転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第258話 まさかの襲撃者?も一蹴しよう

 

「フガッ・・・フガッ・・・!」

 

 

 

何とか若い衆の手を借りて顎を入れたジジイが喋れるようになった。

 

 

 

「あ、あの山の神が・・・」

 

「信じられん・・・」

 

「大体、アレは山の神なのか・・・」

 

 

 

ジジイの取り巻きがざわつく。そりゃそうか、山の神なんて言われているが、自分の目で見たことがある奴なんざ少ないだろうしな。

 

 

 

「ど、どういうつもりじゃ!山の神を殺して、この村に祟りがあったら・・・!」

 

 

 

今後は訳の分からない祟り説で怒り出すジジイ。

 

本当にこういう理屈が通じないアホと喋るのは苦痛だね、全く。

 

 

 

「そ、そうだぞ!この村に被害が及ばない様に生贄を出していたんだ!それを殺したりしたら・・・!」

 

 

 

意味不明な理由で怒り出す。解せぬ。こいつの言っていることが俺には理解できない。

 

生贄を出していた事も許せないが、元凶が取り除かれたことに安堵できないって、どうなっている?

 

 

 

「何の話か分かりませんが、コイツはコミュニケーション能力が皆無でした」

 

 

 

「何?」

 

 

 

ローガの報告に俺は思わず声を漏らす。

 

 

 

「生贄を差し出したから村が襲われないとか、あり得ないですな。ただ腹が満たされたから襲われなかったとか、そんな程度でしょう。コイツ程度なぞ、クウ・ネル・ヤルしかない単細胞でしょうからな」

 

 

 

辛辣にバッサリ切るローガ。

 

 

 

「それじゃあ、生贄なんてものは何の役にも立っていなかったのか?何なら人ではなくイノシシなんかの野生動物でも間に合ったってことか?」

 

 

 

俺はついつい剣呑な気配を出してしまう。

 

 

 

「まあ、そのとおりかと」

 

 

 

俺はギロリとジジイを睨む。

 

 

 

「おい・・・生贄なんざ意味無かったじゃねーか、どういうつもりだ・・・」

 

 

 

殺気ともとれる魔力が漏れ出す。抑えるのに苦労してしまうな。

 

 

 

「ヒッ・・・!」

 

 

 

ジジイが腰を抜かす。

 

 

 

「じゃが、じゃが、お前は山の神を殺したんじゃぞ!」

 

 

 

俺はローガが持ってきたジャイアントトロルの首を拾ってジジイに突き付ける。

 

 

 

「ドント!シンクッッッ!!」

 

 

 

「ヒイイッ!!」

 

 

 

「フィ~~~~~~~ルッッッッッ!!!!」

 

 

 

「「「・・・・・・!!」」」

 

 

 

俺の迫力に押され、ジジイの他護衛の二人も腰を抜かし後退る。

 

 

 

「・・・ヤーベ?どういう意味なのだ?」

 

 

 

イリーナが俺に問いかける。

 

 

 

「考えるな、感じろってことだ。山の神がどうとか考えないで、もう脅威は去ったと感じて今後の村の経営を立て直してもらいたいと思ったんだが、このジジイはダメだな」

 

 

 

「ヤーベ!魔物討伐して来たわよっ!」

 

「ヤーベ、獲物大量ゲットにゃ!」

 

「ヤーベ先生、獲物が一杯だったのです」

 

「・・・大量」

 

 

 

狼牙達と一緒に魔物を討伐してきたのは狼人族のサーシャ、猫人族のミミ、犬人族のコーヴィル、熊人族のヴォーラ、四名からなるケモミーズの面々だった。山へ行くので、魔物討伐の依頼を受けさせて一緒についてこさせた。狼牙達にサポートさせれば危険もないだろうしな。

 

 

 

「わっ・・・狼人族がいっぱい!」

 

 

 

サーシャが驚いていた。

 

 

 

「なんだ、お前はこの村の出身じゃないのか」

 

 

 

「ええ、私たちは様々な亜人が住む村で育ったから・・・」

 

 

 

村に狼人族しかいないのが物珍しいのかキョロキョロと村を見回すサーシャ。

 

 

 

「お前たちも無事ならそれでいい。討伐部位は確保しておけよ?それ以外は狼牙族の亜空間圧縮収納に放り込んでおけばいい」

 

 

 

「了解にゃ!」

 

「了解なのです!」

 

 

 

ケモミーズの面々が嬉しそうに集まって討伐部位や素材を確認し合っている。王都周りでは討伐依頼が受けられず苦労していたからな。嬉しさも一入なのだろう。

 

 

 

「それにしても、このジジイはダメだな。王国の名代として指示する。銀狼族のリヴァンさんだったかな? この村の代官を任命する。しばらくは皆を纏めてくれ」

 

 

 

「ええっ!? 私がですか?」

 

 

 

