転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「は、早っ!」
馬車・・・いや、狼牙に牽かせているから狼車か・・・が爆走している。
王都バーロンを出立して二日。田舎の村を過ぎて街道に人が少なくなったところで狼牙に牽かせている狼車の速度を上げた。
以前トンデモないスピードでリカオロスト公爵領のリカオローデンに到着していた事があるが、さすがにそこまでの速度は出していない。
大体、今牽いているのはローガでも四天王達でもない。ローガや四天王達は我先にとアピールしてきたが、その下っ端に牽かせている。だからと言ってローガ達が大人しく留守番しているかと言えば、そうではない。連中は車の周りを護衛しているのだ。
馬車に繋がっていると、魔物などが現れた時に迅速に戦闘に移ることが出来ない。そんな説明をしたら、我先にと馬車の牽引を譲り合う結果となった。
「雑魚は狩る必要ないからな。冒険者ギルドの仕事も残しておかないとな」
「了解です、ボス。お前らっ!雑魚に手を出すなよ!」
「「「了解です!」」」
「ただし人間が襲われている場合は助けろよ。後、俺に連絡な」
「「「「了解です!」」」」
ちなみに、ローガに四天王、その部下たちでぶっちゃけ五十頭くらいいる。
ヒヨコも同じくらいの数が護衛についている。
王都や屋敷の警備は大丈夫かと心配になったが、実はすでにこの三倍の数の狼牙やヒヨコたちが仲間になっていた。一体いつの間にそれほど増えたのか、魔物の森恐るべし。
数日はかかりそうな旅路も高速で移動する事によりあっさりと村の麓へ到着する。
「驚くほどに早いですね・・・」
リューナちゃんが狼車の窓から景色を眺めてそう呟く。
「私たちが何日もかけて何とか王都までたどり着いたのに・・・」
「そうですね・・・」
「ええ、まったく・・・」
ララ、リリ、ルルの三姉妹もちょっと遠い目をして感想を漏らした。
超高速で移動する狼車の窓から見る景色は、それこそ窓の外の景色が飛ぶように消えて行った。
そのくせ、狼車は大きく揺れることは無く、不安に感じる事もあまりなかった。
「ふふふ、ジャンケンで勝ったことにより、ヤーベと旅行に出られるとは・・・ジャンケン最高だ!」
「わたくしも、女神様に日ごろの行いが認められたのでジャンケンに勝てたのですわ!」
「ワシは主殿に知識を求められたのでな、ジャンケンは不戦勝なのじゃ」
ジャンケンに勝ったイリーナとフィレオンティーナ、それに亜人の情報を貰おうと<
ジャンケンに負けてリーナは四つん這いに崩れ絶望していた。神獣の二匹が慰めていたからきっと大丈夫だろう。
後、一応護衛にチェーダ率いるミノ娘護衛隊が数騎ついて来ている。
「さあ、リューナちゃんの村まで案内してくれるかな?」
「ヤーベさん、この大きな馬車では途中道が狭くなって通れなくなるかもしれません」
俺を見つめてリューナちゃんがちょっと心配そうに俯いた。
「村の食料とか、生活用品はどうしていたの? 商人が荷馬車で行商に来たりしなかった?」
「たまに来ていたみたいですが、村の村長とか、数人しか商人と取引していなかったみたいです」
答えたのはララだった。リリやルルもうんうんと頷く。
「うーん、あんまりいい感じの村じゃないなぁ。リューナちゃんのご両親が肩身の狭い思いをしているなら、王都にお呼びして生活してもらう?」
「あ、あの・・・とてもありがたいのですが、ララ、リリ、ルルの生贄問題を解決しないと・・・」
「ああ、それはたぶん問題ないと思うよ?」
平然と伝える俺に首を傾げるリューナちゃん。
「問題ないんですか?」
「うん。だって、その山の神とやらを退治すれば生贄いらなくなるよね?」
にっこりと答える俺にポカーンとするリューナちゃん。三姉妹もこちらをポカーンと見ている。あれ?なんか変なこと言ったかな?
