺境伯家で働くメイドさんたちかな?

 

 

 

「ウオオ―――――!ヤーベカッコイイぞ!!」

 

「ヤーベ様素敵です―――――!!」

 

 

 

おっと、まさかの俺様にも黄色い声援が。ふと見れば、この通りは俺の屋敷の前じゃないか。通りに出てチェーダたちミノ娘たちが大勢手を振っていた。

 

ミノ娘の大半がメイド姿のままだな。一部のマニア系な男たちが怪しい目をミノ娘たちに向けている。見るだけならともかく、それ以上は厳しく取り締まらねば。俺はヒヨコに目で合図する。

 

 

 

 

 

「伯爵はなんであんなにもたくさんの美人を奥さんに・・・」

 

「羨ましい羨ましい羨ましい・・・」

 

「こんなことが・・・ここはウソの世界ウソの世界・・・」

 

 

 

あ、ヒヨコたちよ、その暗黒世界に落ち込みそうな呪詛を放つ連中の事はスルーしてあげて!

 

どちらかというと俺も地球時代はアッチ側の人間だから。

 

 

 

そう言えばローガたちもパレードに参加したいと意思表示していた。ローガなどは、馬などにボスを任せられん、とか言って俺たちの乗る車を牽くつもりでいたようだ。あまりに目立つから留守番させておいた。だいぶしょぼくれていたが。一応四天王は目立たぬ位置からパレードを警護するように伝えてあるしな。ローガが落ち込んでいても安全には問題ないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

盛大なパレードの後は王城での披露宴パーティだった。

 

ワーレンハイド国王の挨拶に始まり、ドラゴニア王国のバーゼル国王、グランスィード帝国のノーワロディ女帝からも挨拶を賜っていた。

 

まさしく明日調印式のある西方三国同盟の華々しいアピールにふさわしい場となったな。ワーレンハイド国王の睨んだ通りと言うヤツか。

 

 

 

立食式のパーティ料理は王都の有名レストランオーナーシェフのドエリャ・モーケテーガヤーと喫茶<水晶の庭クリスタルガーデン>のオーナーシェフであるリューナちゃんの二人が指揮してくれた。食い気の強い来客者などは挨拶もそこそこに料理にかぶりついていた。

 

俺も料理にガッつきたかったのだが、さすがに新郎と言うパーティの主役の位置にいることもあり、身動きが取れない。隣のカッシーナなどは先ほどからかわるがわるやってくる貴族の挨拶に「妻のカッシーナでございます」と満面の笑みを浮かべて対応していた。

 

 

 

貴族たちに囲まれる前にイリーナの両親であるルーベンゲルグ伯爵夫妻とコルーナ辺境伯夫妻には挨拶を行った。娘をよろしく頼むと言われたのだが、コルーナ辺境伯は号泣していた。イリーナとルシーナは他の貴族の娘さんたちに囲まれて質問攻めだ。どうもまんざらではない顔をしているところを見ると、友達とか知り合いなのかもしれない。ここからでもイリーナのドヤ顔が見えるのが何となくハラ立つけどな。

 

 

 

タルバリ伯爵と妻のシスティーナさんにも挨拶できた。何せフィレオンティーナはシスティーナさんの姉である。今後も家族ぐるみの付き合いを頼むと言われた。久しぶりの再会でもあり、フィレオンティーナは妹のシスティーナさんと会話を楽しんでいる。

 

 

 

・・・リーナとミーティアはなぜかここでも大食い対決を行っている。見なかったことにしよう・・・。どうせ王城のメイドさんが介抱してくれるだろう。

 

 

 

さすがにサリーナは手持無沙汰のようだったが、今はアナスタシアとロザリーナがサリーナにいろいろと質問攻めをしている。きっとサリーナは嬉々として俺のネタをしゃべっているだろう。

 

 

 

そんなこんなで名前も覚えられない貴族たちの挨拶攻勢に辟易していると、バーゼル国王とノーワロディ女帝が俺の周りにやって来てくれた。さすがに隣国の国主たちの邪魔は出来ぬと場所を開けてくれる。

 

 

 

「アニキ!大人気ですね!」

 

「盛大なイベントになったな。これで明日の調印が終われば大陸の西方に争いがないことが大陸中に広まるだろう」

 

 

 

単純に俺の人気を褒めてくれるバーゼル国王と、大陸情勢を鑑みてのアナスタシア結婚、西方三国同盟締結だったと伝えてくるノーワロディ。凄まじく対照的な連中だな。

 

 

 

「ノーワロディ、バーゼル国王の妃であるサーレン王妃とは少し話せたのか?」

 

 

 

元々、ノーワロディはサーレンが憎むべき自分の父親の娘であることから、その存在を歯牙にもかけておらず、ドラゴニア王国へのほぼ生贄の形で結婚させていた。

 

俺は三国同盟の前に、バーゼル国王と一緒にサーレン王妃にも面会を申し出て、ノーワロディへの気持ちを聞いていた。

 

その時のサーレン王妃の言葉は印象的であった。元々、自分の父親が非道な存在であり、いつか討たれるのではないかと想像していたとサーレン王妃は語った。

 

その上でノーワロディへの恨みなどない、母違いの姉妹としての意識もない、とのことだった。であれば、ノーワロディ自身があまり変に意識しなければそれぞれの国でお互い幸せになれるのでは、と思ったので、その後ノーワロディにも話をしていた。サーレンと話をして、ドラゴニア王国を攻めたとこを詫びるように・・・と。

 

 

 

「ヤーベ様、本当にありがとうございました。姉・に謝られたときは本当にびっくりいたしましたわ」

 

 

 

あの表情の薄かったサーレン王妃とは思えないような笑顔を見せる。

 

 

 

「本当にアニキには感謝してもしたりねぇ・・・」

 

 

 

サーレンの肩を抱いて、涙ぐむバーゼル。暑苦しい。

 

居心地の悪そうなノーワロディ。ここでツッコムときっと後が怖い。スルーの一択だ。

 

 

 

「西方三国同盟、誠に素晴らしいの一言に尽きます。ぜひ、次は我が国とも友誼をお願いしたいものです」

 

 

 

そこにやってきたのはガーデンバール王国のセルシオ王太子と妻のコーデリアだった。聞けば、もうすぐ彼の父である国王が彼を国王に指名し、即位の儀があるという。これもまためでたいことになりそうだ。

 

 

 

「姉上も王妃となられるのですね」

 

「責任が重くなるから今から気が重いわ」

 

 

 

カッシーナの言葉にコーデリアは笑った。セルシオ王太子も苦笑している。

 

彼らもまた、未来に平和を見る同志、そう俺は感じた。

 

 

 

・・・これだけ各国のトップが集まっている中、エルフブリーデン公国のブリジット公女だけは、料理のデザートコーナーから全く動くことなく食べ続けていた。何せそのデザートコーナーは、リューナの肝いりだからね。気持ちはわからなくもないけど。

 

 

 

「ブリジット様ぁ!挨拶!最低限の挨拶だけでも済ませてからでないと・・・!」

 

御付きのエルフ女性が涙を流しながらブリジットをデザートコーナーから引きはがそうとしているが、下半身を踏ん張ってテコでも動かないと体で意思表示しながらデザートを食べつくす勢いのブリジット。

 

 

 

そこは違う意味で平和だなぁ・・・と俺は思うのだった。




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