「ええ、銀狼族は能力が高いとのことですし、もう生贄やなんだとバカげた話は無くなりますから。王国からも人材を派遣して、人間と共存してより良い暮らしが出来るよう協力できるようにします。もっと美味しいものが食べられるようになりますよ」

 

 

 

俺は笑って説明した。

 

 

 

「な、なんじゃと! 人間がこの村にくるじゃと!そんなことを許すわけがないじゃろう!」

 

「そ、そうだそうだ!」

 

「人間なんかと暮らせるか!」

 

 

 

ジジイの周りの若い奴らも騒ぎ出すが、ほんの一部だけだな。周りで見ている狼人族の人たちはそんなに騒いではいない。むしろ化け物《やまのかみ》が退治されてほっとしているようだ。

 

 

 

だが、村の周りが急にざわつき始める。

 

 

 

「・・・まさか」

 

 

 

古代竜(エンシェントドラゴン)>のミーティアが村の周りの異変に気づく。

 

俺にも感じられた。

 

今まで感じられなかった魔力の流れが感じられる。それも超広範囲でだ。

 

 

 

「キシャァァァァァ!!」

 

 

 

「な、何よアレ!」

 

「木のバケモノが迫って来るにゃ!」

 

「木が動いているのです・・・」

 

「・・・・」

 

 

 

ヴォーラは無口だな。三人のケモミミ娘は木が動いている事に驚いているようだ。

 

 

 

「・・・これは・・・トレント? それもエルダークラス・・・」

 

 

 

元Aランク冒険者のフィレオンティーナが落ち着いた声で呟く。

 

見れば村の北西一帯のエリアで木々がうごめき村に向かって来ていた。

 

その数、ざっと見積もっても数千から、万に届こうかという数だな。

 

よくもまあ今まで魔力を隠し動かなかったものだ。

 

 

 

「もしかしたら、この一帯はあのジャイアントトロルの縄張りだったのかもしれないですな。我々がコイツを狩ったので、エルダートレントどもが動き出したのやもしれません」

 

 

 

ローガが淡々と説明する。ローガは元より、四天王もその部下も慌てているものは一頭もいない。

 

 

 

「そうじゃっ!貴様らのせいじゃ!」

 

 

 

再びジジイが騒ぎ出す。

 

 

 

「ギャハハハ!愚かなる人間ども!狼ども!ここは我らトレント族が支配する!お前たちは家畜の如く働かせてやるから命がある事をありがたく思え!」

 

 

 

「おお、木が喋っているな」

 

 

 

一際大きな木が根っこをウネウネさせながら村まで降りてきた。

 

 

 

「うん、見たことあるな、ドラ〇エで・・・人面樹・・・だっけ?」

 

 

 

「誰が人面樹だ! 貴様! キングトレントのワシをバカにするとはいい度胸だな!」

 

 

 

俺が首を傾げながら言うと、キングトレントとやらがキレた。

 

 

 

「それはそうと・・・これは大儲けのニオイがするぞ!」

 

 

 

俺はイリーナとフィレオンティーナを振り返ってニンマリする。俺の目はコミカライズされれば$とドルマークになっている事だろう。

 

 

 

「えっと・・・旦那様。まさか・・・」

 

 

 

ヒクついた笑みを浮かべるフィレオンティーナ。

 

 

 

「その通りだ! エルダートレントの材木はめっちゃ高級なんだ! 高値で取引されること間違いなしの素材が今、目の前にそれこそ無数に! 山の様に! 取り放題だ!」

 

 

 

ビシッ!っとキングトレントを指さしながらニマニマする。

 

 

 

「・・・ヤーベ、まさかエルダートレントを討伐するのか?」

 

「実際に討伐してからでないと、捕らぬホーンラビットの角算用になりかねないのです」

 

 

 

コーヴィルの例えは、捕らぬ狸の皮算用、ってことかな?

 

 

 

「はははっ! 人間も面白い事をいうものだ! 我らの素材で家でも建てる気か?馬鹿め!我らが今どれだけいるのかわかっておらんようだな! 今すぐ貴様らを蹂躙してやる!」

 

 

 

わさわさと枝を揺らしながら揺れるキングトレント。

 

 

 

「エルダートレントの表皮は硬くて、触り心地が悪いんだ。だから削り込んで建材になるのは芯の部分だ。つまり、表面は焼いてしまっても問題ないわけだ。芯が残れば」

 

 

 

「・・・え?」

 

 

 

キングトレントの動きが止まる。

 

 

 

「フレイア、出番だよ」

 

 

 

俺の言葉に炎の精霊フレイアが顕現する。

 

 

 

「ヤーベ、アタイの力が必要か?」

 

 

 

俺は数千とも万にも届こうというエルダートレントの群れを指さす。

 

 

 

「思いっきり燃やしちゃって」

 

 

 

「いいのか?」

 

 

 

「いいよー。炭になればそれはそれでバーベキューにも使えるかな」

 

 

 

「ヤーベに力を貸すんじゃなくて、アタイが直接力を振るってもいいのかい?」

 

 

 

「いいよー、任せるよ」

 

 

 

俺の言葉を受け、ゲンコツを握ってブルリと体を震わせ、ふわりと宙に浮かぶフレイア。

 

 

 

「ふっ、アタイの真の力を見て驚けヤーベ! いっくぞー! ルミナ・バロール・エクステント! 精霊の御名において、数多の子らに告ぐ!」

 

 

 

ええ!? フレイアが詠唱するって、とんでもなくない!?

