転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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今回より、「勇者急襲編」始まります!


第260話 表敬訪問に出かけよう

 

どこまでも続くのどかな草原の風景。

 

実に平和だ。

 

 

 

「ガーデンバール王国に入って数日。ずっとこのような平野が続いているな」

 

 

 

イリーナが馬車の窓から外を覗く。

 

俺達はバルバロイ王国の国王ワーレンハイドより、勅命を受けてガーデンバール王国へ向かっている。名目は表敬訪問だ。

 

国王に面会すれば、セルシオ王太子とその妻であるコーデリア様にも会えるだろう。

 

コーデリア様はカッシーナの姉だからな。積もる話もあるだろう。

 

 

 

「おっ、あれはなんだ?」

 

「ふおっ!カワイイのでしゅ!」

 

 

 

イリーナとリーナが二人して馬車の窓から外を見ていた。

 

見れば角が生えたウサギが遠くで群れを成して走っていた。ぴょんぴょんしてるな。

 

 

 

「アレはホーンラビットですわね。冒険者の駆け出しが狙う魔獣の代表格ですわ」

 

 

 

フィレオンティーナが解説してくれる。

 

なるほど、アレが噂の<一角兎(ホーンラビット)>ね。

 

ピンクがかった色合いは可愛らしいが、角で突撃してくる攻撃は侮れない。ゴブリンと共に初心者冒険者の討伐対象目標になっている。

 

ゴブリンと違い、<一角兎(ホーンラビット)>は討伐証明の角にも買い取り価格があり、それとは別に肉もいい値段で引き取ってくれるので、初心者や低ランク冒険者としてはとてもありがたい魔獣である。

 

 

 

「捕らぬ<一角兎(ホーンラビット)>の角算用、ということわざの元になっている魔物だな」

 

 

 

「おお、流石ヤーベ!博識だな」

 

 

 

イリーナが褒めてくれるが、正直博識というレベルの知識ではないだろう。

 

 

 

「見てください、遠くに群れが見えますよ」

 

 

 

今度はカッシーナが反対側の馬車の窓から外を指さす。

 

 

 

「あれはリングカーウですわね。お肉がとても美味しい魔物ですわ」

 

 

 

今度もフィレオンティーナの魔物講座によって説明される。

 

うん、フィレオンティーナの方がずっと博識だぞ。

 

 

 

「あのリングカーウは、あまり動かなくて太っているものの方が油が乗って美味しいらしいですわ」

 

 

 

・・・なんだろ、サシが入ってウマイってことかな?

 

大体、リングカーウって和牛ってこと?

 

 

 

「個体が黒いブラックリングカーウはさらにお肉が美味しいらしいですわ」

 

 

 

「黒毛和牛かよっ!?」

 

 

 

「クロゲワギュウ?」

 

 

 

思わずツッコんでしまった俺にフィレオンティーナが小首を傾げて俺に問いかける。

 

 

 

「あ、コッチのことだから気にしないで」

 

 

 

黒毛和牛なんて、ゲルドンかフカシのナツくらいしか通用しないだろうし。

 

 

 

そう言えばゲルドンは留守番だが、元気にしているだろうか?

 

 

 

「それにしても・・・すごい馬車だな、コレ」

 

 

 

改めてぐるりと馬車の室内を見回すイリーナ。

 

俺達はワーレンハイド国王より勅命を受けてガーデンバール王国へ向かっているわけだが、そのメンバーはひとえに「俺の家族」だった。

 

俺にカッシーナ、イリーナ、ルシーナ、フィレオンティーナ、サリーナ、リーナ、アナスタシア、ロザリーナ、そして何故かアンリ枢機卿が馬車の中に勢揃いだ。

 

馬車の中に十人だぞ。パンパンに詰め込まれる・・・というか通常なら二台の馬車に分乗する必要があるだろうが、今回表敬訪問に向かうために作られた特注馬車は何とまさかの十人乗りだった。八輪の特注馬車は通常の倍の長さがある。ゴルディン師の作らしいがいつの間にこんなデカイ馬車作ったんだろう。馬も四頭立ての立派な馬車となっていた。

 

 