「や、山の神・・・退治できるんですか・・・?」
不安そうに俺を覗き込むように聞いてくるリューナちゃん。その後ろに三姉妹も祈る様な感じで俺を見つめる。
「そりゃ、出来るよ。問題ないし。なに、山の神って生贄出さなきゃいけないほどタチが悪いんでしょ?退治しちゃダメなの?」
「あ・・・た・・・退治出来るなら村の皆さんも喜ぶのではないかと・・・」
リューナちゃんや三姉妹が俺を信じられないようなものでも見るような目で見ていた。解せぬ。
「・・・ここが私の生まれた村、トラン村です。狼人族ばかりが住む村です」
そう言って説明してくれるリューナちゃんだが、少々げっそりとしている。
どうも、俺が村に着くまでに山道を整地しながら進んだり、風魔法でばっさり木々を切り倒したりして道を広くしたことを驚いているようだ。これで王都からの荷馬車の商隊が簡単に通れるようになり、行商もはかどるようになるだろう。亜人の村を差別するような連中が多いなら、アローベ商会で行商を引き受けてもいいだろう。
「止まれっ!お前達何者だ!」
村の入口に着くやいなや、四人ほどの狼人族の男が走ってやって来る。
手に武器を持っているところを見るに、こちらを警戒している事は間違いないだろう。
「やあやあ、こんにちは。俺はバルバロイ王国の・・・」
「お前っ!リューナやララたちをどうしたっ! 両手を上げ、そこを動くな!!」
一人が大きな声を上げる。こちらの挨拶は無視だ。悲しい。
「すみません、こちらの御方は・・・」
リューナが説明しようと前に出るが、そのリューナを狼人族の男の一人が捕まえる。
「村を脱走した娘だなっ!こっちへ来い!」
「おい、乱暴に対応するな。それ以上粗野な対応を取るのであれば、バルバロイ王国にて伯爵の地位を預かる身として、それなりの対応を取らせてもらうが、いいか?」
俺がリューナちゃんの間に入って男の目を睨むように伝える。
「なんだとっ!王国がどうしたというんだ!俺達狼人族は人間の国などに従いはしない!」
えらく問題発言ばかりする狼人族だな。ここは明らかにバルバロイ王国の領土内だ。王都直轄地だから、問題行動を起こせば騎士団による粛清対応になるはずだが。
まあ、こんな小さな村が王都で問題になっているはずもないか。
そう、俺が顎を擦りながら首を捻っていると、奥から年老いた狼人族が護衛らしい男たちを引き連れてやって来た。
その横には銀色の毛並みをした男女がやって来ていた。
「リューナ! どうして村に戻って来たの!」
そう言ってリューナちゃんに抱きつく銀色の毛並みの女性。
「お母さん!」
そう言って抱きついてリューナちゃんが泣いている。ご両親なんだな。会えてよかった。でもどうして帰って来た事に不満があるのだろう・・・あ、生贄の問題があるか。でも、それは片付くから問題ないけどね~。
「リヴァン、シルヴィア。お前たちの娘が戻って来たのだ。予定通りお前たちの娘を山の神の生贄に捧げる事にする」
偉そうにジジイの狼人がリューナを生贄にすると宣う。
こういう時絶対、ワシが生贄になるっ!とか言わねーよな、権力者って。マジウザイ。そんなに生贄が欲しけりゃ自分が生贄になりゃいーのに。
「そんなっ!?」
リューナちゃんのお母さんが悲痛な叫び声を上げる。お父さんもリューナちゃんと自分の奥さんの肩を抱いて目に涙を浮かべている。
「・・・不思議なのじゃが」
急に声を発したのはミーティアだった。
「銀狼族のお前たちがただの狼人族の連中に迫害を受けているのはどういう事じゃ?お前達銀狼族はありとあらゆる面で通常の狼人族の能力を上回るぞ?」
不思議そうに首を傾げるミーティア。
やっぱり。リューナちゃんは冒険者ギルドに所属する狼人族のサーシャよりよほど内包魔力が多かった。おおかたそんなことだろうと思ったが、やっぱりリューナちゃんは上位種族だったようだな。
「き、貴様っ!何を言うか!」
狼人族のジジイが声を荒げる。
「あ? ワシに貴様、と言ったのか?」
ギロリと睨み、少しだけ竜気を開放するミーティア。それだけでその場の狼人族が恐れをなして震えだす。
「大体、そんなに生贄がいるなら、お前が生贄になれよ」
そう言ってジジイを指さす俺。
「な、何じゃと!」
「そりゃそうだろ。未来ある若者よりも、年老いた老害のようなお前がいなくなった方がよっぽどましだ」
「な、な、な・・・!」
顔を真っ赤にして怒っているジジイ。
「どうせ、優しいリューナちゃんの両親をあることない事村人に言いふらして迫害させて、自分が村の権力でも握ったんだろ? 本当にしょうもないジジイだな」
俺がバカにしたように笑ってやると、ついにジジイがキレた。
「ふざけるなっ!山の神に生贄を出すからこの村は襲われないんじゃ!ワシの決めたことに逆らうと山の神の天罰が下るぞ!」
そう言うと、ジジイの護衛たちが槍をこちらに構えた。
「ボス、ただいま戻りました」
一触即発の中、ローガの声が聞こえた。
「こいつがこの付近の山では一番強い妖気を放っておりましたので退治しておきました」
そう言ってローガが口に咥えてぶら下げていた首をこちらに転がした。
その後ろの狼牙たちが巨大な体を引きずって来ていた。
「ジャイアントトロルじゃな。なかなかの大きさじゃの」
ミーティアが転がった首を引きずられた体を見ながら魔物の種類を特定した。
「や、や、山の神・・・!!」
見ればジジイの顎が外れていた。
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