 

見れば宙に浮くフレイアの背後に巨大な火球がまるで時計の様にまた一つ、また一つと円状に増えていく。爆発的な魔力の高まりを感じるぞ。大丈夫なヤツか、これ?

 

 

 

見ればキングトレントがガタガタと震え、滝の様に樹液を吹き出す。まるで冷汗でもかいているみたいだ。

 

 

 

「火炎界の階層におけるその理を外れ、我が手に集え。ゲヘーナの業火よ、我が敵を焼き尽くせ!!<業火焦熱地獄(エグゾ・レガリア)>!!」

 

 

 

フレイアの背後に十二の火球が揃った時、爆発的な火炎エネルギーが放たれた。

 

 

 

ギュオオオオオ!! ドズゥゥゥゥン!!

 

 

 

その威力はすさまじく、トレントの一部は吹き飛び、燃え尽き灰燼と化し、その大半が燃えてのたうち回っている。

 

 

 

「ちょっとちょっとフレイアちゃん! 危ないよ!」

 

「そうですよ、燃えちゃいますよ!」

 

 

 

村に慌てて結界を張ってくれた水の精霊ウィンティアと風の精霊シルフィー。村の中まで降りて来ていたキングトレントとエルダートレントの一部が守られる形になっているが仕方ないだろう。

 

 

 

「でも~、これで農業を行うのに丁度いい土壌になるかもね~」

 

 

 

見れば土の精霊ベルヒアねーさんも顕現している。

 

 

 

「まあ、これで村を広くしやすくなったんじゃない?」

 

「村の開拓としては成功しやすくなりましたわ」

 

 

 

光の精霊ライティールと闇の精霊ダータレラまでも顕現してきた。

 

 

 

六大精霊揃い踏みのこの状況にキングトレントも完全に固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺の目の前にはキングトレントとエルダートレントたちが見事な土下座を決めていた。

 

 

 

「ははあ―――――!! ヤーベ伯爵様におきましては、ご機嫌麗しく!」

 

 

 

意味不明なご機嫌取りを行うキングトレント。

 

とりあえず森の延焼を食い止めたのだが、村の北西は広範囲で焼け野原みたいになっている。とりあえず燃え残ったエルダートレントの芯の部分を狼牙達とヒヨコ達で回収に行かせているのだが、燃えた皮の部分も炭で使えそうなら回収しよう。

 

 

 

「とりあえず、この村に迷惑かけたらお前ら全本伐採ね」

 

 

 

「は、ははあ――――!! 我らヤーベ伯爵様に逆らうことなどありえませぬ!以後、伸びてきた枝葉はカットして献上いたしますので、どうか本体の幹の部分だけはご勘弁いただきたく・・・」

 

 

 

ものすごいペコペコしながら、枝葉は進呈してくれるというキングトレント。

 

まあ、フレイアのあの魔法見たら、手のひら返しも仕方がないわな。誰しも消し炭になりたくはない。

 

 

 

「じゃあ、この村の住人には危害を加えるなよ? 後、焼け野原の部分は畑にして開墾するから。後建物も立てるから。お前たちの住処は、あっちの方で固まってもらっても大丈夫か?」

 

 

 

俺が北の方を指さす。

 

 

 

「もちろん、否はありませぬ! 場所だけいただければ、地脈から僅かな魔素を取り込めますので、我らはそれで生活できます」

 

 

 

なるほど。トレントって、地面から魔素を吸ってるのか。

 

 

 

「お前たちが大人しく共存に力を貸してくれるなら、いい水をたまには掛けてやるよ」

 

 

 

「ありがたき幸せ!!」

 

 

 

うーん、ここまで豪快に姿勢が変わるとどうしたもんかと思うが、まあしばらくは様子を見ながらキングトレントたちの動向を監視するか。

 

 

 

ふと見回せば、狼牙達やヒヨコ達が燃え残ったエルダートレントの芯や炭をどんどん運んでくる。

 

 

 

ウフフ、また一財産できそうだ。

 

 

 

「・・・また、ヤーベが悪い顔をしているな」

 

「一儲けできそうなネタを考えているのでしょう。悪い事ではないかと」

 

「あんな燃え残りが金になるのかのう?」

 

 

 

ニマニマとしている俺を遠巻きにイリーナ、フィレオンティーナ、ミーティアが心配しながら何やらブツブツ話し合っていた。

 

 




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