 

「ヤーベ、美味そうなリングカーウの群れだぞ。狩りに行った方がいいんじゃないか?」

 

 

 

そんなことを小窓を開けて話しかけてきたのは御者台に座っていたチェーダだった。

 

 

 

「ちょっとチェーダ!私たちはバルバロイ王国からガーデンバール王国へ表敬訪問という使命を持って向かっているのよ! 寄り道して無駄な時間を消費するわけにはいかないわ」

 

 

 

チェーダを諫めたのは隣に座っているパナメーラだ。

 

チェーダとパナメーラの二人のミノ娘たちが御者としてこの馬車を運転している。向かっているガーデンバール王国は比較的亜人の扱いに特別なものがなく多種多様な人種が住む国でもあったため、俺が二人を選定した。他のミノ娘たちもメチャメチャ手を上げて立候補していたが、そんなには連れて行けないしな。

 

 

 

先行している騎士団が約五十名。後方には二十名がついて来ているが、馬車のすぐ後ろには狼牙族が三十頭ついて来ている。別途ヒヨコたちは先行でガーデンバール王国へ行かせているが。

 

 

 

「周りに冒険者がいないなら、ローガ達にリングカーウを狩って来てもらうか。お肉美味しいなら食べてみたいしな」

 

 

 

俺は広範囲で<魔力探知>を行う。

 

魔獣と人間の違いは魔力にも表れるので大体わかる。

 

丁度人がいない様だったので俺はローガに指示を出す。

 

 

 

「ローガ、お前達であのリングカーウを狩って来てもらえるか?肉が美味しいらしいんだ。お前たちにも何匹か焼いてやるよ」

 

 

 

「おお!それはぜひ食してみたいですな!早速行ってまいります!」

 

 

 

そう言うと、俺が窓から投げた出張用ボスを頭で受け取ると、ローガは僅か5頭を引き連れて馬車から離れていく。

 

 

 

見れば四天王達は馬車の護衛に残っているようだ。

 

どうも狼牙族の中でも若手を引き連れて言ったようだ。

 

狼牙族三十頭の選抜はもちろんローガに任せてある。

 

いつも留守番の貧乏くじを引くガルボも同行している。

 

屋敷の護衛はハンゾウと砕牙の新顔たちが今回担当していた。ゲルドンと仲良くやってもらいたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

「はっはっは、大量ですぞ、ボス!」

 

 

 

ホクホク顔で帰って来たローガ達。

 

結構な数のリングカーウが狩れたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわわわわわっ!」

 

 

 

ドドドドドッ!

 

 

 

「ん?何だ?」

 

 

 

馬車旅でのんびりしていた俺たちに結構な振動と共に叫び声が聞こえて来た。

 

とりあえず<魔力感知>してみると、多くの魔物に追われた数人の人間がこちらに逃げて来ているようだった。

 

 

 

『ボス、ブラックリングカーウの群れに追われた人間たちがこちらに走って逃げて来ています』

 

 

 

ヒヨコの1匹が報告に来る。

 

 

 

馬車の窓から見れば土ぼこりを上げてブラックリングカーウの群れがこちらに走って来ているのが見える。それから逃げている冒険者風の連中が5人ほど。

 

 

 

「ローガ、やっちゃって」

 

 

 

「了解です」

 

 

 

そう言ってローガはやはり5頭ほど引き連れて走って行く。もちろん出張用ボスを頭に乗せて。

 

いや、百頭近く居そうだけど、ブラックリングカーウの群れ。

 

まあローガだし、大丈夫か。

 

 

 

ぼんやり見ていると、突風の如く冒険者たちをすり抜けてブラックリングカーウの群れに突撃、あっという間にズンバラリンだ。

 

爪の斬撃でもはや解体?という手際の良さでバラバラにされているようだ。

 

はでな魔法も不要なようだ。ブラックリングカーウも大した魔獣じゃないらしいな。

 

 

 

とりあえず今日の夜はステーキを焼こう、そう思った。

 

 




「勇者編」と名打っておきながら、のんびりとしたスタートです。
一体、いつ勇者出て来るんでしょうね・・・?

今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
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